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第34話 楽しい時間はあっという間!
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「おあよー!」
ルナの元気な声で目が覚めた。
「おはようルナ」
「あさ、です! タカシ、おっき!」
「うーん、まだちょっと早いんじゃないかな?」
「おっき! おっき!」
体をユサユサされて目を開けると、下一枚しかはいてないルナの姿が見えた。
「あっ、またちゃんと服着てない! そんな恰好じゃ風邪ひくよ!」
「さむいの、へっちゃら、です!」
うーん、困ったな。
最近ルナが元気なのはいいんだけど、何故か肌着で過ごしたがる。
傷痕が戻ってくることがないって安心したのか?
山小屋の中はあったかいかもしれないけど体調を崩しそうで心配だ。
「外に出る前には絶対着るんだよ。寒いだけじゃなくて、擦りむいて怪我でもしたら大変だから」
ルナがハッとした。
「けが、やだ! 着る!」
そのままあっという間に服を着る。
「はみがき、いてきま!」
ルナが山小屋から出て行ったあとで、俺は頭をかいた。
「うーん。どうしてあんなに肌着でいたがるんだろ。マキナはどう思う?」
『おそらくタカシさんに綺麗になった自分を見てもらいたいのだと思います。怪我をするという注意で素直に言うことを聞いたのも、また傷ができるのが嫌だからでしょうね。』
「なるほど。どういうふうに接してあげるのがいいのかな?」
『今のルナさんは、長年の古傷が消えて、感情が昂っている状態です。タカシさんは大人として、ルナさんの喜びに、しっかり付き合ってあげてください。また、時間が経過して落ち着いてくると、ルナさんが古傷が消えた原因を気にし始めるかもしれません。あるいは、古傷が戻ってくるかもしれないという恐怖に再び囚われてしまうかもしれません。そのときに、どのような話をするのか、今のうちに考えておくといいでしょう。』
「わかった。じゃあとりあえず、今のところはルナの希望に合わせてノースリーブの部屋着を用意してあげるのがいいかな?」
『いいと思います。できるだけルナさんの希望を叶えてあげましょう。』
ルナが元気になってくれたのは素直に嬉しい。
あれだけ喜んでもらえたなら、魔法を覚えたかいがあったというものだ。
「タカシ! 早く!」
ルナの呼び声が聞こえる。
どうやら、いつまで経っても起きて来ない俺に業を煮やしたらしい。
「今行くよー!」
◇
元気になったルナが森の中を歩きたがるので、いっしょに食料探しに出かけるようになった。
もちろん、ガロもいっしょだ。こいつがルナの隣にいてくれると本当に心強い。
森の中は危険だ。
ルナには俺から絶対に離れないように言いつけて、危険な動物や植物にはマキナにマーカーをつけてもらった。
そういった脅威の何がどう危険なのかをマキナに教えてもらい、ルナにも伝える。
「あれがフォレストウルフの群れだよ。今は風下にいるからバレないけど、風上にいると臭いでバレちゃうんだ」
「かざかみ? かざしも?」
『風上とは、風が吹いてくる方向のことです。風下はその逆で、風の吹いていく方向です。フォレストウルフは臭いに敏感な動物ですが、彼らから見て風上にいると臭いが風で流れて見つかってしまいます。逆に風下にいれば風で臭いが流れないので、感知されないということです』
「――って、マキナは言ってるけど。難しいかな?」
「ううん、わかる、ます。におい、風で、流れる。風で、におい、バレない、する」
「そういうこと。ルナは頭がいいね」
「えへへ……」
この子はとっても物覚えがいい。
特にここ最近は顕著だ。
やっぱり栄養をしっかり摂ったのがよかったんだろうな。
「ここから先は彼らの縄張りみたいだから引き返すよ」
「あいっ」
「ワウ」
そんな感じで木の実の類を集めて帰り、保存倉庫の洞窟に蓄える。
「だいぶ集まったね」
「食べ物、いっぱい、です」
ルナの頑張りもあって冬越え用の食べ物と水も充分に集まった。
木の実以外に肉も狩りで集めてある。おもにウサギとシカ、それとイノシシだ。
ガロが肉を見てよだれを垂らしてるけど、前に保存食を勝手に食べてルナに「めっ」されてからは手を付けなくなった。
「じゃあ、ルナ。この肉の加工をお願いね」
「あいっ」
生肉のままだと腐ってしまうので、塩漬けにしたり、燻製にする必要がある。
そういった肉の保存方法もルナにはしっかり勉強してもらった。
本人がやる気マンマンなので、教えるのは楽しい。
他にもルナがいっしょに水浴びをしたがったり、山小屋の中ではだかんぼで歩き回ったり、トラブルもいっぱいあったけど……森での暮らしは本当に楽しいことでいっぱいだった。
ここ数週間、本当に平和な日々が続いてる。
だから、その瞬間まで忘れかけていた。
『タカシ、緊急警報です。森に侵入者が複数』
ルナが追われる身だっていう現実を。
ルナの元気な声で目が覚めた。
「おはようルナ」
「あさ、です! タカシ、おっき!」
「うーん、まだちょっと早いんじゃないかな?」
「おっき! おっき!」
体をユサユサされて目を開けると、下一枚しかはいてないルナの姿が見えた。
「あっ、またちゃんと服着てない! そんな恰好じゃ風邪ひくよ!」
「さむいの、へっちゃら、です!」
うーん、困ったな。
最近ルナが元気なのはいいんだけど、何故か肌着で過ごしたがる。
傷痕が戻ってくることがないって安心したのか?
山小屋の中はあったかいかもしれないけど体調を崩しそうで心配だ。
「外に出る前には絶対着るんだよ。寒いだけじゃなくて、擦りむいて怪我でもしたら大変だから」
ルナがハッとした。
「けが、やだ! 着る!」
そのままあっという間に服を着る。
「はみがき、いてきま!」
ルナが山小屋から出て行ったあとで、俺は頭をかいた。
「うーん。どうしてあんなに肌着でいたがるんだろ。マキナはどう思う?」
『おそらくタカシさんに綺麗になった自分を見てもらいたいのだと思います。怪我をするという注意で素直に言うことを聞いたのも、また傷ができるのが嫌だからでしょうね。』
「なるほど。どういうふうに接してあげるのがいいのかな?」
『今のルナさんは、長年の古傷が消えて、感情が昂っている状態です。タカシさんは大人として、ルナさんの喜びに、しっかり付き合ってあげてください。また、時間が経過して落ち着いてくると、ルナさんが古傷が消えた原因を気にし始めるかもしれません。あるいは、古傷が戻ってくるかもしれないという恐怖に再び囚われてしまうかもしれません。そのときに、どのような話をするのか、今のうちに考えておくといいでしょう。』
「わかった。じゃあとりあえず、今のところはルナの希望に合わせてノースリーブの部屋着を用意してあげるのがいいかな?」
『いいと思います。できるだけルナさんの希望を叶えてあげましょう。』
ルナが元気になってくれたのは素直に嬉しい。
あれだけ喜んでもらえたなら、魔法を覚えたかいがあったというものだ。
「タカシ! 早く!」
ルナの呼び声が聞こえる。
どうやら、いつまで経っても起きて来ない俺に業を煮やしたらしい。
「今行くよー!」
◇
元気になったルナが森の中を歩きたがるので、いっしょに食料探しに出かけるようになった。
もちろん、ガロもいっしょだ。こいつがルナの隣にいてくれると本当に心強い。
森の中は危険だ。
ルナには俺から絶対に離れないように言いつけて、危険な動物や植物にはマキナにマーカーをつけてもらった。
そういった脅威の何がどう危険なのかをマキナに教えてもらい、ルナにも伝える。
「あれがフォレストウルフの群れだよ。今は風下にいるからバレないけど、風上にいると臭いでバレちゃうんだ」
「かざかみ? かざしも?」
『風上とは、風が吹いてくる方向のことです。風下はその逆で、風の吹いていく方向です。フォレストウルフは臭いに敏感な動物ですが、彼らから見て風上にいると臭いが風で流れて見つかってしまいます。逆に風下にいれば風で臭いが流れないので、感知されないということです』
「――って、マキナは言ってるけど。難しいかな?」
「ううん、わかる、ます。におい、風で、流れる。風で、におい、バレない、する」
「そういうこと。ルナは頭がいいね」
「えへへ……」
この子はとっても物覚えがいい。
特にここ最近は顕著だ。
やっぱり栄養をしっかり摂ったのがよかったんだろうな。
「ここから先は彼らの縄張りみたいだから引き返すよ」
「あいっ」
「ワウ」
そんな感じで木の実の類を集めて帰り、保存倉庫の洞窟に蓄える。
「だいぶ集まったね」
「食べ物、いっぱい、です」
ルナの頑張りもあって冬越え用の食べ物と水も充分に集まった。
木の実以外に肉も狩りで集めてある。おもにウサギとシカ、それとイノシシだ。
ガロが肉を見てよだれを垂らしてるけど、前に保存食を勝手に食べてルナに「めっ」されてからは手を付けなくなった。
「じゃあ、ルナ。この肉の加工をお願いね」
「あいっ」
生肉のままだと腐ってしまうので、塩漬けにしたり、燻製にする必要がある。
そういった肉の保存方法もルナにはしっかり勉強してもらった。
本人がやる気マンマンなので、教えるのは楽しい。
他にもルナがいっしょに水浴びをしたがったり、山小屋の中ではだかんぼで歩き回ったり、トラブルもいっぱいあったけど……森での暮らしは本当に楽しいことでいっぱいだった。
ここ数週間、本当に平和な日々が続いてる。
だから、その瞬間まで忘れかけていた。
『タカシ、緊急警報です。森に侵入者が複数』
ルナが追われる身だっていう現実を。
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