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番外編 義父の我慢 投稿16ヶ月記念小説 花嫁と義父

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「私の妻は美しいと思わないか」

まだ夜明けには早い時間の執務中に零した彼の言葉は、同じ部屋にいる部下は書類の作成の手を止めた。私邸として使用している由緒正しい一大公爵家とは別の、ベネット公爵が治める領地の中心にある建物の中で、机がいくつも並ぶ職務室の窓際の上座に座るリカルド・ベネット公爵家当主がぼそりと呟いた。その呟きは小さな声だったが、紙の音と筆記音しかしない部屋によく響いた。金色の髪を後ろへと撫でつけ、上等なスーツに身を包んだ彼の顔は連日の対応に疲労の色が濃く出ている。鋭い眼差しは彼の気難しさを表し、一見すらっとし細身の身体かと思いきやスーツの下は厚い胸板がある。
このベネット領のトップ、リカルドは42歳と若いながらも、『領民なくして繁栄はありえない』の信条を元に領民の声に耳を傾け粛々と職務を全うする優秀な男だ。そのリカルドに長年付いている部下達もまた優秀で、1伝えれば5も10にもして仕事の成果をあげる。普段なら我関せずのスタンスをとっているのだが、そんな彼らが手を止めるのには訳があった。
『一生独り身だと、言われていた領主の結婚』
部下達はまだ会った事がないが、残業も厭わなかったリカルドが定時にさっさと帰り、休みを取る事も多くなった結婚後の変化に少なからず新妻が関わっていると思っていた。
「…そうでごさいますね」
リカルドの背後に仕える執事のファルは、静かに返答をした。気配を消しているのか、存在感が薄いのかは分からないが、突然喋り出し仕事に集中していた部下達が驚く事もしばしばある。
「今日で何日だ、20日か」
「いえ、17日目でございます」
低く心地よい重低音の声のハズが微かな苛立ちを含んでいるように聞こえ、執事はそんな主人あるじの機嫌などお構いなしに涼しい顔で間違いを訂正する。

先月末に起きた大雨の影響で、川が氾濫し領民の生活区域の橋が崩壊し、海岸沿いにある市場が壊滅した。それによりリカルドは帰宅する事なく、この建物に数時間の睡眠時間を除く以外は対応に追われていてた。この建物の近くにすむ部下達はそれぞれ帰ったりしていたが、リカルドは王都に近い所に家があるので、なかなか気軽には帰れないでいたのだ。
「…視察も特に問題はない、橋や市場は急ピッチで修繕しているから数日中にはなんとかなるだろう」
ひと段落したと言わんばかりのリカルドに、部下達は返答に困ってしまう。なぜなら壊れた橋の後処理の書類仕事も、視察の報告書も市場の建物をとりあえず修繕はしたが、新たに建て直す事になっていて、建物の建築費用や諸費用その他諸々の見積りの決裁がまだ待っているのだ。
だが、今それを口に出せば、
『ほぅ、喋る余裕があるようだから仕事を振り分けてやろう』
と、今ある仕事からさらに仕事を増やされるのを知っているので、部下達は無言で成り行きを見守る。
「リカルド様、僭越ながら、まだ判断が難しい書類の処理もあるように見受けられます」
部下達の心の声を代弁する執事のファルに、リカルドはおかしいとでも言うように片眉を上げた。
もちろん・・・・精査された書類を持ってくるだけなんだから私のサインだけあれば事足りる…そうだな、そろそろ道も整備が終わる頃だから早馬を飛ばせば直ぐにでも屋敷へ到着するんだ、優秀な部下・・・・・を持って私も幸せだ」
「そうでございますね」
部下が優秀なところの最後の一言に賛同したファルだったが、部下達は内心青ざめた。
『ファルさんは俺たちの味方なの?!敵なのっ?』
『こっ、これは不備があった書類を持って行った日には、どえらい事になるぞっ』
と。




***************




微かに聞こえた鈴の音のようにコロコロと笑う声に、リカルドは頬が緩むのを止められなかった。きっと庭園でお茶会でもしているのだろう、お昼を少し過ぎたあたりに帰った私は、早く帰りたい一心で馬で帰ろうとした所を止められて、馬車に乗って帰ってきた。疲れていたのかうたた寝をしてしまったが、馬車が停まった時に目が覚めた。玄関前に停めた場所から降りると、中から執事長――ファル――の代理のオリバーが出迎えた。本来なら執務室へと向かい不在の時の連絡などを受け着替えるが、それよりもまず結婚したばかりの妻――アリスに会いたいのだ。
アリスアリーは」
短い言葉に慣れた執事長代理のオリバーは、こちらですと言ってサロンの先にある庭園へと俺は向かったのだ。

「まぁ、おかえりなさいませリカルド様」
庭園が一望できるサロンで、テーブルの横に置いたベビーベッドを覗いていた私の妻、アリスアリーがサロンの入口に立つ俺に気がつき、ぱっと笑顔を見せた。私の元へとやってきて、軽くカーテシーをするのを見て私は両手を広げた。視線を彷徨わせ誰も居ないと分かると、私の胸板に手を添えてそっと控えめに私に抱きついたのだ。随分と可愛い出迎えだと微笑ましく思いながら、彼女の背中に腕を回して抱きしめ返すと彼女からミルクの匂いがした。
「…眠ったのか、私達の息子王子は」
「ええ、たった今」
彼女の頭に鼻を押し付け匂いを嗅ぐと、シンプルな石鹸の香りとやっぱり乳児独特のミルクの匂いがする。好んでつけていたコロンは、子供のためによくないからと最近はつけていないと言っていた。それでもまだ彼女の何かが失われるわけではなく相変わらず美しいままだ。
美しく手入れされた銀色の髪はポニーテールにしていて、動きやすいシンプルなワンピースは生まれたばかりの息子――リチャードを抱きしめやすいようにボタンや装飾が付いていないシンプルなデザインだ。
生まれたばかりのリチャードは、私と同じ金色の髪とアリーの碧眼の瞳を受け継ぎ、まだ赤ん坊ながらもぱっちりとした瞳と顔立ちに将来はなかなかの男児になるだろうと、親バカながらもそう思っている。使用人やベネット家の親族もそう言っているから、あながち間違ってはいないと思うが…それよりも私の頭を悩ます心配な事がある。
「リカルド様、お疲れではありませんか」
私の胸に顔を埋めていたアリーは、顔を上げて私の顔を覗き込んだ。
「ああ、大丈夫だ」
彼女を安心させるように微笑むと、アリーは頬を赤く染める。その変化も私を想ってくれていると思うと、愛おしく幸せを感じる瞬間だ。アリーの頬に手を添えて、親指の腹で撫でると、彼女の大きく宝石のように美しい碧眼の瞳が気持ち良さそうに細まった。そのまま身を屈め、彼女の唇へと触れるだけの口づけを落とすと、ゴホン、と大きな咳払いが聞こえた。
「…おかえりなさいませ、ご主人様」
「ああ、帰ったよ、メリッサ」
大切なアリーとのひと時を邪魔をするのは、このベネット公爵家の侍女長メリッサだ。他の使用人ならこうしてアリーとの時間を邪魔しないというのに、メリッサは中々優秀だが公爵家としてー、と品格にはとにかく五月蝿い。
「ご主人様、お褒めのお言葉ありがとうございます」
「…口にはしていないはずだが」
「長年勤めてますと、ご主人様の顔を見れば何を考えているかなどわかりますわ」
「メリッサさんが羨ましいです…私も早くリカルド様のお顔を見ただけで考えが分かるようになりたいです」
「奥様、何度も言いますが私どもに敬語はおやめください」
なら邪魔をしないでくれ、と思うのに、空気を読まないメリッサにアリーが尊敬の眼差しを向けている。彼女が私から視線を外したのが面白くなく、彼女の顔をこちらに向くように戻した。
「…さて、リチャードも眠ったのだから夫婦の時間だ」
そう言ってスッとアリーの背後に居るメリッサに視線を向ければ、頭を下げた彼女が部屋から居なくなる。
「リカルド様…っ」
うっとりと私に見惚れている彼女に、深いキスをすると止まらなくなることを知っているので、また触れるだけの口づけをすると
「アリー、準備を」
彼女の好きな声色を彼女の耳元で囁いた。





***************




入念に綺麗にした後、とっておきの夜着に着替えた。その上にバスローブを着て寝室に戻ると、部屋の真ん中の壁際にある大きなベッドに座った。部屋の中央の天井にある明かりは消されて、ナイトテーブルにある淡いオレンジ色の明かりしかない。
――久しぶりだわ…最近領地管理でなかなか会えなかったから
忙しそうにしているリカルド様に、会いたいなどと我儘をいうつもりはなかったけど…やっぱり久しぶりに会うと嬉しいし寂しかったんだな、と実感する。だけど、今日会った時の自分の格好をお風呂に入る前に見て、飾り立てていない姿に幻滅されたかもと不安がよぎる。
「…もう少し色気が必要かしら?」
「私のアリーは今も十分色気があるが?」
1人悩んでいると、いつの間にか私の座るベッドの横に座り、右肩に顎を置かれ背後から抱きしめられた。
「リッ…リカルド様っ聞いてっ」
「この香り…は、君の好きな香水かな」
スン、と私の首筋に鼻を寄せた彼が嗅ぐ。
「いえ…リカルド様の好きな香りですわ…ローズの、んっ」
結婚前に一緒に庭園でお茶をした時、彼は薔薇の匂いが好きと言っていた。結婚してからは――彼と想いが通じた時から、ローズをベースにした香水をつけるようになったのだ。
彼の方に振り返りながら、全てを言い終わる前に唇を奪われ舌が絡まる。私のお腹に回ったリカルド様の手に力が入り、彼の身体へと身体が密着した。
右腕を上げてリカルド様の耳辺りに手を添えると、お腹にあったリカルド様の手が動きバスローブの紐を解いていく。
「ん、っ、っ」
噛み付くようなキス、余裕のないキスに翻弄される。舌をキツく吸われれば不自由な体勢から息苦しくなり、彼の舌に応える事が出来なくなり口を大きく開くと息を吸う。だけど、動きやすくなったのか彼の舌が私の口内の全てを味わうように動き回り、上手く呼吸が出来ない。右の太ももの内側を持ち上げられ、ベッドに足がつく。バスローブの裾から足が出て、外気が触れてゾクゾクする。
「…アリー、私の華」
私の唇からこめかみ、頬、そしてバスローブを下げられて、露わになった肩にリカルド様の唇を押し付けられた。ちゅっ、ちゅっ、とリップ音がして、リカルド様のいつも後ろへと撫でつけている髪が、お風呂を浴びて乾いて下ろされて肩に当たりくすぐったい。肩をすくめると、私達は見つめ合い唇を重ねた。
「アリー」
全てレースで編まれた白い丈の短いブラスリップは、透けていて私の肌が見える。胸元を支えるラインには、2人の思い出の黄金の糸の蝶が羽を伸ばし飛んでいてる刺繍で、胸のトップの上まであり、上手くトップを隠れているが少し身体を動かすと見えそうだ。アンダーウェアは真っ白なレースの下着だけど、布の面積が小さくて心許ない。片足をベッドに乗せているから端なくて恥ずかしいけど、内腿をリカルド様の手のひらが膝から足の付け根を何度も行き来して触るから下ろす事も出来ない。
「っ…リカルド様」
しばらくすると、彼の手が私の内腿の付け根に留まり、マッサージをするように揉む。濃厚なキスと彼の匂いに包まれ、火照った身体が優しいマッサージだけじゃ我慢が出来なくなっていた。
「そうだね」
リカルド様は私の後頭部の髪に鼻先を埋め、唇をつけながらそう呟くと、私の身体を持ち上げベッドの中央へと仰向けに寝かす。私の腿の外側に両膝をついて跨ぎ、私を見下ろす彼の顔は薄暗い部屋ではよく見えない。けど
「そんな物欲しそうな顔をされると、加減が出来そうにない」
彼の声はいつも聞く落ちついた重低音の声ではなく、獣のように欲情を我慢する含みのある艶の声。その声を聞いただけで、身体が期待をしてしまう。私の足を跨ぐ彼のバスローブの隙間から見える足から、上へと視線を移すと腰の辺りに盛り上がっているモノ・・に気が付き、自然と瞳が潤む。
――私でまだ・・・・欲してくれてるの、嬉しい
まだ結婚して一年にも満たないのに子供が出来て、産まれたと思ったら今回の後処理でリカルド様は不在になり不安だった。
――他の人の所へ行ったのかなって
「…何を考えてる…?」
そんな私の考えなど、リカルド様はすぐに分かってしまいのずるい。
「…リカルド様が…私を愛してくださる事が私の幸せです」
「…また、変な知識を貰ってきたな、愚息オズワルドの嫁か」
「ええ、先日いらっしゃいまして」

『私が言えた義理はないですが、公爵夫人も気をつけてくださいませ、男は着飾らない女に興味を無くすのです』

オズワルドというのは私の元婚約者でリカルド様の義息だ。オズワルドの嫁は結婚式の時に現れた身籠っていた女性で、私がリチャードを出産する半年ほど前にはもう女の子を出産していたはずだ。あの時言われた言葉は、心の中にずっとある。思い当たる節が沢山あるのだ。悪阻で花の香水も身体が受け付けなくなったし、リチャードを抱っこしたくて柔らかな肌を傷つけたくなくてシンプルな装いも増えた。彼は変わらず愛していると言ってくれるが、それがいつまで続くのかなんて誰にも分からない。
いつも愛おしい眼差しで見つめてくれ愛の言葉もいただくのに、疑心暗鬼になるのはただ寂しいからだと思う。この数ヶ月は目まぐるしく過ごしていて、2人の時間がちゃんと取れていないから。
「アリーの優しいところは素敵だと思う…だが、私の方が仕事に手もつかないくらい不安だよ」
「リカルド様が…不安に…?どうしてですか?」
私の顔の横に腕をつけたリカルド様を、私は手を伸ばして首に巻きつけた。リカルド様の鼻先が重なり唇の先が触れる。
「君は自分がどれほど美しいのか全く理解出来ていないようだ」
「…そんな事…リカルド様だってどんなに素敵なのか全く分かっていませんわ」
「アリー」
「リカルド様はとても格好よくて紳士で、他の方がリカルド様を慕っていたかもと思うとイヤですわっ…それに私を愛してっ、んっ、っ」
リカルド様の良さを口に出していく内に、こんな素敵な方と過去何にもなかったなんてありえない事だ。軽い嫉妬を吐き出してしまうと、口を塞がれ熱い舌が私の口内を暴れた。
「…っ、君だけだ…こんなに私を夢中にさせるのは」
はぁっと、彼の息が私の口元にかかり、キスの余韻で頭が良く回らない。
「…だって…っ今日来るって知っていたらっもっと着飾ってお待ちしてましたわっ」
「アリー、君がリチャード息子のためを思っているのを知っているし…何にも着飾らない君も美しくていつまでも見ていたいんだよ」
「リカルド様」
「アリー、私の華よ」
私の額にある髪を後ろへとやりながら、彼の手のひらが私の頭を撫でる。その言葉を聞けて、単純な私は舞い上がってしまう。
「嬉しい…ですっ、私…お仕事をしているリカルド様も好きなのにっ、邪な気持ちが邪魔をしてっ…」
「ああ、すまなかった…今度はこんな事が起きないようにするさ…ほら」
一瞬だけ彼の眼差しが鋭くなった気がしたが、すぐにいつものように優しい眼差しで私を見つめた。
「なん…ぁっ…っ」
どうしたのか聞こうと思ったが、リカルド様の腰が私のお腹に当たり、固くなったモノを押し付けられると、落ち着いてしまったら快感を呼び覚まされた。
「私のためにこの夜着を…?」
「…はい…リカルド様のために」
低く艶のある声で耳元で囁かれて、全身の力が抜けてしまう。私の乳房を下から救うように持ち上げ揉んでいくと、柔らかな乳房は簡単に形を変えていく。首筋や鎖骨に舌を這わし、強く吸われるとチリッとした痛みを感じて赤い印が残る。レースの上からトップの粒を蝶の刺繍ごと摘まれ、背がのけぞる。固くなった粒を丁寧にこねられ、リカルド様の口の中へと消えた。ちゅうちゅうと吸われ、じんわりと熱くなる乳房。それからハッとして彼の肩を押すと、リカルド様の眉がおやっ、と片方上がった。
「あ‥違うんです…嫌とかじゃなくて…その、リチャードにお乳をあげてるので…その」
まだ生後2ヶ月しか経っていないから母乳が出て、リチャードにも頻度は少なくなったけどまだ母乳をあげているのだ。
「そうか、なら元は私のものなのだから、別にいいだろう」
そう言ってリカルド様は、私の肩紐をズラし腕を通して脱がすと、下におろして私のブラスリップを胸から解放した。
プルプルと揺れる乳房にリカルド様は満足気に微笑み、今度は直接乳房に顔を近づけてトップにある粒を口に含むと強く吸い付いた。彼の頭を抱きしめると、粒の周りに舌を這わし愛撫を続ける。快感により無意識にもぞもぞと下半身が動くと、それに気がついたリカルド様は私の足首を掴み曲げて、彼の固くなった昂りが下着にくっつけた。彼の頭を抱きしめていた手を解いて、リカルド様の腰にあるバスローブの紐を解き肩からバスローブを脱がしていく。すると私の腰にあったとブラスリップも下着も脱がされ、お互い産まれたままの姿となり重なった。
「アリー、私の愛しの華よ」
「リカルド様…愛してますわ」
一度軽く唇が重なった後、起き上がったリカルド様は私の両足を曲げた。彼の眼下に晒された下半身に躊躇なく顔を近づけたリカルド様は、下生えに舌を這わした。
「んっ、っん」
がっちりと両足を掴まれ動かせない下半身に、リカルド様の舌は蜜口の縁をぐるりと舐めて、そのまま蜜壺の中へと入った。口の前に手を置いて快感に耐えていたが、リカルド様の鼻と口が私の下生えに埋まったのを見て、急に恥ずかしくなって足がパタパタと動いてしまった。
「ん、ぁっ、リカルドさっ…まっ、ぁ」
彼の肩に足を置くと、リカルド様が蜜口に口をぴったりとくっつけて、ちゅうと蜜を啜り舌が蜜口を広げた。
「んんっ!」
軽く達すると、息が上がり肩で息をする。休むことなく蜜壺に指を入れられると、溢れた蜜が潤滑油の役割を果たして、リカルド様の日本の指を飲み込む。パラパラと指を動かし、指先を曲げたりし始めて久しぶりの感覚にもうギブアップをしてしまいそうになる。
「はっ…ぁっ、ん…はぁっ」
指だけかと思っていたが、リカルド様が溢れる蜜を啜るもんだから、波のように押し寄せる快感に全身が痺れていく。
「リカルド様っ、もうっ、んぅっ、んっ」
これ以上攻められたらおかしくなりそうで、彼の頭を私の下半身から離れるように押すと、リカルド様が顔を上げた。
「アリー」
ゆっくりと起き上がり、太くそそり立つ昂りを私の下生えの上に添えると、数回擦り付けた。私の片足を抱えたまま、昂りを握り私の蜜口にくっつけて腰を進めた。ミチミチと蜜口がいっぱいになり、彼のものを包む。
「あっ…ぁ、あぁぁっ」
「ぐっ、つ」
蜜により滑らかにズズッと一気に貫かれ、チカチカと光り目の前が真っ白な世界となった。ぎゅぅぅっと、蜜壺の中にある昂りを締め付けると、熱い飛沫を注がれた。ドクンドクンと注がれた証が蜜壺を満たすのを頭の隅で感じ取り、意識が戻った。
「ん、っん、ん」
ぴたりと重なった下半身を離すことなく、啄むキスから舌を絡めるキスへと移り、足を上げてリカルド様の腰に巻きつけると、新たな快感が生まれた。
「…愛してます」
「私もだ…アリー、愛している」
手のひらを重ねて指先を絡めると、リカルド様の抽送が始まった。


夕飯も食べずに求められて、気を失うように眠っても揺すられて起こされては甘い声が寝室に響いた。久しぶりの逢瀬は思いの外燃え上がってしまい、気がついたら次の日の朝となっていた。彼の腕の中で起きると、戯れ合いそのままもう一度繋がった。
やっとリカルド様がベッドから降りた時にはお昼になっていて、立ち上がれない私のために軽食をベッドに持ってきて私の口元へと運んだ。
「しばらく休むといい、少しファルと話す」
そう言って私の頭を撫でた彼に促されるまま、瞳を閉じるとあっという間に夢の世界へと入った。




***************



「…オズワルドの嫁が来たみたいだな、警備はどうなってる」
刺すような眼差しと冷えた声に、主寝室から遠い食堂に集められた警備隊と執事は若干顔色を青くして背筋をピンと伸ばして立っていた。
「こちらとしても門前で阻止していたのですが、たまたま庭園で散歩をしていた奥様が騒ぎに気がつきまして」
「そうか、なら今後は門前に庭園に声が届かないように、もう一つの門を作ろう」
奥様を傷つけた義息の嫁の行動に酷く苛ついた声を隠そうとしないご主人様に、食堂には緊張感が漂う。
「…それよりも、奥様へのケアが優先されるべきです、産後は色々と不安定になるようですので、しばらくはお側にいた方が宜しいかと思います」
そこに助け舟を出すのが、侍女長のメリッサだ。
「不安定…しかし、長くは領地を離れられんし」
彼女のそばに居たいのに、再建が優先されているこの状況で長らく離れる事は出来ないのだ。
「…僭越ながら、旦那様、領地の中心の場所に別宅の建築をしてはどうでしょう」
「…別宅…そうか、それがいい!よくやったファル、今すぐ業者を呼んでこい」
「…かしこまりました」
素晴らしい提案をされ不機嫌だったリカルドは、途端に上機嫌となり新たな新居を建てる事をすぐに承諾した。


嫁のケアのため、といいながら、領地の中心地にあるホテルへと新居が出来るまで住まわせ、リカルドは半日に一度は足繁く通った。
そして数ヶ月後に出来た新居は国一番の最新防犯設備が敷かれ、後に蟻も侵入不可能な建物として新たな観光名所となったのだった。
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