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離れがたい時間の始まり1
しおりを挟む『そろそろ帰るから』
と気の利いたともいえるし、空気の読めないともいえる電話があり、私達は服を整え部屋から出た。
本当はまだ一緒に居たかったのだが、合宿の旅館で2人きりになる場所なんてどこにもなかったので、渋々部屋に戻ることにした。
「また明日…」
「おやっ…んっ」
彼は私を部屋の前まで送ると、おやすみと言う前に私の口を塞ぎ舌を絡めた濃厚な最後のキスをして別れた。
部屋に戻った私は悶々とした気分を無くすため、お風呂に入り浴衣に着替えてお布団に入って寝ることにしたのだった。
*********************
帰る日。剣道部指定のシャツとハーフパンツになった部員達と、一緒に朝早くからバスに乗り込む。
バスの中ではやっと帰れるという安堵感からか、疲れなのか分からないけど、部員達は寝ていたりスマホを触っていたりしていた。
行きのバスと同じでマネージャー達と座っていた私は、隣に座る舞ちゃんが寝ていたので手持ち無沙汰になり、スマホゲームをしていた。
するとゲーム中に新着メッセージが届いたと通知が表示されたので、メッセージアプリを開くと聡から新着メッセージが届いていたのだった。
『好き』
ひと言書かれたメッセージと、ウサギのゆるキャラがハートを持っているスタンプが送られていた。
ふっと、自然と笑みが溢れ、頭で考えるよりも先に私の指が動く。
『私も好き』
と、投げキッスをするウサギのゆるキャラのGIF動画を一緒に送り返した。その後すぐメッセージ画面に既読マークが付いたので、頭を上げて彼の座る方へ視線を向けると、聡も私を見ていた。思わず笑みが溢れると聡も笑い、隣に座る舞ちゃんが身じろぎしたので、慌てて座り直した。
すると、またスマホが震えメッセージが届いた事を知る。
『可愛い』
メッセージを見るとまた私を喜ばせる返信で、すぐさま私も彼に返信をする。
『聡もカッコいい』
学校付近に着くまでの時間、お互い『好き』とハートを持ったキャラ達のスタンプを飽きる事なく送り合っていた。
***********************
お昼になる前にバスを降りて軽い別れの挨拶をした後は、そのまま解散となった。パラパラと帰って行く部員達とマネージャー達。マネージャー達とバイバイと言って挨拶した後、荷物を持って当たり前のように聡の近くに行くと、私を待ってくれていた。
「…お待たせ」
「…おう」
先程までのバカップルのメッセージのやりとりは楽しくて胸がキュンキュンとしたが、実際会うと照れくさくて、口調が素っ気なくなってしまう。しかし、彼も照れているのか、彼も無口となる。
歩き始めた彼の横に並び、解散場所から数分後には彼の腕に自分の腕を絡めて歩いていた。わざと…ではないが、少し離れていた時間が寂しくて、ぎゅうぎゅうと彼の腕を抱きしめていると、聡が立ち止まった。
「…?どうしたの?」
「…それ…誘ってるの?」
「え?…はっ!違っ…う」
顔を右手で覆い、真っ赤な顔をしている聡。彼の言っている事を理解した私は誤解だと、パッと手を離したが…思い直してギュッと腕に抱きついた。
「…誘って…ないけど、くっついていたいの」
「…………………愛花」
私の世紀の告白に、たっぷり5分は固まっていた聡は、そうかと、だけ告げて歩き出した。
送るからと言われ、私の住むマンションへとやって来た聡。マンションのエントランスで帰ろうとする彼を、
「暑いから何か飲んでいく?」
と無理矢理家に上がらせて、私の部屋へと押し込めた。
冷蔵庫にあった麦茶のピッチャーと氷入りのグラスを2つお盆に載せて部屋に戻ると、電気をつけ忘れていた事に気がついた。そんな事お構いなしに聡は目を閉じて、私のベッドに腰掛けてクーラーの効いた部屋で涼んでいた。
ピンクカーテンが半分閉まり、白い家具と木製の白いベッドが並ぶ部屋。ベッドのそばにあるミニテーブルにお盆をのせて彼の前へと行き、ギシッと鳴るベッドに膝をつけて聡に向かい合い跨って座る。
聡は目を開けると私の腰を支え、私の頬を撫でる。
「…今日…親は仕事…だから…夜まで…いない…よ…?」
「…そうか」
親指の腹で何度も何度も頬を撫でる聡の首に腕を回し、額を合わせて親の不在を告げた。簡潔に素っ気ないとも取れる感じで返事をした聡は、私の口を塞ぎ荒々しく口内に自分の舌を入れた。
彼の舌に自分の舌を絡めると、夢中になり貪欲に求め合う。どのくらい経ったのか、ベッドがギシッと鳴ると同時に身体が浮遊感を感じて、目を開けると私に覆いかぶさって私を見下ろす聡がいた。
さっきまで彼の上にいたはずが、気が付いたらベッドの上に仰向けに寝かされていた。
薄暗い部屋の私の上で、性急にTシャツを脱ぐ聡の筋肉で覆われた上半身に凸凹の影が出来る。私も身体を捩りながら両手をクロスさせてTシャツの裾を握り、上へとあげて脱ぐと、まだ全部脱いでいないのに聡は屈み私のお腹へと舌を這わす。
「ひゃっ…っ!」
Tシャツを脱いでいる途中だったため、急にお腹ーーへその周りを舐められた私は、びっくりして変な声が出た。
お腹全体を味わうように舌でなぞる聡。すぐにやってきたゾワゾワとする快感に気を取られないように、自分を叱咤しながらTシャツを脱ぐ私。
Tシャツから頭、腕と脱いで手首に絡まったシャツを乱暴に投げた。どこかでパサリと聞こえた音を無視して、熱心に胸のすぐそばまで来た聡の頭の短髪に自分の指を絡めたると、舌を這わすのをやめた聡と目が合う。
「…愛花」
「…聡」
ただお互いの名を呼び合い見つめ合っていた2人は、軽く唇を重ねると、また動き出した。
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