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11月 ホテル

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「旅行に行こうよ、有給溜まっているから消化しろって社長から取るように言われてさ…ね?」

11月に入ってから突然壱哉からそう提案された私は、悩んだ末に旅行に行く──けど、やっぱり新しい場所は苦手だ。頭では大丈夫だと思っていても、私の身体が強張って、どんな時にいう事を聞かなくなるのかわからないからだ。
返事を渋る私に、それでも壱哉は、電車で行けるし、駅と通じているから地上にでなくても平気だと言って、実際に泊まるホテルのHPホームページを見せて貰ってやっと壱哉の提案に同意した。
見せて貰ったホテルは地上60階建ての高層ビルで、泊まる予定のホテルの一室から海が見えて、港も一望出来ると書いてあった。遠い昔にはそこで貿易が盛んに行われていたが、今は港の前に公園やショッピングできる倉庫、遊覧船が出ているから名所がいっぱいと、HPで書かれたいた。
「ホテルの前は車道もないし、そのまま散歩に行こうよ」
「行ったことあるの?」
「いや、社長が言ってた」
スマホでHPを見ていた私に、壱哉は背後から私を抱きしめて一緒に座った。壱哉がホテル周辺の事を詳しいから、行ったことあるのかと聞いたが、夏祭りに会った社長に聞いたと聞いてホッとした。
──誰かと行ったと言われたら嫌だな…
最近の私はおかしい…日中も彼の事を考える時間が増えたし、2人でテレビを見る時に、たまたま女性タレントが映っている場面を壱哉が見ていると、心がモヤモヤとして嫌な気持ちになる。その時は壱哉に寄りかかると、彼は私の方を向いてくれるから嬉しいから嫌な気持ちは消える。
──ヤキモチ…嫉妬かな…私、壱哉が好きだったの?
今の私の気持ちは過去の私の気持ちなのか、今の気持ちなのかわからない。私が壱哉と過ごす限り壱哉に嫌な気持ちになった事ないが、過去の私は何をどう思っていたかなんか知らない。年下が嫌だったのかもしれないし、ただ単純にタイプじゃなかったのかもしれない。
「ん?どうした?」
スマホから顔を上げて、しばらく壱哉の顔に見惚れてたみたいだった。よく見るとかっこいいと思ってしまうのは、壱哉が私を好きだから自然と私も好ましく思っているからだと、自分に言い聞かせた。顔を横に振って、これ以上追及されないように話を逸らす事にした。
「ううん、何でも…何時くらいに行くの?」
「そうだな、朝早くだと通勤ラッシュで疲れるから10時くらいに駅に行こうか」
壱哉に誘われた旅行の日程は、火曜日出発して木曜日に帰ってくる2泊3日のプチ旅行で、電車で片道2時間半掛かる。だが、途中から特急にも乗るから壱哉の最寄りの駅から、特急の駅の出発する所までは普通の電車らしい。朝イチに行って観光するのもいいが、平日に出発するから通勤する人達に揉まれて行くと疲れてホテルに着くから観光が難しくなると壱哉は説明してくれた。
「…わかった、準備しておくね」
「それか、もう前日に荷物をここに運んでさ、泊まってよ!そうすれば一緒に出かけられるし」
2泊もするからキャリーケースを準備しなくちゃと、部屋の中にあるかもしれないから、帰ったら探さなくちゃいけない。
「…いいの?そうしたら旅行終わるまでずっと一緒だよ?」
いくら付き合いたてと言っても、いきなり4日もずっといると疲れちゃうと思って壱哉に聞くと、彼は私が何を言っているのかわからないような顔をした。
「当たり前じゃん、俺はいつでも居て欲しいけど」
「本当?」
「うん、マジマジ」
「あははっ…っん」
壱哉は私の手からスマホを取り上げると、私の口に啄むキスをしながら、私を床に押し倒した。
「…泊まったらさ、えっちしよう」
私の頭の横に手を置いた壱哉から見下ろされ、彼の目は真剣そのもので、冗談を言っている風じゃなかった。
「…うん」
壱哉の頬に手を伸ばすと、彼は嬉しそうに笑う。
「約束だよ、やっぱりナシも聞かない」
そう言って私の手を取ると、自分の首の後ろへと回して、壱哉は屈んで私の口に自分の口を重ねた。
「…今日も泊まってよ」
私の頬、顎のラインにキスをしながら、壱哉が私にお願いをする。
「でもっまだ水曜日っ」
最近壱哉の家に土曜日以外で泊まる事が多くなってきている。それは喜ばしい事なのかわからないけど、壱哉に求められると断れない自分がいる。
「明日送るから…予定ないなら、それまでいてよ」
壱哉からの願いは私にとっても魅力的だけど、
「ならっ、家に連絡しないと」
一度実家にいる母に連絡させて欲しいと言うと、壱哉は私から離れて、さっき取り上げた私のスマホを取ると、私に渡した。そして私がお母さんに向けてメッセージを打っている間にも、また私の頬やこめかみにキスを続けた。



***************


11月に入ると、つい2ヶ月前は暑かったのが嘘のように、上着がないと外出出来ないほど寒くなった。
黒いダウンを着て、ヒートテックの生地のタイツの上に、ダークブラウンのロングスカートを履いたが、やっぱり寒いと感じた。
地下鉄でホテルの最寄りに着くと、地上に出るために長い距離で移動するエスカレーターに複数回乗った。平日のお昼近くに着いたけど、電車の中はスーツを着たサラリーマンや女性が多くいた。子連れや年配の人も多く、目的地でもたくさんの人がいた。
「先に荷物おこうか、チェックインの前に荷物を預かってくれるみたいだし」
「うん」
前日から壱哉の家に泊まって、出かけたから時間を気にする事なく目的地に着いた。空いてれば隣同士で座ったし、1人分しか空いてなかったら私が座ると、私の前に壱哉は立った。隣にいるのが当たり前になって歩く時も手を繋ぎ、壱哉が私のキャリーバッグを待つ。その上に壱哉の宿泊用の荷物が入った、ボストンバッグを置いて引いている。
エスカレーターを上ると、壱哉は私の後ろに立った。振り向くと一段しか違いはないから、私の背中に壱哉の胸が当たって近い距離にいる。
「なぁ、ご飯はどうしようか」
「せっかくだから海の幸を食べたいな」
私がスマホで近くのご飯屋さんを調べると、壱哉は私の手元を覗く。あれこれ色々なご飯屋の紹介ページを見ていると、エスカレーターが地上階に着いた。

壱哉が予約したホテルに荷物を預けている間に、ロビーのソファーで座って待っていた。ロビーにある大きな窓の外を見ると、たくさんの人が行き来しているのを眺めていた。ビジネスホテルのようなスッキリしたフロントのあるフロアは、出迎えなお客向けて紅葉の飾りつけがなされていた。記憶喪失になってからホテルで泊まったことがないから、今日をすごく楽しみにしていた。
「お待たせ、行こうか」
しばらくすると壱哉がやって来て、荷物を預けたと言って、チェックインの時間になるまでの間、観光やご飯を食べに行く事にした。

「これ美味しいよ?はい、あーん」
ハリネズミのような3分の2ほどのトゲと黒胡麻で目を表したカスタードが入っている楕円形の揚げまんじゅうを食べ、甘いものが苦手だと言っていたが、少しなら食べられると壱哉が意地を張るから面白くて、私の食べかけを口元に持っていくと、壱哉はぱくりと大きな口を開けて残りを食べてしまった。
「…甘いな」
と、ぽつりとこぼしながら眉を寄せているが、悪くはないみたいで咀嚼している。
「あっ、なくなっちゃった」
まさか私のを全部食べられるとは思っていなかったから、甘いもの苦手な壱哉の分は買ってなくて、これから他のも食べたいから1個しか購入していなかったのだ。
壱哉の口の前に揚げまんじゅうを食べられ、手を上げっぱなしだった私の手首を壱哉は掴むと、私の手に付いたカスタードの残りもペロリと舌を出して舐めとると、赤くなっている私をチラリと見た。
「いっ、壱哉っ」
観光客も多い人通りで、何でもないように指先を舐められて何にも思わないはずがない。
「誰も俺たちを知らない人だし、気にしない気にしない」
私が恥ずかしいと言う前に彼からそう言われて、私の手首を掴んだ手を一緒に下ろして、そのまま手を繋いだ。
「食後にさ、あそこに大きな船が海に停泊する公園があるから、後でそこに行こう」
「もう!んじゃ…ご飯はどこ?」
むっ、と怒る真似をしたが、ただ恥ずかしいだけで、壱哉の言う通り誰も知らない人ばかりだから、本気で怒ったわけじゃないし、これ以上変な空気になりたくなかったから壱哉のご飯の話に乗った。
「海鮮料理が美味しい場所」
いくらお店の名前や出される料理を聞いても、着いたらわかると、壱哉は一言で片付けてしまう。確かに着いたらわかるが、それじゃ何にも喋れなくなってしまうから、つまらない。だから私は目に入った物を壱哉に教えることにしたけど、彼はそうだな、とかうん、とか返事はするがそれだけだ。
無口だ、無口だと思っていたけど、本当に必要最低限しか話さない。それは家の中でもそうだったし、大体抱き合っていたから気にしなかった。SNSのメッセージアプリでの今の壱哉の倍は饒舌な気もするが、本来がこっちなのかもしれない。
──電話してる時…頑張っていたのかな
そう思うと、私が一方的に話すから返しているだけとも取れるし、壱哉が頑張っていると思うと心がほっこりした。
「…どうした?」
「えっ?ううん、何でも」
自分はあまり話さないのに、私が黙ってしまうと、具合が悪いのかと心配されてしまう。手を繋いだまま壱哉の腕に、自分の腕を添えた。
──やっぱり、壱哉は変わってる
私のどこを好きになったのかなんて、お試しで付き合っているけど今だに知らない。壱哉が好きになったのは、私が記憶をなくす前の私だ。
私が壱哉にどんな態度をとっても、彼は受け止めてくれる…それが一番始めに思った事だ。壱哉から言われた以前の私は、彼に怒っていた。だが、それは理由を聞いたら納得した。誰だって恋人同士の時間を邪魔されたら、怒るだろう。それでも壱哉は私を好きだと言ったから、ある程度自分を出しても壱哉は受け止めてくれると思ったのだ。
それが修理されたスマホを見たら、私が壱哉に謝っていた事が分かったけど、壱哉は私が怒っていたと言っていたし、どうなっているのかもう何がなんだかわからない。壱哉に聞いてみたいが、聞いたら最後、私が壱哉に謝るしかないと思ってる。
──そこまで酷い態度はとってないと思うけど…壱哉に聞かないとわからない
だって普通に、初めて行くあの場所はいやだ、とか、この場所ならいいとか、事故のトラウマにより少しわがままになっているのだ。だけど、一度も壱哉にそれを止められたことはないし、最初から私が快適に過ごせるように提案をしてくれる。
──ここまで、私のことを思っているのに、嫌いになるはずなくない?
過去に私のことを、これほど一番に考えてくれた人なんていたのだろうか?記憶喪失の前の壱哉との関係性が見えなくて、モヤモヤする気持ちと、私のために行動する彼に対して嬉しい気持ち…そして…
──壱哉の物になりたい
繋がっていなくても、お互いの身体中に触れ合って、深いキスをすると、それ以上の関係を求めるようになる。仮の恋人のハズが、いつの間にか本当の関係を望むようになっていた。たとえ、彼が私を許さなくても、私は壱哉と繋がっていたい。
──もしかして壱哉は付き合ったら、豹変する男なのだろうか?だから以前の私は壱哉を拒絶していたのだろうか?
考え出したらキリがない可能性が頭の中をぐるぐると周り、そしていつも考えるに疲れて壱哉の甘やかす腕に戻るのだ。
──それでもいいや
慎重に考えて行動しないより、行動した方時の後悔がいいと私は決めたんだ。
「…本当大丈夫か?少し休む?」
「平気だって」
またいつものくせで考えていたらしく、壱哉は喋らなくなった私を本気で心配し始めた。私は首を横に振って、雑念を追い払うとこの旅行を楽しむことにした。




大盛りの海鮮丼とあさりの味噌汁を注文した壱哉と、海鮮丼の並盛りとわかめの味噌汁を頼んでご飯を食べたら、公園で食後の散歩をした。途中にあったカフェでホットの飲み物をテイクアウトで購入して、海の見える遊歩道にあるベンチに座った。私の右隣に座った壱哉に寄りかかると、彼は私の右手をとって指先を絡めて繋いだ。
「寒くない?」
「平気だよ、壱哉は?」
「俺も平気」
日差しが出ているからそんなには寒くはないが、風が吹くと時々潮の香りがする。カモメも飛んでるし、波の音もする。目の前にある大きな黒い船が、そこに停泊していた。昔の郵便を運ぶ役割のあったこの黒い船は現役が終わると、この公園の港に置かれて今は観光の名所となっていた。側面からも船を見れるように円形になった小さな広場が遊歩道から飛び出ていて、ベンチもあるから写真スポットとなっている。私達がいるのは、船が正面から見れる場所だ。目の前の絶景を見ながら飲むカフェラテが美味しい。
2人でいると、時間がすぐに過ぎていく気がして、もう1日の半分が終わってしまった。今の時間のまま時が止まればいいのに、と思って顔を上げると壱哉は私を見下ろしていた。
「…どうした?」
いつから私を見ていたの?と口にしようとして、口が開いたがやめた。その代わり少し背を伸ばして、壱哉の左頬に一度だけキスをした。
「まい?」
「私、もう覚悟出来てるよ?」
私が外ではしない行動に戸惑った彼に、私はもう一度左頬にキスをしようとすると、壱哉の顔が少しズレて彼の口の端に私の唇が触れた。
「残念、口にしたかった」
「…そういうこと言わないでよ」
私を揶揄うように、にこっと笑う壱哉の顔に恥ずかしくなって、口を尖らせると、彼は声を上げて笑いながら私の口にキスをして上唇を甘噛みした。
「…なら、今日は本当に離さないから」
ペロリと彼の舌で唇のラインを舐められ、額を合わせた後に壱哉と視線が合う。その壱哉の瞳の奥には、よく夜に私を見つめる熱の篭った欲情が垣間見れて、ドキッとした。


それから海沿いの遊歩道を歩き、繋いだ指先をぎゅっと握られて顔を上げると壱哉とキスをした。少しずつ宿泊するホテルへと近づくと、お互い無言になってしまう。
壱哉がホテルのチェックインの手続きをしている間に、最初に来た時にいたソファーに私は座って待っていた。
「お待たせ」
2人分の荷物をフロントから受け取った壱哉がやってくると、受付の人に言われた部屋に向かった。
エレベーターに乗ると私の腰に腕を回した壱哉は、私の頬にキスをする。私も壱哉の腰に腕を回して身体を寄せると、こめかみに舌を這わされた。
「…壱哉っ」
「うん、分かってるこれでも我慢してる方」
2人きりしかいないとはいえ、エレベーターにはカメラもあるはずだから、恥ずかしくて壱哉の胸板を押すと彼は私の額に唇をつけたまま話す。私の腰から肩に手が移動し、より一層壱哉の身体に密着する。
『誰も俺たちを知らない人だし、気にしない気にしない』
ふと壱哉が言っていた言葉が頭に浮かび、それもそうだと私は自分に素直に生きる事にした。壱哉の胸元を掴んだ後、少しだけ屈んだ彼の首の後ろに腕を回して、私は壱哉と口を重ねた。自分から壱哉の唇に舌を這わせると、固まっていた壱哉が口を薄く開けた。彼の口内に自分の舌を入れると、強く吸われた。お互いの舌を追いかけては舌で重ねて、ちゅうと吸い付く。顔の角度を何度か替えるとキスが深くなっていく。
「…っ、ん…っ」
もうお互いの口内なんて知り尽くしているのに、舌を這わせ合うのをやめられない。壱哉の手が私の肩から背中を伝い、腰の下にあるお尻を掴み始める。それは流石にまずいかもと思ったが、気持ちのいいキスに夢中になっていた私は、壱哉の口が私の口から離れていかないように腕に力を入れて抱きついて、キスに夢中になっていく。
「あっ…ッ…」
チン、と小さな音でエレベーターが目的の階に止まり、壱哉が私から離れてしまい、思わず不満の声が出てしまう。
「続きは部屋で」
壱哉はくすっと笑い、私の濡れた唇を親指の腹で拭うと私の肩を抱きながら一緒に歩き出した。


「わっ綺麗」
5406と扉にプレートが貼ってある部屋に入ると、出入り口の扉から向かいにある全面ガラス張りの外の海に沈む太陽の、夕焼けの景色を一望出来た。窓際に近寄って綺麗な景色に目を奪われていると、壱哉に背後から抱きしめられた。
「気に入ってくれた?」
「うん!すごい綺…麗」
壱哉が私の右頬に自分の頬をくっつけながら、聞いてきたので答えようと振り向いた先に、ダブルベッドがあったのに気がついた。
「どうしたの?」
これから夜を一緒に過ごすのは知っていたし、壱哉の家でも同じベッドで寝ていたけど、改めて本当の恋人同士になるんだと気がついたら恥ずかしくなってきてしまう。壱哉は顔を赤くしてしまう私を不思議そうに見て、ベッドから視線を外さなくなった私の様子に気がついて口元を綻ばせた。
「先に風呂に入ろうか、夕飯はその後にでも」
と一段声のトーンを落とした壱哉は私の返事を待たないで、私の手を取ってバスルームへと向かった。


「んっ、んぅっ、っ」
私が白いニットをたくし上げて頭だけ先に脱ぐと、私よりも先に上半身裸となった壱哉は私の口を塞ぎ、私の腰に彼の手を置いた。舌を掻き出されて、彼の口内へと誘導されると、強く吸われる。ニットの袖を腕から離して床に脱ぎ捨てると、私は背後のブラのホックを外した。
胸を支えていた胸がぷるんと揺れると、壱哉の熱い胸板に当たる。私が肩紐を肩から取ると、壱哉はキスを続けながら私の手を掴んで私の動きを止めた。代わりに壱哉の手が私のブラを外して、胸に引っかかっていたブラのカップを取って床へと落とした。
掴まれた手は彼の首の後ろへと行くように上げさせらて、壱哉は私のロングスカートの腰の部分のゴムを引っ張ってスルスルッとこちらも床に落ちる。タイツの中に手を入れられ、下着ごと太ももの所までずらされた。
壱哉のキスから解放され、彼の舌が私の首筋を這うと、私は壱哉が途中まで下ろしたタイツと下着を片方ずつの足を上げて脱ぐ。壱哉は自分のズボンのフロントのチェックを下ろして、下着も一緒に器用に脱いだ。お互い裸になった後に、壱哉が私のお尻を掴み抱き上げ、私は壱哉の腰に自分の足を巻き付けたら、壱哉は歩き出してお風呂場へと入って行った。

てっきり家にいる時みたいに、色々触られるのかと思ったけど、そんなことはなかった。だが、時々視界に入る壱哉の昂りははち切れそうなくらい膨らんでいて、これが私の中に入ると想像して少しだけ恥ずかしかったけど、自分の身体を洗うのに専念した。髪を洗おうとすると、壱哉は髪は今はいいと、短い言葉で私に告げた。浴室で身体を拭いたあとに、お風呂場に入った時と同じように抱き上げられ、ダブルベッドへと移動した。

「綺麗だよ、まい」
カーテンも閉められてない部屋は、夕日がちょうど落ちる時間で、部屋がオレンジ色に染まる。ベッドの中央に仰向けに寝かされ、タオルを外されると、何にも身につけていない私の身体を見て、壱哉はうっとりとこぼす。壱哉はタオルをしていないから、彼の昂りがそそり立っていて、下生えも見えなくなって、おへそまで付きそうだ。
「好きだよ、まい」
「私もっ、あっ」
私の手を取ると、手のひらをペロリと舐めた。壱哉は上体を屈めて私の唇を啄み、私の乳房を揉み始めた。ぐにゅぐにゅと壱哉に揉まれるたびに形を変える乳房の中央にあるピンクの粒が固くなっていくと、彼は指を曲げて爪先で引っ掻く。親指も使って粒をこねたり、ぐるぐると左右にダイヤルを弄るみたいに回して弄ぶ。
「あっ、んっ、ぅんっ」
身体の奥から湧き上がる快感に腰が引けると、壱哉の下半身が私の下半身の上に乗って私の動きを封じた。彼が私の首筋に顔を埋めて、鎖骨から乳房に彼の唇が移動すると、今度は彼の手が私のお尻へと下りた。ツンとした粒を口にされて、彼はちゅうちゅうと吸い付き、舌を動かして先端をこねた。
彼の頭を抱きしめ、足を上げて彼の太ももの裏へと掛けると、壱哉の固くなった昂りを内股に強く感じる。壱哉は私達の身体が重なっている間に手を入れて、私の蜜口に触れた。
「あっ、ん…っ、ふ…っ」
ぬるっとした蜜口を滑る彼の指が、私の蜜壺の中にいきなり2本の指を入れた。蜜壺から指を出し入れし始めると、そのついでのつもりか彼の指は私の蜜壺の中に入れた指を曲げたり指先をパラパラと動かす。いつもとは違って入念に解され、本当に一つになるんだと思うときゅんと下半身に力が入ってしまい、彼の指をしめつけた。
「このまま入ったら気持ちよさそう…もうそろそろかな」
耳朶を甘噛みされながら囁かれた欲情した壱哉の声に、彼も余裕がないのだと思うと嬉しい。
「う…んっ、壱哉っ、入れて」
丁寧に解されるのは大事にされているみたいで嬉しいが、それが長く続くとイけそうでイけなくて辛い。
「っ、ああ」
彼に懇願すると、彼は上体を起こして私の足をさらに広げた。
「まい、見て、これから俺たちは一つになるんだ」
彼は昂りを握って私の蜜口へと当てがい、体重を掛けて私の蜜口を広げた。
「っあ」
あり得ないくらい広がる蜜口は、彼の昂りを受け入れようとしている。蜜が潤滑油の役割を果たして、ヌルッと彼の昂りを奥へと誘う。蜜壺の中をゆっくりと広げながら、ぱんぱんに満たされていく感覚と湧き上がる快感。壱哉は昂りの先端が埋まると、私の腰に手を置いて一気に腰を進めて貫いた。
「…っ、ぁあっ!」
チカチカと目の奥が光り、私は軽く達した。壱哉は私の蜜壺の最奥で留まって、収縮する蜜壺の余韻を感じているみたいだ。
「…やっと」
快感の波が引くと目の前がクリアになっていき、感極まった声がして壱哉を見ると、壱哉の目から涙が出ていて、私が手を伸ばすと、彼は私の顔の横に腕をついた。近くなった彼の顔に流れる彼の涙を拭った後に涙袋を舌で舐めると、壱哉と啄むキスをしながら、彼が落ち着くのを待った。
「ごめん、嬉しくて…ッ…」
「ううん…嬉しい」
次第にキスは深く長くなっていくと、壱哉は腰を動歌詞抽送を始めた。彼が動くたびにベッドのスプリングが跳ねて、身体が離れないように壱哉の首と腰に腕と足を巻き付けると、壱哉の顔が私の首筋に顔を埋めた。
「好きだっ、好きだっ」
「あっ、あっ…んっ、ぅ、んっ」
壱哉にぎゅうぎゅうと抱きしめられて、彼の荒い息と熱い告白に返事をしたいのに、快感の波が止まずに高くなっていき、ただ喘ぐしか出来ない。ぱんぱんっと肌がぶつかり、グチュグチュと結合部から粘音が聞こえ、壱哉の抽送のスピードが緩まることがない。
「っぐ、イクよっ、まいっ、中に出すっまいっ」
彼が私の身体をより一層強く抱きしめながらプルプルと震え、その数秒後に私の蜜壺に熱い証が勢いよく注がれた。
「あっ、ぁあっ!」
ドロっとした証を感じて、私の身体も証の熱さに耐えられずに絶頂へと達した。
私も壱哉に抱きつくと、お互いの息が落ち着くまで、変わらない体勢のまま固まった。

「…壱哉」
壱哉の背中に手を回し、彼の背骨に沿って手のひらを滑らせると、壱哉は私と額を合わせて鼻先が重なった。
「まい、気持ちいいね」
「うん」
啄むキスを何度かすると、蜜壺の中にいる彼の昂りを思い出して、思わずお腹に力が入ってしまう。すると、蜜壺の中にある昂りをきゅうきゅうと締め付けたせいか、壱哉の昂りが固くなっていき、彼は私の乳房を揉み始めた。
「…もう一回、しようか」
「うん…あっ」
私が口を開くタイミングで彼は腰を動かし始め、2回戦が始まった。1回目よりも余裕があるのか、彼は抽送はそこそこに愛撫をするようになり、イきたいのにイけない焦れた時間が始まった。好き、と何十回も言われ、疲れた身体を休めるために離れたものの、側にあった温かさがなくなると、寂しくなってどちらかともなく身体をぴたりと密着させては、蜜の時間が始まった。彼の上に乗り、下になり、四つん這いになって獣のように交わる。ドロドロになった身体をベッドの横にあったティッシュで拭っていたが、それもなくなるとお風呂に上がった時に付けていたタオルで拭き取り、最後には綺麗にしてもどうせお互いの体液が付くと拭うのをやめた。


「…ッ、っ」
「……やっと手に入れたよ、もう二度と離さない」
永遠とも感じた最後の瞬間、壱哉から耳元で囁かれて、私は意識を飛ばしてしまった。




そこからチェックアウトをするまでの時間、私達は部屋から一歩も出る事はなかった。
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