8 / 20
お出かけ1
しおりを挟む
初めて頬にキスをされてから変わった日常。
彼が私の部屋に入り、しばらく話した後頬や額に軽く口づけをして帰る。最初は戸惑っていた触れ合いにも大分慣れてきた。
今日はキースの休みの為、2人でお出かけをする予定だ。体調が良くなかった場合には行かないと散々言われてきたので、早めに寝たし暖かい格好になっている。
何重にも着ている服に、足元までスッポリと隠れるコート、首にはマフラーがぐるぐる巻きにされモコモコの帽子を被っている。靴もファーのついてるため冷える事はないだろう。
玄関ホールへと着くと既に待っているキースが、コートを着ている所だった。
「キース様、お待たせしまして申し訳ありません」
私を上から下まで何度も視線を送り、満足したのか頷いた。
「うむ、では行こう」
当たり前のようにエスコートをされ、風邪をひくからと外出禁止にされていた私は、久しぶりに出る屋敷の外の眩しさに目を瞑った。
「足元、気をつけるように」
歩き出した彼に滑らないように注意して続く。何故か周りの人達もハラハラしながら見守る。そんな様子にくくっとキースが笑う。
「酷いですわ、いくら身体が弱いからって私は全く歩かない訳じゃないです」
ムッと拗ねて口を尖らせる。
「そうだな…みんなの心をあっという間に掴んだな」
目を細め柔らかな表情を見せる事が多くなったキースに、胸がドキドキとする事が増えて戸惑う
ーーキース様ってとってもカッコよくて、本当心臓がいくつあっても足りないと思うわ…それに…
チラチラと彼の唇に視線がいってしまう。カサついた唇にいつも、頬に、額にキスをされている。異性との接触が皆無だった私には免疫がなく、たまに挙動不審になってしまうが…みんなの視線が優しい。
「ソフィア様、どうぞお気をつけて」
寒いはずなのに、外まで出てきたアガサや使用人達に「ありがとう」と伝えた。
「ソフィア殿、段差に気をつけて」
「っあっ!はいっ!」
ぼぅっと彼を見惚れているのに、気が付かれたくなくて元気な声を出すが、多分バレているのだろう。
「ソフィア殿、外で大きな声を出したら、冷えて喉を痛めてしまうよ」
それなのに、注意をされてしまったのだ。
初めて乗るムール家の馬車は、広く豪華で暖かくされていた。ふかふかの赤いクッションは長時間の移動でも身体が疲れにくく、足元には私のふくらはぎぐらいの大きさのミニ暖炉が設置されており、薪がパチパチと赤く燃えている。ミニ暖炉の上には小窓があり、空気の入れ替えが出来ていた。
私の前に座った彼は、膝の上に手を置き拳を作っていた。
「すごいですわ…暖かくて足元も冷えないですね」
「ああ、この日のために準備をさせた…寒くないか?お尻は痛くないか?」
感動している私を他所に彼は不便はないかと聞いてくる。
「この日のため…ですか?普段外出なされてますよね?」
「ああ…普段私が使う馬車はもっとシンプルで、ただ移動するだけだからな…寒さも着込めばなんとかなる」
驚いて目を見開き、彼を見る。
「大丈夫なんですか…?その…私のためにお金を使用してしまって…?」
困惑する私に彼は、ふっと笑う。
「貴方はこのムール家の花嫁ですので」
ボンッと顔が赤くなる私に彼は、私の頬に手を触れた。
親指の腹で頬を撫でて、楽しそうに笑っている。
「~~~~~~っっ!揶揄っているんですかっ!」
私の声が馬車内に響いた。
彼が私の部屋に入り、しばらく話した後頬や額に軽く口づけをして帰る。最初は戸惑っていた触れ合いにも大分慣れてきた。
今日はキースの休みの為、2人でお出かけをする予定だ。体調が良くなかった場合には行かないと散々言われてきたので、早めに寝たし暖かい格好になっている。
何重にも着ている服に、足元までスッポリと隠れるコート、首にはマフラーがぐるぐる巻きにされモコモコの帽子を被っている。靴もファーのついてるため冷える事はないだろう。
玄関ホールへと着くと既に待っているキースが、コートを着ている所だった。
「キース様、お待たせしまして申し訳ありません」
私を上から下まで何度も視線を送り、満足したのか頷いた。
「うむ、では行こう」
当たり前のようにエスコートをされ、風邪をひくからと外出禁止にされていた私は、久しぶりに出る屋敷の外の眩しさに目を瞑った。
「足元、気をつけるように」
歩き出した彼に滑らないように注意して続く。何故か周りの人達もハラハラしながら見守る。そんな様子にくくっとキースが笑う。
「酷いですわ、いくら身体が弱いからって私は全く歩かない訳じゃないです」
ムッと拗ねて口を尖らせる。
「そうだな…みんなの心をあっという間に掴んだな」
目を細め柔らかな表情を見せる事が多くなったキースに、胸がドキドキとする事が増えて戸惑う
ーーキース様ってとってもカッコよくて、本当心臓がいくつあっても足りないと思うわ…それに…
チラチラと彼の唇に視線がいってしまう。カサついた唇にいつも、頬に、額にキスをされている。異性との接触が皆無だった私には免疫がなく、たまに挙動不審になってしまうが…みんなの視線が優しい。
「ソフィア様、どうぞお気をつけて」
寒いはずなのに、外まで出てきたアガサや使用人達に「ありがとう」と伝えた。
「ソフィア殿、段差に気をつけて」
「っあっ!はいっ!」
ぼぅっと彼を見惚れているのに、気が付かれたくなくて元気な声を出すが、多分バレているのだろう。
「ソフィア殿、外で大きな声を出したら、冷えて喉を痛めてしまうよ」
それなのに、注意をされてしまったのだ。
初めて乗るムール家の馬車は、広く豪華で暖かくされていた。ふかふかの赤いクッションは長時間の移動でも身体が疲れにくく、足元には私のふくらはぎぐらいの大きさのミニ暖炉が設置されており、薪がパチパチと赤く燃えている。ミニ暖炉の上には小窓があり、空気の入れ替えが出来ていた。
私の前に座った彼は、膝の上に手を置き拳を作っていた。
「すごいですわ…暖かくて足元も冷えないですね」
「ああ、この日のために準備をさせた…寒くないか?お尻は痛くないか?」
感動している私を他所に彼は不便はないかと聞いてくる。
「この日のため…ですか?普段外出なされてますよね?」
「ああ…普段私が使う馬車はもっとシンプルで、ただ移動するだけだからな…寒さも着込めばなんとかなる」
驚いて目を見開き、彼を見る。
「大丈夫なんですか…?その…私のためにお金を使用してしまって…?」
困惑する私に彼は、ふっと笑う。
「貴方はこのムール家の花嫁ですので」
ボンッと顔が赤くなる私に彼は、私の頬に手を触れた。
親指の腹で頬を撫でて、楽しそうに笑っている。
「~~~~~~っっ!揶揄っているんですかっ!」
私の声が馬車内に響いた。
95
お気に入りに追加
1,219
あなたにおすすめの小説

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

執着系皇子に捕まってる場合じゃないんです!聖女はシークレットベビーをこっそり子育て中
鶴れり
恋愛
◆シークレットベビーを守りたい聖女×絶対に逃さない執着強めな皇子◆
ビアト帝国の九人目の聖女クララは、虐げられながらも懸命に聖女として務めを果たしていた。
濡れ衣を着せられ、罪人にさせられたクララの前に現れたのは、初恋の第二皇子ライオネル殿下。
執拗に求めてくる殿下に、憧れと恋心を抱いていたクララは体を繋げてしまう。執着心むき出しの包囲網から何とか逃げることに成功したけれど、赤ちゃんを身ごもっていることに気づく。
しかし聖女と皇族が結ばれることはないため、極秘出産をすることに……。
六年後。五歳になった愛息子とクララは、隣国へ逃亡することを決意する。しかしライオネルが追ってきて逃げられなくて──?!
何故か異様に執着してくるライオネルに、子どもの存在を隠しながら必死に攻防戦を繰り広げる聖女クララの物語──。
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞に選んでいただきました。ありがとうございます!】

お義兄様に一目惚れした!
よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。
なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。
仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。
そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。
クリステルはセドリックに一目惚れ。
けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。
クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。
ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。
その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら……
全38話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる