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47 薫のスマートじゃない対応
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旅行から帰っても、俺の気分は晴れる事はなかった。誰かが彼女にアタックしてるのも、恋心を寄せているのも気に食わなかった。
過去の恋人の時は、ここまでこんな思いをしていたかと言われたら、してないとはっきりと言えた。
「課長、今日の営業トーク最高でした!俺達が言ってもいい返事くれなかったのに、課長が喋るだけでスムーズにいけましたし」
「そうですよ!まじで凄いです!」
休み明けに、なかなか取引先の案件が進まないから、どうなっているんだと新入社員の安藤と、安藤の指導社員の清水に聞いたら、2人はお手上げ状態だったので、普段ならそんな事はしないが、面識のある取引先の人と挨拶がてら話そうと、俺も取引先へと同行する事にした。
「…まったく、おだてたって今日の飲み会の場所は変更しないぞ」
「そんなつもりじゃないですよー!」
「…俺はちょっと期待しちゃいました」
月に一度行われる飲み会は決まって安い居酒屋で、場所を変えようかと毎回話が出るが、具体的な場所の選別までは行ってなかった。
──前なら色々調べたが…それよりも…
時間が足りないのだ…仕事もそうだが、茉白といると彼女が俺の中心になるから、他の事を──緊急事態の仕事以外は極力プライベートな時間は邪魔されたくなかった。本当におかしな話だが、茉白を足の間に座らせて背後から抱きしめているだけで、俺の疲れが吹き飛んでいた。
なら部下が他の所を探せばいいだろ、と参加する後輩や部下に言っても、あいつらは無料で飲めればいいやと、いっそ清々しいほどに素直に答える。
「じゃあ、この後他に一社行くから」
「はいっ、俺たちは先に会社に戻って、今日先方に言われた件まとめます」
「ありがとうございました、では後ほど」
安藤が答え、清水も頷くと、俺は片手を上げて、2人に背を向けて歩き出した。
──俺も大人だな
自分の彼女に声を掛けてる安藤の前でも、普通に話してる。もう少し何か安藤に対して、茉白のことで俺は言うと思ったが、意外とここまで仕事の話以外はしていない。
歩きながらふと、茉白に会いたいと思った。
──今日は飲み会だし、俺は居酒屋に直行する予定だから、茉白と会うのは家に帰った時だけだ
そう思うと、少しでもいいから会いたいと思って、俺はポケットにしまったスマホを取り出してSNSのメッセージアプリを開いた。
***************
「あっ薫っ」
「…悪いな、無理矢理呼び出しちまって」
茉白とメッセージのやり取りをしたら、居酒屋の最寄りの駅で待ち合わせることになった。普段なら通過する駅に降りた茉白は、朝別れた時と同じ服装だった。遅れて到着した俺を見つけると、片手を小さく上げて振った。
「今日は帰りが遅くなるから先に寝ててくれ」
「うん、そうだこれ」
飲み会の日が決まった時から言っている言葉を言うと、彼女は微笑みながら可愛らしく頷いた。そしていつも持っている通勤用のバッグから、飲み過ぎた時に飲む茶色の瓶に入ったドリンクを取り出して俺に渡した。
「ありがとう」
「家、間違えちゃダメだからね」
くすくすと笑って、以前自分の家に帰ったつもりが、彼女の家に押しかけた時の事を茉白は思い出して笑う。
「…さすがにもう間違えん」
あの時はすごく酔っていたが、今はあんな風には飲まないと反省している。しかし記憶が飛ぶまで飲むのは初めてだったと、今さら思った。
待ち合わせの時間まで、あと少しだと気にした茉白は、駅から出てくる人達を見て、知り合いがいないかを確認していた。
「…そろそろ、だよね」
別れ難い気持ちを滲ませた茉白を可愛いと、口元が勝手に緩くなる。
「そう…だ…な」
俺はたまたま視界の先に入った茉白の後ろ──50m先の改札から出て来てキョロキョロと辺りを見渡している知ってる男を見つけてしまって、すかさず頭の中の悪魔が囁いた。茉白に視線を戻して、彼女の頬を左手で添えて、親指を彼女の唇のラインをなぞる。
「…ここでするの?」
瞳を潤ませながら、うっとりと俺を見上げて、俺に問いかける茉白は少し期待してるみたいだ。
「ああ、誰も知ってるはいない」
彼女の顎を少しだけ上げて、俺から顔を近づけ屈むと、そっと彼女の瞼が閉じられ、綺麗な瞳が見れなくなり残念な気持ちが溢れてくる。そっと唇が重なると、俺は薄く口を開けて彼女の上唇を甘噛みする。すると、茉白は口を開けて俺の舌を受け入れた。ねっとりと絡まる舌と、味わうように彼女の口内を舌で這わしていると、彼女の頬に置いた手に茉白の手が重なる。
軽く舌を吸い付くと、俺は名残惜しく離れた。目を開けると、茉白はまだ瞼を閉じていたので、軽く唇を押し当て啄みながら、茉白の背後にいた男をギロッと睨むと、男は俺達を見て青ざめて立っていた。
茉白の方に視線を戻して、濡れた唇を親指の腹で拭うと、茉白は瞼を開けた。
「…早く帰って来てね」
茉白の掠れた甘えた声に、このまま帰りたくなったが、俺にはまだやるべき事があった。
「ああ、今日は早く帰る」
お互いの額を合わせ、茉白の鼻の横に自分の鼻を擦りつける。
「…多分、そろそろ部下達が来るから」
「分かった、少しだけお店で時間潰してから改札に入る」
彼女の頬にキスをしながら、今すぐ抱きしめたい欲とさすがにもうそろそろあの男以外の知り合いがくるから止めようと冷静な自分が戦い、結局は冷静な自分が勝った。
「…寄り道するなよ、声を掛けられても付いて行くな、無視しろ」
「ふふっ、うん」
子供に言い聞かせるように言うと茉白は笑い、俺の前からするっと離れ、手を横に振りながら改札とは反対のお店へと入って行った。俺は彼女がお店の中に入ったのを確認して、待ち合わせ場所へと向かった。
***************
「…あれ安藤どうした?テンション低いな」
飲み会が始まってある程度みんなが酔うと、新入社員の安藤の様子がおかしな事に清水が気がついた。
「いや、なんでもないっす」
「そうか」
青白い顔の安藤がそう答えると、清水は興味を無くしたのか隣の社員と話始めた。飲み会に参加する7人くらいが、入れ替わり立ち替わりテーブル内に座る場所を変えると、俺は安藤の横に座った。
「…どうだ、飲んでるか」
「あっ…はい」
いつもの威勢のよさはどこに行ったのか、シュンとしていて大人しい。普段ならここで仕事のアドバイスなどが始まるが、今は飲み会だから仕事関係の話をあえてする意味もなく、俺は生ビールを口にする。
「あの、矢須川課長って…彼女…いるんですか」
シンと重い空気が漂っているのは俺と安藤だけで、回りは笑い楽しく過ごしていた。そんな時に、安藤から話しかけられ、
「ああ、いるよ」
「…あの…それは」
さっき待ち合わせ場所へと向かう前に、俺が彼女と何をしていたかなんてもう知っている安藤は、相手が誰だかも見たはずだ。だが、俺は茉白の話を他の男とするつもりは無かった。
「…俺はな、彼女の事になると、自分でもびっくりするくらい心が狭いみたいなんだよ……彼女から聞いてるよ」
声のトーンを変えずに淡々と話すと、安藤の顔がさらに青くなる。
「あのっ、俺、知らなくて」
「…まだ誰にも言ってないからな、お前は、頭の回転が早いからすぐに分かると思うけど…な」
ワントーン声の音を落とすと、安藤は顔を歪め泣きそうになる。
「…あっ、あ」
ぱくぱく口を動かし何か言いたいのに、何を言っていいのかわからないし考えてる風だった。
「もういいさ、気をつけろよ」
いつも部下と話す時と同じ話し方と顔を作ると、安藤はほっとして頷いた。
「すいません」
「何?安藤、課長の地雷に触れた?」
「…俺に地雷がある言い方すんな、お前らの方が多いだろ」
俺達のやり取りを知らない部下が俺達の間に入ると、その場の空気は霧散して、いつもの飲み会のノリとなる。
飲み会が終盤に差し掛かると、安藤は若干の明るさを取り戻したが、いつもよりも元気はなく、空元気を出しているみたいだった。
「…俺はそろそろ帰るよ、お前ら飲み過ぎんなよ」
「はーい、お疲れ様でしたー」
「ゴチでーす」
ほろ酔いの部下達を置いて、俺は先に帰る事にした。上司がいつまでもいると、社員同士親睦が深めないからだ。
時間制限ありの飲み放題コースだが、先に注文した料理と飲み物の分を支払った。俺が帰った後の料理や飲み放題のコースの時間が終わった後に注文したアルコール類は自分達で払うか、後日俺に請求がくるだろうと思いながら、レジの店員にまだテーブルに人が残っている事を伝えた。
***************
電車もまだ走ってる時間だっあが、早く家に着きたくてタクシーで家に帰ると、玄関の電気以外は消えていた。
スマホを見るとまだ23時になったばかりで、寝るには早い時間だと思って廊下を進むとリビングの明かりも消えていた。
「茉白?」
いつもの定位置である窓際にもいなく、彼女の名前を呼んでも返事がないため、ソファーに荷物を置いて、彼女を探す事にした。寝室、書斎を順に巡っても彼女は居なく、お風呂へと向かうと、ドアの隙間から微かな光が漏れているのに気がついた。そして、そこからシャワーの流れる音も聞こえたので、お風呂に入ったのかと分かった。
──俺も入るかな
洗面所にある扉を開いて、お風呂場の扉をノックしたら、水音が止み、お風呂場の扉のロックが解除され扉が開いた。
「あれ?おかえりなさい、早かったね」
ひょっこりと顔を出して、お風呂の扉で身体を隠してる姿に、もう何度も見てるのに恥ずかしいのかと心の中でほくそ笑む。
「ああ、切り上げてきた、なぁ、俺も入っていいか?」
元々一緒に入るつもりだったが、一応茉白に聞くと茉白の頬は赤くなり、こくん、と頷いた。濡れた髪は首筋と肩にくっついているし、シャワーを止めたばかりだから、身体が濡れてるし、熱い水で身体を洗ったからか、ほんのりとピンクになっていて目を奪われてしまう。
着ていたシャツを脱ごうとすると、茉白の手が伸びて俺の胸元のシャツを掴み、彼女は弱い力で俺を引くと、引き寄せられるように俺は着ていた服のままお風呂場へと入った。
過去の恋人の時は、ここまでこんな思いをしていたかと言われたら、してないとはっきりと言えた。
「課長、今日の営業トーク最高でした!俺達が言ってもいい返事くれなかったのに、課長が喋るだけでスムーズにいけましたし」
「そうですよ!まじで凄いです!」
休み明けに、なかなか取引先の案件が進まないから、どうなっているんだと新入社員の安藤と、安藤の指導社員の清水に聞いたら、2人はお手上げ状態だったので、普段ならそんな事はしないが、面識のある取引先の人と挨拶がてら話そうと、俺も取引先へと同行する事にした。
「…まったく、おだてたって今日の飲み会の場所は変更しないぞ」
「そんなつもりじゃないですよー!」
「…俺はちょっと期待しちゃいました」
月に一度行われる飲み会は決まって安い居酒屋で、場所を変えようかと毎回話が出るが、具体的な場所の選別までは行ってなかった。
──前なら色々調べたが…それよりも…
時間が足りないのだ…仕事もそうだが、茉白といると彼女が俺の中心になるから、他の事を──緊急事態の仕事以外は極力プライベートな時間は邪魔されたくなかった。本当におかしな話だが、茉白を足の間に座らせて背後から抱きしめているだけで、俺の疲れが吹き飛んでいた。
なら部下が他の所を探せばいいだろ、と参加する後輩や部下に言っても、あいつらは無料で飲めればいいやと、いっそ清々しいほどに素直に答える。
「じゃあ、この後他に一社行くから」
「はいっ、俺たちは先に会社に戻って、今日先方に言われた件まとめます」
「ありがとうございました、では後ほど」
安藤が答え、清水も頷くと、俺は片手を上げて、2人に背を向けて歩き出した。
──俺も大人だな
自分の彼女に声を掛けてる安藤の前でも、普通に話してる。もう少し何か安藤に対して、茉白のことで俺は言うと思ったが、意外とここまで仕事の話以外はしていない。
歩きながらふと、茉白に会いたいと思った。
──今日は飲み会だし、俺は居酒屋に直行する予定だから、茉白と会うのは家に帰った時だけだ
そう思うと、少しでもいいから会いたいと思って、俺はポケットにしまったスマホを取り出してSNSのメッセージアプリを開いた。
***************
「あっ薫っ」
「…悪いな、無理矢理呼び出しちまって」
茉白とメッセージのやり取りをしたら、居酒屋の最寄りの駅で待ち合わせることになった。普段なら通過する駅に降りた茉白は、朝別れた時と同じ服装だった。遅れて到着した俺を見つけると、片手を小さく上げて振った。
「今日は帰りが遅くなるから先に寝ててくれ」
「うん、そうだこれ」
飲み会の日が決まった時から言っている言葉を言うと、彼女は微笑みながら可愛らしく頷いた。そしていつも持っている通勤用のバッグから、飲み過ぎた時に飲む茶色の瓶に入ったドリンクを取り出して俺に渡した。
「ありがとう」
「家、間違えちゃダメだからね」
くすくすと笑って、以前自分の家に帰ったつもりが、彼女の家に押しかけた時の事を茉白は思い出して笑う。
「…さすがにもう間違えん」
あの時はすごく酔っていたが、今はあんな風には飲まないと反省している。しかし記憶が飛ぶまで飲むのは初めてだったと、今さら思った。
待ち合わせの時間まで、あと少しだと気にした茉白は、駅から出てくる人達を見て、知り合いがいないかを確認していた。
「…そろそろ、だよね」
別れ難い気持ちを滲ませた茉白を可愛いと、口元が勝手に緩くなる。
「そう…だ…な」
俺はたまたま視界の先に入った茉白の後ろ──50m先の改札から出て来てキョロキョロと辺りを見渡している知ってる男を見つけてしまって、すかさず頭の中の悪魔が囁いた。茉白に視線を戻して、彼女の頬を左手で添えて、親指を彼女の唇のラインをなぞる。
「…ここでするの?」
瞳を潤ませながら、うっとりと俺を見上げて、俺に問いかける茉白は少し期待してるみたいだ。
「ああ、誰も知ってるはいない」
彼女の顎を少しだけ上げて、俺から顔を近づけ屈むと、そっと彼女の瞼が閉じられ、綺麗な瞳が見れなくなり残念な気持ちが溢れてくる。そっと唇が重なると、俺は薄く口を開けて彼女の上唇を甘噛みする。すると、茉白は口を開けて俺の舌を受け入れた。ねっとりと絡まる舌と、味わうように彼女の口内を舌で這わしていると、彼女の頬に置いた手に茉白の手が重なる。
軽く舌を吸い付くと、俺は名残惜しく離れた。目を開けると、茉白はまだ瞼を閉じていたので、軽く唇を押し当て啄みながら、茉白の背後にいた男をギロッと睨むと、男は俺達を見て青ざめて立っていた。
茉白の方に視線を戻して、濡れた唇を親指の腹で拭うと、茉白は瞼を開けた。
「…早く帰って来てね」
茉白の掠れた甘えた声に、このまま帰りたくなったが、俺にはまだやるべき事があった。
「ああ、今日は早く帰る」
お互いの額を合わせ、茉白の鼻の横に自分の鼻を擦りつける。
「…多分、そろそろ部下達が来るから」
「分かった、少しだけお店で時間潰してから改札に入る」
彼女の頬にキスをしながら、今すぐ抱きしめたい欲とさすがにもうそろそろあの男以外の知り合いがくるから止めようと冷静な自分が戦い、結局は冷静な自分が勝った。
「…寄り道するなよ、声を掛けられても付いて行くな、無視しろ」
「ふふっ、うん」
子供に言い聞かせるように言うと茉白は笑い、俺の前からするっと離れ、手を横に振りながら改札とは反対のお店へと入って行った。俺は彼女がお店の中に入ったのを確認して、待ち合わせ場所へと向かった。
***************
「…あれ安藤どうした?テンション低いな」
飲み会が始まってある程度みんなが酔うと、新入社員の安藤の様子がおかしな事に清水が気がついた。
「いや、なんでもないっす」
「そうか」
青白い顔の安藤がそう答えると、清水は興味を無くしたのか隣の社員と話始めた。飲み会に参加する7人くらいが、入れ替わり立ち替わりテーブル内に座る場所を変えると、俺は安藤の横に座った。
「…どうだ、飲んでるか」
「あっ…はい」
いつもの威勢のよさはどこに行ったのか、シュンとしていて大人しい。普段ならここで仕事のアドバイスなどが始まるが、今は飲み会だから仕事関係の話をあえてする意味もなく、俺は生ビールを口にする。
「あの、矢須川課長って…彼女…いるんですか」
シンと重い空気が漂っているのは俺と安藤だけで、回りは笑い楽しく過ごしていた。そんな時に、安藤から話しかけられ、
「ああ、いるよ」
「…あの…それは」
さっき待ち合わせ場所へと向かう前に、俺が彼女と何をしていたかなんてもう知っている安藤は、相手が誰だかも見たはずだ。だが、俺は茉白の話を他の男とするつもりは無かった。
「…俺はな、彼女の事になると、自分でもびっくりするくらい心が狭いみたいなんだよ……彼女から聞いてるよ」
声のトーンを変えずに淡々と話すと、安藤の顔がさらに青くなる。
「あのっ、俺、知らなくて」
「…まだ誰にも言ってないからな、お前は、頭の回転が早いからすぐに分かると思うけど…な」
ワントーン声の音を落とすと、安藤は顔を歪め泣きそうになる。
「…あっ、あ」
ぱくぱく口を動かし何か言いたいのに、何を言っていいのかわからないし考えてる風だった。
「もういいさ、気をつけろよ」
いつも部下と話す時と同じ話し方と顔を作ると、安藤はほっとして頷いた。
「すいません」
「何?安藤、課長の地雷に触れた?」
「…俺に地雷がある言い方すんな、お前らの方が多いだろ」
俺達のやり取りを知らない部下が俺達の間に入ると、その場の空気は霧散して、いつもの飲み会のノリとなる。
飲み会が終盤に差し掛かると、安藤は若干の明るさを取り戻したが、いつもよりも元気はなく、空元気を出しているみたいだった。
「…俺はそろそろ帰るよ、お前ら飲み過ぎんなよ」
「はーい、お疲れ様でしたー」
「ゴチでーす」
ほろ酔いの部下達を置いて、俺は先に帰る事にした。上司がいつまでもいると、社員同士親睦が深めないからだ。
時間制限ありの飲み放題コースだが、先に注文した料理と飲み物の分を支払った。俺が帰った後の料理や飲み放題のコースの時間が終わった後に注文したアルコール類は自分達で払うか、後日俺に請求がくるだろうと思いながら、レジの店員にまだテーブルに人が残っている事を伝えた。
***************
電車もまだ走ってる時間だっあが、早く家に着きたくてタクシーで家に帰ると、玄関の電気以外は消えていた。
スマホを見るとまだ23時になったばかりで、寝るには早い時間だと思って廊下を進むとリビングの明かりも消えていた。
「茉白?」
いつもの定位置である窓際にもいなく、彼女の名前を呼んでも返事がないため、ソファーに荷物を置いて、彼女を探す事にした。寝室、書斎を順に巡っても彼女は居なく、お風呂へと向かうと、ドアの隙間から微かな光が漏れているのに気がついた。そして、そこからシャワーの流れる音も聞こえたので、お風呂に入ったのかと分かった。
──俺も入るかな
洗面所にある扉を開いて、お風呂場の扉をノックしたら、水音が止み、お風呂場の扉のロックが解除され扉が開いた。
「あれ?おかえりなさい、早かったね」
ひょっこりと顔を出して、お風呂の扉で身体を隠してる姿に、もう何度も見てるのに恥ずかしいのかと心の中でほくそ笑む。
「ああ、切り上げてきた、なぁ、俺も入っていいか?」
元々一緒に入るつもりだったが、一応茉白に聞くと茉白の頬は赤くなり、こくん、と頷いた。濡れた髪は首筋と肩にくっついているし、シャワーを止めたばかりだから、身体が濡れてるし、熱い水で身体を洗ったからか、ほんのりとピンクになっていて目を奪われてしまう。
着ていたシャツを脱ごうとすると、茉白の手が伸びて俺の胸元のシャツを掴み、彼女は弱い力で俺を引くと、引き寄せられるように俺は着ていた服のままお風呂場へと入った。
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