不遇幼女とハートフルなもふもふスローライフを目指します! ~転生前の【努力値】で異世界無双~

epina

文字の大きさ
上 下
19 / 54

閑話2 いじわる叔母の末路

しおりを挟む
 ダリアが目を醒ますと、納屋ではなく自宅の天井が見えた。

「あれ? あたしは……」

「ようやく起きたかババァ」

「借りてんぜ」

 ダリアが横を見ると、奴隷商人たちが自宅に上がりこんで朝食のパンを食べていた。

「アンタたち、人の家で勝手に――」

 そう文句を言いかけてからダリアは自分が簀巻き状態で床に転がされていることに気づいた。

「なんだいこりゃ! ほどいとくれ!」

「うるせえ! 俺らもこれからどうなっちまうか、わかんねえんだ! どうやったって納期までに商品を納められねぇ!」

「落ち着けって相棒。バゾンドの邪魔があったってお伝えすればワンチャンあるかもしれねえ……」

「エレイン侯がまともに話を聞いてくれっかなぁ……」

「そこなんだよな。何しろ赤眼ブラドの幼女を所望するようなトンデモ変態様だからなぁ……」

 奴隷商人たちの表情は悲壮感にあふれていた。
 バゾンドを名乗る男にルナを連れ去られた。
 つまり、奴隷商人たちも貴族の注文の品を確保できなかったということ。

 ここで、ようやくダリアも自分に待ち受ける運命を思い出した。

「金なら返すから、奴隷だけは勘弁しとくれよ!」

 奴隷商人がダリアを睨みつける。

「あのガキの代金ならとっくに回収しようとしたさ」

「でも、どこにもなかった。バゾンドが持っていったんだろうよ」

 ダリアの頭が真っ白になった。

「あたしの金……あの盗っ人めぇ~!」

「テメェの金じゃねえ!
とにかく俺らのケツにもやっべぇ火がついてんだよ!」

「お前を売って少しはタシにしなきゃならねぇ。まあ、クズ値だろうがな」

「あ、あたしを娼館に売り飛ばして性奴隷にする気かい!」

 ダリアの発言に奴隷商人のふたりがあっけに取られる。

「は? お前を性奴隷に? 本気で務まると思ってんのか?」

「客がつくわけねぇだろ。鏡見てから言えよ、ババァ!」

「失礼だね! あたしはこれでも二十七だよ!」

 ギャーギャーわめくダリアを見て、奴隷商人たちは呆れたように首を横に振った。

「お前は鉱山奴隷送りだよ。そんだけ元気ならそこそこ長生きできんだろ?」

「ま、そういうことだから毎日鞭打たれながら死ぬまで働きな。お前みたいな強欲ババァには似合いの末路だろうよ」

「イヤだ! どうして! なんであたしだけがこんな目に!」

 こうしてダリアは奴隷商人たちの馬車に乗せられて、鉱山に売り飛ばさたのだった。


 ◇


 陽の光が届かない石造りの地下室。
 ひとりの男が楽しそうに何度も何度も鞭を振るっている。

「ンッン~♪ さあ、もっといい声で泣いてくださいネ!」

「ううっ!」

 無理やり石床に座らされている女性の背中はたくさんの鞭跡があった。
 両手首のかせから伸びた鎖が壁の中に埋め込まれている。
 足の枷には重りまでつけられていた。

「ン~……だいぶ反応が鈍くなってきましたネェ」

 鞭を振るっていた男が不満そうにつぶやく。
 顔の上半分には道化師のようなデザインの仮面をつけている。
 均整のとれた肉体はよく鍛え上げられていた。

「どうして、こんな非道な真似ができるのですか……」

 女性が仮面の男に力なく訴える。

「ええっと。貴女はたしか、聖教国を追放された聖女サマでしたっけネ? いやあ、貴女にはとっても同情してるんですヨ。正しい加護の力を持っていたのに教皇が据えた偽聖女のせいで追放されてしまうなんて。そんな貴女が奴隷にまで落とされて、私のもとにまで落ちぶれてしまうなんて……ああ、まさに悲劇! 本当にかわいそうでかわいそうで仕方がないっ!」

「なら、どうして……!」

「私が楽しいっ!」

 仮面の男がいつの間にか持ち替えていた巨大なハンマーを振るうと、グシャリという音とともに何かが弾けた。

「やっぱり赤はいいですネェ。実に映えます」

 全身を赤く染めた仮面の男が気持ちよさそうに汗を拭う。

「エレイン侯。お楽しみ中に失礼します」

 ローブを全身で覆った人物が、仮面の男に声をかける。

「いえいえ、かまいませんヨ。ちょうど今、終わったところでしたから。それでどうしました?」

「どうやら奴隷商人たちが王都に戻ったようです」

「おお、素晴らしい!」

 エレイン侯と呼ばれた仮面の男が歓喜に震える。

「それで彼女は!?」

「それはまだ。しかし帰還したということは成果があったものかと」

「いやあ、赤眼ブラドの女の子を飼えるなんて思いもしませんでしたヨ。きっと、ものすごくかわいそうな目に遭ってきたんでしょうネェ!」

 まるで初恋に浮かれる少年のように頬を染めるエレイン侯。

「ルナちゃん。会えるのがとっても楽しみです♪」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

処理中です...