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提案
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マチの入れたお茶を飲み、ホッとひと息をついた頃。
私の部屋に戻ってきたゼンは、私が座るソファーの側に立つと、
「この部屋は他の部屋と繋がってないから、何かあった時に対処出来ない、悪いが部屋の移動をお願いしてもいいだろうか」
背後に仕えるムルクも、彼のうしろで頷いている。
「…部屋の…移動ですか?」
勿論、安全上そうすべきだと思うのだが…
「何か不都合な事があるか?」
少し渋る私の様子に、どうしたのかと聞いてくる彼。
ーー彼なら、彼なら話してもいいのかもしれない
色々悩み彼に伝えようと決心して、私は彼に視線を向けた。
「ゼン…私は日中に外気に触れると、光のクリスタルのカケラに身体が反応して痛みが全身に現れます」
私のアーテラ公爵家の秘密の告白に、ゼンは目を僅かに見開いた。
「…それが…それが、あの事件で起きたアーテラ公爵家の秘密…か」
どこか納得したようなゼンは、うむ、と悩み始めた。
「…それは、この部屋に居なければいけない理由か?」
彼の呟きに、コクンと頷く。
「はい、この部屋の遮光は、完璧です…あとは、地下の図書室も…ですが」
私が入れそうな場所を提案すると、顎に手をやり考え始めるゼン。
「なら、ここが1番いいのか…では私もこちらに寝泊まりします、ソファーでも床でも」
「「?!」」
あり得ない提案に、ゼンのうしろにいるムルクやマチも驚いている。
「おっ…お言葉ですが、クルシュペル騎士団長様、お嬢様はまだ未婚の女性ですので、婚約者でない男性との密室での2人っきりの滞在は勿論、護衛のためにという理由だけでもそれを許す事は出来ません」
ムルクはゼンの背中に喋りかけ、ゼンはピクっと身体を反応させた。
「…婚約者…?婚約者がいるのかミカド」
突然私の頭上から不機嫌な声で、私を見下ろすゼン。いつの間にか側に来ていたらしい。
彼の声のする方に視線を向けると、室内の灯りで逆光になっている彼の表情まで読めないが、彼の周りに流れる空気は不穏で、拳を強く握り手の甲の血管が浮き出ていた。
「婚約者はいませんわ…そんな話も聞いた事がありません」
彼へ向けてはっきりとそう告げると、ふっと彼の力が抜けた…気がした。
「なら、何の問題がある…心配ならそこの侍女でも使用人でもこの部屋で過ごせばいい」
一歩下がったゼンは、うしろにいるムルクに告げると
「…では、一度旦那様にお聞きしなければなりません、お嬢様はアーテラ公爵の宝ですので…しばらくお待ち下さいますようお願いします」
そう早口になったムルクは一礼して部屋を出ると、この部屋に私とゼン、マチだけになった。
「…申し訳ないですわ、お父様の出張の為とはいえ…それに今まで外の警備だけで室内に護衛も必要だなんて…」
父がいた時は夜の護衛などした事なかったし、提案もされた事なかったかので、目まぐるしい変化に最早ついていけなくなっていた。
「…事情が変わったのだろう…そうだ、この下の図書室は何時間も過ごせるほど大きいのか?」
先程の私が過ごせる場所を言った所を覚えているのか、そう問いかけるゼンに、ぱあっと顔が明るくなった。
「はいっ!この屋敷の図書室は本当に素晴らしい蔵書や、大衆小説を揃えていますわっ!お父様が私のために過ごしやすいように、と家具の設置も指示してくれましたわっ!」
そうか、と優しい眼差しで私の話に耳を傾けるゼンに、この屋敷の話をムルクが部屋に入ってくるまで続けたのだった。
私の部屋に戻ってきたゼンは、私が座るソファーの側に立つと、
「この部屋は他の部屋と繋がってないから、何かあった時に対処出来ない、悪いが部屋の移動をお願いしてもいいだろうか」
背後に仕えるムルクも、彼のうしろで頷いている。
「…部屋の…移動ですか?」
勿論、安全上そうすべきだと思うのだが…
「何か不都合な事があるか?」
少し渋る私の様子に、どうしたのかと聞いてくる彼。
ーー彼なら、彼なら話してもいいのかもしれない
色々悩み彼に伝えようと決心して、私は彼に視線を向けた。
「ゼン…私は日中に外気に触れると、光のクリスタルのカケラに身体が反応して痛みが全身に現れます」
私のアーテラ公爵家の秘密の告白に、ゼンは目を僅かに見開いた。
「…それが…それが、あの事件で起きたアーテラ公爵家の秘密…か」
どこか納得したようなゼンは、うむ、と悩み始めた。
「…それは、この部屋に居なければいけない理由か?」
彼の呟きに、コクンと頷く。
「はい、この部屋の遮光は、完璧です…あとは、地下の図書室も…ですが」
私が入れそうな場所を提案すると、顎に手をやり考え始めるゼン。
「なら、ここが1番いいのか…では私もこちらに寝泊まりします、ソファーでも床でも」
「「?!」」
あり得ない提案に、ゼンのうしろにいるムルクやマチも驚いている。
「おっ…お言葉ですが、クルシュペル騎士団長様、お嬢様はまだ未婚の女性ですので、婚約者でない男性との密室での2人っきりの滞在は勿論、護衛のためにという理由だけでもそれを許す事は出来ません」
ムルクはゼンの背中に喋りかけ、ゼンはピクっと身体を反応させた。
「…婚約者…?婚約者がいるのかミカド」
突然私の頭上から不機嫌な声で、私を見下ろすゼン。いつの間にか側に来ていたらしい。
彼の声のする方に視線を向けると、室内の灯りで逆光になっている彼の表情まで読めないが、彼の周りに流れる空気は不穏で、拳を強く握り手の甲の血管が浮き出ていた。
「婚約者はいませんわ…そんな話も聞いた事がありません」
彼へ向けてはっきりとそう告げると、ふっと彼の力が抜けた…気がした。
「なら、何の問題がある…心配ならそこの侍女でも使用人でもこの部屋で過ごせばいい」
一歩下がったゼンは、うしろにいるムルクに告げると
「…では、一度旦那様にお聞きしなければなりません、お嬢様はアーテラ公爵の宝ですので…しばらくお待ち下さいますようお願いします」
そう早口になったムルクは一礼して部屋を出ると、この部屋に私とゼン、マチだけになった。
「…申し訳ないですわ、お父様の出張の為とはいえ…それに今まで外の警備だけで室内に護衛も必要だなんて…」
父がいた時は夜の護衛などした事なかったし、提案もされた事なかったかので、目まぐるしい変化に最早ついていけなくなっていた。
「…事情が変わったのだろう…そうだ、この下の図書室は何時間も過ごせるほど大きいのか?」
先程の私が過ごせる場所を言った所を覚えているのか、そう問いかけるゼンに、ぱあっと顔が明るくなった。
「はいっ!この屋敷の図書室は本当に素晴らしい蔵書や、大衆小説を揃えていますわっ!お父様が私のために過ごしやすいように、と家具の設置も指示してくれましたわっ!」
そうか、と優しい眼差しで私の話に耳を傾けるゼンに、この屋敷の話をムルクが部屋に入ってくるまで続けたのだった。
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