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第30話 守りたい、この笑顔!
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それから俺はルナの手を握りながら寝るようになった。
悪夢を見なくて済むようになる安眠魔法……なんてのも考えてみたけど、これが一番いいかなって思えたから。
「あっ、タカシ」
ある夜、目が覚めたルナが俺に気付いて淡い笑顔を浮かべた。
「また怖い夢を見たの?」
ルナが首をフルフルと振った。
「タカシ、手、あったかい、です」
「そうかな?」
ルナがコクッとうなずく。
「タカシ、いつも、やさしい、です」
「そんなことないと思うけどな」
ルナのためにできることをしてるつもりだけど、全部が全部うまくいってるわけじゃないし。
「やさしい、です」
ルナが俺の目をジッと見つめてきた。
真っ赤なおめめがキラキラしてて、見とれてしまいそうになる。
「タカシの、おふとん、入る、いい、です?」
「いいよ」
毛皮の布団を持ち上げると、ルナがゴソゴソと這ってくる。
「えへへ……」
俺と同じ布団に入ったルナが嬉しそうに笑う。
最初に向けてくれた笑顔は生き残るための媚びだったけど、今はそんなことない。
子供らしい純粋な笑顔だった。
「タカシ、うれしそう、です」
「そう?」
「笑ってる、ます」
「ルナも笑ってるよ」
「うん!」
ルナが素直にうなずいた。
「さいしょ、わたし、タカシ、こわかった、です」
「えっ、そうだったの? 怖い人に見えた?」
それはちょっとショックだ。
いや、見知らぬ不審者がいきなり自分を助けてくれたら、何か裏があるって思うよね。
だけど、ルナは首を横に振る。
「こわい人と、少し、ちがう、こわい、です」
「ん? 普通とは違う怖さってこと?」
「あい。わからない、こわい、です」
「わからない怖さ。まあ、それはそうだよね」
ルナのこれまでの経験を考えたら当たり前だ。
今まで、親以外で自分に優しくしてくれる人はいなかった。
ずっと冷たい世界の中で生きてきた子が、正体不明の男に急に優しくされたら混乱するよね。
「でも、今は、タカシ、いなくなるが、こわい、です」
「俺はルナの前からいなくなったりしないよ」
「おとう、さんも、おかあ、さんも、そう言って、いなくなり、ますた」
うっ、心にグサグサ来る。
最適な答えをマキナに求めたくなっちゃうけど、今は俺自身が考えなくちゃ……!
「お父さんとお母さんも、きっとルナといっしょにいたかったと思うよ」
「ほんと、です?」
「うん。ずっと一緒にいたかったに決まってるって。俺もそうだし」
「タカシ、わたしと、ずっと、いたい、思ってる、ます?」
「思ってるよ」
ルナが目をぱちくりさせる。
「なんで?」
「なんでって言われてもなぁ。逆に聞くけど、ルナは俺とずっと一緒にいたいと思う?」
「いたい、です」
「それはなんで?」
「えっと……」
ルナがどぎまぎした。
「ほら、ルナもうまく言えないでしょ」
「むーっ」
不満そうに頬をふくらませるルナ。
「ごめんごめん。俺とルナの理由は同じだって言いたかったんだよ」
「おなじ?」
「そうそう。俺はルナのことが大好きなんだよ。ルナは違う? 俺のこと嫌いかな?」
「ううん。タカシ、嫌い、違う、ます。大好き、です」
「そういうこと。いっしょにいたい理由なんて、それだけでいいんだ」
よしよし、と頭を撫でてやるとルナがむずがった。
「くすぐったい、です」
「ごめんね。頭撫でるの、嫌だった?」
「やじゃない、です。これ、好き」
うーん、かわいい。
絶対に守ってあげたい……。
「俺……ルナのために、もっと頑張る。ちゃんとそばにいるから」
好きならいいかなと、さらに頭を撫で続ける。
すると、ルナがジーッと俺を見みつめてきた。
「タカシ。ぎゅって、して、いい?」
少し驚いた。
普段のルナはこんなに甘えてこないのに。
「いいよ」
許可してあげると間髪入れずにしがみついてきた。
そして、本当に安心しきった声でささやく。
「タカシ、おやすみ」
……ああ、そっか。
なんか、わかった気がする。
きっとルナは、まだ不安だったんだ。
役立たずだと思われたら俺に捨てられるんじゃないかって……。
だから今まで素直に甘えられなかったのか。
「おやすみ、ルナ」
今夜こそは、君がいい夢を見られますように……。
悪夢を見なくて済むようになる安眠魔法……なんてのも考えてみたけど、これが一番いいかなって思えたから。
「あっ、タカシ」
ある夜、目が覚めたルナが俺に気付いて淡い笑顔を浮かべた。
「また怖い夢を見たの?」
ルナが首をフルフルと振った。
「タカシ、手、あったかい、です」
「そうかな?」
ルナがコクッとうなずく。
「タカシ、いつも、やさしい、です」
「そんなことないと思うけどな」
ルナのためにできることをしてるつもりだけど、全部が全部うまくいってるわけじゃないし。
「やさしい、です」
ルナが俺の目をジッと見つめてきた。
真っ赤なおめめがキラキラしてて、見とれてしまいそうになる。
「タカシの、おふとん、入る、いい、です?」
「いいよ」
毛皮の布団を持ち上げると、ルナがゴソゴソと這ってくる。
「えへへ……」
俺と同じ布団に入ったルナが嬉しそうに笑う。
最初に向けてくれた笑顔は生き残るための媚びだったけど、今はそんなことない。
子供らしい純粋な笑顔だった。
「タカシ、うれしそう、です」
「そう?」
「笑ってる、ます」
「ルナも笑ってるよ」
「うん!」
ルナが素直にうなずいた。
「さいしょ、わたし、タカシ、こわかった、です」
「えっ、そうだったの? 怖い人に見えた?」
それはちょっとショックだ。
いや、見知らぬ不審者がいきなり自分を助けてくれたら、何か裏があるって思うよね。
だけど、ルナは首を横に振る。
「こわい人と、少し、ちがう、こわい、です」
「ん? 普通とは違う怖さってこと?」
「あい。わからない、こわい、です」
「わからない怖さ。まあ、それはそうだよね」
ルナのこれまでの経験を考えたら当たり前だ。
今まで、親以外で自分に優しくしてくれる人はいなかった。
ずっと冷たい世界の中で生きてきた子が、正体不明の男に急に優しくされたら混乱するよね。
「でも、今は、タカシ、いなくなるが、こわい、です」
「俺はルナの前からいなくなったりしないよ」
「おとう、さんも、おかあ、さんも、そう言って、いなくなり、ますた」
うっ、心にグサグサ来る。
最適な答えをマキナに求めたくなっちゃうけど、今は俺自身が考えなくちゃ……!
「お父さんとお母さんも、きっとルナといっしょにいたかったと思うよ」
「ほんと、です?」
「うん。ずっと一緒にいたかったに決まってるって。俺もそうだし」
「タカシ、わたしと、ずっと、いたい、思ってる、ます?」
「思ってるよ」
ルナが目をぱちくりさせる。
「なんで?」
「なんでって言われてもなぁ。逆に聞くけど、ルナは俺とずっと一緒にいたいと思う?」
「いたい、です」
「それはなんで?」
「えっと……」
ルナがどぎまぎした。
「ほら、ルナもうまく言えないでしょ」
「むーっ」
不満そうに頬をふくらませるルナ。
「ごめんごめん。俺とルナの理由は同じだって言いたかったんだよ」
「おなじ?」
「そうそう。俺はルナのことが大好きなんだよ。ルナは違う? 俺のこと嫌いかな?」
「ううん。タカシ、嫌い、違う、ます。大好き、です」
「そういうこと。いっしょにいたい理由なんて、それだけでいいんだ」
よしよし、と頭を撫でてやるとルナがむずがった。
「くすぐったい、です」
「ごめんね。頭撫でるの、嫌だった?」
「やじゃない、です。これ、好き」
うーん、かわいい。
絶対に守ってあげたい……。
「俺……ルナのために、もっと頑張る。ちゃんとそばにいるから」
好きならいいかなと、さらに頭を撫で続ける。
すると、ルナがジーッと俺を見みつめてきた。
「タカシ。ぎゅって、して、いい?」
少し驚いた。
普段のルナはこんなに甘えてこないのに。
「いいよ」
許可してあげると間髪入れずにしがみついてきた。
そして、本当に安心しきった声でささやく。
「タカシ、おやすみ」
……ああ、そっか。
なんか、わかった気がする。
きっとルナは、まだ不安だったんだ。
役立たずだと思われたら俺に捨てられるんじゃないかって……。
だから今まで素直に甘えられなかったのか。
「おやすみ、ルナ」
今夜こそは、君がいい夢を見られますように……。
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