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第46話 冬を越えた先に明るい未来が待ってるはず!
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『タカシさん、朝です。おはようございます』
「……ん。マキナ、おはよ……」
マキナのモーニングコールで目が覚める。
「すぅ……すぅ……」
ルナがすぐ隣で寝息を立てている。
音を立てないように身を起こそうとすると……。
「やっ……」
ルナがぎゅっと掴んでくる。
起こしてしまったかと思ったけど、どうやら寝ぼけてるだけみたい。
「よしよし、大丈夫。遠くには行かないよ」
頭を撫でてあげると安心したみたいで、手を離してくれた。
外に出ると、びゅうっと寒風が吹きつけてくる。
玄関に風防スペースを作っておかなかったら、山小屋の中にまで吹き込んでくるところだった。
「だいぶ肌寒くなってきたね、マキナ」
『はい、タカシさん。そろそろ本格的に冬籠もりの準備が必要ですね。薪と食糧の貯蔵は充分ではありますが、食料の状態などをしっかりチェックしておかなくてはいけませんよ。』
「その点は抜かりないよ」
ガロにも挨拶をしてから、洞窟に蓄えてある水を桶ですくってから顔を洗う。
「ひえー、ブルッとくる……」
昨日よりも水がかなり冷たい。
一気に目が覚めてしまった。
『タカシさん、大丈夫ですか? そこまで冷たいなら水を温める魔法を開発してもいいかもしれません。』
「これはこれで身が引き締まっていいけどね。常温にする魔法は必要になりそうだから後で作っておこうかな」
成型した石で歯を磨いてから木製のコップで水をすくう。
クチュクチュと口の中をゆすいで、いつもの場所にぺっと吐いた。
「おはよ、タカシ」
残った清潔な水をルナが山小屋で歯磨きできるよう持って戻ると、ルナが半身を起こして目をこすってた。
「おはようルナ。いつもより早いね。寒かった?」
「だいじょぶ、です。けがわ、いっぱい、あったかい」
狩りのおかげで毛布はたくさん増えているので重ねて使っている。
おかげでまったく寒さを感じない。
「桶、ここに置いとくね」
「あいっ」
山小屋の中に新しく囲炉裏を設置したので、木を超高速でこすり合わせて火を起こす。
ちゃんと薪に燃え移るまで猶予があるので、今のうちに洗濯でもしに行こうかと外に出ると。
「あっ、雪だ……」
雲の感じからしてそろそろかと思ったけど、ついに降ってきたか。
「ルナ、歯磨き終わったらおいで。雪だよ」
「ゆき!」
ルナがテンションを上げて、大急ぎで歯磨きを終わらせた。
「外は寒いから、この毛皮のコートを着てね」
コートとは名ばかりの、森猪の余った毛皮で作った上着をルナに被せる。
「もこもこ、あったかい」
「どう? 動きづらくない?」
「へいき、です!」
「よし。じゃ、行こっか」
ふたりで手を繋いで外に出た。
「わあっ!」
ルナが目をキラキラさせる。
「ルナがそんなに喜ぶとは思わなかったよ。このあたりでは、あんまり雪が降らないのかな?」
「冬は、外、出れない、です。とびら、開けると、怒られ、ますた。降るところ、あんまり、見たことない、です」
そういや、あのおばさんの家には風防スペースがなかったもんな。
窓もガラスがないから換気用のやつしかなかったし、外の景色は見られなかったんだね。
「きれい、です。ちらちら、してて、ふしぎ」
「俺は朝ごはんを作るために山小屋に戻るから、寒くない間は遊んでてもいいよ」
「いい、です、か?」
「うん。手伝いが必要な作業はないしね。ただ、滑りやすくなるから転ばないようにね」
「あい。ありがと、です!」
ルナがにぱっと笑って、てててーっと駆け出して行った。
その姿を見て、俺は心の底からホッと息を吐く。
「……ようやくルナが普通の子供みたいに遊んでくれるようになったね、マキナ」
『はい、タカシさん。長かったですね。』
そう。
ようやくルナは、大人を手伝わないと暴力を振るわれるっていう恐怖から抜け出せたんだ。
「でも、まだまだだ。ルナは人里だとひどい差別を受けるだろうし、今のままじゃ友達だって作れない。ようやくスタートラインなんだ」
『ですが、大きな一歩です。この調子でルナさんが安心して暮らせるようにしていきましょう。タカシさんは、次に何をしようと思っていますか?』
「予定どおり冬を乗り越えたら旅に出る。ルナみたいな子供を、いつまでも森の中でサバイバル生活をさせるわけにはいかないからね」
とはいえ、まだまだルナは痩せてるし、もっと体づくりをしてあげないと旅になんて出られない。
だから、この冬の間にたくさん食べさせてあげなくっちゃ。
『素晴らしい考えです。ルナさんが快適に暮らせる場所を見つけることが、我々の使命というわけですね。私も可能な限りサポートさせていただきます。』
「ああ、これからも頼むよ! マキナ!」
※※※
こちらの作品は連載終了となります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
「……ん。マキナ、おはよ……」
マキナのモーニングコールで目が覚める。
「すぅ……すぅ……」
ルナがすぐ隣で寝息を立てている。
音を立てないように身を起こそうとすると……。
「やっ……」
ルナがぎゅっと掴んでくる。
起こしてしまったかと思ったけど、どうやら寝ぼけてるだけみたい。
「よしよし、大丈夫。遠くには行かないよ」
頭を撫でてあげると安心したみたいで、手を離してくれた。
外に出ると、びゅうっと寒風が吹きつけてくる。
玄関に風防スペースを作っておかなかったら、山小屋の中にまで吹き込んでくるところだった。
「だいぶ肌寒くなってきたね、マキナ」
『はい、タカシさん。そろそろ本格的に冬籠もりの準備が必要ですね。薪と食糧の貯蔵は充分ではありますが、食料の状態などをしっかりチェックしておかなくてはいけませんよ。』
「その点は抜かりないよ」
ガロにも挨拶をしてから、洞窟に蓄えてある水を桶ですくってから顔を洗う。
「ひえー、ブルッとくる……」
昨日よりも水がかなり冷たい。
一気に目が覚めてしまった。
『タカシさん、大丈夫ですか? そこまで冷たいなら水を温める魔法を開発してもいいかもしれません。』
「これはこれで身が引き締まっていいけどね。常温にする魔法は必要になりそうだから後で作っておこうかな」
成型した石で歯を磨いてから木製のコップで水をすくう。
クチュクチュと口の中をゆすいで、いつもの場所にぺっと吐いた。
「おはよ、タカシ」
残った清潔な水をルナが山小屋で歯磨きできるよう持って戻ると、ルナが半身を起こして目をこすってた。
「おはようルナ。いつもより早いね。寒かった?」
「だいじょぶ、です。けがわ、いっぱい、あったかい」
狩りのおかげで毛布はたくさん増えているので重ねて使っている。
おかげでまったく寒さを感じない。
「桶、ここに置いとくね」
「あいっ」
山小屋の中に新しく囲炉裏を設置したので、木を超高速でこすり合わせて火を起こす。
ちゃんと薪に燃え移るまで猶予があるので、今のうちに洗濯でもしに行こうかと外に出ると。
「あっ、雪だ……」
雲の感じからしてそろそろかと思ったけど、ついに降ってきたか。
「ルナ、歯磨き終わったらおいで。雪だよ」
「ゆき!」
ルナがテンションを上げて、大急ぎで歯磨きを終わらせた。
「外は寒いから、この毛皮のコートを着てね」
コートとは名ばかりの、森猪の余った毛皮で作った上着をルナに被せる。
「もこもこ、あったかい」
「どう? 動きづらくない?」
「へいき、です!」
「よし。じゃ、行こっか」
ふたりで手を繋いで外に出た。
「わあっ!」
ルナが目をキラキラさせる。
「ルナがそんなに喜ぶとは思わなかったよ。このあたりでは、あんまり雪が降らないのかな?」
「冬は、外、出れない、です。とびら、開けると、怒られ、ますた。降るところ、あんまり、見たことない、です」
そういや、あのおばさんの家には風防スペースがなかったもんな。
窓もガラスがないから換気用のやつしかなかったし、外の景色は見られなかったんだね。
「きれい、です。ちらちら、してて、ふしぎ」
「俺は朝ごはんを作るために山小屋に戻るから、寒くない間は遊んでてもいいよ」
「いい、です、か?」
「うん。手伝いが必要な作業はないしね。ただ、滑りやすくなるから転ばないようにね」
「あい。ありがと、です!」
ルナがにぱっと笑って、てててーっと駆け出して行った。
その姿を見て、俺は心の底からホッと息を吐く。
「……ようやくルナが普通の子供みたいに遊んでくれるようになったね、マキナ」
『はい、タカシさん。長かったですね。』
そう。
ようやくルナは、大人を手伝わないと暴力を振るわれるっていう恐怖から抜け出せたんだ。
「でも、まだまだだ。ルナは人里だとひどい差別を受けるだろうし、今のままじゃ友達だって作れない。ようやくスタートラインなんだ」
『ですが、大きな一歩です。この調子でルナさんが安心して暮らせるようにしていきましょう。タカシさんは、次に何をしようと思っていますか?』
「予定どおり冬を乗り越えたら旅に出る。ルナみたいな子供を、いつまでも森の中でサバイバル生活をさせるわけにはいかないからね」
とはいえ、まだまだルナは痩せてるし、もっと体づくりをしてあげないと旅になんて出られない。
だから、この冬の間にたくさん食べさせてあげなくっちゃ。
『素晴らしい考えです。ルナさんが快適に暮らせる場所を見つけることが、我々の使命というわけですね。私も可能な限りサポートさせていただきます。』
「ああ、これからも頼むよ! マキナ!」
※※※
こちらの作品は連載終了となります。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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