6 / 14
夏合宿2
しおりを挟む
旅館近くにある高校の剣道場で合同練習をしていた部員たちを見たり、ほぼ水分補給係として麦茶を作ったり、後片付けを手伝ったりと暇な時間を過ごしていた夏合宿1日目。
「愛花ちゃん、これも」
部員達もチラホラ旅館に帰っていて、使用した食器類の洗い物をしていた私は、舞ちゃんに言われて麦茶の入っていたヤカンを受け取った。
「舞ちゃん、私これ終わったら行くから先に旅館に戻ってて、先輩に備品の補充お願いされていたよね」
「え…でも」
「洗い物これだけだし、帰りもわかるから」
「本当?ごめんね、何かあったらすぐ連絡してね!」
申し訳なさそうにそう告げた舞ちゃんは、スマホを上げた。暇だった時に連絡先を交換していたのだ。
舞ちゃんが見送った後に、ヤカンも洗い終わり軽く水回りを拭いてタオルを蛇口に干した。
「終わったのか?」
「っわっ!…びっくりしたぁ、聡かぁ」
ヨシッと、腰に手を当て立っていた私の背後から声を掛けられ、驚いた。
「うん、終わったよ…待っていてくれたの?」
「ん、そうだな」
ポリポリと頬を掻いた聡の頬が少し赤い気がする。ムズムズと胸がこそばゆい感じになって、嬉しくて気持ちが爆発した。
「わ~嬉しいっ」
「っどわっ!」
彼の胸に飛び込むと、聡はよろけながらも私をがっちりと抱きとめてくれる。夏休み入ってから会う事が出来なくて、久しぶりの触れ合いに抱きつく腕の力が強くなるが、聡も片手で私の腰を掴む手が強い。
「…行くか」
しばらく抱き合っていたが、ぼそりと告げた聡の声に名残惜しくなったが、彼の腕に自分の腕を絡めてギュッと身体を寄せる事で、妥協して旅館へと帰る事にした。
***********************
「夕飯は19時に鶴の間でやるみたいだから、それまでに戻ればいいか」
旅館から高校に行った道のりではなく、少し遠回りして海辺を手を繋ぎ歩く。夕日が赤く染まり海の中へと入っていく。日も沈んでいるからか、泳ぐ人はいなくチラホラ散歩をする人しかいない。
「夏休みなのに人があまりいないね」
「…そうだな」
私の一歩前を歩く竹刀袋を肩に掛け紺色の剣道着と袴姿の大きな背中を見つめながら歩く。波打つ音と2人分の砂を踏む音がして、まるでこの世界に2人しかいないような錯覚がする。
「合宿許可取ってくれて…ありがとう」
「…別に」
合宿について行けるとは夢にも思わなかったし、少しだけ顔を出して彼を見たら帰ろうと思っていたので少なくとも5日間一緒に居れるなんて幸せだと感じた。メッセージアプリでも彼にお礼は言ったし、聡と2人で顧問にも挨拶して部費から出すと言われた宿泊費を断り、親から貰った宿泊費のお金も渡した。
いつの間にか暗くなった海岸で、聡は海から国道へと続く細長い石の階段に向かい、荷物を置いた。
ドカッと勢いよく座り、そばに居た私の腰に腕を回し引き寄せると、彼の足の間に座らされ背後から抱きしめられた。
私の左頬に彼の頬が当たり、固い腕が私のお腹の前をクロスして強く抱きしめる。
顔をズラした彼の唇が私の頬に触れて離れない。
「ンッ…」
「…苦しいのか?」
「ぅうん…違う」
耳元のすぐそばで囁く声が顔に響いて、力が抜けそうだ。どうして声だけで、こんなに安心するんだろうか。瞼を閉じて彼の胸に背を預け、お腹にある彼の腕に自分の手を置いた。
「…合宿の練習がない日は…海で遊ぶか?」
彼が喋る度に軽く頭が揺れてしまって、ふふふっと笑い声が漏れる。
「…何?」
ムッとする彼は、私の頬を甘噛みする。
違う、違うと笑ってしまい、身体が揺れて彼が私を抱きしめる力を強くする。本格的に苦しくなった私は降参した。
「聡が喋る度に頭が動くからっ…面白くてっ」
彼の力が少し緩んだので、うしろを振り向き彼の肩に手を置くと、彼の顔が近寄り口を塞がれる。
いつもは啄むキスから始まる事が多いのに、いきなり舌を絡めた濃厚なキスで戸惑う。彼の肩に置いた手を押すと唇が離れそうになったのだが、腰から動いた聡の手が頭部に置かれ、私の頭を動かす事を許さないと言っているみたいで、諦めて彼の舌に自分の舌を絡めた。
はぁっと、息を吐いたら彼の口にあたり私に返ってくる。彼の頬に向けていた視線を上げると、私をじっと見つめる彼の瞳とぶつかる。
「愛花」
「ん…?」
名前を呼ばれたので返事をすると、聡は視線を彷徨わせた後
、
「そろそろ帰ろうか」
と足を動かした聡は、私の腰を持ち上げて一緒に立ち上がった。
「愛花ちゃん、これも」
部員達もチラホラ旅館に帰っていて、使用した食器類の洗い物をしていた私は、舞ちゃんに言われて麦茶の入っていたヤカンを受け取った。
「舞ちゃん、私これ終わったら行くから先に旅館に戻ってて、先輩に備品の補充お願いされていたよね」
「え…でも」
「洗い物これだけだし、帰りもわかるから」
「本当?ごめんね、何かあったらすぐ連絡してね!」
申し訳なさそうにそう告げた舞ちゃんは、スマホを上げた。暇だった時に連絡先を交換していたのだ。
舞ちゃんが見送った後に、ヤカンも洗い終わり軽く水回りを拭いてタオルを蛇口に干した。
「終わったのか?」
「っわっ!…びっくりしたぁ、聡かぁ」
ヨシッと、腰に手を当て立っていた私の背後から声を掛けられ、驚いた。
「うん、終わったよ…待っていてくれたの?」
「ん、そうだな」
ポリポリと頬を掻いた聡の頬が少し赤い気がする。ムズムズと胸がこそばゆい感じになって、嬉しくて気持ちが爆発した。
「わ~嬉しいっ」
「っどわっ!」
彼の胸に飛び込むと、聡はよろけながらも私をがっちりと抱きとめてくれる。夏休み入ってから会う事が出来なくて、久しぶりの触れ合いに抱きつく腕の力が強くなるが、聡も片手で私の腰を掴む手が強い。
「…行くか」
しばらく抱き合っていたが、ぼそりと告げた聡の声に名残惜しくなったが、彼の腕に自分の腕を絡めてギュッと身体を寄せる事で、妥協して旅館へと帰る事にした。
***********************
「夕飯は19時に鶴の間でやるみたいだから、それまでに戻ればいいか」
旅館から高校に行った道のりではなく、少し遠回りして海辺を手を繋ぎ歩く。夕日が赤く染まり海の中へと入っていく。日も沈んでいるからか、泳ぐ人はいなくチラホラ散歩をする人しかいない。
「夏休みなのに人があまりいないね」
「…そうだな」
私の一歩前を歩く竹刀袋を肩に掛け紺色の剣道着と袴姿の大きな背中を見つめながら歩く。波打つ音と2人分の砂を踏む音がして、まるでこの世界に2人しかいないような錯覚がする。
「合宿許可取ってくれて…ありがとう」
「…別に」
合宿について行けるとは夢にも思わなかったし、少しだけ顔を出して彼を見たら帰ろうと思っていたので少なくとも5日間一緒に居れるなんて幸せだと感じた。メッセージアプリでも彼にお礼は言ったし、聡と2人で顧問にも挨拶して部費から出すと言われた宿泊費を断り、親から貰った宿泊費のお金も渡した。
いつの間にか暗くなった海岸で、聡は海から国道へと続く細長い石の階段に向かい、荷物を置いた。
ドカッと勢いよく座り、そばに居た私の腰に腕を回し引き寄せると、彼の足の間に座らされ背後から抱きしめられた。
私の左頬に彼の頬が当たり、固い腕が私のお腹の前をクロスして強く抱きしめる。
顔をズラした彼の唇が私の頬に触れて離れない。
「ンッ…」
「…苦しいのか?」
「ぅうん…違う」
耳元のすぐそばで囁く声が顔に響いて、力が抜けそうだ。どうして声だけで、こんなに安心するんだろうか。瞼を閉じて彼の胸に背を預け、お腹にある彼の腕に自分の手を置いた。
「…合宿の練習がない日は…海で遊ぶか?」
彼が喋る度に軽く頭が揺れてしまって、ふふふっと笑い声が漏れる。
「…何?」
ムッとする彼は、私の頬を甘噛みする。
違う、違うと笑ってしまい、身体が揺れて彼が私を抱きしめる力を強くする。本格的に苦しくなった私は降参した。
「聡が喋る度に頭が動くからっ…面白くてっ」
彼の力が少し緩んだので、うしろを振り向き彼の肩に手を置くと、彼の顔が近寄り口を塞がれる。
いつもは啄むキスから始まる事が多いのに、いきなり舌を絡めた濃厚なキスで戸惑う。彼の肩に置いた手を押すと唇が離れそうになったのだが、腰から動いた聡の手が頭部に置かれ、私の頭を動かす事を許さないと言っているみたいで、諦めて彼の舌に自分の舌を絡めた。
はぁっと、息を吐いたら彼の口にあたり私に返ってくる。彼の頬に向けていた視線を上げると、私をじっと見つめる彼の瞳とぶつかる。
「愛花」
「ん…?」
名前を呼ばれたので返事をすると、聡は視線を彷徨わせた後
、
「そろそろ帰ろうか」
と足を動かした聡は、私の腰を持ち上げて一緒に立ち上がった。
3
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
異常性癖者たちー三人で交わる愛のカタチー
フジトサクラ
恋愛
「あぁぁッ…しゃちょ、おねがっ、まって…」
特注サイズの大きなベッドに四つん這いになった女は、息も絶え絶えに後ろを振り返り、目に涙を浮かべて懇願する。
「ほら、自分ばかり感じていないで、ちゃんと松本のことも気持ちよくしなさい」
凛の泣き顔に己の昂りを感じながらも、律動を少し緩め、凛が先程からしがみついている男への奉仕を命じる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
バイセクシャルの東條を慕い身をも捧げる松本と凛だが、次第に惹かれあっていく二人。
異常な三角関係だと自覚しつつも、三人で交わる快楽から誰も抜け出すことはできない。
複雑な想いを抱えながらも、それぞれの愛のカタチを築いていく…
ーーーーーーーーーーーーーーー
強引で俺様気質の東條立城(38歳)
紳士で優しい松本隼輝(35歳)
天真爛漫で甘えんぼな堂坂凛(27歳)
ドSなオトナの男2人にひたすら愛されるエロキュン要素多めです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる