上 下
2 / 4

リクエスト 結婚式のその後 花嫁と義父

しおりを挟む
柔らかな綿毛に包まれているように、心地よい気持ちになる。男爵家の自室のベッドではないと思ったが、そうするとひとつの疑問が浮上する意識の中現れた。
――私は一体どこで眠ったの…?
ゆっくりと瞼を開けると、真っ白な枕とシーツが目に入った。腕を伸ばすといつもの寝衣を着ていない腕に、点々とした赤い印がついている。
――すごく…疲れた…それに…なんか身体が重い
今まで感じた事のない倦怠感と疲労感と、下半身に何か挟まっている感覚がする。起き上がるとシーツが捲れて、何にも身につけていない身体が見えそうになり、右腕でシーツを直した。
辺りを見渡すと、沢山の真っ赤な薔薇が円形になって纏まってベッドの側で宙に浮いていた。
「…っ!!」
驚いていると薔薇の花束が横に動き、まず金色の髪が見えた。そこから日に焼けた肌と、凛々しい眉が目に入った所で昨日の事を――目の前にいる男性が誰だか思い出した。

リカルド・ベネット公爵家当主――私の義父になる予定だった年上の男性。結婚式当日に夫となるはずだった、リカルド様の息子オズワルドは、私――アリス・マーフィーと結婚出来ないと声高々に宣言し、彼の子を身籠る女性と逃げてしまった。これからどうしようかと、マーフィー男爵家――つまり、私の家族が対応に追われている中、彼に愛の告白をされ、婚約期間過ごした日々を思い出し、彼への愛に気がついた。そのまま熱い時間を過ごしたのはいいけれど、気がついたら結婚式を挙げていた教会から彼の屋敷にいた。彼からの愛の言葉にまた夢中になってしまい、愛し合った所までは覚えているんだけど…

「ベネット公爵…様」
「おはよう、我が華、アリス嬢よ」
落ち着いた重低音の声、一目で上質だと分かる紺色のスーツと、私の瞳の色の様な碧色のネクタイ姿で、私のいるベッドのそばで膝を立てて忠誠を誓う騎士のように跪いている。
「我が華、アリス・マーフィー男爵令嬢、世界中の誰よりも幸せに、世界中の誰よりも君だけを愛する事を誓わせてくれないか、永遠の愛を貴方に…私に独り占めさせてくれ」
「っ…ベネット公爵様」
シーツを胸元に抱いている生まれたままの姿の男爵令嬢に、真剣な眼差しで私に愛を乞う姿に胸が熱くなる。
手を伸ばすと、彼の持つ赤い薔薇の花束を渡される。そのまま跪いていたリカルド様は、立ち上がり私のいるベッドへと腰掛けた。うっとりと美しい薔薇の花束を見ている私を、彼の手が上がり私の銀色の長い髪を耳に掛けた。頬に触れた彼の指先に気が付き、顔を上げると目を細め愛おしいモノを見る眼差しで私を見つめていて、頬が赤くなる。
「ベネット公爵様」
声を出すと、先ほどは気が付かなかったが、私の声が掠れていた。私の声の変化に気がついたリカルド様は、フッと優しく笑う。
「…昨日のように、リカルドとは言ってくれないのかい?」
そう言って私の頬から顎のラインを指先をなぞった。
「…リカルド様、そのっ」
真っ赤になった私を見て、くすくすと笑うリカルド様にムッとしてしまうが、結局私も可笑しくなってきてしまって笑ってしまう。
「アリー、プロポーズの返事を貰ってもいいかい?」
薔薇の花束ごと私を軽く抱きしめ、額にこめかみに口づけを落とす低く甘い声にもう抗えずにいた。
「はい、私もリカルド様の愛を独り占めしたいです」
視線を上げてリカルド様を見ると、嬉しそうに目を細めて、
「一生を懸けて君を愛し、幸せにすると誓う」
もう一度リカルド様の顔が私の顔に近づき、自然と瞼が落ちると唇に彼の唇の感触を感じた。薄く口を開けると、厚い舌が私の口内に入り、内頬から動き出した彼の舌が私の口内全体へと移っていく。
「ンッ…ンッ」
昨日覚えたばかりの深い口づけに夢中で応えていると、ちゅぅ、と名残惜しく彼の口が私から離れた。
「これ以上したら止まらなくなる」
額を合わせたまま、そう言ったリカルド様は私の鼻先にも口づけを落とした。
――止まらなくてもいいのに
そう思っていたのに、

トントントントン

と、寝室の扉をノックする音が聞こえた。
自分が何も着ていないのを思い出して、花束を持つ手に力が入ると、それに気がついたリカルド様は私の二の腕を摩って安心するように落ち着かせてくれる。
「大丈夫だ……入れ」
「失礼します…おはようございます、ご主人様、アリス様」
入ってきたのは、この屋敷の侍女長のメリッサさんだ。彼女は私が毎回オズワルドに会うために屋敷にくると、綺麗に着替えさせてくれたり、私のお世話をしてくれて――もちろん最初は断っていたのだが、いずれお嫁にきますので、と言われたので、彼女の好意に甘える事にしたのだ。

私が何も身につけておらずシーツで隠した身体と花束を抱いた姿を見て、まぁ、と目を見開いた。
「ご主人様、いくらご主人様の奥方になるとはいえ、結婚前にアリス様の立場も考えなくてはいけません」
私に言っているのかと思ったが、メリッサさんはリカルド様の方へ視線を向けていた。そして少しだけ眉を寄せて怒っていて、ささっこちらへと、私を呼んだ。
「…行っておいで、また後で」
私の身体にシーツを巻き直した彼は、即席のドレスを作った。足を床に付けると、足に力が入らなくて、ぺたんと床にお尻がついてしまった。
「まぁまぁ」
「大丈夫か」
驚くメリッサさんと、私のそばに膝をついたリカルド様は、私をお姫様抱っこで持ち上げた。
「…すみません」
彼のスーツの胸元に手を添えて、頭を肩に乗せれば、満足したように微笑むリカルド様。
「私がしたいだけだから」
彼の顔が近くにあるせいか、一言一言彼が喋るたびに私の耳に直接呟きが聞こえ、低い声が私の全身を包み込んだ。




***************



アリスをベネット公爵家、侍女長のメリッサに任せている間に、アリスとの朝食兼昼食を摂るため先に執務室へと向かった。
「オズワルドがこの屋敷に近寄らないように、ベネット領の別宅でしばらく謹慎するように伝えといてくれ」
「かしこまりました、ご主人様…それと、マーフィー男爵から今回の騒動の抗議とアリス様を家へと連れて帰りたいとの手紙が届いております」
息子への指示を出した後、この屋敷に長年勤めている執事長のフォルから屋敷に届いた手紙の報告を受けた。手渡された手紙をさっと目を通しながら、随分と早い対応だと思ったが、娘想いのマーフィー男爵家の家族を思い出して納得した。あの美しい娘だ、公爵家への嫁ぎ先では最高の条件だったが、オズワルドという最低の評判がある息子の元へ嫁がせるのを不安視していたマーフィー男爵家は、何度か私宛に婚約の見直しの願いの手紙を送ってきたが、すでにアリーに心を奪われていた私は彼らの願いを丁重にお断りし実質一蹴していた。
「ふんっ、随分早いものだ、マーフィー男爵へは結婚仕度金を慰謝料代わりに返金と、その倍の金額をベネット公爵に嫁ぐ新たな結婚準備金をマーフィー男爵に手配をしてくれ」
こちらから婚姻の打診をしたので、マーフィー男爵家には前もって嫁いでくる彼女への結婚仕度金を――という名の、お金を払うから娘を寄越せの貴族界の暗黙の了解――支払って尚且つ、今回はベネット公爵家こっちの失態なので、慰謝料の項目で返金不要の処置とする事にした。
もちろん、彼女を手放すつもりもないので、結婚仕度金の倍額を支払えば上手く収まるだろう。
――なんせ、私の愛おしい人アリーが手に入るんだ、結婚仕度金の倍の金額など安い物だ
それに、貴族界でもオズワルド息子本人の評判は最低でも、それ以外は評判の良いベネット公爵家に嫁ぐ事は、大変名誉な事であり、将来安泰を約束する。
息子、と言っても、跡継ぎがーと、うるさい親族から養子縁組したので、血のつながりは辛うじてあるが、オズワルドにベネット公爵の当主を譲るつもりはない。
これはベネット親族会議で決まった事で、私の一存だけでは流石に後継者を決めるのは困難だからだ。貴族界に君臨するベネット公爵家の醜聞一つで、地に堕ちる可能性もあるからだ。
とてもじゃないが次期公爵となるには、器も小さく評判が悪いオズワルドには、騒動が収まるまで――もしくは、彼女との結婚が終わるまでは、しばらく謹慎をしてもらいたい。
「そうだ、先ほどアリーに渡した赤い薔薇の花束は最高だった、とても喜んでいたよ」
目覚めた時の彼女の顔、声、私の者である証が身体中についている無数の赤い所有印、そして花束を受け取り嬉しそうに笑う姿を見て、まるで女神のようだと、そのままベッドへと戻りたくなったが、空気を読まない侍女長に邪魔をされてしまったが。
「…勿体なきお言葉感謝いたします」
頭を下げたフォルは、早い段階で私の花嫁になるのを見越してか、公爵家の女主人の在り方を教えていたので、彼女と過ごす時間が私よりも長く、趣味嗜好も把握していた。

その後の大小のベネット領の報告も受けた後、執事長の下で働く者からアリーの支度も終わりそうだと連絡があったので、彼女を迎えに行く事にした。



***************


「…今日も身体が辛いはずだから、泊まって行きなさい…ちゃんとマーフィー男爵家には伝えてあるから」
時折見つめ合っては2人の世界に入る穏やかな食事会も済むと、リカルド様から食後のお茶会へと誘われ、エスコートをされながら庭園を散歩した。結婚前に行っていたお茶会の場所の手前にあるベンチに到着して並んで座ると、他愛のない話の後に私はそう告げられた。
「…ですが…父にも母にも…兄にも迷惑をかけてしまいましたし」
やはり2日連続の外泊はいくらなんでもダメだろう、と言うと、リカルド様の眉が下がり悲しそうな顔をしてしまう。
「…そうだよね、結婚を受け入れてくれたとは言え、婚前のアリーを独り占めしては、いけないね」
寂しそうな表情と落ち込んだ声で、もう結婚生活が楽しみたくて…はしゃいでしまった、と言われたら、なんだか悪い事をしてしまったと、罪悪感に苛まれる。
「…いえっ、私もっ、凄く楽しみですっ…それに…それに…リカルド様のお側を少しでも離れるのが…悲しいです」
エスコートされた時のまま掴んでいた彼の左腕に、自分の左手を添えて彼を見上げた。
「…なら、もうココに住んでみようか…荷物も昨日から運ばれているし、アリーの身ひとつで済むはずだ…もう一度結婚式を挙げて…マーフィー男爵には公爵家への嫁ぐ勉強を、とか言って…そうだな、一度マーフィー男爵に打診しよう」
急に早口になりぶつぶつと、彼の言葉が聞き取れなくなってしまう。それでも、リカルド様の言葉を辛抱強く待っていると、結論が出たのかリカルド様は、にこやかに微笑んで私を見つめ返してくれる。
「…やはり、今日は泊まっていって欲しい、今日以降はまた明日にでも」
低くツヤのある声でそう言われたら、まるで2人きりで愛し合った時のようで、ぽぽっと頬が赤くなってしまい、私はコクコクと頷く事しか出来なくなってしまった。




「ああ…美しい、私の花嫁アリー
私の頬を撫でるリカルド様の声は優しく、低く掠れている。
ベッドの上に座ったバスローブ姿の彼の横で足を崩して座る私。お風呂に入り、メリッサの手によって磨き上げられたアリスの身体は美しく、男を知った醸し出す雰囲気は妖艶で、銀色の髪が薄暗い寝室のランプで妖精が現れたかのように幻想的だ。真っ白なレースの夜着を羽織り布の面積の少ない白い下着は、オズワルドとの初夜のために準備されていたのだろうか…真っ白なレースと白い肌、レース越しに見える赤い所有印、夜着から出る首元や生足には執拗に付けられている赤い印。
自分が付けた赤い印を満足気に、丁寧にひとつずつ指先で触っていたのに、いつの間にか彼の手が私の身体を弄り始めていた。敏感となった身体は、火照り白い肌を桃色へと変化させている。その姿は酷くリカルドを煽っている事に気がつかないアリスは、甘い吐息を吐いて濡れた瞳でこれからを期待してしまっていた。
「リカルド様…愛してます」
昨日気がついたばかりの気持ちは、時間が過ぎるごとに大きくなっていて、両思いだと知ってしまったら、もう気持ちを抑える事が出来なくなっていた。端たないと思われるかもしれないけど、彼の足に手を添えて少し膝を立てれば、彼の頬に触れるだけの口づけをした。
「私もだよ、アリー…愛している」
目を細め嬉しそうに返事をくれるリカルド様に、胸がぽかぽかと温かくなり心が満たされていく。
――彼となら、きっと…
マーフィー男爵家の父と母みたいに相思相愛の家庭に憧れていた私は、オズワルドとの結婚生活を不安に思っていたが、彼の眼差しが偽りだとは思えなかった。
私のレースの羽織りの紐を解き彼の手で脱がされると、面積の少ない下着の生まれたままの姿に近い私が、バスローブ姿の彼の前に座る。
少し膝を立てた時に足の間に出来た隙間に、彼の大きな手のひらが入る。内腿を摘み揉みながら、徐々に下着へと上がるリカルド様の手。見つめていた視線を断腸の想いで瞼を閉じると、彼のカサついた唇が私の唇に当たった。
重なっていただけだった唇のラインを、薄く口を開けたリカルド様の舌が私の唇をなぞると、自然と唇が開き彼の舌を口内へと受け入れた。私の舌を甘噛みされたり、強く吸ったりするリカルド様の口づけに、身体に力が入らなくなって蕩けてしまう。彼の足の上に置いた手はそのままに、胸板のバスローブに身体を預けた。背後に回った彼の手が私の腰を掴むと、もう片方の手も腰を掴み私の身体を容易く持ち上げ、彼の足の間に座らされ背後から抱きしめられた。
「…リカルド…様…あっ」
背後を振り返り見上げると、彼の唇で口を塞がれ、荒々しく貪られる。彼の肩に頭を預け、拙いながらも一生懸命に彼の口づけに応えていると、私の腰にあった彼の手が腰から離れ、太ももの裏に添えられ足を曲げて持ち上げられた。
膝頭を撫でながら足を開かせられ、リカルド様の指先が内腿から下着へと触れた。下着越しにゆっくりと足の間の股を揉まれ、彼の右手の指先が蜜口付近に食い込む。リカルド様は人差し指で下着に指を差し込むと、下着と蜜口に出来た隙間から彼の指が忍び込み、一気に2本の指が蜜壺へと入っていった。
「あっ、アッ…んぁっ」
遠慮なく彼の指が蜜壺を出し入れし、ぐちゅぐちゅっと、音を立てながら溢れた蜜を掻き出していく。
「気持ちいいかい?」
私の耳朶を甘噛みし、耳の中までも舌を這わせながら囁くリカルド様の声に快感でいっぱいになっていく。
蜜壺に入っている方の彼の腕を掴み、お尻が浮くと、彼の指先を追いかけて腰が揺れる。
「気持ち…っですっ、あ、あっ…んっぁあ、っ」
昨日教えられたのは、気持ちいい事を素直に認める事。愛し合う神聖な行為だから、乱れた姿を恥ずかしがらず、気持ちのいい所を素直に告げる事。そのため私はもう無意識のうちに、気持ちの良いと感じる場所へ身体を寄せるし、声も我慢しない。それがリカルド様の願いでもあるから。
リカルド様の大きな左手が私の左の乳房を下着越しに掴むと、揉み始めた。揉む時に彼の指の隙間から溢れた乳房がもっこりと盛り上がる。バストトップを隠す布を少しだけズラすと、ツンと上を向く固くなった粒が露わになり、リカルド様は執拗に摘みこねる。リズムカルに乳房を揉まれ、同時に下半身の蜜壺は突き刺すように激しく責められている。
「あっあっ、うっ、んんっ、あっ、い…くっ!イクのっ…っっ」
ぐいぐいと蜜壺の最奥に届きそうなほど、彼の右手2本の指の付け根まで埋まると、ぎゅうぎゅうに蜜壺を締め付け、足の先が丸まり絶頂へと達した。
はぁはぁ、と荒い呼吸が収まらず、ぼぅとしていた視界がクリアになっていく。脇の下に彼の両手が置かれ持ち上げられ、力の入らない身体は、前へと倒れそうになり咄嗟に手が出た。四つん這いになった所で、ギシッとベッドが軋むとハッと我に返った。
「あっ、リカルドさまっぁっ、ンンッ」
彼にお尻を突き出している格好だと気が付き、慌てて起き上がろうとするも、彼の手が私のお尻を撫でてながら、片膝をついた。彼のお尻の愛撫で力が抜けると、下半身に当たる熱い昂りに気がつき、まだ終わりじゃなかったと気がついた。
「リカルド様っ」
「っ…アリー」
お尻を突き出した私の下着の紐を解きながらも、ゆっくり腰を進めるリカルド様。ヌチャッと粘音とともに少しだけ収まっていた快感が蘇る。
「あっ…あぁ」
頭を上げて背がのけぞると、彼の腰にお尻を押しつけて結合が深くなっていく。
「アリー、っ…っ」
ズズッと入っていく快感を引き寄せる昂りから逃げられず、腰を揺らすと蜜壺の内側を彼の昂りがゴリゴリと当たり、ぎゅうぎゅうと昂りを締め付けてしまう。
私のふくらはぎの横で両膝をついたリカルド様は、四つん這いになっている私の両腕を取ると、繋がったまま私は起き上がった。
彼の逞しい胸板を背中に感じると、繋がったまま彼は私の中途半端にズレた下着から零れた乳房を下から掬うように揉み始め、満足したら私のくびれ、お腹、腰を揉みながら手全体で触れながら移動させ、また乳房へと戻った。
前へ倒れてしまわないように、右腕を上げ彼の首の後ろへと手を置くと、口を塞がれ舌の絡む深いキスをした。
「んっ、んんっ…あ、あ、あ」
彼の首に回した手を外され、両腕を掴まれて抽送が始まった。
「ぐっ…っ、っ」
ぱんぱんとぶつかる肌の音が激しくなるにつれ、お互いの息も上がっていく。ギシッギシッと激しくなるベッドの軋む音、甘い喘ぎ声と低く苦しそうな声、早くなる抽送と結合部から水音が大きくなっていく。
「あっ、リカルドっさ、まっ…またっ…イクッ、イクっ」
「ああっ!イッてくれっ、アリーッ…っぐっ」
高ぶった2人の声が重なり、私のお尻にパンッとひと突きが重い衝撃を与えると、上を向いた私は背後にいる彼の背中に背を預けた。
両腕を離した彼の手は私の腰を掴み、背後から彼の腰を押し付けられた。蜜壺の中へ注がれた熱い証を感じ一滴も零さないように、私の蜜壺が彼の昂りを、ぎゅぅぅっと締め付けて離さなかった。

「ん…零れちゃう」
目の前にあるリカルド様の喉仏をペロッと無意識に舐めたら、太ももに伝う熱い液体を感じた。
「ああ…もったいないな」
そう言った彼の手で、また全身への愛撫が始まった。繋がったままベッドへと上半身をつけると、片足を上げられうつ伏せから仰向けに変わる。
「美しい、愛おしいアリー」
ズレた下着が乳房の下を支えてピンクの粒がピンと立ち、身体中にある赤い所有印だらけの身体を見下ろされた。
一瞬たりとも私から視線を逸らさず、眉を寄せたリカルド様の熱い眼差しを一身に受け、蜜壺がきゅんと反応する。
「リカルド様」
甘えた声を出し彼に向かって腕を上げると彼は屈み、私の顔の横に腕をついた。足を上げ彼の腰に足を巻き付け、両手で彼の首に回すと、固さを取り戻した昂りの抽送が始まった。
口を塞がれ舌を絡めながら、ぴたりと1ミリも離れないように密着してお互いを求める夜は、まだ始まったばかりだった。



***************



「父上っ!謹慎なんてっ!あんま…り……君…は?」
2人の結婚が認められたとある日に、執務室で仕事をするリカルド様を見つめながら、お茶と小さな靴下の編み物をしていた所に、なんの前触れもなくドタバタと煩い足音と使用人たちの静止する声と、派手な音を立てながらお腹が太鼓のように大きな男が入ってきた。
扉から近くにある私を見て、急にぼぼっと赤くなった顔をしたのは、私の婚約者だったリカルド様の義息のオズワルドだ。
「…ノックぐらいしたらどうだ」
窓際の執務机で仕事をしていたリカルド様は不機嫌な声を隠そうともせず、立ち上がると私の視界を遮るように、私とオズワルとの間に立った。
「こっ…この方はッ…誰ですかっ?」
リカルド様の不機嫌など気がつかないのか、背後にいる私の事を聞くオズワルドは歩き出して私の前まで来て、ソファーに座る私の前で片膝をついた。
「…美しい御令嬢、私にお名前を教えてくださいませんか」
今にも私の手を取りそうな雰囲気に、私はドン引きをしてしまい腰が引ける。
「…私の妻になる、アリス・マーフィー男爵令嬢だ」
今まで聞いた事のない低く獰猛な声のリカルド様は、私の隣に座り私を抱き上げ、彼の足の上に横抱きで乗せられた。
「…アリス…マーフィー…えっ…まさか…」
驚きで目を見張るオズワルドは、だんだんと顔が真っ青になっていく。
「ああ、お前が結婚式で・・・・・・・ヘンリーと生きる・・・・・・・・から結婚出来ないと言った婚約者だった人だよ」
彼の腕の中に収まり、彼の匂いに包まれて全身の力が抜けて彼に身体を預けた。
「…どういう事ですかっ!」
ぷるぷると震え、先ほどとは違う意味で顔を真っ赤にしたオズワルドは、何やら怒っている。
「どういう事も何も…婚約者が訪れるって日に何故か息子が不在にす・・・・・・・・・・から、一人きりの彼女の相手をしていくうちに、お互い惹かれたのだ」
私の足を撫でながら、そう言うリカルド様の視線は優しく私を見つめる。私も幸せな気持ちになり、嬉しくて笑顔を見せると、メリッサさんやフォルさんからいつも揶揄われている2人の世界に入る。
「なっ…まさかっ!父上っ!」
急に大きな声で抗議をするオズワルドにびっくりしてしまうと、自分から視線が離れた事に気に食わないリカルド様が不機嫌そうに口を開いた。
「…オズワルド、悪いが大きな声を出さないでもらえるか…妻が…アリーが今身重なんだ…君の大事なヘンリー・・・・・・・・・の時のように・・・・・・
ギロッと睨む恐ろしい瞳は、アリスを抱き寄せているために、彼女は気がつかない。
「…なっ!」
この時になって初めて、オズワルドは婚約の時から仕組まれた事に気がついた。
「分かったら、席を外してくれ…フォル」
「…申し訳ありません、ご主人様、ただいま」
予定よりも早く来た招かざる客――青ざめて固まるオズワルドを退出する様に、執事長にしか分からない不機嫌になったリカルドはそう告げた。
「待ってくださいっ!ぼっ…ぼく…ッ!」
アリスの美しさを目の当たりにして、諦め悪く足掻くオズワルドを執事長と護衛鍛錬している使用人達が、執務室から追い出すと、騒がしかった執務室がやっと静かになった。
「…リカルド様」
不安そうに揺れる瞳を安心させるように、少しだけ膨らむ2人の子供がいる彼女のお腹を摩り、彼女の頬に唇を寄せた。
「ああ、大丈夫だよ…赤ちゃんに悪いからあんまり心配しないように」
はい、と夫となるリカルドから毎日愛され、母になって更に美しくなった彼女を抱き寄せながらリカルドは、突然やって来て愛しのアリーを怖がらせたオズワルドに、どんな罰を与えようか、と渦巻く怒りを抑えていたのだった。


オズワルドの訪問後、先に籍を入れベネット公爵家にやってきた花嫁だった、アリス・マーフィーは、一躍息子から当主へと結婚相手を変えた事で社交場で話題となったが、公の場に出たのは随分と後だった。
リカルド・ベネット公爵と使用人達に愛された花嫁は、生まれた子供と共に末永く幸せに暮らしたとさ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

万能神は自由人‼︎!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

女子大生、ゾンビだらけの世界で兄に犯される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:24

【続編 ほかに相手がいるのに】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:80

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

恋愛 / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:2,755

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:1,211

処理中です...