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番外編 引っ越す日 投稿22ヶ月記念小説 幼馴染

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今日は最近幼馴染から恋人になった、げんがくる日だ。

荒島あらしま日奈子ひなこは、幼い頃から田舎で育った幼馴染の山桝やまます玄五郎げんごろうと2ヶ月前に付き合う事になった。遅れて取った大型連休ぐらいの期間に、実家に帰ろうと思ったのが最初で…その後にまさか玄と恋人同士になるとは夢にも思わなかった。
ガタイが良くて、人とのコミュニケーション能力も抜群の玄は、付き合った後も連絡もこまめにくれる彼氏と知る。
付き合う前は半年に一度連絡があればいい感じだったのに、今や夜に寝る前に話さないともやもやしてしまうくらいになった。
そんな遠距離恋愛をしている私達だが、実はもう田舎の実家に戻って玄と一緒に住む予定なのだ。
――随分早い展開だけど、青春時代に好きだった人と結婚出来るなんてね

「日奈子!」
しみじみとそう思っていたら、帰省してから毎日電話越しに聞いていた玄に声を掛けられて我に返った。
「玄っ!」
声のした方を向くと、白いポロシャツにベージュの短パン、黒いリュック姿の玄がいた。駅の改札口を出た彼が、改札口がよく見える柱の前に立っていた私の所へやってきた。
「…久しぶり…だな」
電話ではあんなに話したのに、2ヶ月会っていなかったから少し照れ臭い。
「うん、久しぶり…だね」
彼も照れ臭いのか、目を細めながら頬をぽりぽりと掻いていた。玄が私の前に立つと、大きな身体は私を隠してしまい、壁に囲まれたみたいな錯覚をする。
「…玄?」
彼が何も言わずに私の背後の壁に肘をつけると、一歩進んだ玄が屈んだ。近づいてくる玄の顔に、何をされるかわかると、自然と瞼が落ちた。触れるだけのキス――をしたが、玄の離れた気配を感じて瞼をあげると、腰に腕を回されて玄の身体へ引き寄せられた。すっぽりと彼の腕の中に収まると、彼を抱きしめようにも彼の背中にあるリュックが邪魔で上手く抱きつけないから、結局彼の腰に手を添えた。
胸板の白いシャツに右頬をつけて玄を見上げると、彼は私をじっと見ていた。
そのまま、また彼が顔を私に寄せたから、私は自然と目を閉じると、さっきした触れるだけだったキスよりも深く濃厚なキスをした。




今日玄がやってきたのは、引っ越しの手伝いだ。手伝いといっても、玄と住む家へ持って行く荷物は段ボールに詰めたし、持って行かない家電――主に冷蔵庫や洗濯機は、すでに不用品を家に来て回収してくれる業者を手配した。じゃあ、何で玄が田舎から出てきて、私の元へ来たのかというと――
「これで全部か?」
「ああ、うん、あとは明後日の引っ越し業者がトラックに積めるだけ」
駅での熱い口づけは何だったのか、私の家へやってきた玄は、ざっと段ボールが積まれた室内を見てそういった。1階に24時間営業のコンビニがある2DKで契約したこのマンションの一室は、私が上京した時と同じ部屋だ。過去に彼氏も居たことあるが、自分が安らげる場所で一緒に住むつもりはなかったので、同棲しようと言われても首を縦に振る事は出来なかった。仕事から帰ってきて、一人の時間がないと、心が休まらないからだと思っていたけど、玄とはすんなり一緒に住む算段をつけたので、今までの自分の行動が意味不明にも思えた。つい先週までは小物やインテリア雑貨などがあった生活感が溢れる部屋だったけど、今や段ボールとテレビ、大型の家具しかない殺風景の部屋だ。まだ引っ越しは明後日だからカーテンはそのままだし、掃除もしちゃったから調理器具も段ボールの中だ。ベッドはそのままだけど、ベッド下の収納品も段ボールへ詰めたし、本当にトラックに積んで部屋を不動産さんに明け渡して引っ越すだけだ。引っ越すと言っても明後日渡すトラックに積む荷物は、割安の引っ越しの荷物を時間指定しないフリープランにした。だから私の荷物が着くのが明後日から5日後なのだけど、今日から約一週間、私と玄は荷物を引き渡してマンションを解約した後も、近くのホテルを取り数日この街で過ごすのだ。玄が付き合っているのに、まだデートもしていないし、田舎へ帰ったら玄の仕事を手伝う事になるから、お盆や年末年始ではない限り数日間も二人一緒に自由に動き回れないと言っていたからだ。
「日奈子」
まだお昼を少し過ぎただけの時間、残暑の残る外からエアコンの空調が効いた室内で二人きりだ。低い声で名前を呼ばれて、のろのろと玄の側へと行くと彼の身体に抱きついた。
「水もあるし、腹が減ったら下へ買いに行こう」
主語も何もない玄の言葉は普通は意味不明だと思うけど、幼い頃から一緒に過ごしてきた私にはわかる。
腹が減ったら、と言っていたけど、玄は新幹線の中で食べたと言っていたし、私も玄が到着する前に昼食は済ませてある。なぜなら――
「汗かいたから風呂入るか」
ほんの僅かな時間でも離れたくないのか、一緒にお風呂に入ろうと私に言った玄に当たり前のように頷いた。

交通の弁がいい駅から近いけど家賃が駅から離れた所よりも高いため、どこの物件も基本的にはさほど変わり映えはしない。だけど一人暮らしだけど、ちゃんとトイレとお風呂は別の間取りで満足していた。一人だから多少の狭さは気にならなかったけど、身体の大きな玄と一緒に入るとなると、自由に身動きが取れない。それでもやっぱり嫌だとは思わなかった。恥ずかしさなど微塵も感じさせない速さで服を脱いで先に浴室に入った玄は、シャワーのコックを捻る。シャワーの音が聞こえて、私も着ていた服を脱いだ。

お風呂のシャンプーとコンディショナー、ボディーソープとボディータオルのお風呂セットはまだ箱にしまってない。明後日まで過ごす服もあるし、歯ブラシも洗顔、美容セットもまだ出ている。もうすでに段ボールの箱にはそれらを入れるスペースはあるから、引っ越し当日にいれてガムテープで止めるだけだ。頭の髪をお団子にして結び、何も身につけずにすっぽんぽんになった私は、玄のいる浴室へと入ると、彼は私のいる扉に背を向けてシャワーの水を頭から浴びていた。玄の背中に身体を寄せると、ぴくりと動いた玄の身体に流れる冷たい水が私に伝い、私の肩と胸それから下半身の身体が濡れていく。普段なら手を伸ばしても狭いとは感じないけど、玄がいるだけで他の場所へ手を伸ばせない。なんならシャワーベッドの横にある大きな鏡が、玄の身体で塞がれて見えない。
振り向いた玄は私と向き合うと、私の腰に腕を回して身体を抱き寄せた。ぴたりと重なった身体は、シャワーの水が冷たかったせいか、玄の身体も冷たいと感じる。
「ん…つめたい」
素直に言うと、彼は悪い、と言いながらも私の方から離れようとしない。むしろ、ぴたりと重なった身体が、彼の昂りがすでに固いことをはっきりと教えてくれて、頬が赤くなっていく。顔を上げると、玄の顔がすぐそばにあり、玄の胸板に手をつけて踵を上げると、二人の唇が重なる。ちゅう、と触れるだけのキス、その次に玄の舌で唇をなぞられて、薄く開けると、分厚い舌が私の口内へと入った。すべてを根こそぎ奪われてしまいそうなほど濃厚で、私の口内でわざとゆっくり動いてねっとりしていて、いやらしいキスだ。
彼の胸板から首の後ろへと手を移動させると、糸も簡単に持ち上げられた。彼の腰に足を巻き付けると、玄は二人では一緒に入れない小さな浴槽の縁に座った。彼の昂りが私の下半身に当たる。しかも、どくどくと波打っているかのように蜜口から感じ取ってしまってるから、全身に快感が巡り身体が火照っていく。
「あんっ、っんぅっ…むっ、んぁっ」
噛み付くキスと執拗に責められてしまう舌に食べられてしまいそうで、私は求められている事に喜びを知る。顔の角度を何度も変えても、一向に離れようとせず、収まる気配のない口づけに、息も上がっていく。緩く腰を前後に動かすと、ヌチャッとした粘性のヌメリで滑る。
「…っ、っ」
玄の昂りの先端・・から出るツユじゃないと、分かっていても一度動き出した腰を止めてしまう事は出来ない。欲望に抗えずに、彼が私の下で座っているのをいい事に、自分の下半身――蜜口を彼の昂りの側面に擦り付けていると、次第に玄の手が私のお尻を掴んでいた。
最初は自分の意思で動かしていた腰も、次第に私の意思ではなく欲望に忠実な身体が動いてずっと気持ち良かったのに、今度は玄の手によって彼にとって気持ちの良い箇所の昂りの側面を私の蜜口で擦るから、じわじわと私の気持ちの良い箇所から離れて焦らされる。
「あっ、っ!はっぁっ、げっ…げんっ!」
自分で動きたいから彼の腕を掴んでも、快感に蕩けた身体は力が入らなくて、ただ彼の腕の上に手を置いただけになってしまう。彼の肩に右手を置いて、下からの突き上げもどきが始まると、蜜口に玄の昂りの凸凹したカサが少し侵入した。背がのけ反りると、柔らかな二つの乳房を玄に突き出す形になって、彼はちっ、と舌打ちをして私の鎖骨に吸い付いた。舌で鎖骨をなぞり、ちゅうも吸い付いたかと思ったら甘噛みされ、肩を強めに噛まれる。
はっ、ぁ、っ、と甘い喘ぎ声が浴室に響いて、シャワーの音を掻き消す。私のお尻から彼の右手が離れると、擦り付けていた私の蜜口に指を入れた。ぐぐっと蜜壺の奥へ入っていくと、彼の太い指を美味しそうにぎゅうぎゅうと締め付ける。
「ぁあっ!」
腰が引けると、私のお尻を掴んだままの彼の左手が私を逃さないように力をいれた。たった片手だけで、私の動きを封じ込めてしまう力強い肉体にうっとりしてしまう。抽送されているように、彼の指先が私の蜜壺から抜けたり入ったりする。二本だった指が三本になると、彼の指は蜜壺の中を広げて、ぱらぱらと指先を動かした。ぴりぴり頭まで痺れると、私は達してしまい、彼の指を強めに締め付けた。
「日奈子、…っ、気持ちよさそうだな?」
蜜壺の中で玄の指を、ぎゅうぎゅうに締め付けている最中でも、彼の指は動いていた。
「あっ、んぅっーっ、んっぁっ…は、ぁっ!」
玄の親指が私の蜜口から出た小さな粒に触れると押しつぶして、私のお尻をパンッと軽く叩いた。ピクンピクンと私の身体が跳ねてる間に、蜜壺から彼の指が抜けて、代わりに私の蜜口に彼の昂りを当てがわれる。ミチミチッと蜜口が広がり、考えられないくらい蜜壺に圧迫感を感じた。ズッ、ズズッ、と蜜壺に少しずつ入っていく昂りに、苦しいはずの身体は喜んでいるように、ぴっちりと隙間なく彼の昂りを歓迎した。蜜壺の最奥まで到達すると、玄は私の膝の裏に手を入れて浴槽の縁から立ち上がった。慌てて玄の首に掴まるが、
「あっ、ぁあっ!」
自分の体重の重さが重力により下がり、座っていた時とは違う深さの繋がりとなった。
「根を上げるのはっ、早ぇっ、っよ」
玄はそう言って、私の身体を上へとあげてから落とすと、私の身体が上がって下がり彼の昂りが蜜壺の奥へと入る。一気に身体に巡る快感に、気持ちよくて甲高い声が出る。玄の腕で持ち上げられているだけなのに、ぱんぱんっ、とリズムカルに難なく私を動かす彼の力に胸がきゅんとする。
「ん、っ、ぅっ、ぁっダメっ、落ちるっ…っ…玄っ」
気持ち良くて彼の首の後ろへと回していた手に力が入らなくなっていく。
「日奈子っ、気持ちいいか?…っ、締め付けて返事をするなって…イッちまうだろっ」
そう言って彼は私を浴室の壁へと押し付けて、太ももを出した彼の上へと座っていたが抽送を早められた。私の両脇の壁に玄の手が置かれ、何とかつけていた足先にも力が入らないから、玄の腕に寄りかかると、自ずと乳房が彼の腕に押し付ける形となる。すると、彼は私の口を荒々しく塞ぎ、ラストスパートをかけた。
「ーーーっ!!」
塞がる口から声にならない悲鳴を出すと、彼の舌に強く吸い付いた。その直後に蜜壺の中は熱い飛沫に満たされて、絶頂が続いた。




***************



「明後日は、引っ越し業者がくるから、そのあとは」
「知ってる、デートだろ」
「そう!」
あれからお風呂から出て、濡れた身体を簡単に拭き合い、雪崩れ込むようにベッドでも愛し合った。ご飯どうしようかと疲れた身体を叱咤して玄に寄りかかって話しをしていたら、何故か玄に襲われた。
解放された時はもう日付が変わっていて、冷蔵庫に入っていたお茶やミネラルウォーターの空のペットボトルがベッドの周りに落ちている。
疲労感が濃く瞼が重くても、寝るのが勿体無い気もして頑張って喋っているが、玄は苦笑しながらも私と話すのを続けてくれた。
「指輪を買いに行こうか…もう会社、辞めたんだろ?」
「うん、辞めたから本当に玄と過ごすだけ」
「そっか…もう寝ろ」
玄は私の身体を抱きしめると、私は彼の胸板に頬を寄せた瞬間に安心して眠りについた。







夢のまた夢だと思っていた、好きな女日奈子と結婚するなんて…毎日電話していても、電話で話す内容は仕事のこと、たまにする告白だけで、日奈子に触れるわけじゃないしそばにいるわけじゃなかったから疑心暗鬼になっていた。
――本当は身体の関係になったのは嘘だったのか
大人になってからの2か月という期間は、あっという間と思う時のほうが多いのに、今回はたった2か月とは思えないくらい地獄のように長く感じた。
改札で待つ彼女を見て、らしくもなく公共の場でキスをしたのは本当に日奈子がいるって事と、可愛い彼女をチラチラと見る男共を牽制するためでもあった。
――引っ越し前に来てよかった…じゃないと
最初は引っ越し業者も不動産屋――はどうかしらないが――彼女と異性といる空間を作りたくないという俺の嫉妬心からだった。けど、日奈子は気にしていないらしく、俺と一緒に過ごせる事に喜んでいた。この時ばかりは実家が職場だと融通が効くと感謝した。
もう会社を辞めたと報告されていたのに、殺風景な部屋に段ボールが積み上がっても、引っ越し業者がくると知っていても、未だに信じられないのは、日奈子と結ばれたのが最近だからなのか。それとも不安なのだろうか。日奈子は未練もなく会社を辞め、あっさり俺と一緒に住むことを了承した。
「…ずっと、大切にする」
「好きだ」
「……愛してる」
すーすー、と寝息が聞こえて、深い眠りにつく日奈子に言ってもしょうがないと思っていても、俺は…眠っているから聞こえない日奈子に自分の想いを告げるのをやめられなかった。
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