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番外編 初めて会った日を再現 投稿37ヶ月記念小説 熊男の国挙げ
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朝の目覚めで好きな人を見つめているゆったりとした時間が過ぎると、子供の声がする気がした。エルヴァが起きたのかもしれない。
目を覚ますと、目の前には何も身につけていない傷跡のある凸凹した胸板がまず目に入った。私の首の下には太くて硬い枕変わりの右腕があり、気持ちよさそうに目を閉じて眠る夫──エルフラン・ベアがいた。黒い短髪と日に焼けた肌、右眉から頬にかけて傷跡があり、瞼の下には漆黒の瞳がある。その瞳で見つめられると──周りは怒っているから睨んでいると思われちゃうけど──私は胸がドキドキしてうっとりしちゃう。夫は熊男として恐れられている、このフウモ王国の将軍で、史上最強の男として尊敬もされていた。
私──ミネルヴァ・ベアは、無防備に眠る夫に見惚れていた。キラキラ輝く腰まである金色の長い髪、夫とは正反対で日に焼けてない白い肌、左にある泣き黒子、母親譲りよ碧眼は宝石のように美しいと誰もが言っているが、今は夫のエルフランを見つめていた。
彼と初めて会ったのは、この国の第3王女として生まれた私を、国王陛下が政略結婚の駒として使おうとしているのに気がついて、結婚したくなかったから、対策を実行するために街へとお忍びで出かけた時だ。あの後とても強烈で初めてだらけの熱い一夜を過ごして、息子のエルヴァを身籠ると、私は結婚話もなくなり、2年ほど息子と暮らしていた。そしてひょんなきっかけで再会して半年が経って今に至る。
昨日はそうだ、彼が珍しく仕事で遅くなるから先に寝てしまったのだった。私と結婚してから、彼は帰りが遅くなる事など滅多になかったのに、昨日はなぜか遅かった。1人で寝るには広過ぎるベッドで寝られるか心配だったけど、意外と熟睡していたみたいで彼が帰ってきたのに気がつかなかった。
コンコン
「ご主人様、奥様、おはようございます、朝のお時間です」
永遠に彼の寝顔を見られるのだけど、ノックとともに執事の声がして、起きる時間だと、なかなか起きない夫を起こすことにした。
「貴方…旦那様」
彼の腕から頭を上げて彼の頬に左手を添えると、私はエルフランに声を掛けた。
「ん…ミル」
彼は無意識に私の名前を呼んで、私の腰に手を回した。まだ寝ぼけているみたいで、それも可愛いかったけど、そろそろ起きないと執事が部屋に入ってきてしまう。
「今行くわ、ちょっと…ッ…」
「5分待て」
先に執事にひと言伝えようとしたら、それはエルフランの低い通る声にによって遮られた。彼は私をベッドに仰向けに寝かせると、私の上に覆い被さった。
「朝の起き掛けの声を他の男に聞かせるな」
「ふふっ、もうずっと一緒にいる執事ですよ?」
「それでも男だ」
私の頬に右手で触ると、彼は私の下唇のラインを親指でなぞった。私はくすくすと笑うと、エルフランは眩しい物を見るように目を細めた。
「おはよう、旦那様」
「おはよう、愛しい妻」
彼が私の唇に自分の唇を重ねると、薄く開けた私の口内に分厚い舌が入って、舌の絡まる濃厚なキスが始まった。エルフランの首の後ろに腕を回して、口づけを続けていると、
「間もなく5分となります」
執事の声がまたして、エルフランはむっ、と眉を寄せて起き上がったのだった。
「夫婦の朝の僅かな時間を邪魔された」
「あら、そのおかげでこうして仕事に間に合いますわ」
朝食も食べ終わった後に、いつものように彼の身につける軍服のボタンを留めたり、シワを直していると、当たり前のように私の腰に手を回された。結婚してから一度も欠かす事のないルーティンに、周りの使用人達も慣れたもので見守っている。
「今日は早く帰る」
「はい、お待ちしておりますわ」
いってらっしゃいのキスをしようと、彼の頬に右手を添えると、彼は私の口に欲しかったキスをくれた。
***************
フウモ王国史上最強の男として将軍に上り詰めたエルフランは、愛おしい妻と息子のいる屋敷から出て馬車に乗り込むと、だらしなく緩めていた目元も口元も引き締めた。
すると途端に凶暴な風貌となり、泣く子も黙る将軍へと様変わりする。
「おはようございます…まず昨夜の報告を」
馬車の中で待っていた将軍の補佐官の男は、将軍の変化はいつも通りだと淡々と昨夜将軍が家に帰れなかった理由である出来事の報告を始めた。
「…という事で、牢屋に入れております」
「そうか、ならまずそちらへと行こう」
いつもより若干機嫌が悪いのは、妻と息子と過ごす時間がほとんど取れていなかったからだが、普段からそう大した違いはないから補佐官は気にしていなかった。
──最初に行くと言ってるから、まずは締め上げるのかな?
補佐官は牢屋に入った人に同情したが、問題を起こすからこうなったんだと、自業自得だなと他人事のように思った。
***************
「お母様」
「なあに?私のエルヴァ」
午後のお茶の時間、敷地内に造られた庭園の一角で、私と家庭教師の授業が終わった息子のエルヴァは、並んでベンチに座っていた。
目の前には紅茶がある小さな丸テーブルがあったけど、まだ小さなエルヴァには危ないから私の横に置いてある。
「お母様とお父様はどこで知り合ったの?」
「私とお父様は…」
エルフランと出会ったのは私が街へ出た時で、そう言ったらきっとエルヴァが見てみたいと言い出してしまいそうで素直に口にするのを憚れた。
「お母様?」
口籠る私に、痺れを切らしたエルヴァは、私の顔を覗き込んだ。
「エルヴァ様、お母様とお父様が出会った所はお二人だけの秘密なんですよ」
「えー?そうなのなんで?」
私の背後に立つ侍女が助けを出してくれ、エルヴァの意識が私から背後に移る。
「思い出は心の中に宝物をしまっているのです、大切な物ほど自分の中に隠して入れて置きたいじゃないですか」
「…そうなの?」
「そうですわ、エルヴァ様もお気に入りの物が出来たらそうしますわ」
「エルヴァがもう少し大人になったら…それまではお母様の心の中にしまっておくわ」
「分かった!じゃあお父様のぶゆうでんを聞きたい!」
私がエルヴァの口に人差し指でそう告げると、小さな子は、パァッと喜び目をキラキラさせた。
「ふふ…そうね、ならお父様が怒ってりんごを潰しちゃった話をしましょう」
「りんごを?聞きたい聞きたい!」
エルヴァの意識を逸らせた事にホッとした私は、たまたまエルフランと居た時に彼の同僚から聞いた、彼と私がまだ婚約期間中に私の元に男が通っているという、とんでもない噂話を聞いて思わず食べていたりんごを潰してしまった夫の話を興味津々の息子に話し始めた。
***************
「ふんっ!…ふんっ!」
「…エルヴァは何をしているのだ?」
「ふふ、今日聞いた貴方の話で、自分でもりんごを潰したいって」
「りんごを?またなんで」
夕食後の一家の団欒で、2人掛けの広めのソファーにエルフラン、エルヴァ、私と並んで座っていた。広めのといっても、エルフランの身体が大きくて、3人の距離が少し近い。エルヴァが一生懸命、両手で侍女から受け取ったりんごを潰そうと握っていた。
不思議そうに息子を見るエルフランに、私が話した武勇伝の話を教えると、彼は、ぐっ、と苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…あれは、同僚が面白おかしく脚色してだな」
「え?じゃぁうそなの?」
気まずそうに言うエルフランに、エルヴァはショックを受けた顔をする。
「…いや、嘘ではないが…その」
事実なのに、嫉妬して感情に任せてりんごを潰すなんて、貴族としてあるまじき行為と言いたいけど、ショックを受ける息子には何て説明すればいいのか迷ってるみたいだ。
「ふふ」
「ミネルヴァも笑ってないで助けてくれよ」
大柄な男の途方に暮れる顔を見て、愛おしくて笑みが溢れると、彼は私の笑顔を眩しいものを見るように目を細めた。
「…さぁ、そろそろ寝ましょう、じゃないと明日起きられないからね」
エルヴァの頭を撫でると、息子は私の腰に腕を回して抱きついた。
「またお話聞かせてね?」
「ええ、今度はお父様も一緒に」
うん、と返事をすると、息子は今度はエルフランに抱きついた。
「よし、行くか」
「おやすみなさい、お母様」
「おやすみなさい私の天使」
エルフランは片手で難なくエルヴァを抱き上げると、私もソファーから立ち上がって、息子の頬におやすみのキスをして頭を撫でた。
挨拶が終わると、エルフランは幼い子が寝られるように息子の部屋へと連れて行った。
「今日は、エルヴァに2人が出会った時の話をして」
夫が帰って来たら、エルヴァの1日あった事の止まらない報告の嵐の後、2人きりになったら私が彼を独占する。
「そうか」
先にベッドに入っていた私のそばにくると、彼は布団を捲りベッドに入った。
私の頭を撫でながら頬に掛かる髪を退けると、私の目の下にある泣きぼくろを親指の腹で撫でた。
「…もう一度、熊男さんとデートをしたいわ」
「デート?」
今日エルヴァに言われて、あの時のように──正確にはデートじゃないし、行くお店ごとに会っただけだけど、屋台に行って、入れなかったカフェに行って、話すきっかけとなった酒場に行って…それで最後に
「…っ、そんな顔で見るな」
「そんな顔って…?」
息を呑むエルフランが低く唸ると、私は潤む瞳で見上げて、頬にあるエルフランの手に自分の手を重ねた。
「あの時の思い出も、大事に心にしまってますわ」
「ああ、俺もだ…俺のミル」
彼は名残り惜しそうに私の頬から手を離すと、お布団の中に入れて、私の腰のラインを撫でた。
私は右手を彼の顔に添えた。私にやってくれたように、彼の目にある傷跡をそっと撫でる。
「…愛してます、熊男さん」
「俺もだミル…世界で一番」
彼はお布団を上げて私達を隠すと、熱い一夜はこうして始まった。
***************
「あら、まだ屋台やっているわ」
「エルフラン見て、可愛い飲み物ね、ケーキも美味しい」
「この雑貨屋懐かしいわ」
黒いフード付きコートを羽織るポニーテールの私が目を輝かせて、あの時したかった事を存分に楽しんでいた。
「ミル、離れるな全部見るから」
子供のように目に入った所をあちこち移動する私を、毎回エルフランは呼び止める。
今日はエルフランの休みの日で、本当ならエルヴァと3人で過ごす予定だったけど、エルフランがあの時のデートをしようと誘ってくれたから、2人で出かけた。
馬車に乗った時から楽しみで、ずっと顔が緩みっぱなしだ。それを宥めつつ、エルフランは私の腰や肩に手を回すが、それなのに私が目についたところに急に向かうから離れてしまうのだ。
屋台も、あの時行きたかったカフェにも入れたし、雑貨屋で浮浪者として捕まる事もない。日も暮れて、いよいよ2人が話すきっかけになった酒場に行くと、あの時と変わらない店内で、私達はカウンターに並んで座った。信じられないけど、エルフランが店内に入ったら、喧騒していた酒場がシンと静まり返ったのだ。
「レモン水で」
「ビールを」
あの時と同じ飲み物を頼むと、一度だけ会った店員は変わっていたけど、酒場に来て酒を頼まない私に眉を上げたが、隣に座る熊男が怖いのか、「はいよ」と言って離れて行ってしまった。周りを見渡せば、お店にどんどん人が増えて、これから酒盛りが始まり賑わっている。
「へい、お待ち」
ドンッとカウンターに置かれた2人分の飲み物は、懐かしいジョッキだ。さっきの注文を取りに来た店員とは違って、この店の亭主らしき男の人が置いたから、きっと私とエルフランを見て、訳ありだと思ったらしかった。それもそのはずで、私はフードを頭に付けて顔を隠しているコートを羽織っているし、エルフランはシンプルなYシャツとカーキ色のズボンを履いているが、厚い胸板も腕も足も一目見たら屈強な男だとわかる。それに加えて顔に傷もあるものだから、誰も私達に──主にエルフランに近寄ろうともしないのだ。
「懐かしいね」
ひと通り店内私はあの時と同じで、エルフランを見ると、彼は私をじっと見ていた。
「どうしたの?」
「ゔっ、いや」
私がどうしたか聞くと彼はなぜか慌てる。そしてカウンターに置かれたジョッキに手を伸ばして飲み始めた。私も目の前のジョッキを手に取り、レモン水を口にすると、一気に頬が熱くなった。
──アルコールなんて入ってないのにどうして
と思ったけど、あの時もアルコールの匂いに当てられたのを思い出した。
かといって、酔っ払ってしまったかというとそうではない。カウンターの上に腕を置いていた彼を見上げ、ビールを飲む姿を見てうっとりとしてしまう。
──やっぱりエルフランが1番カッコいいわ
ここが酒場だと忘れてしまい、彼の腕に手を触れて、肩に寄りかかる。
「…ミルどうした?気分が悪いのか」
ちょっと焦るエルフランの優しさが、心に沁みていく。
「いいえ…私の旦那様はかっこいいと改めて思っていただけですわ」
ガヤガヤうるさい酒場での私達のやり取りは、誰も聞こえないし、少し小声で話したからエルフランに聞こえないと思っていたのに、彼は身体を強張らせた。
「ミル…そんな愛いことをいうな」
ぐるっ、と唸る声に身体が痺れる。
──ああ、骨の髄まで彼に溺れてるみたい
肩に頭を付けたかったけど、体格差がありすぎるから、二の腕に頬をつける事しかできない。
私が彼の腕に添えた手の上に、エルフランの手が重なった。
「マスター…支払いをっ」
あの時と同じ、焦った彼の声が聞こえたが、私は重ねられた手から目を離す事が出来なくなっていた。
***************
最後はやっぱり、彼と一夜を過ごした場所…かと思ったけど、それは叶わなかった。酒場を少し離れた所に停めた馬車の中に乗り込むと、彼の膝の上に座らされ、ずっと我慢していたと、浴びるようなキスをされる。
「ミルッ、はっ」
「あぁっ、熊男さんっ」
なんでももうあの場所は引き払っていて、誰かが住んでいるとか、他の奴に声を聞かせたくない、あの時は余裕がなかった、とか、声ひとつ俺のものだと熱く囁かれれば、最初の再現なんてどうでもよくなってしまった。
彼の首の後ろに手を回せば、私達は顔の角度を何度も何度も変えて深い口づけをする。彼は私が落ちないように腰に手を添えていたのに、今は左手だけを腰に置いて、右手で私のコートの中に手を入れて足を撫でた。
「もうすぐ着く」
唇が少し離れた時に、彼からそう言われ、どこに?と答える前に、また塞がれた。腫れてしまいそうなくらいキツく吸われ、ちょっとチリッとする。余裕のないエルフランを不思議に思いつつ、私は彼の頬に手を添えて視線を合わせた。
「私はどこにも行きませんわ」
彼の目にある傷跡にキスをすると、彼は顔を歪めて泣きそうになる。
「ああ…ミルッ、俺の…ミル」
「なぁに?熊男さん」
余裕のなかったキスから、エルフランの周りの空気が変わって急に焦りがなくなって、私の唇を啄む。
「そうだ、これからどこに向かってるのですか?」
「くくっ…俺を信用するのは嬉しいが、屋敷に残すのが不安になるから、相手に身を委ねるなの」
今日はデートの再現だって聞いたから、楽しみにしていたけど、酒場の後はどうするのかは分からなかった。きっと聞いても、ああそうなの、と言ってしまいそうだけど、エルフランはなんだか私が彼に全てを任せるのが嬉しそうだ。
──こんなの…いつも任せてるのに
子育てに関しては私が考えてるが、エルフランといるときだけは基本受け身だ。
「ああ、悪かったよ、ミル…拗ねるな」
「拗ねてませんわっ…いつも任せてしまうのは嫌ですか?なら直しますわ」
口を尖らせた私を見て、くすくすと笑う強面の夫に、私は可愛くない事を言ってしまうが、彼は私の言葉に眉を寄せた。
「それはダメだ、ミルに甘えられるのが好きだから、なくなったら悲しい」
そう言って彼は私の額や頬にキスを落としていく。
「ああ…もう着く」
彼は私の背中に手を添えると、残念そうにそう呟いた。
馬車が停まって着いたのは、いつぞやの王都での滞在していた時に使った、エルフランが結婚する前に住んでいた屋敷だ。
一度しか訪れなかったが、私は彼の過ごしたこの屋敷が気に入ってしまって、またエルヴァと来たい思っていたのだけど、なかなか王都に出かける用事もないから叶わなかった。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
遅い時間だというのに、執事と使用人が数名外で待っていて、私達を見て頭を下げた。
「ただいま、これは…その」
「わかっております、奥様」
エルフランに横向きに抱っこされて帰って来たから、驚くかなと思ったのだが、2回目ともなると執事達は全く動じていなかった。
「湯はいらん、適当にするから下がれ」
「かしこまりました…では明日…おやすみなさいませ」
ひと言だけ告げたエルフランが、私を抱き上げたままスタスタ歩くから、久しぶりの挨拶も出来ないから、私は彼の肩越しから手を軽く振るだけしかできなかった。
「ミル、他のやつに手を振るな」
「そんな事言ったって…あっ」
廊下を歩いた先にある部屋に入ると、ベッドの上らしき柔らかく弾力のある上に仰向けで寝かされた。前回来た時と違う感触が不思議で、周りを見渡していると、エルフランが私の首筋に顔を埋めた。
「ん…っ、ここは…?前来た時と部屋が違うわ」
「ん?ああ、あの後急に使用しても大丈夫なように手配した」
あの質素な部屋でも良かったのだけど、と思っていたけど、エルフランはなんだか嫌そうだった。
私とエルフランが腕を広げても眠れるほど大きなベッド、ナイトテーブルの上にはランプもあるし、部屋が薄暗くてよく見えないけど、それなりの広さの部屋っぽかった。
「ミル、俺を見てくれ」
私が周りを見過ぎているからか、エルフランが懇願するように私の耳に舌を入れて囁く。
「んっ…いつも見てるわ」
彼の首の後ろへと腕を回して彼の方を見ると、彼は私の口を塞いだ。ねっとりと舌を絡めながら、私の腰のラインをコートの上から撫でる。
「あっ、待って」
エルフランの肩を押すと、彼の動きは止まった。私がベッドから上体を起こして起き上がると、彼は私の足を跨いで座っていた。彼の足の間から足を引いて、エルフランの肩を押してベッドにお尻を付けさせると、今度は私が彼の足の上に座った。
「ミル?」
「今日のために準備したの」
そう言って、コートのボタンを外して、コートの下が見えるとエルフランの目が見張り驚きに変わる。
本当は今日一日ずっと恥ずかしかったんだけど、過去の対面の再現にはピッタリの身体のラインに沿ったタイトなドレスが露わになった。いつもは首元から足元まで隠すドレスを着ているが、今日は胸元が大きく開いているし、胸の谷間もばっちりと出来てるし、膝上のドレスは素足が見える今日のための特注品だった。
「…ふふっ、驚いた?」
「…ああ、コートの下はずっとそうだったのか」
固まる彼にサプライズ成功したと思っていたのに、突然低く唸るエルフランに私は驚いてしまう。
「エルフラン…?…っきゃ」
私の腰を掴み私の胸元に顔を埋めた彼は、
「だから今日は奥様をしっかり見てくださいと言っていたのか」
元々そのつもりだったから、本邸で言われた使用人の言葉に疑問を抱かなかったが、確かにこの格好を見たら攫われてしまうなと今ならわかる。それに使用人達は妻と子供に甘い側面もあったから、久しぶりの外出を心配しているのかと思っていたけど全然違った。
胸元が大きく開いた白い肌には、エルフランが絶えず付けた赤い所有印が色濃く残っている。
「愛してるわ、私の熊男さん」
そう言って私はコートを脱ぐと、ベッドへと投げた。どうせしばらくしたら床に落ちてしまうのだ、どこに置いても同じだと開き直る。ポニーテールにしていた髪の髪留めも取ると、フサッと髪が広がりながら解けた。
背中にあるファスナーに手を回すと、エルフランの手が私の手を掴み阻む。
「ここからは俺が」
エルフランが私の手を自分の首の後ろに回すと、彼は私の胸元に顔を寄せて、ちゅうと吸い付いた。チクリとした痛みが、エルフランがくれると思うと幸せな気持ちになる。跡の残るキスをしながら生温かい舌を這わし、その間にも背中のファスナーを下ろして順に露わになる素肌に顔を埋める。
「はっ…あっ!」
彼は片手で難なく私の身体を持ち上げて、ベッドの上に仰向けにさせると私の着ていたドレスを脱がしてしまう。私は彼の肩に手を置いて、Yシャツのボタンを首から外していると、彼はズボンを脱ぎ始める。
「んっ、まだ終わらないのに」
「だが、俺もミルを触りたい」
Yシャツのボタンを外すのに手間取っていると、彼は私の身体に手を這わした。最後の2個くらいボタンを残すと、彼は私の手をYシャツから退かした。Yシャツを脱ぎ捨てると、私の足を広げて彼は足の間に身体を入れた。彼の逞しい胸板と分厚い身体、そしておへそに付くほど太く固くなった赤黒い昂りがそそり立つのが見えた。
「ん、っぁ、は…ぁっ」
「愛してる、ミル、俺のだ」
彼の昂りを見てしまって、身体が期待してきゅんとする。私の顔の横に腕をつけた彼が私のこめかみや頬にキスをしながら私の広げた足の間にある蜜口に指先を添えて縁をぐるぐる撫で、私は彼の胸板から下へと左手を伸ばして固くなった昂りに触れた。昂りの先端を親指の腹で撫でると、指先が濡れていく。側面を握ると手の中でピクピクする昂りが、愛おしいと思うようになる。上下に擦ると、エルフランの息も上がっていき、私の頬に彼の息がかかる。
「ぐっ、っ」
「あっ!待っ…ぁっ」
彼は私の蜜口の縁を触っていただけだったのに、蜜口から溢れる蜜を指先に塗りたくると、蜜壺の中へと太くて固い指をなんの前触れもなく入れた。それなのに、下生えも親指でまるでついでというかのように弄ぶから、私の快感の波が高くなっていく。
「はっ、あっ」
1本だけだった指も、蜜の溢れる量が増えると2本になり、3本になる時にはまるで抽送している時のように蜜壺の中を出たり入ったりしている。そしてついには蜜壺の内側を解しながら広げて、指の腹で擦り始めると、指先をパラパラと動かす。
「んぐっ、ミルッ急に握るな」
「んっぁっ、はっ、ぁっ、っ」
強い快感に抗えられなくて、思わず昂りを握ってしまうと、エルフランは低く唸りながら私の蜜壺の中に入れた指先を曲げた。
「…っそろそろだな」
エルフランは私の蜜壺の中から指を抜いた手を口元に持っていき、舌を出して舐めとる。その姿はとても色っぽくて思わず見惚れてしまう。
「んっ、エル…フラッ」
「ああ、わかってる、すぐに天国へと連れて行くよ」
蜜壺の中にあった指がなくなり、身体が貪欲に快感を求めて私が甘く懇願すると、エルフランがそう言って、昂りを握る私の手を退かして私の蜜壺の中へと昂りを一気に入れた。
「あぁッ…大きい」
「…ぐっ、ミルッ」
背がのけ反ると、エルフランは突き出した格好となった私の乳房の先を口に入れて強く吸い付いた。ちゅうちゅうと赤ん坊のように吸い付かれたかと思ったら、彼は吸い付きながら私のお尻を掴み、繋がった下半身の抽送を始めた。
「あっ、あっすごっ…はっ、ぁ!」
「はっ…ぁっ、すごいな」
初めて横になる大きなベッドは2人分の重さにも耐えられるようで、本邸のように十分に乱れられる。彼の首に手を置くと、私の乳房から顔を上げたエルフランが私の唇に自分の唇を重ねた。薄く口を開けて、彼の舌を受け入れると、鼻呼吸だけになった荒い息は更に上がり、キスをしたいのに出来なくなる。
「んんっ」
エルフランは口を離して起き上がり、私の肩の横に両手をつくと、腰の動きを本格的に動かし始めた。
「っ、はっ」
気持ち良さそうに荒い息を吐き出すエルフランの壮絶な色気に、私は下から見上げながら目を奪われる。
「はっ…あっ私の、エルフランっ」
「ミルッ、俺のっ…ミル」
彼の気持ちなんて疑った事もないし、そんなのあり得ないと分かっているけど、何故か誰にも渡したくない欲が急に出てきて彼の腕に手を添えた。すると、彼は上体を屈めて私の口にキスを一つ落とした。ちゅっとリップ音がすると、私は満足したのだけど、エルフランはそうじゃないみたいで、私の唇のラインに舌を這わした。
「もうイきそうだっ、ミル」
はっはっ、と荒い息の彼に当てられ、私の身体も絶頂へと向かっていく。
「私もっ愛してるわっエルフラン」
「俺もだ、ミネルヴァ、俺のミル」
ぱんぱんっと抽送が激しくなると、エルフランが私の上に覆い被さり首筋に口を付けた。
「ぁあっ!ぁあっ!」
「ぐっ、ミルッ」
私の背中に手を回してキツく抱きしめ、私はエルフランを抱きしめると、絶頂がやってきて、エルフランは私の中に留まり蜜壺の中へと欲情の証を放出させた。
しばらく動かず重なっていた山は、くすくすと笑うミネルヴァの声に反応してまた動き出して、部屋に太陽の日差しが入る頃になるまで離れる事はなかった。
「お母様だけ、ずるい」
「まぁ、じゃあ今度は3人で行きましょう」
父と母が出かける事は知っていたエルヴァだったが、もう一つの家があると知ると、頬を膨らませて拗ねてしまったのだ。
「本当?約束だよ?お父様」
「…ん?ああ、そうだな」
「本当?約束だよ!お父様」
今日は大好きなお父様とお母様と一緒に過ごせて嬉しいエルヴァがにこにこと上機嫌で言うと、エルフランはミネルヴァを滞在させた翌日の使用人達の色めき立つ様子を思い出した。
仕事の関係で渋々別邸に自分1人がいる時は、淡々と仕事をこなすだけなのに、ミネルヴァがいた日は家の主人であるエルフランには通常通りの対応なのに、みんながミネルヴァと楽しそうにいたからだ。
ミネルヴァでそうなのだから、エルヴァも一緒にいたらきっと、もっと別邸にきてくれと催促されるに違いないとエルフランはげんなりしていた。
──別邸は、仕事先の奴らがふらりと来る可能性が捨てきれないから、あんまり好かん
城でも有名な妻と息子を溺愛する最強の将軍が、2人を街の近くに住まわせていると知られてしまったら、部下は面白がって、エルフランを探しに来たと嘘をついて2人に会いにいきそうだと、いや、確実に会いに行くなと本能が察知する。
だが可愛い息子の願いは叶えたいと、願うエルフランは、くるくる回って喜ぶ息子には本心を告げる事が出来ないでいた。
「良かったですわ、私もエルヴァと行きたかったの」
そしてトドメに愛する妻にも言われたら、エルフランは頷く事しか出来なかったのだった。
後日約束を果たす為に妻と息子を別邸に連れて行くと、使用人達は再会した妻と初めて見る息子に喜んだ。
一泊の予定と秘密裏に動いていたのに、いつもより移動時間の猶予が出来たから、早めに次の仕事に取り掛かって、さっさと仕事をこなそうとするエルフランの退勤時間が遅いと察した部下達に見破られる事となり、次の日に突然別邸を訪問されるハプニングも起こった。
「へー!お父様は1番えらいのか」
「…ぐっ、なんて、純粋な目で見る…恐れる熊男の子なのに」
普段父の仕事なんて聞いた事はあるけど、具体的に何をしているのか分かっていなかったエルヴァは、大きな瞳を輝かせて部下達の話を聞いた。
反対に部下達は純粋な子供を前に、失礼な言葉を放ち見事心を奪われたのであった。
その様子を見ていたミネルヴァはにこにこと笑っていたが、エルフランの顔には青筋が立ったのに気がついていたのは、この家をまとめる執事のみだった。
目を覚ますと、目の前には何も身につけていない傷跡のある凸凹した胸板がまず目に入った。私の首の下には太くて硬い枕変わりの右腕があり、気持ちよさそうに目を閉じて眠る夫──エルフラン・ベアがいた。黒い短髪と日に焼けた肌、右眉から頬にかけて傷跡があり、瞼の下には漆黒の瞳がある。その瞳で見つめられると──周りは怒っているから睨んでいると思われちゃうけど──私は胸がドキドキしてうっとりしちゃう。夫は熊男として恐れられている、このフウモ王国の将軍で、史上最強の男として尊敬もされていた。
私──ミネルヴァ・ベアは、無防備に眠る夫に見惚れていた。キラキラ輝く腰まである金色の長い髪、夫とは正反対で日に焼けてない白い肌、左にある泣き黒子、母親譲りよ碧眼は宝石のように美しいと誰もが言っているが、今は夫のエルフランを見つめていた。
彼と初めて会ったのは、この国の第3王女として生まれた私を、国王陛下が政略結婚の駒として使おうとしているのに気がついて、結婚したくなかったから、対策を実行するために街へとお忍びで出かけた時だ。あの後とても強烈で初めてだらけの熱い一夜を過ごして、息子のエルヴァを身籠ると、私は結婚話もなくなり、2年ほど息子と暮らしていた。そしてひょんなきっかけで再会して半年が経って今に至る。
昨日はそうだ、彼が珍しく仕事で遅くなるから先に寝てしまったのだった。私と結婚してから、彼は帰りが遅くなる事など滅多になかったのに、昨日はなぜか遅かった。1人で寝るには広過ぎるベッドで寝られるか心配だったけど、意外と熟睡していたみたいで彼が帰ってきたのに気がつかなかった。
コンコン
「ご主人様、奥様、おはようございます、朝のお時間です」
永遠に彼の寝顔を見られるのだけど、ノックとともに執事の声がして、起きる時間だと、なかなか起きない夫を起こすことにした。
「貴方…旦那様」
彼の腕から頭を上げて彼の頬に左手を添えると、私はエルフランに声を掛けた。
「ん…ミル」
彼は無意識に私の名前を呼んで、私の腰に手を回した。まだ寝ぼけているみたいで、それも可愛いかったけど、そろそろ起きないと執事が部屋に入ってきてしまう。
「今行くわ、ちょっと…ッ…」
「5分待て」
先に執事にひと言伝えようとしたら、それはエルフランの低い通る声にによって遮られた。彼は私をベッドに仰向けに寝かせると、私の上に覆い被さった。
「朝の起き掛けの声を他の男に聞かせるな」
「ふふっ、もうずっと一緒にいる執事ですよ?」
「それでも男だ」
私の頬に右手で触ると、彼は私の下唇のラインを親指でなぞった。私はくすくすと笑うと、エルフランは眩しい物を見るように目を細めた。
「おはよう、旦那様」
「おはよう、愛しい妻」
彼が私の唇に自分の唇を重ねると、薄く開けた私の口内に分厚い舌が入って、舌の絡まる濃厚なキスが始まった。エルフランの首の後ろに腕を回して、口づけを続けていると、
「間もなく5分となります」
執事の声がまたして、エルフランはむっ、と眉を寄せて起き上がったのだった。
「夫婦の朝の僅かな時間を邪魔された」
「あら、そのおかげでこうして仕事に間に合いますわ」
朝食も食べ終わった後に、いつものように彼の身につける軍服のボタンを留めたり、シワを直していると、当たり前のように私の腰に手を回された。結婚してから一度も欠かす事のないルーティンに、周りの使用人達も慣れたもので見守っている。
「今日は早く帰る」
「はい、お待ちしておりますわ」
いってらっしゃいのキスをしようと、彼の頬に右手を添えると、彼は私の口に欲しかったキスをくれた。
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フウモ王国史上最強の男として将軍に上り詰めたエルフランは、愛おしい妻と息子のいる屋敷から出て馬車に乗り込むと、だらしなく緩めていた目元も口元も引き締めた。
すると途端に凶暴な風貌となり、泣く子も黙る将軍へと様変わりする。
「おはようございます…まず昨夜の報告を」
馬車の中で待っていた将軍の補佐官の男は、将軍の変化はいつも通りだと淡々と昨夜将軍が家に帰れなかった理由である出来事の報告を始めた。
「…という事で、牢屋に入れております」
「そうか、ならまずそちらへと行こう」
いつもより若干機嫌が悪いのは、妻と息子と過ごす時間がほとんど取れていなかったからだが、普段からそう大した違いはないから補佐官は気にしていなかった。
──最初に行くと言ってるから、まずは締め上げるのかな?
補佐官は牢屋に入った人に同情したが、問題を起こすからこうなったんだと、自業自得だなと他人事のように思った。
***************
「お母様」
「なあに?私のエルヴァ」
午後のお茶の時間、敷地内に造られた庭園の一角で、私と家庭教師の授業が終わった息子のエルヴァは、並んでベンチに座っていた。
目の前には紅茶がある小さな丸テーブルがあったけど、まだ小さなエルヴァには危ないから私の横に置いてある。
「お母様とお父様はどこで知り合ったの?」
「私とお父様は…」
エルフランと出会ったのは私が街へ出た時で、そう言ったらきっとエルヴァが見てみたいと言い出してしまいそうで素直に口にするのを憚れた。
「お母様?」
口籠る私に、痺れを切らしたエルヴァは、私の顔を覗き込んだ。
「エルヴァ様、お母様とお父様が出会った所はお二人だけの秘密なんですよ」
「えー?そうなのなんで?」
私の背後に立つ侍女が助けを出してくれ、エルヴァの意識が私から背後に移る。
「思い出は心の中に宝物をしまっているのです、大切な物ほど自分の中に隠して入れて置きたいじゃないですか」
「…そうなの?」
「そうですわ、エルヴァ様もお気に入りの物が出来たらそうしますわ」
「エルヴァがもう少し大人になったら…それまではお母様の心の中にしまっておくわ」
「分かった!じゃあお父様のぶゆうでんを聞きたい!」
私がエルヴァの口に人差し指でそう告げると、小さな子は、パァッと喜び目をキラキラさせた。
「ふふ…そうね、ならお父様が怒ってりんごを潰しちゃった話をしましょう」
「りんごを?聞きたい聞きたい!」
エルヴァの意識を逸らせた事にホッとした私は、たまたまエルフランと居た時に彼の同僚から聞いた、彼と私がまだ婚約期間中に私の元に男が通っているという、とんでもない噂話を聞いて思わず食べていたりんごを潰してしまった夫の話を興味津々の息子に話し始めた。
***************
「ふんっ!…ふんっ!」
「…エルヴァは何をしているのだ?」
「ふふ、今日聞いた貴方の話で、自分でもりんごを潰したいって」
「りんごを?またなんで」
夕食後の一家の団欒で、2人掛けの広めのソファーにエルフラン、エルヴァ、私と並んで座っていた。広めのといっても、エルフランの身体が大きくて、3人の距離が少し近い。エルヴァが一生懸命、両手で侍女から受け取ったりんごを潰そうと握っていた。
不思議そうに息子を見るエルフランに、私が話した武勇伝の話を教えると、彼は、ぐっ、と苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…あれは、同僚が面白おかしく脚色してだな」
「え?じゃぁうそなの?」
気まずそうに言うエルフランに、エルヴァはショックを受けた顔をする。
「…いや、嘘ではないが…その」
事実なのに、嫉妬して感情に任せてりんごを潰すなんて、貴族としてあるまじき行為と言いたいけど、ショックを受ける息子には何て説明すればいいのか迷ってるみたいだ。
「ふふ」
「ミネルヴァも笑ってないで助けてくれよ」
大柄な男の途方に暮れる顔を見て、愛おしくて笑みが溢れると、彼は私の笑顔を眩しいものを見るように目を細めた。
「…さぁ、そろそろ寝ましょう、じゃないと明日起きられないからね」
エルヴァの頭を撫でると、息子は私の腰に腕を回して抱きついた。
「またお話聞かせてね?」
「ええ、今度はお父様も一緒に」
うん、と返事をすると、息子は今度はエルフランに抱きついた。
「よし、行くか」
「おやすみなさい、お母様」
「おやすみなさい私の天使」
エルフランは片手で難なくエルヴァを抱き上げると、私もソファーから立ち上がって、息子の頬におやすみのキスをして頭を撫でた。
挨拶が終わると、エルフランは幼い子が寝られるように息子の部屋へと連れて行った。
「今日は、エルヴァに2人が出会った時の話をして」
夫が帰って来たら、エルヴァの1日あった事の止まらない報告の嵐の後、2人きりになったら私が彼を独占する。
「そうか」
先にベッドに入っていた私のそばにくると、彼は布団を捲りベッドに入った。
私の頭を撫でながら頬に掛かる髪を退けると、私の目の下にある泣きぼくろを親指の腹で撫でた。
「…もう一度、熊男さんとデートをしたいわ」
「デート?」
今日エルヴァに言われて、あの時のように──正確にはデートじゃないし、行くお店ごとに会っただけだけど、屋台に行って、入れなかったカフェに行って、話すきっかけとなった酒場に行って…それで最後に
「…っ、そんな顔で見るな」
「そんな顔って…?」
息を呑むエルフランが低く唸ると、私は潤む瞳で見上げて、頬にあるエルフランの手に自分の手を重ねた。
「あの時の思い出も、大事に心にしまってますわ」
「ああ、俺もだ…俺のミル」
彼は名残り惜しそうに私の頬から手を離すと、お布団の中に入れて、私の腰のラインを撫でた。
私は右手を彼の顔に添えた。私にやってくれたように、彼の目にある傷跡をそっと撫でる。
「…愛してます、熊男さん」
「俺もだミル…世界で一番」
彼はお布団を上げて私達を隠すと、熱い一夜はこうして始まった。
***************
「あら、まだ屋台やっているわ」
「エルフラン見て、可愛い飲み物ね、ケーキも美味しい」
「この雑貨屋懐かしいわ」
黒いフード付きコートを羽織るポニーテールの私が目を輝かせて、あの時したかった事を存分に楽しんでいた。
「ミル、離れるな全部見るから」
子供のように目に入った所をあちこち移動する私を、毎回エルフランは呼び止める。
今日はエルフランの休みの日で、本当ならエルヴァと3人で過ごす予定だったけど、エルフランがあの時のデートをしようと誘ってくれたから、2人で出かけた。
馬車に乗った時から楽しみで、ずっと顔が緩みっぱなしだ。それを宥めつつ、エルフランは私の腰や肩に手を回すが、それなのに私が目についたところに急に向かうから離れてしまうのだ。
屋台も、あの時行きたかったカフェにも入れたし、雑貨屋で浮浪者として捕まる事もない。日も暮れて、いよいよ2人が話すきっかけになった酒場に行くと、あの時と変わらない店内で、私達はカウンターに並んで座った。信じられないけど、エルフランが店内に入ったら、喧騒していた酒場がシンと静まり返ったのだ。
「レモン水で」
「ビールを」
あの時と同じ飲み物を頼むと、一度だけ会った店員は変わっていたけど、酒場に来て酒を頼まない私に眉を上げたが、隣に座る熊男が怖いのか、「はいよ」と言って離れて行ってしまった。周りを見渡せば、お店にどんどん人が増えて、これから酒盛りが始まり賑わっている。
「へい、お待ち」
ドンッとカウンターに置かれた2人分の飲み物は、懐かしいジョッキだ。さっきの注文を取りに来た店員とは違って、この店の亭主らしき男の人が置いたから、きっと私とエルフランを見て、訳ありだと思ったらしかった。それもそのはずで、私はフードを頭に付けて顔を隠しているコートを羽織っているし、エルフランはシンプルなYシャツとカーキ色のズボンを履いているが、厚い胸板も腕も足も一目見たら屈強な男だとわかる。それに加えて顔に傷もあるものだから、誰も私達に──主にエルフランに近寄ろうともしないのだ。
「懐かしいね」
ひと通り店内私はあの時と同じで、エルフランを見ると、彼は私をじっと見ていた。
「どうしたの?」
「ゔっ、いや」
私がどうしたか聞くと彼はなぜか慌てる。そしてカウンターに置かれたジョッキに手を伸ばして飲み始めた。私も目の前のジョッキを手に取り、レモン水を口にすると、一気に頬が熱くなった。
──アルコールなんて入ってないのにどうして
と思ったけど、あの時もアルコールの匂いに当てられたのを思い出した。
かといって、酔っ払ってしまったかというとそうではない。カウンターの上に腕を置いていた彼を見上げ、ビールを飲む姿を見てうっとりとしてしまう。
──やっぱりエルフランが1番カッコいいわ
ここが酒場だと忘れてしまい、彼の腕に手を触れて、肩に寄りかかる。
「…ミルどうした?気分が悪いのか」
ちょっと焦るエルフランの優しさが、心に沁みていく。
「いいえ…私の旦那様はかっこいいと改めて思っていただけですわ」
ガヤガヤうるさい酒場での私達のやり取りは、誰も聞こえないし、少し小声で話したからエルフランに聞こえないと思っていたのに、彼は身体を強張らせた。
「ミル…そんな愛いことをいうな」
ぐるっ、と唸る声に身体が痺れる。
──ああ、骨の髄まで彼に溺れてるみたい
肩に頭を付けたかったけど、体格差がありすぎるから、二の腕に頬をつける事しかできない。
私が彼の腕に添えた手の上に、エルフランの手が重なった。
「マスター…支払いをっ」
あの時と同じ、焦った彼の声が聞こえたが、私は重ねられた手から目を離す事が出来なくなっていた。
***************
最後はやっぱり、彼と一夜を過ごした場所…かと思ったけど、それは叶わなかった。酒場を少し離れた所に停めた馬車の中に乗り込むと、彼の膝の上に座らされ、ずっと我慢していたと、浴びるようなキスをされる。
「ミルッ、はっ」
「あぁっ、熊男さんっ」
なんでももうあの場所は引き払っていて、誰かが住んでいるとか、他の奴に声を聞かせたくない、あの時は余裕がなかった、とか、声ひとつ俺のものだと熱く囁かれれば、最初の再現なんてどうでもよくなってしまった。
彼の首の後ろに手を回せば、私達は顔の角度を何度も何度も変えて深い口づけをする。彼は私が落ちないように腰に手を添えていたのに、今は左手だけを腰に置いて、右手で私のコートの中に手を入れて足を撫でた。
「もうすぐ着く」
唇が少し離れた時に、彼からそう言われ、どこに?と答える前に、また塞がれた。腫れてしまいそうなくらいキツく吸われ、ちょっとチリッとする。余裕のないエルフランを不思議に思いつつ、私は彼の頬に手を添えて視線を合わせた。
「私はどこにも行きませんわ」
彼の目にある傷跡にキスをすると、彼は顔を歪めて泣きそうになる。
「ああ…ミルッ、俺の…ミル」
「なぁに?熊男さん」
余裕のなかったキスから、エルフランの周りの空気が変わって急に焦りがなくなって、私の唇を啄む。
「そうだ、これからどこに向かってるのですか?」
「くくっ…俺を信用するのは嬉しいが、屋敷に残すのが不安になるから、相手に身を委ねるなの」
今日はデートの再現だって聞いたから、楽しみにしていたけど、酒場の後はどうするのかは分からなかった。きっと聞いても、ああそうなの、と言ってしまいそうだけど、エルフランはなんだか私が彼に全てを任せるのが嬉しそうだ。
──こんなの…いつも任せてるのに
子育てに関しては私が考えてるが、エルフランといるときだけは基本受け身だ。
「ああ、悪かったよ、ミル…拗ねるな」
「拗ねてませんわっ…いつも任せてしまうのは嫌ですか?なら直しますわ」
口を尖らせた私を見て、くすくすと笑う強面の夫に、私は可愛くない事を言ってしまうが、彼は私の言葉に眉を寄せた。
「それはダメだ、ミルに甘えられるのが好きだから、なくなったら悲しい」
そう言って彼は私の額や頬にキスを落としていく。
「ああ…もう着く」
彼は私の背中に手を添えると、残念そうにそう呟いた。
馬車が停まって着いたのは、いつぞやの王都での滞在していた時に使った、エルフランが結婚する前に住んでいた屋敷だ。
一度しか訪れなかったが、私は彼の過ごしたこの屋敷が気に入ってしまって、またエルヴァと来たい思っていたのだけど、なかなか王都に出かける用事もないから叶わなかった。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
遅い時間だというのに、執事と使用人が数名外で待っていて、私達を見て頭を下げた。
「ただいま、これは…その」
「わかっております、奥様」
エルフランに横向きに抱っこされて帰って来たから、驚くかなと思ったのだが、2回目ともなると執事達は全く動じていなかった。
「湯はいらん、適当にするから下がれ」
「かしこまりました…では明日…おやすみなさいませ」
ひと言だけ告げたエルフランが、私を抱き上げたままスタスタ歩くから、久しぶりの挨拶も出来ないから、私は彼の肩越しから手を軽く振るだけしかできなかった。
「ミル、他のやつに手を振るな」
「そんな事言ったって…あっ」
廊下を歩いた先にある部屋に入ると、ベッドの上らしき柔らかく弾力のある上に仰向けで寝かされた。前回来た時と違う感触が不思議で、周りを見渡していると、エルフランが私の首筋に顔を埋めた。
「ん…っ、ここは…?前来た時と部屋が違うわ」
「ん?ああ、あの後急に使用しても大丈夫なように手配した」
あの質素な部屋でも良かったのだけど、と思っていたけど、エルフランはなんだか嫌そうだった。
私とエルフランが腕を広げても眠れるほど大きなベッド、ナイトテーブルの上にはランプもあるし、部屋が薄暗くてよく見えないけど、それなりの広さの部屋っぽかった。
「ミル、俺を見てくれ」
私が周りを見過ぎているからか、エルフランが懇願するように私の耳に舌を入れて囁く。
「んっ…いつも見てるわ」
彼の首の後ろへと腕を回して彼の方を見ると、彼は私の口を塞いだ。ねっとりと舌を絡めながら、私の腰のラインをコートの上から撫でる。
「あっ、待って」
エルフランの肩を押すと、彼の動きは止まった。私がベッドから上体を起こして起き上がると、彼は私の足を跨いで座っていた。彼の足の間から足を引いて、エルフランの肩を押してベッドにお尻を付けさせると、今度は私が彼の足の上に座った。
「ミル?」
「今日のために準備したの」
そう言って、コートのボタンを外して、コートの下が見えるとエルフランの目が見張り驚きに変わる。
本当は今日一日ずっと恥ずかしかったんだけど、過去の対面の再現にはピッタリの身体のラインに沿ったタイトなドレスが露わになった。いつもは首元から足元まで隠すドレスを着ているが、今日は胸元が大きく開いているし、胸の谷間もばっちりと出来てるし、膝上のドレスは素足が見える今日のための特注品だった。
「…ふふっ、驚いた?」
「…ああ、コートの下はずっとそうだったのか」
固まる彼にサプライズ成功したと思っていたのに、突然低く唸るエルフランに私は驚いてしまう。
「エルフラン…?…っきゃ」
私の腰を掴み私の胸元に顔を埋めた彼は、
「だから今日は奥様をしっかり見てくださいと言っていたのか」
元々そのつもりだったから、本邸で言われた使用人の言葉に疑問を抱かなかったが、確かにこの格好を見たら攫われてしまうなと今ならわかる。それに使用人達は妻と子供に甘い側面もあったから、久しぶりの外出を心配しているのかと思っていたけど全然違った。
胸元が大きく開いた白い肌には、エルフランが絶えず付けた赤い所有印が色濃く残っている。
「愛してるわ、私の熊男さん」
そう言って私はコートを脱ぐと、ベッドへと投げた。どうせしばらくしたら床に落ちてしまうのだ、どこに置いても同じだと開き直る。ポニーテールにしていた髪の髪留めも取ると、フサッと髪が広がりながら解けた。
背中にあるファスナーに手を回すと、エルフランの手が私の手を掴み阻む。
「ここからは俺が」
エルフランが私の手を自分の首の後ろに回すと、彼は私の胸元に顔を寄せて、ちゅうと吸い付いた。チクリとした痛みが、エルフランがくれると思うと幸せな気持ちになる。跡の残るキスをしながら生温かい舌を這わし、その間にも背中のファスナーを下ろして順に露わになる素肌に顔を埋める。
「はっ…あっ!」
彼は片手で難なく私の身体を持ち上げて、ベッドの上に仰向けにさせると私の着ていたドレスを脱がしてしまう。私は彼の肩に手を置いて、Yシャツのボタンを首から外していると、彼はズボンを脱ぎ始める。
「んっ、まだ終わらないのに」
「だが、俺もミルを触りたい」
Yシャツのボタンを外すのに手間取っていると、彼は私の身体に手を這わした。最後の2個くらいボタンを残すと、彼は私の手をYシャツから退かした。Yシャツを脱ぎ捨てると、私の足を広げて彼は足の間に身体を入れた。彼の逞しい胸板と分厚い身体、そしておへそに付くほど太く固くなった赤黒い昂りがそそり立つのが見えた。
「ん、っぁ、は…ぁっ」
「愛してる、ミル、俺のだ」
彼の昂りを見てしまって、身体が期待してきゅんとする。私の顔の横に腕をつけた彼が私のこめかみや頬にキスをしながら私の広げた足の間にある蜜口に指先を添えて縁をぐるぐる撫で、私は彼の胸板から下へと左手を伸ばして固くなった昂りに触れた。昂りの先端を親指の腹で撫でると、指先が濡れていく。側面を握ると手の中でピクピクする昂りが、愛おしいと思うようになる。上下に擦ると、エルフランの息も上がっていき、私の頬に彼の息がかかる。
「ぐっ、っ」
「あっ!待っ…ぁっ」
彼は私の蜜口の縁を触っていただけだったのに、蜜口から溢れる蜜を指先に塗りたくると、蜜壺の中へと太くて固い指をなんの前触れもなく入れた。それなのに、下生えも親指でまるでついでというかのように弄ぶから、私の快感の波が高くなっていく。
「はっ、あっ」
1本だけだった指も、蜜の溢れる量が増えると2本になり、3本になる時にはまるで抽送している時のように蜜壺の中を出たり入ったりしている。そしてついには蜜壺の内側を解しながら広げて、指の腹で擦り始めると、指先をパラパラと動かす。
「んぐっ、ミルッ急に握るな」
「んっぁっ、はっ、ぁっ、っ」
強い快感に抗えられなくて、思わず昂りを握ってしまうと、エルフランは低く唸りながら私の蜜壺の中に入れた指先を曲げた。
「…っそろそろだな」
エルフランは私の蜜壺の中から指を抜いた手を口元に持っていき、舌を出して舐めとる。その姿はとても色っぽくて思わず見惚れてしまう。
「んっ、エル…フラッ」
「ああ、わかってる、すぐに天国へと連れて行くよ」
蜜壺の中にあった指がなくなり、身体が貪欲に快感を求めて私が甘く懇願すると、エルフランがそう言って、昂りを握る私の手を退かして私の蜜壺の中へと昂りを一気に入れた。
「あぁッ…大きい」
「…ぐっ、ミルッ」
背がのけ反ると、エルフランは突き出した格好となった私の乳房の先を口に入れて強く吸い付いた。ちゅうちゅうと赤ん坊のように吸い付かれたかと思ったら、彼は吸い付きながら私のお尻を掴み、繋がった下半身の抽送を始めた。
「あっ、あっすごっ…はっ、ぁ!」
「はっ…ぁっ、すごいな」
初めて横になる大きなベッドは2人分の重さにも耐えられるようで、本邸のように十分に乱れられる。彼の首に手を置くと、私の乳房から顔を上げたエルフランが私の唇に自分の唇を重ねた。薄く口を開けて、彼の舌を受け入れると、鼻呼吸だけになった荒い息は更に上がり、キスをしたいのに出来なくなる。
「んんっ」
エルフランは口を離して起き上がり、私の肩の横に両手をつくと、腰の動きを本格的に動かし始めた。
「っ、はっ」
気持ち良さそうに荒い息を吐き出すエルフランの壮絶な色気に、私は下から見上げながら目を奪われる。
「はっ…あっ私の、エルフランっ」
「ミルッ、俺のっ…ミル」
彼の気持ちなんて疑った事もないし、そんなのあり得ないと分かっているけど、何故か誰にも渡したくない欲が急に出てきて彼の腕に手を添えた。すると、彼は上体を屈めて私の口にキスを一つ落とした。ちゅっとリップ音がすると、私は満足したのだけど、エルフランはそうじゃないみたいで、私の唇のラインに舌を這わした。
「もうイきそうだっ、ミル」
はっはっ、と荒い息の彼に当てられ、私の身体も絶頂へと向かっていく。
「私もっ愛してるわっエルフラン」
「俺もだ、ミネルヴァ、俺のミル」
ぱんぱんっと抽送が激しくなると、エルフランが私の上に覆い被さり首筋に口を付けた。
「ぁあっ!ぁあっ!」
「ぐっ、ミルッ」
私の背中に手を回してキツく抱きしめ、私はエルフランを抱きしめると、絶頂がやってきて、エルフランは私の中に留まり蜜壺の中へと欲情の証を放出させた。
しばらく動かず重なっていた山は、くすくすと笑うミネルヴァの声に反応してまた動き出して、部屋に太陽の日差しが入る頃になるまで離れる事はなかった。
「お母様だけ、ずるい」
「まぁ、じゃあ今度は3人で行きましょう」
父と母が出かける事は知っていたエルヴァだったが、もう一つの家があると知ると、頬を膨らませて拗ねてしまったのだ。
「本当?約束だよ?お父様」
「…ん?ああ、そうだな」
「本当?約束だよ!お父様」
今日は大好きなお父様とお母様と一緒に過ごせて嬉しいエルヴァがにこにこと上機嫌で言うと、エルフランはミネルヴァを滞在させた翌日の使用人達の色めき立つ様子を思い出した。
仕事の関係で渋々別邸に自分1人がいる時は、淡々と仕事をこなすだけなのに、ミネルヴァがいた日は家の主人であるエルフランには通常通りの対応なのに、みんながミネルヴァと楽しそうにいたからだ。
ミネルヴァでそうなのだから、エルヴァも一緒にいたらきっと、もっと別邸にきてくれと催促されるに違いないとエルフランはげんなりしていた。
──別邸は、仕事先の奴らがふらりと来る可能性が捨てきれないから、あんまり好かん
城でも有名な妻と息子を溺愛する最強の将軍が、2人を街の近くに住まわせていると知られてしまったら、部下は面白がって、エルフランを探しに来たと嘘をついて2人に会いにいきそうだと、いや、確実に会いに行くなと本能が察知する。
だが可愛い息子の願いは叶えたいと、願うエルフランは、くるくる回って喜ぶ息子には本心を告げる事が出来ないでいた。
「良かったですわ、私もエルヴァと行きたかったの」
そしてトドメに愛する妻にも言われたら、エルフランは頷く事しか出来なかったのだった。
後日約束を果たす為に妻と息子を別邸に連れて行くと、使用人達は再会した妻と初めて見る息子に喜んだ。
一泊の予定と秘密裏に動いていたのに、いつもより移動時間の猶予が出来たから、早めに次の仕事に取り掛かって、さっさと仕事をこなそうとするエルフランの退勤時間が遅いと察した部下達に見破られる事となり、次の日に突然別邸を訪問されるハプニングも起こった。
「へー!お父様は1番えらいのか」
「…ぐっ、なんて、純粋な目で見る…恐れる熊男の子なのに」
普段父の仕事なんて聞いた事はあるけど、具体的に何をしているのか分かっていなかったエルヴァは、大きな瞳を輝かせて部下達の話を聞いた。
反対に部下達は純粋な子供を前に、失礼な言葉を放ち見事心を奪われたのであった。
その様子を見ていたミネルヴァはにこにこと笑っていたが、エルフランの顔には青筋が立ったのに気がついていたのは、この家をまとめる執事のみだった。
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