9 / 20
お出かけ2
しおりを挟む
目的地に着くと、そこは割と栄えている町だった。
市場みたいに、出店が並び温かい食べ物ーースープや熱い生地にお肉を挟んだもの、温かい飲み物などの湯気がのぼっていた。
「足元に気をつけて」
私を見つめ優しく言う彼は、決して私の手を離そうとしなく、力強く握る手が私をしっかりと支えてくれる。
「はい、ありがとうございます」
大事にしてくださる彼にハニカミながらも返事をすると、プイッと勢いよく視線を逸らされた。
彼に案内されるがまま、色々なところを見て周り、"領主様もついに年貢の納め時だ!"と町民に言われてはお祝いにアクセサリーやスープをご馳走になった。
流石にお酒をススメられた時は、キースが全力で止めてくれたのだ。
楽しかった1日も日が暮れ始めると、
「そろそろ帰ろう、冷えるから」
と私を気遣って馬車へと戻った。
「夜は冷えるからこちらへ」
と低い声で手を差し出すキース。彼の手を取ると、膝の上に座らされ横抱きになった。
「…重くないですか?」
と恥を偲んで問いかけると、
「全然、軽いくらいだ」
と蕩ける顔で微笑む彼。規則正しく揺れる馬車と暖かい室内に、久しぶりに歩いた身体は思ったよりも疲れているらしく、瞼がだんだんと重くなっていった。
コクンコクンと揺れる頭を、彼は自分の肩に寄せると、
「…眠りなさい、着いたら起こす」
優しく言ってくれ、
「…すい…ませ…ん、キース様」
と起きなくては、思っていた私は彼の言葉に甘え、少しの間眠る事にした。
*******************
初めて一緒に出かけてから、私達の距離はぐんと近づいた…と思う。
夜に会うだけだったお茶会も、寝る前に私の部屋で過ごす事も…そして……
「ん、っ」
唇にキスをする事が大半を占めるようになった。額や頬だけだったのに、ある時唇の近くにキスをされ、そのまま初めてのキスをされた。触れるだけだった唇へのキスも、口内に彼の舌が入った日。舌を絡める日。歯列をなぞる日。舌を絡め歯列をなぞる日。とキスだけじゃなくお互いの唾液を飲んだり、流したりする日。とだんだんとキスにも種類がある事を知った。
最初の頃は息苦しくて、すぐに顔を離したのだが、鼻で息をすると教えてもらってからは、大分長い時間キスが出来る様になった。
キスの後にぼぅっと、自然と潤む瞳で彼を見上げると、彼はウッと鼻を押さえて、「おやすみ」と告げそそくさと、帰ってしまう事もあった。
そうした日々を過ごす中、結婚式まであと4日と言うお昼時に、ヒル家から手紙が届いた。
父だ。
『婚約は破棄出来そうか』
数枚の紙の1番最後にひと言書かれた文に、私は当初の目的を思い出した。
そのまま憂鬱な時間を過ごしていたら、部屋に閉じこもった私を、アガサが心配し気にかけてくれたのだが、とにかく誰にも会いたくなかった私は、体調が悪いと、夜のお茶会もキースの来訪も断ったのだった。
市場みたいに、出店が並び温かい食べ物ーースープや熱い生地にお肉を挟んだもの、温かい飲み物などの湯気がのぼっていた。
「足元に気をつけて」
私を見つめ優しく言う彼は、決して私の手を離そうとしなく、力強く握る手が私をしっかりと支えてくれる。
「はい、ありがとうございます」
大事にしてくださる彼にハニカミながらも返事をすると、プイッと勢いよく視線を逸らされた。
彼に案内されるがまま、色々なところを見て周り、"領主様もついに年貢の納め時だ!"と町民に言われてはお祝いにアクセサリーやスープをご馳走になった。
流石にお酒をススメられた時は、キースが全力で止めてくれたのだ。
楽しかった1日も日が暮れ始めると、
「そろそろ帰ろう、冷えるから」
と私を気遣って馬車へと戻った。
「夜は冷えるからこちらへ」
と低い声で手を差し出すキース。彼の手を取ると、膝の上に座らされ横抱きになった。
「…重くないですか?」
と恥を偲んで問いかけると、
「全然、軽いくらいだ」
と蕩ける顔で微笑む彼。規則正しく揺れる馬車と暖かい室内に、久しぶりに歩いた身体は思ったよりも疲れているらしく、瞼がだんだんと重くなっていった。
コクンコクンと揺れる頭を、彼は自分の肩に寄せると、
「…眠りなさい、着いたら起こす」
優しく言ってくれ、
「…すい…ませ…ん、キース様」
と起きなくては、思っていた私は彼の言葉に甘え、少しの間眠る事にした。
*******************
初めて一緒に出かけてから、私達の距離はぐんと近づいた…と思う。
夜に会うだけだったお茶会も、寝る前に私の部屋で過ごす事も…そして……
「ん、っ」
唇にキスをする事が大半を占めるようになった。額や頬だけだったのに、ある時唇の近くにキスをされ、そのまま初めてのキスをされた。触れるだけだった唇へのキスも、口内に彼の舌が入った日。舌を絡める日。歯列をなぞる日。舌を絡め歯列をなぞる日。とキスだけじゃなくお互いの唾液を飲んだり、流したりする日。とだんだんとキスにも種類がある事を知った。
最初の頃は息苦しくて、すぐに顔を離したのだが、鼻で息をすると教えてもらってからは、大分長い時間キスが出来る様になった。
キスの後にぼぅっと、自然と潤む瞳で彼を見上げると、彼はウッと鼻を押さえて、「おやすみ」と告げそそくさと、帰ってしまう事もあった。
そうした日々を過ごす中、結婚式まであと4日と言うお昼時に、ヒル家から手紙が届いた。
父だ。
『婚約は破棄出来そうか』
数枚の紙の1番最後にひと言書かれた文に、私は当初の目的を思い出した。
そのまま憂鬱な時間を過ごしていたら、部屋に閉じこもった私を、アガサが心配し気にかけてくれたのだが、とにかく誰にも会いたくなかった私は、体調が悪いと、夜のお茶会もキースの来訪も断ったのだった。
89
お気に入りに追加
1,219
あなたにおすすめの小説
筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。
一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。
そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。
ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。
慕ってはいても恋には至らなかった。
やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。
私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす
――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎
しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎
困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で……
えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね?
※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。
※pixivにも掲載。
8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?
はなまる
恋愛
シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。
ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。
そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。
国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。
そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。
彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。
そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。
隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…
この話は全てフィクションです。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末
藤原ライラ
恋愛
夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。
氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。
取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。
堅物王太子×引きこもり令嬢
「君はまだ、君を知らないだけだ」
☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。
※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる