8 / 14
独占欲
しおりを挟む
朝起きて黒いTシャツとジャージに着替え、ポニーテールにしていると、舞ちゃんが慌て始めた。
「まっ…愛花ちゃっんっ」
その声で周りのマネージャー達も私に視線を向けて、わっと騒ぎ出す。
「愛花ちゃんっ凄い!」
「初めて見た」
とキャッキャッ騒ぐ彼女達に、どうして騒ぐのか分からなくて、えっ、えっ、と小さな声しか出ない。舞ちゃんが自分の首を指差しながら、
「首っ、く・び」
と言ったのでまさかと思い、この部屋にある洗面所へと向かい、大きな鏡の前に立つ。朝起きて洗面台に立った時と変わらない自分の姿が映し出されたのだが、朝には気が付かなかった首回りに蚊に刺されたような赤い印が無数に付いていた。
バッと自分の首を両手で置き、顔が真っ赤になった私。
「ファンデで隠れるよ?」
「まだ朝食に行かなくて良かったね」
と洗面所の扉から控えめな声が聞こえて、恥ずかしくて叫びたくなるのをぐっと堪えた。
ーー信じらんない!信じられない!
昨日は部屋にあるお風呂に入っていたし、首元なんかじっと見ていなかったから気がつかなかったのだ。
恥ずかしくて言葉を失った私を周りのマネージャー達は一生懸命励まし化粧品の入った私のバッグを持ってきてくれたのだった。
**********************
「…か…なかっ…愛花っ!」
今日また高校の剣道場を借りて午前中は対抗戦などをしていた。その間チラチラと視線を寄越す聡をずっと無視していた。彼が私のそばにくると、ささっと違う所にすれ違いで離れていたのだが、そろそろ限界みたいだ。
お昼のために旅館に戻る道の途中、マネージャー達の後をついていた私の腕を掴んだ。
「あー愛花ちゃん、先に戻ってるね」
と先輩達と舞ちゃんは、ご愁傷様と言う顔をして先に戻ってしまった。残された私と聡に降り注ぐ真夏の日差し。
「…何」
「怒ってるのか?…何か嫌なことあったのか?」
ムッと唇を結び、彼の顔を見たくなくて、ツンと顔を背ける。私の前に回ってきた聡は私の顔を覗き込む。心配そうな顔に胸がきゅんとときめいて顔が綻んでしまうのだが、今朝の事を思い出して眉間に皺を寄せた。
「愛花」
私の顎を持ち上げた聡は、私の名を呼ぶ。離してくれなそうな雰囲気に諦めて、ため息をついた。
「…跡、残したよね、見える所に昨日」
「跡?…ああ、付けたけど…?」
あっさりと認めた聡は、なんでそんな事を聞くんだ?と不思議そうな顔をしていた。
「はっ…恥ずかしいっんだけどっ!あっ朝、へっ部屋のみんなに見られてっ!」
しどろもどろになりながらも今朝の事を伝えると、あー、と低い声を出した聡は、ファンデで隠した跡を顎に触れてない指で辿る。
「だからなかったのか」
昨日の夜を思い出してゾクゾクっとしたが、キッと彼を睨んだ。
「ひっ酷いよっ!」
「何で?自分の立場わかってる?」
「…立場…?」
キョトンとする私を、聡は私の顎を親指の腹で撫でる。
「ああ、昨日ひと言愛花に声を掛けたい男ばかりだったの気がつかなかったのか?」
「…昨日…?全然声かけられてないよ?」
昨日の事を思い出し、ずっとマネージャーか顧問としか話していないと伝える。しかし、
「それは、みんなが愛花を守っていたからな」
と愛花を1人にさせず、顧問も目を光らせていた、らしいのだ。
「…そうなの、でも私には聡がいるし」
「そうじゃなくて、まあ、そうだけど」
と嬉しそうに言った聡。
「…だからって跡をつける意味がわからないんだけど!」
みんなが分かるように印をつけるのを許すわけにはいかない。
「そうしないと、彼氏がいるって分からないだろ!」
俺のものって言う独占欲丸出しの聡に、うっとりと見惚れてしまう。
「…それは、私の事が好きってことかな」
「ぅっ…」
もう既にキスもしたし、首を舐められもしたけど、聡の気持ちをはっきりと言われた事はまだ、ないのだ。
顎を掴む聡の手首を掴んで期待の眼差しを向けると、目元が赤くなった聡は、しばらく黙ってしまったのだが…
「…っそうだよっ!…好き…だ」
観念した聡は半ば叫ぶように告げる。その告白に嬉しくなった私は彼の首に腕を回し、抱きついて喜んだ。
「まっ…愛花ちゃっんっ」
その声で周りのマネージャー達も私に視線を向けて、わっと騒ぎ出す。
「愛花ちゃんっ凄い!」
「初めて見た」
とキャッキャッ騒ぐ彼女達に、どうして騒ぐのか分からなくて、えっ、えっ、と小さな声しか出ない。舞ちゃんが自分の首を指差しながら、
「首っ、く・び」
と言ったのでまさかと思い、この部屋にある洗面所へと向かい、大きな鏡の前に立つ。朝起きて洗面台に立った時と変わらない自分の姿が映し出されたのだが、朝には気が付かなかった首回りに蚊に刺されたような赤い印が無数に付いていた。
バッと自分の首を両手で置き、顔が真っ赤になった私。
「ファンデで隠れるよ?」
「まだ朝食に行かなくて良かったね」
と洗面所の扉から控えめな声が聞こえて、恥ずかしくて叫びたくなるのをぐっと堪えた。
ーー信じらんない!信じられない!
昨日は部屋にあるお風呂に入っていたし、首元なんかじっと見ていなかったから気がつかなかったのだ。
恥ずかしくて言葉を失った私を周りのマネージャー達は一生懸命励まし化粧品の入った私のバッグを持ってきてくれたのだった。
**********************
「…か…なかっ…愛花っ!」
今日また高校の剣道場を借りて午前中は対抗戦などをしていた。その間チラチラと視線を寄越す聡をずっと無視していた。彼が私のそばにくると、ささっと違う所にすれ違いで離れていたのだが、そろそろ限界みたいだ。
お昼のために旅館に戻る道の途中、マネージャー達の後をついていた私の腕を掴んだ。
「あー愛花ちゃん、先に戻ってるね」
と先輩達と舞ちゃんは、ご愁傷様と言う顔をして先に戻ってしまった。残された私と聡に降り注ぐ真夏の日差し。
「…何」
「怒ってるのか?…何か嫌なことあったのか?」
ムッと唇を結び、彼の顔を見たくなくて、ツンと顔を背ける。私の前に回ってきた聡は私の顔を覗き込む。心配そうな顔に胸がきゅんとときめいて顔が綻んでしまうのだが、今朝の事を思い出して眉間に皺を寄せた。
「愛花」
私の顎を持ち上げた聡は、私の名を呼ぶ。離してくれなそうな雰囲気に諦めて、ため息をついた。
「…跡、残したよね、見える所に昨日」
「跡?…ああ、付けたけど…?」
あっさりと認めた聡は、なんでそんな事を聞くんだ?と不思議そうな顔をしていた。
「はっ…恥ずかしいっんだけどっ!あっ朝、へっ部屋のみんなに見られてっ!」
しどろもどろになりながらも今朝の事を伝えると、あー、と低い声を出した聡は、ファンデで隠した跡を顎に触れてない指で辿る。
「だからなかったのか」
昨日の夜を思い出してゾクゾクっとしたが、キッと彼を睨んだ。
「ひっ酷いよっ!」
「何で?自分の立場わかってる?」
「…立場…?」
キョトンとする私を、聡は私の顎を親指の腹で撫でる。
「ああ、昨日ひと言愛花に声を掛けたい男ばかりだったの気がつかなかったのか?」
「…昨日…?全然声かけられてないよ?」
昨日の事を思い出し、ずっとマネージャーか顧問としか話していないと伝える。しかし、
「それは、みんなが愛花を守っていたからな」
と愛花を1人にさせず、顧問も目を光らせていた、らしいのだ。
「…そうなの、でも私には聡がいるし」
「そうじゃなくて、まあ、そうだけど」
と嬉しそうに言った聡。
「…だからって跡をつける意味がわからないんだけど!」
みんなが分かるように印をつけるのを許すわけにはいかない。
「そうしないと、彼氏がいるって分からないだろ!」
俺のものって言う独占欲丸出しの聡に、うっとりと見惚れてしまう。
「…それは、私の事が好きってことかな」
「ぅっ…」
もう既にキスもしたし、首を舐められもしたけど、聡の気持ちをはっきりと言われた事はまだ、ないのだ。
顎を掴む聡の手首を掴んで期待の眼差しを向けると、目元が赤くなった聡は、しばらく黙ってしまったのだが…
「…っそうだよっ!…好き…だ」
観念した聡は半ば叫ぶように告げる。その告白に嬉しくなった私は彼の首に腕を回し、抱きついて喜んだ。
3
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
転生したら巨乳美人だったので、悪女になってでも好きな人を誘惑します~名ばかり婚約者の第一王子の執着溺愛は望んでませんっ!~
水野恵無
恋愛
「君の婚約者が誰なのか、はっきりさせようか」
前世で友達と好きな人が結婚するという報告を聞いて失恋した直後に、私は事故で死んだ。
自分の気持ちを何も言えないまま後悔するのはもう嫌。
そんな強い決意を思い出して、私は悪女になってでも大好きな第二王子を身体で誘惑しようとした。
なのに今まで全然交流の無かった婚約者でもある第一王子に絡まれるようになってしまって。
突然キスマークを付けられたり、悪女を演じていたのがバレてしまったりと、振り回されてしまう。
第二王子の婚約者候補も現れる中、やっと第二王子と良い雰囲気になれたのに。
邪魔しにきた第一王子に私は押し倒されていた――。
前世を思い出した事で積極的に頑張ろうとする公爵令嬢と、そんな公爵令嬢に惹かれて攻めていく第一王子。
第一王子に翻弄されたり愛されたりしながら、公爵令嬢が幸せを掴み取っていくお話です。
第一王子は表面上は穏やか風ですが内面は執着系です。
性描写を含む話には*が付いています。
※ムーンライトノベルズ様でも掲載しています
【2/13にアルファポリス様より書籍化いたします】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。
そんな彼に見事に捕まる主人公。
そんなお話です。
ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる