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婚約
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「アクア様…いえ、光のクリスタルの守護者…私娘にこのような酷い事をした人物は…このアールスライト王国の国王です」
ひゅっと息を飲む私を、アクアは満足した解答を貰え嬉しそうだ。
「気がついたのね、アールスライト王国の国王だと」
ウサギの耳をピクピク動かし、喜びを表現するアクア。
「ええ、ですが、気がついたのは先日の成人の儀での、国王へのミカドの態度にヒントを得ました」
父は彼アクアのそばに寄ると、片膝をついた。
「アクア様…というのですね、前当主も…遡ると未だかつて誰も貴方様の名も知る事はありませんでした」
恭しく頭を下げる現当主に、そんな姿を見たこともないゼンも私も驚いた。
「そうね、私は人前に出る事はなかったわ…ミカドが私の部屋に現れるまでは」
アクアは私を見ると、ウィンクをした。
「もう犯人が分かっているなら、私は帰るわ…もう守護者の部屋に入り込んだらダメよ…ミカド」
そう言うと、アクアの身体はキラキラと金色に輝き光の粒が彼女の身体から出るとそのまま閃光に包まれ消えてしまった。
「…消えた」
呆然とする私に、父はソファーに座っていたアクアがいなくなった事に、肩を落とし苦笑した。
「やはり伝承は当てにならないな、私は父から髭を生やした老人と聞いていたよ」
立ち上がり、ソファーに腰掛けるとアクアみたいに足を組んだ。
「先程も言ったように、犯人は判った…それはこちらで対処をするから、いいとして…結婚するって?」
にっこり笑う父の纏うオーラは、とってもとっても暗くて、思わずうしろへと背が動くとゼンの胸板に当たった。
背後から腕が伸び、彼の膝の上を横に座った腰と太ももに大きな手のひらが乗る。
「ですから、その偉大な光のクリスタルのアクアという少女が証人です」
彼の手が私の足に触れるのを見る父のこめかみがピクピクと動き、口もヒクヒクとしている気がした。
「お父様、勝手に決めてしまって申し訳ありませんっですが、私…私彼の…クルシュペル騎士団長様の事をその…お慕いしております」
ーーお慕いしておりますだってぇっ
ボボッと赤くなる顔を両手で挟み、キャーキャーッと1人はしゃぐ。
娘の幸せを願っていたが、こんな男にじゃないと悲痛な顔をする父と、私の反応に満足そうに目を細めるゼンの事を私は気が付かなかった。
「はぁ…ミカドは本当にいいのか」
意思が固いと諦めた父は、最終確認をしてくる。
「…はい」
コクンと頷くと、父は項垂れた。
「…そうか…この話はまた後日」
そう言った父は、居残ろうとするゼンを連れ出してしまうと、部屋に残ったのは私とマチだけになった。
「…なんだったのかしら」
どっと押し寄せた疲れに、ソファーの背に身体をもたれた。
「お嬢様、そろそろお休みになられますか」
マチの言葉に、怒涛の時間が終わりを告げたのだった。
ひゅっと息を飲む私を、アクアは満足した解答を貰え嬉しそうだ。
「気がついたのね、アールスライト王国の国王だと」
ウサギの耳をピクピク動かし、喜びを表現するアクア。
「ええ、ですが、気がついたのは先日の成人の儀での、国王へのミカドの態度にヒントを得ました」
父は彼アクアのそばに寄ると、片膝をついた。
「アクア様…というのですね、前当主も…遡ると未だかつて誰も貴方様の名も知る事はありませんでした」
恭しく頭を下げる現当主に、そんな姿を見たこともないゼンも私も驚いた。
「そうね、私は人前に出る事はなかったわ…ミカドが私の部屋に現れるまでは」
アクアは私を見ると、ウィンクをした。
「もう犯人が分かっているなら、私は帰るわ…もう守護者の部屋に入り込んだらダメよ…ミカド」
そう言うと、アクアの身体はキラキラと金色に輝き光の粒が彼女の身体から出るとそのまま閃光に包まれ消えてしまった。
「…消えた」
呆然とする私に、父はソファーに座っていたアクアがいなくなった事に、肩を落とし苦笑した。
「やはり伝承は当てにならないな、私は父から髭を生やした老人と聞いていたよ」
立ち上がり、ソファーに腰掛けるとアクアみたいに足を組んだ。
「先程も言ったように、犯人は判った…それはこちらで対処をするから、いいとして…結婚するって?」
にっこり笑う父の纏うオーラは、とってもとっても暗くて、思わずうしろへと背が動くとゼンの胸板に当たった。
背後から腕が伸び、彼の膝の上を横に座った腰と太ももに大きな手のひらが乗る。
「ですから、その偉大な光のクリスタルのアクアという少女が証人です」
彼の手が私の足に触れるのを見る父のこめかみがピクピクと動き、口もヒクヒクとしている気がした。
「お父様、勝手に決めてしまって申し訳ありませんっですが、私…私彼の…クルシュペル騎士団長様の事をその…お慕いしております」
ーーお慕いしておりますだってぇっ
ボボッと赤くなる顔を両手で挟み、キャーキャーッと1人はしゃぐ。
娘の幸せを願っていたが、こんな男にじゃないと悲痛な顔をする父と、私の反応に満足そうに目を細めるゼンの事を私は気が付かなかった。
「はぁ…ミカドは本当にいいのか」
意思が固いと諦めた父は、最終確認をしてくる。
「…はい」
コクンと頷くと、父は項垂れた。
「…そうか…この話はまた後日」
そう言った父は、居残ろうとするゼンを連れ出してしまうと、部屋に残ったのは私とマチだけになった。
「…なんだったのかしら」
どっと押し寄せた疲れに、ソファーの背に身体をもたれた。
「お嬢様、そろそろお休みになられますか」
マチの言葉に、怒涛の時間が終わりを告げたのだった。
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