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プロポーズ
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初めてキースと会わなかった夜が明け、日が昇ると部屋が明るくなった。
ほぼ眠れなかった私は、ベッドの上でただ横になっていた。
シンとする部屋に、コンコンと響く扉をノックする音。
ーーこんな朝早くにどうしたのかしら
でも、返事をする気にもなれなかった私は、寝たふりをしようとぎゅっと目を閉じて肩までお布団を上げると、ガチャッと扉が開く音がした。
ーーショウかしら
初めて無言で入るショウに、戸惑いつつも寝たふりをしている私は息を殺した。
ギシッと軋む音で、誰かがベッドに上がったことに気がついた。
「…ソフィア」
甘く蕩けるような声のキースに、目を開けそうになるが、ぐっと我慢した。
ーー初めてっ、呼び捨てにっ
心の中が騒がしくお祭り騒ぎだったのだが、キースが朝私の部屋に、しかも許可なくベッドに上がるなんて
ーー何かあったのかしら
そっと目を開け、今起きたように装い身体を動かすと、彼の腕に肩が当たった。
「…キース様…?」
私を見下ろす彼の顔は、優しく微笑んでいた。
「…おはよう、ソフィア」
私の顔に近づき屈んだキースは私の唇に触れると、朝から舌を絡める濃厚なキスをする。
びくっと動いた身体だが、彼の肩に手をつけ、首に回すと、さらに深くなるキスに自然と鼻で息をするようになった。
くちゅくちゅっと響く水音が、彼の唾液が口内に流れてくる。ゴクゴクと飲むと、彼も私の口内を舌で掻き乱し、私の唾液を吸う。
「ん、っんぁ」
鼻で息していても息苦しくなるのだが、彼は私を離そうとしない。
やがて、ちゅぅっと強く舌を強く吸うと、離れた唇。
額を合わせ、視線を絡めると
「…身体は、大丈夫か?」
優しく気遣う声に、ドキドキと胸が高鳴る。
「…はい、昨日はすいませんでした」
本当は身体は元気なのだが、寝不足のためかキスに音を上げてしまった私を、本調子じゃないと勘違いしたのかもしれない。
「…なら、いいんだが」
ちゅっちゅっと頬にキスをするキースに、くすぐったくて、ふふふっと笑うと、彼は私の手を引き、起き上がらせた。
ベッドの上に座り私の頭を撫でる彼は、どういうわけか室内着だった。
「…あの、キース様」
戸惑いを隠せない私は、彼の服と顔に視線を行ったり来たりさせた。
「ん?」
先を促す、甘い囁く声に
「あの、お仕事はよろしいのですか?」
と疑問を口にした。
「ああ、間もなく結婚式だろう?なので、少し早いが休暇を取った…もちろん急な場合は対応するが」
ーー結婚
嬉しいはずなのに、お父様の手紙を思い出しどんよりとした気持ちが溢れてくる。
仕事熱心なキースらしくないと、普通なら思うはずが、自分の事でいっぱいいっぱいの私は気がつかない。
彼は私の唇に親指の腹でなぞると、
「…ソフィア、あなたの気持ちを知りたい」
と急に真剣な眼差しで私を見つめた。
「…私の…気持ち…?」
言っている意味が分からなくて、困惑するが彼が
「…明後日にはもう、夫婦だ…もし他に好きな人がいるのであれば…」
ーー婚約者の前で、他に好きな人って?
疑問が湧き出るが、首を横に振り否定した。
「…いいえ、おりません」
ギュッと締め付けられた胸に、悲しいと気がついた。
ーー私…キース様が…好きなのかしら
他に好きな人と言われ、最初に浮かんだのが、キースなのだ。
そんな思いを巡らせていたら、どこかホッとしたキースが私の手を取り手の甲にキスを落とす。
「ソフィア…君を生涯愛し、慈しむことを誓うよ」
まるで結婚式みたいに、真っ直ぐな視線の彼に
「…キース様」
感動して涙が溢れた。
ほぼ眠れなかった私は、ベッドの上でただ横になっていた。
シンとする部屋に、コンコンと響く扉をノックする音。
ーーこんな朝早くにどうしたのかしら
でも、返事をする気にもなれなかった私は、寝たふりをしようとぎゅっと目を閉じて肩までお布団を上げると、ガチャッと扉が開く音がした。
ーーショウかしら
初めて無言で入るショウに、戸惑いつつも寝たふりをしている私は息を殺した。
ギシッと軋む音で、誰かがベッドに上がったことに気がついた。
「…ソフィア」
甘く蕩けるような声のキースに、目を開けそうになるが、ぐっと我慢した。
ーー初めてっ、呼び捨てにっ
心の中が騒がしくお祭り騒ぎだったのだが、キースが朝私の部屋に、しかも許可なくベッドに上がるなんて
ーー何かあったのかしら
そっと目を開け、今起きたように装い身体を動かすと、彼の腕に肩が当たった。
「…キース様…?」
私を見下ろす彼の顔は、優しく微笑んでいた。
「…おはよう、ソフィア」
私の顔に近づき屈んだキースは私の唇に触れると、朝から舌を絡める濃厚なキスをする。
びくっと動いた身体だが、彼の肩に手をつけ、首に回すと、さらに深くなるキスに自然と鼻で息をするようになった。
くちゅくちゅっと響く水音が、彼の唾液が口内に流れてくる。ゴクゴクと飲むと、彼も私の口内を舌で掻き乱し、私の唾液を吸う。
「ん、っんぁ」
鼻で息していても息苦しくなるのだが、彼は私を離そうとしない。
やがて、ちゅぅっと強く舌を強く吸うと、離れた唇。
額を合わせ、視線を絡めると
「…身体は、大丈夫か?」
優しく気遣う声に、ドキドキと胸が高鳴る。
「…はい、昨日はすいませんでした」
本当は身体は元気なのだが、寝不足のためかキスに音を上げてしまった私を、本調子じゃないと勘違いしたのかもしれない。
「…なら、いいんだが」
ちゅっちゅっと頬にキスをするキースに、くすぐったくて、ふふふっと笑うと、彼は私の手を引き、起き上がらせた。
ベッドの上に座り私の頭を撫でる彼は、どういうわけか室内着だった。
「…あの、キース様」
戸惑いを隠せない私は、彼の服と顔に視線を行ったり来たりさせた。
「ん?」
先を促す、甘い囁く声に
「あの、お仕事はよろしいのですか?」
と疑問を口にした。
「ああ、間もなく結婚式だろう?なので、少し早いが休暇を取った…もちろん急な場合は対応するが」
ーー結婚
嬉しいはずなのに、お父様の手紙を思い出しどんよりとした気持ちが溢れてくる。
仕事熱心なキースらしくないと、普通なら思うはずが、自分の事でいっぱいいっぱいの私は気がつかない。
彼は私の唇に親指の腹でなぞると、
「…ソフィア、あなたの気持ちを知りたい」
と急に真剣な眼差しで私を見つめた。
「…私の…気持ち…?」
言っている意味が分からなくて、困惑するが彼が
「…明後日にはもう、夫婦だ…もし他に好きな人がいるのであれば…」
ーー婚約者の前で、他に好きな人って?
疑問が湧き出るが、首を横に振り否定した。
「…いいえ、おりません」
ギュッと締め付けられた胸に、悲しいと気がついた。
ーー私…キース様が…好きなのかしら
他に好きな人と言われ、最初に浮かんだのが、キースなのだ。
そんな思いを巡らせていたら、どこかホッとしたキースが私の手を取り手の甲にキスを落とす。
「ソフィア…君を生涯愛し、慈しむことを誓うよ」
まるで結婚式みたいに、真っ直ぐな視線の彼に
「…キース様」
感動して涙が溢れた。
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