不遇幼女とハートフルなもふもふスローライフを目指します! ~転生前の【努力値】で異世界無双~

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第35話 こんなお芝居するのは、お遊戯会以来だな!

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「ルナ。森に誰か来たから山小屋に隠れてて」

「こわい、人、たち?」

 ルナの表情にわずかな怯えが混じる。
 怖がらせちゃってごめん……。

「わからない。ルナのそばにいてあげたいけど、ここからは訓練どおりにやるよ。ひとりでも大丈夫だね?」

「……あい」 

「いい子だ。ガロも、ルナのこと頼んだよ!」

「ワン!」

 ルナとガロに手を振ってから、侵入者たちのマーカーに向けて走り出す。

「マキナと同期しておいた警報魔法が役に立ったな」

『はい。山小屋を中心とした広い区域をカバーできています。侵入者には自動でマーカーがつきましたので、見失うことはありません。』

 俺とマキナは魔法の自由度の高さを利用して、いくつかの魔法をマキナと連動した。

 警報魔法アラートもそのひとつ。
 効果範囲に侵入者が入ったらマキナが感知して知らせてくれる魔法だ。
 消費魔力をかなり消費する代わりに、広大な森の大半を覆うことができる。

 侵入者には人間を想定した。
 開発には俺以外の誰かを侵入者と仮定する必要があったので、仕方なくルナの生体反応を参照させてもらった。
 ごめんねルナ!

「マーカーの数は十か。野盗かな?」

『現状のアラートでは敵性かどうかを判別できません。相手が何者かを知るには視認する必要があります。』

「だからこうして走ってるんだ、よっと!」

 ここでジャンプ!
 侵入者のマーカーの真上あたりの枝に飛び乗った。
 息を殺して連中の様子をうかがう。
 二人一組にわかれて手斧マチェットで枝葉を切りはらいながら進んでいるみたいだ。

「どう、マキナ。戦力を分析できる?」

『はい、タカシさん。分析完了しました。前方に展開している八人は屋外での追跡が得意な野伏レンジャーのようです。奥にあと二人いますが、現在の位置からでは見えません。』

「そっちも確認しよう」

 別の枝に飛び移って後ろにいる二人組の様子を見る。

「え? なんでザルバックさんがここに……」

 間違いない。
 あの山賊の頭領みたいな色黒スキンヘッド男は、街で警備隊長をしてた元A級冒険者のザルバックだ。

 となると、あの街の冒険者たちなのかな?
 ちなみにもう片割れは赤いローブに身を包んだ人物で、まるで絵本に登場する魔法使いみたいに見える。

「マキナ、あの魔術師みたいな人の魔力がいくつかってわかるか?」

『ステータスを確認します。推定魔術師の魔力は43です。』

「俺の素の能力で一番高かった数値が技術の25。43はかなり高いし、魔術師で間違いなさそうだね。魔法への対抗手段は確か……」

『はい、タカシさん。非友好的な魔法に対しては魔法抵抗スペルレジストができます。抵抗レジストに成功したら、魔法の効果を受けないで済みます。魔法抵抗力は、精神力と魔力の平均値です。』

「つまり俺の魔法抵抗力は魔力と精神力を平均した100。ほぼ抵抗できると考えていいのか?」

『魔法の効果にもよりますが、致命的な損傷を受けることはないでしょう。ただし、魔力は魔法を使うことで消耗しますので、魔法抵抗力も下がります。注意してください。』

「アラートの消費魔力は睡眠でとっくに回復してるから問題ないな。よし、それじゃあ予定どおりに『お芝居』を始めようか……」

 侵入者用に用意しておいた木彫りの仮面をかぶる。
 すぅっと深呼吸して、樹上から声をかけた。

「この地に何の用だ?」

「なっ……!?」

 赤いローブの人物が驚いてこちらを見上げた。
 ザルバックさんも同じように反応するけど、声は出さずに睨みつけてくるだけだ。

「これより先は禁足地。普通の人間が踏み込んでいい領域ではない」

 前にマキナに考えてもらった台本をノリノリで読み上げる。
 もちろん声色は変えているけど、ザルバックさんにはすぐバレちゃうかな?

 一応、前に会ったときと違って鹿の毛皮で作った服を着てるから、大丈夫だとは思うんだけど。
 こんなことなら声を変える魔法でも覚えておくんだった。

「……この森はエレイン侯爵の領地のはずですが?」

「それはお前たち人間が勝手に決めた法。我々が従う道理はない」

 魔術師へ返答するついでに、自分が普通の人間ではないので権力には屈しないとアピールしておく。
 魔術師だけでなくザルバックさんも明らかに困惑してるみたいだ。

「我々と言いましたが……では、あなた方はいったい?」

「我々の名はお前たち人間には発音できない。しかし、我々はお前たちの言葉でこう呼ばれている」

 まるで悪役のように両手をひろげて、自らを誇示した。

「バゾンド」

 魔術師とザルバックさんの目が驚愕に見開かれる。

 ……そう。
 この世界の人間たちは何故かバゾンドと呼ばれる存在に畏敬の念をいだいている。
 だったら、その感情を利用してルナを守れないかと考えたのだ。

 もちろん、ただのハッタリに過ぎない。
 この森にバゾンドがいないことは、いずれバレる。
 でも冬越えが終わるまでの時間稼ぎができれば、それで充分。
 ここ数週間でルナもだいぶ元気になったし、春になる頃には移動できるだけの体力がつけられるはずだ。

「再び問おう。ただの人間が、この地に何の用だ?」

 さーて、侵入者向けに練習しておいたバゾンドの演技。

 どこまで信じてもらえるかな?
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