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国王陛下
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城の正面の入り口を潜ると、眩い大きなシャンデリアと王家の紋章が彫ってある白い柱がが数個並んでおり、床にはふかふかの赤い絨毯が敷いてあった。
ざわざわと騒がしかった中が、私と父が入った事により、ひそひそと控えめな声が聞こえ、身体中に視線が刺さる。ぎゅっと父の腕に置いた手に力が入ってしまうが、父は安心するようにと、私の手の上にポンポンと軽く叩く。
ーーそうね、怖気付いちゃダメね
視線を上げて、舞踏会のやっている広間に向かう。
部屋の壁際の中央で玉座が鎮座する広間に入ると、オーケストラによる生演奏と、壁に沿って料理が並び、白いYシャツ黒いベストと黒いズボンの給仕係が銀のお盆に飲み物を載せて、配っていた。
扇子で顔半分を隠し雑談に笑う女性、知り合いなのか話をする男性、壁側に立ち行き交う人を見る人々、ダンスをする男女、数百人の成人の儀を迎えた人々が華やかな雰囲気の中笑顔になっていた。
「ミカド、まずは国王陛下に挨拶するぞ」
ぼぅっと煌びやかな大広間に見惚れていた私は、父の声で我に返り、エスコートされるがまま玉座の方へと向かった。
十数段の赤い絨毯の階段を上り、それほど待つ事なく国王陛下の前に着くと頭を下げ、国王陛下と王妃に父が挨拶をした。
「うむ…よく来たアーテラ公爵、この娘が愛娘のミカドか」
威厳のある声にどきっとし、緊張する。
「…はい、お初にお目にかかります、ミカド・アーテラと申します」
顔を上げる許可をもらうと、国王陛下へと視線を向けた。
「っ!」
ひゅっと息を飲む。初めて会うはずの国王陛下は、何処か見た事がある様な、気味の悪い…背筋に悪寒が走り身体が金縛りにあったかのように、動かなくなる。
冷めた目で見下ろす国王陛下は、金色の王冠を被り金色の髪が肩まで伸び、耳から繋がる髪と同じ色の顎髭は胸元まである。白い衣装に身を包み赤い襷が肩から腰に着いていた。玉座の椅子の肘掛けに手を付けた指には、たくさんの指輪が付いていて豪華な宝石が室内のシャンデリアに反射してキラキラと輝いていた。
「…ミカド、そろそろ」
父に促されその時になって初めて、ずっと見ていた事に気がつき、慌てて頭を下げ国王陛下のいる玉座から離れた。
父は私に声を掛ける事なく、エスコートされながら階段を下りる。大広間の端まで行くと椅子に座らされ、父は給仕係に水を頼む。真っ青になった私の目の前に差し出された、グラスに入った水を手に取り飲む。
程よく冷えた水が私の喉に通り、ホッとひと息ついた。
「大丈夫か…ミカド」
私を他の人の視界から隠すように立つ父は、今まで聞いた事の無い感情の籠らない声で私を労わる。
「…お父様、私…何か失敗してしまいました…か?」
初めての聞く父の声に、先程の国王陛下への態度に失態があったと、察した。
「…いや、大丈夫だよミカド…良くやった」
私の耳の横に手を添えた父は、
「少し、席を外す…挨拶周りをしなければね…キミ」
いつも聞いている優し声に嬉しそうな顔をして、数メートル離れた警備をしている騎士団員に声を掛け、人混みの中へと消えた。
ざわざわと騒がしかった中が、私と父が入った事により、ひそひそと控えめな声が聞こえ、身体中に視線が刺さる。ぎゅっと父の腕に置いた手に力が入ってしまうが、父は安心するようにと、私の手の上にポンポンと軽く叩く。
ーーそうね、怖気付いちゃダメね
視線を上げて、舞踏会のやっている広間に向かう。
部屋の壁際の中央で玉座が鎮座する広間に入ると、オーケストラによる生演奏と、壁に沿って料理が並び、白いYシャツ黒いベストと黒いズボンの給仕係が銀のお盆に飲み物を載せて、配っていた。
扇子で顔半分を隠し雑談に笑う女性、知り合いなのか話をする男性、壁側に立ち行き交う人を見る人々、ダンスをする男女、数百人の成人の儀を迎えた人々が華やかな雰囲気の中笑顔になっていた。
「ミカド、まずは国王陛下に挨拶するぞ」
ぼぅっと煌びやかな大広間に見惚れていた私は、父の声で我に返り、エスコートされるがまま玉座の方へと向かった。
十数段の赤い絨毯の階段を上り、それほど待つ事なく国王陛下の前に着くと頭を下げ、国王陛下と王妃に父が挨拶をした。
「うむ…よく来たアーテラ公爵、この娘が愛娘のミカドか」
威厳のある声にどきっとし、緊張する。
「…はい、お初にお目にかかります、ミカド・アーテラと申します」
顔を上げる許可をもらうと、国王陛下へと視線を向けた。
「っ!」
ひゅっと息を飲む。初めて会うはずの国王陛下は、何処か見た事がある様な、気味の悪い…背筋に悪寒が走り身体が金縛りにあったかのように、動かなくなる。
冷めた目で見下ろす国王陛下は、金色の王冠を被り金色の髪が肩まで伸び、耳から繋がる髪と同じ色の顎髭は胸元まである。白い衣装に身を包み赤い襷が肩から腰に着いていた。玉座の椅子の肘掛けに手を付けた指には、たくさんの指輪が付いていて豪華な宝石が室内のシャンデリアに反射してキラキラと輝いていた。
「…ミカド、そろそろ」
父に促されその時になって初めて、ずっと見ていた事に気がつき、慌てて頭を下げ国王陛下のいる玉座から離れた。
父は私に声を掛ける事なく、エスコートされながら階段を下りる。大広間の端まで行くと椅子に座らされ、父は給仕係に水を頼む。真っ青になった私の目の前に差し出された、グラスに入った水を手に取り飲む。
程よく冷えた水が私の喉に通り、ホッとひと息ついた。
「大丈夫か…ミカド」
私を他の人の視界から隠すように立つ父は、今まで聞いた事の無い感情の籠らない声で私を労わる。
「…お父様、私…何か失敗してしまいました…か?」
初めての聞く父の声に、先程の国王陛下への態度に失態があったと、察した。
「…いや、大丈夫だよミカド…良くやった」
私の耳の横に手を添えた父は、
「少し、席を外す…挨拶周りをしなければね…キミ」
いつも聞いている優し声に嬉しそうな顔をして、数メートル離れた警備をしている騎士団員に声を掛け、人混みの中へと消えた。
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