地味風男爵令嬢は強面騎士団長から逃げられない

男爵家会議2

「…妊娠したのか…騎士団長の…」
とお父様の呆然とした顔にお兄様達もびっくりして固まっている


ーーやはりそうだよね


申し訳ない気持ちでテーブルにある食事に視線を落とす
今日は鶏ガラのスープに野菜を蒸した身体に優しい料理だ
お母様が料理をする人に言ったのか、これなら食べられそうとホッとする

「旦那様、ミズナは産み育てます」
静寂な食事会を遮ったのはお母様だ



「…なら、療養先はこちらで手配しよう、それに城への報告は…私がする」
何か考え込むお父様に、お兄様達は
「なら僕は療養先の部屋を手配するよ、あと騎士団への対処なら僕がやるよ、文官だしね」
「じゃあ俺は、産まれてくる赤ちゃんのモノをそろえるよ、そろそろ下町の商会大きくしたいと思っていたからさ」
すんなり私の妊娠を受け止める家族達
何で？と不思議に思いコテンと首を傾げる
「どうして私を…責めないのですか…私は…結婚出来ない上に…妊娠してしまったのですよ」
事実を述べると溢れる涙で声が掠れる

責めてくれたら…そうしたら…


「責めてどうするの？赤ちゃんに障るわ、それに私は憧れていたおばあちゃんになるのよ！とっても楽しみだわ」
「そうだ、何故責めねばならん、元はと言えば騎士団長が故意…コホン…いや…とりあえず孫は楽しみだ」
「僕がおじさんか…ミズナに似て美人だといいな…あの騎士団長似なら悲惨…いや…勇ましいな！」
「ミズナの子供なら商会のモデルになって欲しいな…宣伝が楽になるし」
とそれぞれ話す家族についていくのが精一杯で混乱する


「…でも…でも…家は貧乏なんですよ…ね？だから子供が産まれたら…お金掛かりますし…」


「「「「いや、家は貧乏じゃないぞ？」」」」

3人の男児に否定される

「えっ？！…だって毎月バイト代を入れてましたし、ご飯だって、使用人だって少ないですし…それに」

今までの貧乏を感じた所を挙げる
「バイト代を入れていたのはミズナの結婚資金よ、主にお父様とお兄様が多く入れていたわ、だってこの2人仕事が楽しくて結婚する気配もないからね、それにミズナのバイト代はちゃんと取っているし、使用人が居ないのはお父様が家族以外がいるのを嫌がるからですし、食事のメニューは豪華にすると健康に悪いからよ」
とすんなり種明かしされる
「私の…結婚資金…健康…？」
混乱する私を見て兄達も
「そりゃ最初は戸惑ったけど結婚資金は大事だし、僕はまだ次官になりたいしね」
「…俺は…そうだな商会をもっと大きくしたいな…支店はあるんだが…あと8店舗は増やしたいなぁ…あっでもミズナがいい宣伝してくれるからいつも多めに渡してるよ？」
「私が…宣伝？」
「そうだ、たまに下町へ買い物に行く時ワンピースとか帽子とか小物渡してるだろ？ミズナ連れて歩くとみんな買ってくれるんだよ」
「でも…あれはすぐに返しましたよ？！」
「だって試作品渡すわけにはいかないだろう」
と兄が答える

「…さっきから商会、商会と言ってますが、お兄様の商会ですか？」
「そう、ミズカル商会の頭やってる」
「！！あの有名な！？」
ミズカル商会は、下町で1番人気の商会で流行りはミズカルからと言葉が出来たくらいだ
そのミズカル商会のトップだなんて……
びっくりして固まっていると
「お父様も優秀なのですよ？」とお母様がお父様の領地の功績を讃える

いきなり色々言われて混乱していた…でも…私のバイト代全部貯金に回していた…から洋服とか変えたのにと思っていたら

「ミズナがおしゃれしたら美人が知られて世界中の男に…王子でさえ、求婚するだろう……好きじゃない男と結婚したって幸せにはなれないだろう」

とお父様の不機嫌な声が食堂に響いた