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独占欲
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朝起きて黒いTシャツとジャージに着替え、ポニーテールにしていると、舞ちゃんが慌て始めた。
「まっ…愛花ちゃっんっ」
その声で周りのマネージャー達も私に視線を向けて、わっと騒ぎ出す。
「愛花ちゃんっ凄い!」
「初めて見た」
とキャッキャッ騒ぐ彼女達に、どうして騒ぐのか分からなくて、えっ、えっ、と小さな声しか出ない。舞ちゃんが自分の首を指差しながら、
「首っ、く・び」
と言ったのでまさかと思い、この部屋にある洗面所へと向かい、大きな鏡の前に立つ。朝起きて洗面台に立った時と変わらない自分の姿が映し出されたのだが、朝には気が付かなかった首回りに蚊に刺されたような赤い印が無数に付いていた。
バッと自分の首を両手で置き、顔が真っ赤になった私。
「ファンデで隠れるよ?」
「まだ朝食に行かなくて良かったね」
と洗面所の扉から控えめな声が聞こえて、恥ずかしくて叫びたくなるのをぐっと堪えた。
ーー信じらんない!信じられない!
昨日は部屋にあるお風呂に入っていたし、首元なんかじっと見ていなかったから気がつかなかったのだ。
恥ずかしくて言葉を失った私を周りのマネージャー達は一生懸命励まし化粧品の入った私のバッグを持ってきてくれたのだった。
**********************
「…か…なかっ…愛花っ!」
今日また高校の剣道場を借りて午前中は対抗戦などをしていた。その間チラチラと視線を寄越す聡をずっと無視していた。彼が私のそばにくると、ささっと違う所にすれ違いで離れていたのだが、そろそろ限界みたいだ。
お昼のために旅館に戻る道の途中、マネージャー達の後をついていた私の腕を掴んだ。
「あー愛花ちゃん、先に戻ってるね」
と先輩達と舞ちゃんは、ご愁傷様と言う顔をして先に戻ってしまった。残された私と聡に降り注ぐ真夏の日差し。
「…何」
「怒ってるのか?…何か嫌なことあったのか?」
ムッと唇を結び、彼の顔を見たくなくて、ツンと顔を背ける。私の前に回ってきた聡は私の顔を覗き込む。心配そうな顔に胸がきゅんとときめいて顔が綻んでしまうのだが、今朝の事を思い出して眉間に皺を寄せた。
「愛花」
私の顎を持ち上げた聡は、私の名を呼ぶ。離してくれなそうな雰囲気に諦めて、ため息をついた。
「…跡、残したよね、見える所に昨日」
「跡?…ああ、付けたけど…?」
あっさりと認めた聡は、なんでそんな事を聞くんだ?と不思議そうな顔をしていた。
「はっ…恥ずかしいっんだけどっ!あっ朝、へっ部屋のみんなに見られてっ!」
しどろもどろになりながらも今朝の事を伝えると、あー、と低い声を出した聡は、ファンデで隠した跡を顎に触れてない指で辿る。
「だからなかったのか」
昨日の夜を思い出してゾクゾクっとしたが、キッと彼を睨んだ。
「ひっ酷いよっ!」
「何で?自分の立場わかってる?」
「…立場…?」
キョトンとする私を、聡は私の顎を親指の腹で撫でる。
「ああ、昨日ひと言愛花に声を掛けたい男ばかりだったの気がつかなかったのか?」
「…昨日…?全然声かけられてないよ?」
昨日の事を思い出し、ずっとマネージャーか顧問としか話していないと伝える。しかし、
「それは、みんなが愛花を守っていたからな」
と愛花を1人にさせず、顧問も目を光らせていた、らしいのだ。
「…そうなの、でも私には聡がいるし」
「そうじゃなくて、まあ、そうだけど」
と嬉しそうに言った聡。
「…だからって跡をつける意味がわからないんだけど!」
みんなが分かるように印をつけるのを許すわけにはいかない。
「そうしないと、彼氏がいるって分からないだろ!」
俺のものって言う独占欲丸出しの聡に、うっとりと見惚れてしまう。
「…それは、私の事が好きってことかな」
「ぅっ…」
もう既にキスもしたし、首を舐められもしたけど、聡の気持ちをはっきりと言われた事はまだ、ないのだ。
顎を掴む聡の手首を掴んで期待の眼差しを向けると、目元が赤くなった聡は、しばらく黙ってしまったのだが…
「…っそうだよっ!…好き…だ」
観念した聡は半ば叫ぶように告げる。その告白に嬉しくなった私は彼の首に腕を回し、抱きついて喜んだ。
「まっ…愛花ちゃっんっ」
その声で周りのマネージャー達も私に視線を向けて、わっと騒ぎ出す。
「愛花ちゃんっ凄い!」
「初めて見た」
とキャッキャッ騒ぐ彼女達に、どうして騒ぐのか分からなくて、えっ、えっ、と小さな声しか出ない。舞ちゃんが自分の首を指差しながら、
「首っ、く・び」
と言ったのでまさかと思い、この部屋にある洗面所へと向かい、大きな鏡の前に立つ。朝起きて洗面台に立った時と変わらない自分の姿が映し出されたのだが、朝には気が付かなかった首回りに蚊に刺されたような赤い印が無数に付いていた。
バッと自分の首を両手で置き、顔が真っ赤になった私。
「ファンデで隠れるよ?」
「まだ朝食に行かなくて良かったね」
と洗面所の扉から控えめな声が聞こえて、恥ずかしくて叫びたくなるのをぐっと堪えた。
ーー信じらんない!信じられない!
昨日は部屋にあるお風呂に入っていたし、首元なんかじっと見ていなかったから気がつかなかったのだ。
恥ずかしくて言葉を失った私を周りのマネージャー達は一生懸命励まし化粧品の入った私のバッグを持ってきてくれたのだった。
**********************
「…か…なかっ…愛花っ!」
今日また高校の剣道場を借りて午前中は対抗戦などをしていた。その間チラチラと視線を寄越す聡をずっと無視していた。彼が私のそばにくると、ささっと違う所にすれ違いで離れていたのだが、そろそろ限界みたいだ。
お昼のために旅館に戻る道の途中、マネージャー達の後をついていた私の腕を掴んだ。
「あー愛花ちゃん、先に戻ってるね」
と先輩達と舞ちゃんは、ご愁傷様と言う顔をして先に戻ってしまった。残された私と聡に降り注ぐ真夏の日差し。
「…何」
「怒ってるのか?…何か嫌なことあったのか?」
ムッと唇を結び、彼の顔を見たくなくて、ツンと顔を背ける。私の前に回ってきた聡は私の顔を覗き込む。心配そうな顔に胸がきゅんとときめいて顔が綻んでしまうのだが、今朝の事を思い出して眉間に皺を寄せた。
「愛花」
私の顎を持ち上げた聡は、私の名を呼ぶ。離してくれなそうな雰囲気に諦めて、ため息をついた。
「…跡、残したよね、見える所に昨日」
「跡?…ああ、付けたけど…?」
あっさりと認めた聡は、なんでそんな事を聞くんだ?と不思議そうな顔をしていた。
「はっ…恥ずかしいっんだけどっ!あっ朝、へっ部屋のみんなに見られてっ!」
しどろもどろになりながらも今朝の事を伝えると、あー、と低い声を出した聡は、ファンデで隠した跡を顎に触れてない指で辿る。
「だからなかったのか」
昨日の夜を思い出してゾクゾクっとしたが、キッと彼を睨んだ。
「ひっ酷いよっ!」
「何で?自分の立場わかってる?」
「…立場…?」
キョトンとする私を、聡は私の顎を親指の腹で撫でる。
「ああ、昨日ひと言愛花に声を掛けたい男ばかりだったの気がつかなかったのか?」
「…昨日…?全然声かけられてないよ?」
昨日の事を思い出し、ずっとマネージャーか顧問としか話していないと伝える。しかし、
「それは、みんなが愛花を守っていたからな」
と愛花を1人にさせず、顧問も目を光らせていた、らしいのだ。
「…そうなの、でも私には聡がいるし」
「そうじゃなくて、まあ、そうだけど」
と嬉しそうに言った聡。
「…だからって跡をつける意味がわからないんだけど!」
みんなが分かるように印をつけるのを許すわけにはいかない。
「そうしないと、彼氏がいるって分からないだろ!」
俺のものって言う独占欲丸出しの聡に、うっとりと見惚れてしまう。
「…それは、私の事が好きってことかな」
「ぅっ…」
もう既にキスもしたし、首を舐められもしたけど、聡の気持ちをはっきりと言われた事はまだ、ないのだ。
顎を掴む聡の手首を掴んで期待の眼差しを向けると、目元が赤くなった聡は、しばらく黙ってしまったのだが…
「…っそうだよっ!…好き…だ」
観念した聡は半ば叫ぶように告げる。その告白に嬉しくなった私は彼の首に腕を回し、抱きついて喜んだ。
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