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無愛想な男4

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テストも終わり、帰るために席で荷物をまとめていると手元に影が現れ
「真央もう帰んのか?」

俺を下の名前で呼ぶのは、ただ1人

「…柚月」

俺の横で立っていたのは、坂本ゆいかの双子の弟ーー坂本柚月さかもとゆずき

「これから岡田達とカラオケ行くけど、どう?」

人懐っこい笑顔を向けるが、目が笑っていない
こんな状態の柚月は、何か俺に言いたいことがある時に見せる顔だ

「……いや、このあと用事があるから…で…どうした」

本当は15時までなら遊びに行けるが、テスト1日目とは言え岡田なら気にせず18時まで遊び歩こうとするだろう

ーーそうしたら約束に間に合わないしな…

そんな事は表に出さず取り敢えずカラオケは断る……が、本題はココからだろう

「最近、ゆいかがさ~なんか心ここに在らずって感じで家でもポーっとしてる事が増えたし、何よりこの間の夜男と手を繋いで帰っていたんだよ」

と、目の前の席にこちら向きに座り俺の机に肘を乗せ頬杖をし思案顔する
ーーが
その男が俺と分かって聞いてきたのだろう

「…それは…俺…だな」

柚月に誤魔化しは効かない事を知っているため正直に話す

「ふ~ん…なら、ゆいかに告白したのか?」
ニヤリと笑う柚月は告白などしていない事は既に知って居るはずだ

何故知っているのか……それは

「そりゃぁ出来ないよな、だってゆいかはまだ山口先輩に失恋で心を傷めているはず」


ーー今ココでキスまでしましたって言ったら確実に半殺しになるな

とこれまでの日々と昨日腿に載せ抱きしめた感触を思い出し掛けたが、このシスコン気味の弟が目の前にいる事を思い出し気を引き締めた


本当は坂本に卒業式に告白しよう、とした

だが、やめたのは卒業式に告白しても坂本は失恋を引き摺っているのがはっきりと分かっていたし
柚月はゆいかの心の傷が癒えたら俺と顔合わせみたいな場所をセッティングしてくれると提案してくれていたが
坂本の心の傷が癒えるのがいつなのか明言されず、1年以上経っていた
ただ、いくら仲の良い弟でも失恋の傷とか報告するかは疑問だ

それにあの日彼女に会わなければ…彼女をナンパ男から守らなければ…ただこの気持ちに蓋をし続けていたと思う

ーー柚月はいいヤツなんだが、姉の事になると融通が利かないんだな……いや、坂本だけじゃなくて……

「また渡辺くんに意地悪してるの?」

と呆れながらも明るい声が聞こえた
「明日香!」
俺達から2m程離れた所にいたのは、同級生の中野明日香なかのあすか…柚月の彼女で茶色のセミロングの髪をポニーテールにしている、サッカー部のマネージャーだ
パッと明るくなった柚木の顔は心底惚れている彼女を見つめた

ーー姉の坂本と初彼女の中野明日香の事になると、目の色をかえる…柚月らしいな

「意地悪って…心配って言ってくれる?」
唇を尖らせ、文句をいう柚月に明日香は
「そんな事ばかりしていると嫌われるよ?ゆいかに」
と何か思う事があるのか坂本と親友の中野は柚月にはハッキリと物申す

「ちょ…酷い!」
慌てる柚月にニヤリと悪い笑顔の中野は、満足して教室を出た

「待って!明日香!」
と俺を残し彼女の元へ追いかける柚月


「何だったんだ」

ひとりポツンと残された俺の呟きは誰もいない教室に呑み込まれた

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