ヤクザの監禁愛

狭山雪菜

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リクエスト お出かけ〜初めての遠出〜 ヤクザの監禁愛

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『まもなくルビーオーシャンの出航となります』

船内に流れるアナウンスに、すでに部屋に案内されていた私は反応をした。
絵梨奈えりな
低い重低音の声に名前を呼ばれ、はっと今の状況を思い出した。
「はい…んっ、ぁっ」
客室のソファーに座る勇人はやとさんは、Yシャツのボタンを数個外しただけの黒いスーツの格好でいて、白いサンドレスのロングワンピースだった私は、集中しろ、と言わんばかりに下から突き上げられた。
2人が繋がった場所は私のロングワンピースで隠され、誰か急にこの客室に入って来ても、私が勇人さんの膝の上になっているだけに見えるはずだ。
彼の肩に手を置いて上体を倒すと、勇人さんの唇に自分の唇を重ねた。




***************



梅雨も終わり夏の始まりを感じさせる暑い日々が続くと、勇人さんに先週、休みだから旅行に行くぞ、と言われ、珍しく泊まりで出かける事になった。
顔が見えないくらいツバの広い、いわゆる女優帽と呼ばれる白い麦わら帽子をかぶると背中の真ん中まで達した黒髪が清楚な雰囲気を漂わせている。肩紐の細いキャミソールみたいに肩や胸元が広くあいているサンドレスと言われるふくらはぎまでの丈の白いロングワンピース、その上には白いカーディガン、手には小さな白いハンドバッグ、全てがブランド品で、勇人さんからの贈り物だ。絵梨奈が気がついていないだけで、真っ白なサンドレスのワンピースから出る肌は白く、形のよい胸がまん丸で膨らみ、胸から下は綺麗な曲線を描き、きゅっ、と締まっていて腰の細さを際立たせる。軽く羽織っているこちらも白いガーデンの下から見える無数の赤い点が、絵梨奈に独占欲を露わにしていている誰か特別な相手がいると知らしめている。
反対に勇人さんは、いつも愛用しているシンプルなイタリア製のフルオーダーの通気性のよい黒いサマースーツと白いYシャツ。絵梨奈よりも背が高く、胸板も厚く手足もがっしりとしていて、普段の顔も凶悪なのだ。そんな彼は相変わらず何を考えているのか分からない表情で、絵梨奈の背中を押して地下駐車場へとエスコートをしていた。

今回のお出かけは完全に2人きりではなく、勇人さんの部下のテツさんといつも私と勇人さんが住むマンションの前で用心棒をしている数人で出かける事になっている。テツさんは知っているが、マンションの外にいる用心棒さん達は見た事のない人達で――私がマンションから出ないだけかも知れないが――目をキラキラさせて、1人は金髪と、もう1人は茶髪の元気すぎる"男の子達"と言った方がしっくりするぐらい無邪気な笑顔を振り撒いている。
『よろしくお願いします!』
と元気な声で挨拶をしてくれ、驚く私に勇人さんが私の肩を抱いて彼の胸元に身体を寄せられた。帽子のつばで私の顔は見えなかったはずなのに、勇人さんが私を守ろうとしてくれている事に、きゅんと胸がときめいた。
「…行け」
「すっ…すいませんっ!」
たった一言勇人さんが口にしただけで、私に挨拶をした部下達は青ざめ謝りながら、慌ててどこかへ行ってしまったのだ。

「少し長旅になる」
リムジンの黒塗りの車の中では当たり前のように彼の横に座り、帽子を取っているとそう言われ、昼間からウィスキーを口にする寡黙な勇人さんにうっとりと見惚れた。口にしたウィスキーが喉仏が動いてるのを、素敵だなぁ、と思いながら私もグラスに入れた烏龍茶を口にした。
テツさんと運転手は一番前に座るが、仕切られた後部座席は完全に2人きりだった。足を伸ばしても向い合わせで座れる座席には届かないし、リムジンの勇人さんの座る席の隣にはミニ冷蔵庫とグラスを置くミニカウンターがあり、私達の座る座席は柔らかすぎず硬すぎなくて長時間座っていてもキツくない。前回乗った時は2人の間にドリンクホルダー付きの肘掛けがあったと思ったけど、内装を替えたのかもしれない。2人きりだからいつものようにべったりくっついても、居心地の悪い思いをしなくて――そんなこと勇人さんは気にしないだろうけど――快適すぎる。きっとさっき挨拶してくれたあの人達は、今は別の車で移動しているのだろう。
「どこに行くの?」
「行けばわかる」
一応聞いてみれば、勇人さんはやっぱり面倒なのか、素っ気ない返事しか返ってこない。
――どのみち着いたらわかるし、いいか
一緒に住むようになって、照れているから無口なのかな、と付き合っていた時は思っていたけど、元から無口だと知った。勇人さんの嫌なことは…それは滅多にないけど、声のトーンで分かるようになったし、それ以外は基本的に私に触れる優しいタッチで彼の気持ちを感じる事が出来るから不満はない。
車のスモークガラスが張られた窓の外を見て、しばらくしてそれも見飽きると、勇人さんの胸板に頬を付けた。



***************



トランクから荷物を下ろして、運ぶ勇人さんの部下を手伝おうとして勇人さんに止められた。日差しが強いから帽子を被ると、腰を抱かれて歩く彼に並んで付いていく。すると車を下車する専用のロータリーの場所から、港のターミナルの近代的な建物へと入った。まるで空港の出発ロビーみたいに広々とした空間に、所々カウンターがあり電子掲示板に到着先と出発時間、乗り込む場所の番号が表示されていた。カウンターの前には4個か5個の連立した1人分のスペースで区切られたベンチが設置されて、何列にも出来ている。建物の右手半分は全面ガラス張りで、日差しが差し込み中を照らす。そして青い空と海とフェリーが一望出来る所にはカフェテリアが併設され、微かにコーヒーの匂いがする。
「絵梨奈」
初めて見る港の内側にキョロキョロと見ていたら、勇人さんの声がして見上げると、いつも見る勇ましい顔の彼が私の腰に回した手の力を強めた。
「どうしたの?」
不思議に思って首を傾げると、勇人さんは苦虫を噛み潰したような顔をして
「こっちだ」
と、私をエスコートした。カフェテリアに行くのかと思ったけど、そうではなくて"GOLD LOUNGE"と金色のプレートが嵌め込まれた窓ガラスで仕切られた奥の専用ラウンジへと向かった。


それからしばらくして、出発時間になったのか勇人さんに手を引かれて、ラウンジの側にあるカウンターにいるスーツ姿の男性がチェックインを済ませた。
チェックインが終わると、男性がカウンターの横にあるガラスの扉を開いてくれ、先頭を歩き私と勇人さん、その後ろにテツさんと2人の若い部下が続く。廊下からも外を見れて、だんだんと船の入り口が見えてくると、五階建の大きな真っ白な豪華客船が目の前に広がる。
3階ぐらいの高さの船の横と建物を繋ぐ手すり付きの橋の前には、1人の真っ白な制服を見にまとっている男性が待ち、私達を案内してくれた男性から引き継がれた。
「ルビーオーシャンへようこそいらっしゃいました、ご案内をさせていただきます芦田あしだと申します」 
「よろしくお願いします」
そう返事をしたのは、私達の後ろにいたテツさんだったけど、船内に入ると今度はテツさんが私と勇人さんの前に来て、芦田さんの後ろを歩く。
「こちらのエレベーターに乗り、宿泊されます客室へとご案内をさせていただきます、他にも世界中の最先端の服のショッピングを楽しめる施設、プールやシアター、ミュージカルを楽しめるショーなどの様々ご用意しておりますので、後ほどご案内させていただきます」
「…いや、悪いですが、あとの案内は私だけでお願いします」
色々な施設があるのかぁ、楽しみだなぁと思っていると、黙って聞いていたテツさんが、芦田さんに私たちの代わりに返事をした。
――案内はなしか…じゃあ部屋に入ったらどうするんだろ…
素朴な疑問が出たけど、深く考えてもしょうがないと、勇人さんの身体に身を寄せながら歩き続けた。

「こちらが、ご予約いただきました、スイートルームの"エリザベス"でございます、設備の説明を…」
「それでしたら、私が」
案内された部屋はエレベーターに乗って、専用のパスキーカードをエレベーターに翳さないと行けない、最上階の5階の専用の甲板にも出れる1室しかない"エリザベス"というの名の極上のスイートルームだった。室内の簡単な説明をすると言う芦田さんの言葉を、テツさんは遮り自分が聞くと申し出た。
「わぁ…綺麗」
エレベーターを降りてすぐに見えたのは、広々とした空間で、思わず勇人さんの腕から離れて室内の奥へと進む。エレベーターと反対側にある全面ガラス張りの窓の外は出られて、半楕円形の手すりのついた甲板とミニプールがあった。室内は革張りの焦茶のソファーとガラスのローテーブル、ミニバーがソファーの後ろにある壁面にはリキュールのボトルが並ぶ。部屋の左手にはが付いていて、そこに入ると大きなキングサイズのベッドと、サイドテーブル、そして天井近くから床まで大きなガラス張りの窓の前には、1人掛けのソファーが2脚、木製のテーブルが座ると窓の外を向くように設置されていると芦田さんの声がする。
広々とした室内の窓際に立って外を見ると、雲ひとつない晴天だ。
――そういえば暑さも感じない
夏の始まりとはいえ汗の出た時もあったけど、船内に入った途端に過ごしやすい温度設定されていて、汗もかいていない。
「…おい」
「はい、兄貴」
私が窓の外の景色を眺めていると、部屋の中央に置かれたソファーに座った勇人さんが用心棒の1人に声を掛けると、金髪の方の男の子が、ミニバーから勇人さんの飲むウィスキーのボトルを取り出した。
あねさんも何か飲みますか?」
手持ち無沙汰だったのか、茶髪の男の子が私に飲み物を飲むかと聞くが、私は首を横に振った。
「さっきたくさん飲んだからいらないです」
「っおい!お前っこっち来いって」
茶髪の男の子に返事をしたら、金髪の男の子が慌て出して、茶髪の男の子を呼び寄せた。
まだ出港していないから変わらない景色に飽きて、ソファーに座る勇人さんの左横に座るとウィスキーのグラスを持つ反対の手で腰を抱かれた。
「…気に入ったか」
「うん、すごく素敵…ありがとう」
彼の左の鎖骨あたりに頭を乗せると、勇人さんに声を掛けられた。大きく深呼吸をすると、勇人さんの使う香水が鼻腔を掠め満ち足りた気持ちになる。
――あと、3日…は、勇人さんを独占出来る
何となく空いた時間にテツさんと話している内容を整理すると、観光がてら仕事に向かうらしい。飛行機ですぐに着くのに、船にしたのは私のためだと思いたい。
なんにせよ、この船旅の間は私が独占してもいい筈だ。到着先の場所では『スケジュールが詰まってます』って、テツさんが言っていたからだ。
彼のお腹の上に左手を回して、脇腹に置いた指先を動かすと固い身体を感じる。私の腰に回った勇人さんの手が、ぴくりと動いたので、そっと見上げると感情の読み取れない勇人さんは窓の外をじっと見ていた。
――どうしよう…すごい好き
うっとりと見惚れていると、
「――説明は以上となります、ではごゆっくりご滞在くださいませ」
「ありがとうございました」
私達の背後を通って案内人の芦田さんが説明が終わったから部屋から居なくなり、テツさんが残った。
「…テツ、少し休む…お前らも下がれ」
「「はい」」
「では後ほど」
ピンと背筋を伸ばした男の子達と、テツさんは部屋から居なくなり2人きりとなる。
「…勇人さん」
少しだけ身体を上げて彼の首元に口づけをすれば、口元についたチェリーグロスが彼の首元に移る。以前の私なら浅ましいと思っていた事でも、彼に変えられてしまった。私の人生が全て彼中心となった今、この変化は些細な事と認識する。愛でられて可愛がわられ、彼に満たされてしまった身体と心はもう勇人さんと付き合う前に戻る事はないだろう。
「絵梨奈」
座り直した彼が私の名前を呼ぶと、何をして欲しいのかを瞬時に理解する。仕事で帰って来れない――最近は滅多にないけど――時以外は毎夜一緒に過ごしているのだ。彼の身体が上体を起こすと、彼の足の間にあるズボンに手を添えた。チラッと勇人さんを見上げると、変わらない表情は何を思っているのか、いまだにわからないけど…キツイ眼差しの奥にある熱を感じ取る事は出来る。
――すごいどきどきする
彼のズボンの留め具を外し、チャックを下ろして両サイドにズボンを広げた。彼の身体にまた凭れながら、彼の履いているボクサーパンツの上から、少しだけ芯を持った昂りを握り揉んだ。彼の左頬やこめかみ、左の首に触れるだけのキスをしていたら、だんだんと勇人さんの昂りが固くなっていくのを感じて嬉しくなる。ボクサーパンツのフロント部分から手を入れて昂りを直接握ると、片手では握れないほど太くなっていた。
勇人さんは彼の頬に触れるだけのキスをする私の方を向いて、唇が重なる。口を薄く開けると勇人さんの舌が私の舌と絡まり、熱いと吐息と唾液ぐ混じる。私の腰に回っていた手が私の背中に移り、勇人さんの右手が私のスカートの裾をたくし上げて素足に触れた。そのまま私の脚をなぞる固い手のひらは腰に到達すると、下着の紐を解いた。
服装、身につけるもの全てが彼好みで、下着もそうだ。脱がせやすいように、腰の横にある紐で結んでいる下着は、すでに当たり前のように私は受け入れている。どうせ脱ぐんだからと、すっぽんぽんで過ごしていた事もあるから、別に今更どうこうしない。
「絵梨奈」
名前を呼ばれ、無言で彼の昂りから手を離して勇人さんの脚の上を跨ぎスカートをたくし上げた。日々愛されている身体には所々に彼の所有印がつけられ、太ももの内側が付け根に向かうほど色濃く残る。清楚な服装の下では艶やかな色気を醸し出している事が、男の執着と欲情を掻き立てていることを絵梨奈だけは気が付かない。潤む瞳で彼を見れば、口角が僅かに上がった勇人さんは右手で自身の昂りを握った。私の太ももに彼の左手が置かれ、ゆっくり腰を落とすように彼の手に力が入ると、彼の昂りが私の蜜口に充てがわれた。
「まだっ…むりっ」
とか言いつつ、彼の昂りの先端が蜜口を広げていきながら入り、先端を包みながら離さない。
「はっ…まだ・・ちゃんと大きくなってないんだ、入るさ…っ、絵梨奈ので大好きな大きさになる」
腰が引けそうになると彼が私の腰を掴み、彼の身体から逃れる事を許さない。少しずつ彼の腰の上に落ちていく身体に、勇人さんの言葉通りに昂りコレがますます大きくなると思うとキュンと蜜壺が反応してしまう。
「っ、ぐっ…まだ、締め付けるなっ…千切れそうだっ」
「だって…あっ、っ」
じわじわ広がる蜜口と中へ入る昂りから与えられる快感に耐えられなくなると、スカートの裾から手を離して勇人さんの肩に手を置くと2人の繋がりはスカートによって隠された。
「は…あっ、っんんっ!」
ズズッと蜜壺の奥まで入った昂りによって、貫かれた身体は軽く達してしまった。
勇人さんの肩に額を乗せて、やってきた快感をやり過ごしていると、勇人さんの手が私が着ていたカーディガンを脱がせて、座っているソファーの上へと置いた。
「…そろそろいくぞ」
一度私の首元に甘噛みして舌を這わせると、そう呟かれた。
「んっ、あっ、あっ…っ、あっ」
下からずんっ、と突き上げられ、快感の花が満開に咲いていく。彼の手によって開いた花は、彼好みの彼の物だ。教え込まれた快感を求めて、下から突き上げられながら緩く腰が前後に動いてしまうと、眉を寄せた彼の眼差しはさらにキツくなる。
「あっ、あっ…勇人さっ…ん、あっ、あっ」
彼の名前を呼ぶと、


『まもなくルビーオーシャンの出航となります』


船内に流れるアナウンスに、すでに部屋に案内されていた私は反応をした。
絵梨奈えりな
低い重低音の声に名前を呼ばれ、はっと今の状況を思い出した。
「はい…んっ、ぁっ」
勇人さんは、集中しろ、と言わんばかりに下から突き上げられた。彼の肩に手を置いて上体を倒して、勇人さんの唇に自分の唇を重ねると、荒々しく口を塞がれ舌をキツく吸われ、呼吸が乱れていく。
「好き、ん、そこっ、っああっ!」
ぱんぱんっ、と肌がぶつかっていく間隔が短くなると、腰を掴まれて完全に動かなくなる。彼の昂りきら放出された、熱い証が勢いよく蜜壺の最奥に注がれると、昂った身体は注がれた熱によって絶頂を迎えた。





***************




「…テツ、報告」
「はい、あちらのおやっさん達はすでに現地入りしたみたいで、警察サツはその動向を探っているようです」
「…ふん、ただの絵梨奈の紹介だけの場なのに、警察も暇なこった」
気怠げな雰囲気を隠そうともしない勇人が座るのは、数時間前まで2人で繋がった場所。あれから部屋へと移り、火のついた身体を鎮火させるのに随分と無理をした。
寝室では気絶するように眠っている女をそのままにし、やっと部下の報告を聞いた。
今回の外出はとある地方へ、お世話になったおやっさんへの挨拶と絵梨奈の報告だった。飛行機で行く方が短時間で済んで早いのだが、勇人は絵梨奈を例え客室乗務員でさえ声を掛けて欲しくないと独占欲を露わにしたと、後にテツさんから文香あやかさん経由で聞いて絵梨奈は喜んだ。
おやっさんには、すでに絵梨奈の存在は知らせていたが、そこまで夢中になる女なら会ってみたいと、お世話になったおやっさんの頼みを断れるはずもなく…なら連れて行くついでに籍でも入れるか、と勇人は思っていた。


『荒ぶる昇龍を籠絡させた女』

付き合っていた当時も、逃げ仰る彼女を秘密裏に攫った事も、誰も勇人が熱をあげる彼女の顔を知らなかった。
腹心の部下であるテツと腕は立つがチャラい男2人にしか、絵梨奈の顔を見せていなかったからだ。
――2人は今でこそ金髪と茶髪にしているが、勇人と絵梨奈と付き合っていた当時は存在を知られないように黒髪の印象に残らない容姿をして変装していた。
絵梨奈あいつに変な気を起こさねぇつもりで、な、俺も心は広くないからな」
脅迫とも取れる文言で誓約した用心棒の2人は、あの堅物が遂に女に落ちたか、と楽観視していた時期もあったなぁと、勇人とテツが話し込んでいるかたわらで懐かしい想いでいた。

勇人惚れた表情で勇人以外を見ようともせず、健気に漢の帰りを待つ美女。気怠げも相まって雰囲気、守ってあげたくなる庇護欲をそそる女。全身につけられている服でも隠せていない赤い所有印が、勇人の寵愛を一心に受けている証だ。

初めて護る対象者の絵梨奈を見た印象は、いまだに覆される事ない。しかし過去に絵梨奈に近づく男を秘密裏に半殺しにしてきた2人には、もしかしてこの女こそが、男を魅了する一番恐ろしい女ではないのか、と最近思い始めていた。
――そりゃ、次期組長と指名されてると、名高い幹部が女を連れて、挨拶に向かうなんぞ…そりゃ警察も警戒するだろ
――もう、今のシマ・・じゃ有名だが姐さんの顔は、警察にも知らされていないしなぁ
テツの後ろに控える用心棒2人がそう思っている事なんぞ、しかし勇人にはどうでもいい事だった。
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