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修学旅行2
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1日目は首里城を見た。事前に決めた4人か5人一組の班に分かれて、それぞれ歴史を学びお土産や小腹が空いた生徒たちが併設されているレストランで食事をとる。
私は絵里と同じ班になったので、2000円札にも描かれている門を見て、同じ班の男子に声をかけて絵里との写真を撮って貰う。
私と絵里、岡田くんと関谷くんの4人となった班は、ほとんど一緒に城の中を見て回ったのだが、途中のお土産コーナーで男女分かれた。
「これ可愛い!」
「どれ?…あっ、本当めっちゃ可愛い!」
と絵里と2人でお土産を見ながら、何個か購入する。お土産屋さんを出ると、岡田くん達がお店の前で待っていてくれていた。
お待たせーといいながら歩き始めたら、ゾロゾロと他の生徒たちはバスへと向かっていたので、私達も自然とバスへ向かい駐車場で、列を作って待機をした。
しばらくすると、学年主任の先生がやってきて、待ち合わせした時みたいに、喋り出す。
「えー、今の時刻は午後16時30分、今日はこのまま本日泊まる宿へと向かいます、宿に戻ったら"旅の栞"のとおり19時夕食、そのあとに学年集会後、21時各部屋の点呼就寝、それまでは自由時間ですが、繁華街等行くのは禁止です…明日は、1日海に行きますので各自栞をよく読んでくださいーー」
学年主任の話を聞きながら、今日はもう2人きりで会うのは無理か、と顔に出さずに落ち込んだ。
4人ひと組みの同性の部屋は洋室で、一面に広がる海が見えるオーシャンビューの部屋だった。
**************
修学旅行2日目。
今日は一日マリン体験の日だ。予定ではバナナボートーー4人一組で細長い取っ手付きの凸型のボートに乗り、海の上を水上バイクで引っ張られるーーと、初心者向けのシュノーケリング体験ーードライスーツを着て、靴みたいに履くドルフィンヒレをレンタルして、顔の半分以上覆う大きなメガネをつけて水中を泳ぐーーの2つをクラスごとに体験して、空いた時間は海辺で自由時間となっていた。
午前中にバナナボートを体験した私達のクラスは、一度ホテルへと戻りお昼を食べ、食事が終わるとまた個別に海辺へと行く準備を始めるため、食事したフロアでバラバラに別れる。バナナボートでは足しか濡らさなかったので、午後は海で泳ごうと、一度部屋に戻ってパーカーを置こうか迷っていると、ずっも一緒に行動していた絵里が申し訳なさそうに私に別行動をしたいと言う。
「…ごめん、彼にこの後一緒に行動しないかって言われちゃってさ」
顔の前で手を合わせて、ごめんと謝る絵里に首を横に振って気を遣わせないように、にこっと笑った。
「ううん!大丈夫だよ!楽しんできて!私一回部屋に戻るよ」
食事したフロアで絵里と別れると、エレベーターに乗り自分の部屋へと戻る。誰もいない部屋に1人。しばらくのんびり過ごしていたら、携帯電話が鳴り部屋に響いた。
携帯電話の画面を見ると、同じクラスの学級委員からSNSアプリを通じた電話だった。このSNSアプリ内でIDを交換して、友達になると電話番号を知らなくても通話が出来る便利な機能が付いているのだ。
「っはい!」
『あ、もしもし?茂木さん?あのさーー』
学級委員から電話があった理由は、午後のシュノーケリング体験で使うドライスーツや水中ゴーグルの準備を、旅行前に決めたイベントの準備や進行を任されたレクテーション係の2人だけじゃ終わらないので、学級委員も手伝うように、と学年主任から言われたらしい。私は青いチェック柄の上下のビキニの上にデニムのホットパンツを履いていたので、脱いでいたグレーのパーカーを羽織り、携帯電話を持って部屋から出た。
「茂木、これを浜辺を見ている林田先生に渡してきてくれ」
午後のシュノーケリングの準備も終わり、ひと段落したところで、学年主任が持っていた書類が入った透明なクリアファイルを渡された。
「これですか?」
「ああ、頼むよ」
渡された書類を持って、先生がいると言われた浜辺へと向かう。1人海辺を見ながら歩いている先生を、すぐに発見する事が出来た。
「先生、これ学年主任の先生から渡すように言われました」
「…これ?…ありがとう」
渡された書類に、ザッと目を通している先生は、
「…いつも一緒にいる戸田はどうした?」
書類に視線を落としたまま、戸田ーー絵里の事を聞いてくる先生。
「…絵里は…彼氏と過ごすって」
「そうか…ならあとで待ち合わせしよう…他のクラスの引率で食事に行くから」
「…はい」
「連絡する」
一度も視線を私に向ける事なく、淡々と喋る先生。じっと彼の手元を見る私。
「…ごめんな」
ポツリと告げた先生の謝罪に、私は
「…ううん、私はいいの」
と小さい声で返事をして、彼の元から離れた。
**************
「ん、っぁ、っ」
誰もいない廊下の柱の角に隠れて、口を塞がれお互いの舌を絡める。私の腰に回された彼の手に引き寄せられ、身体が密着する。彼の胸に手を置いて、踵を上げて私の舌に絡まる彼の舌に応える。
ちゅうっと名残り惜しげに離れた口と私の口に、透明な糸が引き彼がペロリと私の唇をなぞり舐めとる。
彼の肩に頭を置くと私の頭に彼の左手が添えられ、ゆっくり撫でられた。
「…卒業したら一緒に来よう…か」
小声でお互いの声しか聞こえない距離にいる事にドキドキと胸が高鳴り、先生の声に包まれたようなな錯覚をする。
「本当っ?うん、来たいっ!」
肩から頭を上げると先生と視線が絡まり、先生がフッと微笑む。私の頬に手を添えると、私の唇のラインを親指の腹でなぞる。
「…もう行かないと」
「…うん」
「夜メッセージ送るから」
「…うん、待ってる…ね」
そう言って最後にと軽く口づけをされて、彼は行ってしまったのだった。
**************
修学旅行3日目。
この日は午前中に波上宮と識名園の観光地巡りと、午後は国際通りでの買い物の予定だ。明日のお昼過ぎにはもう、那覇空港に乗って帰らなければいけないため、実質今日がお土産を買う最後のチャンスだ。
昨日の夜、少しだけSNSアプリ内で先生とやりとり出来て幸せな私は、午後の買い物で彼とお揃いの何かを買おうと決めていた。
ーーお父さんとお母さんのもお土産も、買うけどねっ!
忘れちゃいけない家族へのお土産も、先生への贈る品物を選ぶ時間が取られそうなので忘れないようにしないと、と心に決めた。
結局購入したのは、赤と青の琉球グラスのペアグラスと、2つ合わせると金色のハートの形になるキーホルダーにした。
そして時間ギリギリまで悩んでいたので、家族のお土産がちんすこうとお芋タルト、ネコの沖縄の琉装を着たご当地のキーホルダーで、時間なかったにしてはよく買えたと自分を褒めた。
私は絵里と同じ班になったので、2000円札にも描かれている門を見て、同じ班の男子に声をかけて絵里との写真を撮って貰う。
私と絵里、岡田くんと関谷くんの4人となった班は、ほとんど一緒に城の中を見て回ったのだが、途中のお土産コーナーで男女分かれた。
「これ可愛い!」
「どれ?…あっ、本当めっちゃ可愛い!」
と絵里と2人でお土産を見ながら、何個か購入する。お土産屋さんを出ると、岡田くん達がお店の前で待っていてくれていた。
お待たせーといいながら歩き始めたら、ゾロゾロと他の生徒たちはバスへと向かっていたので、私達も自然とバスへ向かい駐車場で、列を作って待機をした。
しばらくすると、学年主任の先生がやってきて、待ち合わせした時みたいに、喋り出す。
「えー、今の時刻は午後16時30分、今日はこのまま本日泊まる宿へと向かいます、宿に戻ったら"旅の栞"のとおり19時夕食、そのあとに学年集会後、21時各部屋の点呼就寝、それまでは自由時間ですが、繁華街等行くのは禁止です…明日は、1日海に行きますので各自栞をよく読んでくださいーー」
学年主任の話を聞きながら、今日はもう2人きりで会うのは無理か、と顔に出さずに落ち込んだ。
4人ひと組みの同性の部屋は洋室で、一面に広がる海が見えるオーシャンビューの部屋だった。
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修学旅行2日目。
今日は一日マリン体験の日だ。予定ではバナナボートーー4人一組で細長い取っ手付きの凸型のボートに乗り、海の上を水上バイクで引っ張られるーーと、初心者向けのシュノーケリング体験ーードライスーツを着て、靴みたいに履くドルフィンヒレをレンタルして、顔の半分以上覆う大きなメガネをつけて水中を泳ぐーーの2つをクラスごとに体験して、空いた時間は海辺で自由時間となっていた。
午前中にバナナボートを体験した私達のクラスは、一度ホテルへと戻りお昼を食べ、食事が終わるとまた個別に海辺へと行く準備を始めるため、食事したフロアでバラバラに別れる。バナナボートでは足しか濡らさなかったので、午後は海で泳ごうと、一度部屋に戻ってパーカーを置こうか迷っていると、ずっも一緒に行動していた絵里が申し訳なさそうに私に別行動をしたいと言う。
「…ごめん、彼にこの後一緒に行動しないかって言われちゃってさ」
顔の前で手を合わせて、ごめんと謝る絵里に首を横に振って気を遣わせないように、にこっと笑った。
「ううん!大丈夫だよ!楽しんできて!私一回部屋に戻るよ」
食事したフロアで絵里と別れると、エレベーターに乗り自分の部屋へと戻る。誰もいない部屋に1人。しばらくのんびり過ごしていたら、携帯電話が鳴り部屋に響いた。
携帯電話の画面を見ると、同じクラスの学級委員からSNSアプリを通じた電話だった。このSNSアプリ内でIDを交換して、友達になると電話番号を知らなくても通話が出来る便利な機能が付いているのだ。
「っはい!」
『あ、もしもし?茂木さん?あのさーー』
学級委員から電話があった理由は、午後のシュノーケリング体験で使うドライスーツや水中ゴーグルの準備を、旅行前に決めたイベントの準備や進行を任されたレクテーション係の2人だけじゃ終わらないので、学級委員も手伝うように、と学年主任から言われたらしい。私は青いチェック柄の上下のビキニの上にデニムのホットパンツを履いていたので、脱いでいたグレーのパーカーを羽織り、携帯電話を持って部屋から出た。
「茂木、これを浜辺を見ている林田先生に渡してきてくれ」
午後のシュノーケリングの準備も終わり、ひと段落したところで、学年主任が持っていた書類が入った透明なクリアファイルを渡された。
「これですか?」
「ああ、頼むよ」
渡された書類を持って、先生がいると言われた浜辺へと向かう。1人海辺を見ながら歩いている先生を、すぐに発見する事が出来た。
「先生、これ学年主任の先生から渡すように言われました」
「…これ?…ありがとう」
渡された書類に、ザッと目を通している先生は、
「…いつも一緒にいる戸田はどうした?」
書類に視線を落としたまま、戸田ーー絵里の事を聞いてくる先生。
「…絵里は…彼氏と過ごすって」
「そうか…ならあとで待ち合わせしよう…他のクラスの引率で食事に行くから」
「…はい」
「連絡する」
一度も視線を私に向ける事なく、淡々と喋る先生。じっと彼の手元を見る私。
「…ごめんな」
ポツリと告げた先生の謝罪に、私は
「…ううん、私はいいの」
と小さい声で返事をして、彼の元から離れた。
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「ん、っぁ、っ」
誰もいない廊下の柱の角に隠れて、口を塞がれお互いの舌を絡める。私の腰に回された彼の手に引き寄せられ、身体が密着する。彼の胸に手を置いて、踵を上げて私の舌に絡まる彼の舌に応える。
ちゅうっと名残り惜しげに離れた口と私の口に、透明な糸が引き彼がペロリと私の唇をなぞり舐めとる。
彼の肩に頭を置くと私の頭に彼の左手が添えられ、ゆっくり撫でられた。
「…卒業したら一緒に来よう…か」
小声でお互いの声しか聞こえない距離にいる事にドキドキと胸が高鳴り、先生の声に包まれたようなな錯覚をする。
「本当っ?うん、来たいっ!」
肩から頭を上げると先生と視線が絡まり、先生がフッと微笑む。私の頬に手を添えると、私の唇のラインを親指の腹でなぞる。
「…もう行かないと」
「…うん」
「夜メッセージ送るから」
「…うん、待ってる…ね」
そう言って最後にと軽く口づけをされて、彼は行ってしまったのだった。
**************
修学旅行3日目。
この日は午前中に波上宮と識名園の観光地巡りと、午後は国際通りでの買い物の予定だ。明日のお昼過ぎにはもう、那覇空港に乗って帰らなければいけないため、実質今日がお土産を買う最後のチャンスだ。
昨日の夜、少しだけSNSアプリ内で先生とやりとり出来て幸せな私は、午後の買い物で彼とお揃いの何かを買おうと決めていた。
ーーお父さんとお母さんのもお土産も、買うけどねっ!
忘れちゃいけない家族へのお土産も、先生への贈る品物を選ぶ時間が取られそうなので忘れないようにしないと、と心に決めた。
結局購入したのは、赤と青の琉球グラスのペアグラスと、2つ合わせると金色のハートの形になるキーホルダーにした。
そして時間ギリギリまで悩んでいたので、家族のお土産がちんすこうとお芋タルト、ネコの沖縄の琉装を着たご当地のキーホルダーで、時間なかったにしてはよく買えたと自分を褒めた。
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