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8月 日帰り旅行
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壱哉と付き合う事になって、大きく何かが変わった…わけではなかった。日中や夜には、電話やSNSのメッセージアプリでやり取りする頻度が増えた事くらい。
夏祭りの後からは、壱哉は私の住む実家まで週に2回来るのを再開させた。
──本当に夏祭りの準備だったんだ…
心の奥底で彼が私の実家に来るのが嫌になったのかも、と思っていた。だって友達だからと言って、週に2回も3回も来るのは──しかも実家だ、親と一緒にご飯食べて雑談するのは気まずいかもしれない。私だって、壱哉と付き合ってないのに、彼の家族と毎週複数回ご飯を食べるのは遠慮したい。私は彼の真面目で素直な性格に感心して、自分はなんてマイナスにしか物事を考えられない性格なんだろうと、反省した。
「あのさ、まい、今度の日曜日出かけないか?」
「日曜日?」
いつものように我が家にやって来た彼は、ご飯も食べ終わるとリビングで私の横に座って出かけようと言ってきた。父も母も、もう寝るらしく、自室へと戻っていて、いつもこの時間は2人きりで過ごしている。と言っても明日も仕事があるから、2人きりでも30分足らずで彼は帰るんだけど。
「そう、避暑地に行こう、まいのお母さんも夏バテして部屋から出てこないって言ってるし」
「…でも遠いよ?月曜日仕事でしょ?疲れちゃうよ?」
「ははっ、俺は体力だけはあるから、平気だよ」
壱哉は腕を上げて力こぶを見せると、確かに盛り上がっていた。
「車で行くし、疲れたら休憩あるし…電車みたいに人混みに酔うことはないからさ」
珍しく彼に強く誘われて、私は頷いた。
それが2人の距離が大きく近くなるなんて、誰が思ったのだろうか。
***************
夏の日の出は早く、出発する6時にはもう朝の強い日差しを感じた。避暑地だからあんまり歩かないと事前に言われていたけど、私はヒールのないぺたんこの白いサンダルを履き、真っ白なロングワンピースと、スカイブルーの色のカーディガンと白いミニバッグを持って行き、壱哉は白いポロシャツとブルーのスキニージーンズと黒いサンダルを履いていた。
迎えに来た壱哉の車は黒の4人乗りの乗用車で、私を助手席に乗せると出発した。
道中は他愛のない話から、私の今好きなものの話から、壱哉の好きなものの話に変わった。
「…俺は…何だろ…車は好きだし」
好きなものなど、そんなにないと返事に困る彼に、私はじゃあ、と、この車に乗った時に目に入った物を聞いた。
「タバコは?何の銘柄吸ってんの?」
「うそっ匂う?」
ショックを受けたように自分のシャツを引っ張り出して、鼻をつけて嗅ぎ始める壱哉が面白くて、思わず笑ってしまうと、私は自分がタバコ臭いと勘違いしている壱哉にネタバラシをした。
「ううん、ただドアのポケットにタバコの箱があるから」
「あー…ごめん、今日は吸わないから見逃して」
ヤバって言いながら、ドアのポケットにあるタバコを取ると、彼は車のドアからはみ出さないように押し込めた。
「あははっ別にいいのに」
「いや、うん…まぁ、そこは」
壱哉の行動に思わず笑ってしまうと、彼はしどろもどろとなって、どうしたらいいのか分からなくなっていて、そこがまた強面の雰囲気とは真逆で可愛くてしょうがない。
運転時間が2時間近くなると、高速道路のパーキングエリアで飲み物を購入する事になった。まだ朝の8時だから、パーキングエリアのお店は空いてなかったけど、コンビニと全国展開しているチェーン店のカフェは営業していたので、先に朝のコーヒーを飲みに行く事にした。その後で車で飲食する軽食を買う予定で、滞在時間は30分くらいを目処にすると言った。
「…なんかごめん、本当ならもっと早くに着くのに」
「いいって、どうせ運転も休まないといけないし」
「…タバコ、吸ってきていいよ」
「平気だって」
そんなやり取りをしていたら、頼んでいた壱哉のブラックコーヒーと、私が注文したキャラメルラテが出来て、空いている店内の奥の4人掛けのソファー席に並んで座って休憩をする。
チェーン店だけあって、行ったことがある店内のインテリアになっていて、店員がテーブルを見てあちこち動くわけじゃないから、ゆっくり休める。
「…疲れた?」
私が店外の様子を見ていると、私の横顔をじっと見ていた壱哉が呟く。
「ううん、私よりも壱哉の方が疲れたんじゃない?」
「俺?俺は全然」
私が壱哉の方を見ると、意外と彼が側にいたことに気がついた。拳一つぶんしか2人の距離がなく、私が体を傾けたら身体が触れてしまう距離だ。壱哉は、ソファーの背もたれに右腕を乗せていて、身体の向きが私の方を向いてる。
「そうなの」
「うん…そう」
壱哉との思わぬ距離感で、何を話していいのか分からなくなってしまうと、壱哉は左手を上げて私の頬をさらりと撫でた。そのまま足の上に置いていた私の右手を取ると、指先を絡めて繋いだ。
「壱哉」
「なぁに?」
優しい眼差しを向けられ、ドキドキする心臓がうるさい。私は彼の身体にもたれると、ソファーの背もたれの上に乗っていた壱哉の右手が私の頭の後ろに回って、彼は私の頭に右手を添えると私の頭を自分の肩に付けて抱きしめた。
「あと少しで着くから」
「うん」
ほのかに香る壱哉の香水の匂いがして、ドキドキしていると彼が話始め、落ち着いた声のトーンが心地よく感じる。
「まい」
壱哉に呼ばれて顔を上げると、彼は私の額に唇を押し付けた。
「…今日はいつもと違う」
「そりゃそうだよ、デートだから」
付き合ってからは父も母もいる私の家にいるからか、こんな甘い雰囲気なんて出さなかったのに、今日はいつもと真逆の事をしている。戸惑っていると、壱哉は当たり前のように言った。
──そうだ、付き合うって、そうだ
ただ一緒にいることが付き合う事じゃない。
「…嫌?」
無言になった私に、壱哉は聞いてくるが、
「…嫌じゃない」
彼への気持ちが恋かどうかも分からないのに、こんな事していいのか分からなくなる。だけど嫌悪感とかはなくて、むしろ胸がドキドキしてうるさいくらいだ。
「ふっ、そんな深く考えないでさ、今日は楽しもうよ」
とても私の方が年上だとは思えない落ち着いた態度に、まるで私が結婚するまでは、そういう触れ合いはしたくないとゴネてるみたいで、少しだけ反省する。
「…うん」
目を閉じると、壱哉は私の頭をそっと撫でた。
「わっ!綺麗っ!」
目的地に着いて駐車場に車を停めたら、観光する人が歩きやすいように、少しだけ整備された上りの小道を進んだ。避暑地だというだけあって、とても涼しくて過ごしやすい…いや、少し寒いくらいで、持ってきたカーディガンを羽織ると、壱哉は私の手を取って歩き出した。
5分くらい歩いたら、砂利道の先に小川が流れて、その奥の岩の断面から滝のように水が流れて、より一層気温が下がって冷える。透明な水は透き通って、太陽の日差しも反射してキラキラと光って、とても綺麗な光景にしばし見惚れた。日曜日だから観光客も多くて、小川のギリギリまで人々は行って、滝が落ちる水飛沫を浴びていた。
でもやっぱり寒くて、壱哉と繋いだ自分の手の腕に手を置いて自分を抱きしめると、私の様子に気がついた壱哉は私を背後から抱きしめて暖めてくれた。
「…寒い?あと少ししたら行こうか」
「うん…ごめん」
近くで写真を撮ろうと小川の方まで歩くと、ミストみたいになった滝の水が顔に当たる。
「ほら、まいっ」
私を背後から抱きしめたまま、自分のスマホを取り出した壱哉は、背後の滝と2人がスマホの画面に収まるように腕を上げた。数枚の写真を撮ると、私も自分のバッグからスマホを取り出して、2人の自撮りと滝の写真を数枚撮った。少し動くと寒さも弱く感じたので、2人で小川沿いを手を繋いで歩いていたら、壱哉が私にスマホを向けて写真や動画を撮り始めた。
「もう、私だけ?」
ムッと口を尖らせると、壱哉は笑って、可愛いと言う。
「私も撮るよ」
私がスマホを出したら、壱哉は
「俺なんか撮っても面白くない」
と言っていたが、自分も私を撮っていたから、おあいこだなってと笑った。
岩の断面の終わりになると、小川の先は大きな川へと合流していき、立ち入ったら流れの早い川に流されそうだった。水深が深いと注意喚起された看板があり、私達はまた最初にいた場所に戻るために、きた道を戻った。
「…まだ寒い?」
随分と歩いたから、そこまでの寒さはなくなったけど、この時の私は何故かまた壱哉の腕の中に居たくなった。
──なんだろ、すごい安心したな
自分でも不思議なんだけど、カフェにいた時も背後から抱きしめられた時も、事故後から記憶喪失で何もかも気疲れして、普段通りに過ごしていたと思っていた実家でも張り詰めていた緊張感が無くなり、ちゃんと息を吸えている気がした。友達ならまだしも、一緒に生活する家族の記憶がなくなると、何だか他人といるようで落ち着かない。親は多分普段通りしてくれているんだけど、こればかりはしょうがないと思う。それなのに壱哉といると、ほっとするし、安心して身を委ねたくなる。今日初めて抱きしめられて、驚くくらいに壱哉の体温が恋しくなっている。
「ちょっとだけ…寒い」
私が歩くのを止めると壱哉も止まり、私は彼の胸の中へと飛び込んだ。壱哉の腰に腕を回すと、壱哉は私を抱きしめ返す。
「…しばらくこうしてようか」
壱哉は私の頭に頬を乗せると、私は息を深く吸い吐いた。直壱哉の胸板に耳をつけて腕の中から見える滝を見ると、重荷が外れたように身体が軽くなるのを感じる。
──なんでだろう、どうして…私は…壱哉と付き合っていたから、気持ちが楽になるの…?
でも壱哉からは付き合っていなかったと、はっきりと言われた。
──じゃあ、どうして…
忘れてしまった記憶を思い出す事は今は出来ない。壱哉と最初に会った時も、家で一緒に過ごしていた時も、何にも感じなかったのに、肌が触れ合っただけで、頭のモヤが晴れたみたいにがスッキリしているし、身体も軽く感じる。
「…ねぇ、壱哉」
友達にも言っていない関係が2人の中にあるのだろうか、彼に聞くために私が壱哉の胸板から顔を上げると、彼が私を愛おしそうに目を細めて見つめている眼差しと視線が絡み合った。
──あ…なんか、知ってる気がする
前にもこんな場面があったような気がした…が、喉まで出かかっているのに、それが何だか分からない。私の頬に壱哉の手が添えられると、私の頬を親指の腹でなぞり、そして彼の顔が近づくと、お互いの唇が重なり合った。
額ではなく、唇に──それはしばらく重なり合い、そっと離れると、壱哉は眉を寄せて困ったように告げた。
「そろそろ、次に行こうか」
私は、壱哉と唇を重ねた唇が気になってしまって、壱哉の言葉にコクンと首を動かして頷く事しか出来なかった。
「まい」
駐車場に戻ると、無言だった壱哉に呼ばれた。助手席に乗ろうとしていた私は振り返ると、彼は私を後部座のドアの前に移動させて私の背中を押し付けると、急に私の口を塞いだ。彼の手が私の腰に置かれて動けなくなる。さっきした重ねるだけの触れただけのキスじゃなくて、舌の絡まる濃厚なキスだ。彼の分厚い舌が私の口内に入り、私の舌にちょっかいを出されて私の舌が動くと壱哉が強く吸い付いた。
「はっ…んぅっ、っ」
壱哉は私の口内を隅々まで味わうつもりらしく、顔の角度を変えた。私は壱哉の胸板に手を置いくと、壱哉から与えられる口づけにされるがままとなった。鼻で息をする暇もなく、徐々に酸欠で苦しくなる。それは壱哉も同じなのか、舌を強く吸われて甘噛みされると、やっと壱哉はキスを止めた。
「…っ、悪い…ッ」
「は…っ、っ」
と壱哉は言いながら、ちっとも悪いとは思っていないみたいに私の口を啄んだ。彼の荒い息が私の唇に当たるし、私も肩で息をしている。だけど、もうキスが終わりだと思うと、なんだかもっと欲しくなってしまって、私が壱哉の腕に自分の腕を置くと、私は踵を上げて自分から壱哉の唇に自分の唇を押し付けた。壱哉は私の気持ちに応えるように、またキスが再開すると、今度はねっとりと味わうキスへと変わった。口内全体に舌を這わされ、壱哉の口から温かい液体が私の口に入ると、壱哉の唾液と理解する前に、ゴクンと飲んだ。そうすると、壱哉はもう一度私の口内に唾液を流すと、私は同じようにもう一度飲んだ。
「…ッ…続きはっ」
「ああ、車に入ろう」
壱哉は私の腰を揉み始めると、私は今が駐車場にいるのを思い出して壱哉の胸を押した。すると、壱哉は名残惜し気に私の上唇を喰むと、助手席のドアを開けた。
壱哉は運転席に座ると、エンジンを掛けてから私の方を向き、もう一度唇を重ねた。きっと誰か私達がキスをしている場面を見たのかもしれない…後でその事を思い出して恥ずかしくなるだろうと思ったけど、そんな事よりも壱哉とのキスが癖になるくらい私を夢中にさせた。
──なんで、どうして
好きなのか、そうじゃないのにキスをしていると、一瞬思ったけど、そんな事は些細な事のように感じた。だって、壱哉のキスは、私が愛おしいと私が感じるほどのキスだったからだ。
「…止まらないな…そろそろ行こう、車の中だとちゃんと出来ないから嫌だ」
2人を隔てる運転席と助手席の隙間が、邪魔だと感じる。もっとくっついてキスを感じたい。私の願望を代弁した壱哉は、私がキスの余韻に浸っている間に、私にシートベルトをつけて車を発車させた。
***************
「…壱っ、哉…もうっ」
「わかってる、もう少しだけ」
観光地の滝を見た後は、近くのアウトレットでお昼とウィンドウショッピングをした。終始見つめあっては──人目を気にして一応隅で──キスをして、レストランでご飯を食べた時には、向かい合わせじゃなく、私の斜め右に座った壱哉と注文した料理が来るまでテーブルの上で恋人繋ぎをしていた。手の甲にキスをされたり、内緒話をするかのように私の耳に口を寄せた壱哉が私の頬にキスをして、私の耳に自分の鼻先を擦り付けたりと、やりたい放題だった。それでも恥ずかしいとは思ったけど、やっぱり誰も知らない人しか周りにいないから帰る頃には何とも思わなくなっていた。
もうすでで家に着く道のりになると、近くのコンビニに立ち寄った壱哉は車を停めて、今日最後であろうキスをした。それが30分続いたから、私が壱哉にそれを告げると、彼はわかってると言って私とのキスを止めようとはしなかった。
──もしかして、観光しているよりもキスしてる時間の方が多かったのかな…?
と、私が思うくらい、買い物中も高速道路のトイレ休憩でも、あんなに車内のキスはなんだか嫌だと言っていたのに、気がつけばキスばかりしていた。
「…また、明日もまいの実家に行くよ」
「…うん」
終わりの言葉を告げられたら、早く帰りたかったはずなのに、急に名残惜しくなる。私の頬を彼は撫でると、私の顎を上げて、最後に特段に長いキスをした。
夏祭りの後からは、壱哉は私の住む実家まで週に2回来るのを再開させた。
──本当に夏祭りの準備だったんだ…
心の奥底で彼が私の実家に来るのが嫌になったのかも、と思っていた。だって友達だからと言って、週に2回も3回も来るのは──しかも実家だ、親と一緒にご飯食べて雑談するのは気まずいかもしれない。私だって、壱哉と付き合ってないのに、彼の家族と毎週複数回ご飯を食べるのは遠慮したい。私は彼の真面目で素直な性格に感心して、自分はなんてマイナスにしか物事を考えられない性格なんだろうと、反省した。
「あのさ、まい、今度の日曜日出かけないか?」
「日曜日?」
いつものように我が家にやって来た彼は、ご飯も食べ終わるとリビングで私の横に座って出かけようと言ってきた。父も母も、もう寝るらしく、自室へと戻っていて、いつもこの時間は2人きりで過ごしている。と言っても明日も仕事があるから、2人きりでも30分足らずで彼は帰るんだけど。
「そう、避暑地に行こう、まいのお母さんも夏バテして部屋から出てこないって言ってるし」
「…でも遠いよ?月曜日仕事でしょ?疲れちゃうよ?」
「ははっ、俺は体力だけはあるから、平気だよ」
壱哉は腕を上げて力こぶを見せると、確かに盛り上がっていた。
「車で行くし、疲れたら休憩あるし…電車みたいに人混みに酔うことはないからさ」
珍しく彼に強く誘われて、私は頷いた。
それが2人の距離が大きく近くなるなんて、誰が思ったのだろうか。
***************
夏の日の出は早く、出発する6時にはもう朝の強い日差しを感じた。避暑地だからあんまり歩かないと事前に言われていたけど、私はヒールのないぺたんこの白いサンダルを履き、真っ白なロングワンピースと、スカイブルーの色のカーディガンと白いミニバッグを持って行き、壱哉は白いポロシャツとブルーのスキニージーンズと黒いサンダルを履いていた。
迎えに来た壱哉の車は黒の4人乗りの乗用車で、私を助手席に乗せると出発した。
道中は他愛のない話から、私の今好きなものの話から、壱哉の好きなものの話に変わった。
「…俺は…何だろ…車は好きだし」
好きなものなど、そんなにないと返事に困る彼に、私はじゃあ、と、この車に乗った時に目に入った物を聞いた。
「タバコは?何の銘柄吸ってんの?」
「うそっ匂う?」
ショックを受けたように自分のシャツを引っ張り出して、鼻をつけて嗅ぎ始める壱哉が面白くて、思わず笑ってしまうと、私は自分がタバコ臭いと勘違いしている壱哉にネタバラシをした。
「ううん、ただドアのポケットにタバコの箱があるから」
「あー…ごめん、今日は吸わないから見逃して」
ヤバって言いながら、ドアのポケットにあるタバコを取ると、彼は車のドアからはみ出さないように押し込めた。
「あははっ別にいいのに」
「いや、うん…まぁ、そこは」
壱哉の行動に思わず笑ってしまうと、彼はしどろもどろとなって、どうしたらいいのか分からなくなっていて、そこがまた強面の雰囲気とは真逆で可愛くてしょうがない。
運転時間が2時間近くなると、高速道路のパーキングエリアで飲み物を購入する事になった。まだ朝の8時だから、パーキングエリアのお店は空いてなかったけど、コンビニと全国展開しているチェーン店のカフェは営業していたので、先に朝のコーヒーを飲みに行く事にした。その後で車で飲食する軽食を買う予定で、滞在時間は30分くらいを目処にすると言った。
「…なんかごめん、本当ならもっと早くに着くのに」
「いいって、どうせ運転も休まないといけないし」
「…タバコ、吸ってきていいよ」
「平気だって」
そんなやり取りをしていたら、頼んでいた壱哉のブラックコーヒーと、私が注文したキャラメルラテが出来て、空いている店内の奥の4人掛けのソファー席に並んで座って休憩をする。
チェーン店だけあって、行ったことがある店内のインテリアになっていて、店員がテーブルを見てあちこち動くわけじゃないから、ゆっくり休める。
「…疲れた?」
私が店外の様子を見ていると、私の横顔をじっと見ていた壱哉が呟く。
「ううん、私よりも壱哉の方が疲れたんじゃない?」
「俺?俺は全然」
私が壱哉の方を見ると、意外と彼が側にいたことに気がついた。拳一つぶんしか2人の距離がなく、私が体を傾けたら身体が触れてしまう距離だ。壱哉は、ソファーの背もたれに右腕を乗せていて、身体の向きが私の方を向いてる。
「そうなの」
「うん…そう」
壱哉との思わぬ距離感で、何を話していいのか分からなくなってしまうと、壱哉は左手を上げて私の頬をさらりと撫でた。そのまま足の上に置いていた私の右手を取ると、指先を絡めて繋いだ。
「壱哉」
「なぁに?」
優しい眼差しを向けられ、ドキドキする心臓がうるさい。私は彼の身体にもたれると、ソファーの背もたれの上に乗っていた壱哉の右手が私の頭の後ろに回って、彼は私の頭に右手を添えると私の頭を自分の肩に付けて抱きしめた。
「あと少しで着くから」
「うん」
ほのかに香る壱哉の香水の匂いがして、ドキドキしていると彼が話始め、落ち着いた声のトーンが心地よく感じる。
「まい」
壱哉に呼ばれて顔を上げると、彼は私の額に唇を押し付けた。
「…今日はいつもと違う」
「そりゃそうだよ、デートだから」
付き合ってからは父も母もいる私の家にいるからか、こんな甘い雰囲気なんて出さなかったのに、今日はいつもと真逆の事をしている。戸惑っていると、壱哉は当たり前のように言った。
──そうだ、付き合うって、そうだ
ただ一緒にいることが付き合う事じゃない。
「…嫌?」
無言になった私に、壱哉は聞いてくるが、
「…嫌じゃない」
彼への気持ちが恋かどうかも分からないのに、こんな事していいのか分からなくなる。だけど嫌悪感とかはなくて、むしろ胸がドキドキしてうるさいくらいだ。
「ふっ、そんな深く考えないでさ、今日は楽しもうよ」
とても私の方が年上だとは思えない落ち着いた態度に、まるで私が結婚するまでは、そういう触れ合いはしたくないとゴネてるみたいで、少しだけ反省する。
「…うん」
目を閉じると、壱哉は私の頭をそっと撫でた。
「わっ!綺麗っ!」
目的地に着いて駐車場に車を停めたら、観光する人が歩きやすいように、少しだけ整備された上りの小道を進んだ。避暑地だというだけあって、とても涼しくて過ごしやすい…いや、少し寒いくらいで、持ってきたカーディガンを羽織ると、壱哉は私の手を取って歩き出した。
5分くらい歩いたら、砂利道の先に小川が流れて、その奥の岩の断面から滝のように水が流れて、より一層気温が下がって冷える。透明な水は透き通って、太陽の日差しも反射してキラキラと光って、とても綺麗な光景にしばし見惚れた。日曜日だから観光客も多くて、小川のギリギリまで人々は行って、滝が落ちる水飛沫を浴びていた。
でもやっぱり寒くて、壱哉と繋いだ自分の手の腕に手を置いて自分を抱きしめると、私の様子に気がついた壱哉は私を背後から抱きしめて暖めてくれた。
「…寒い?あと少ししたら行こうか」
「うん…ごめん」
近くで写真を撮ろうと小川の方まで歩くと、ミストみたいになった滝の水が顔に当たる。
「ほら、まいっ」
私を背後から抱きしめたまま、自分のスマホを取り出した壱哉は、背後の滝と2人がスマホの画面に収まるように腕を上げた。数枚の写真を撮ると、私も自分のバッグからスマホを取り出して、2人の自撮りと滝の写真を数枚撮った。少し動くと寒さも弱く感じたので、2人で小川沿いを手を繋いで歩いていたら、壱哉が私にスマホを向けて写真や動画を撮り始めた。
「もう、私だけ?」
ムッと口を尖らせると、壱哉は笑って、可愛いと言う。
「私も撮るよ」
私がスマホを出したら、壱哉は
「俺なんか撮っても面白くない」
と言っていたが、自分も私を撮っていたから、おあいこだなってと笑った。
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「…まだ寒い?」
随分と歩いたから、そこまでの寒さはなくなったけど、この時の私は何故かまた壱哉の腕の中に居たくなった。
──なんだろ、すごい安心したな
自分でも不思議なんだけど、カフェにいた時も背後から抱きしめられた時も、事故後から記憶喪失で何もかも気疲れして、普段通りに過ごしていたと思っていた実家でも張り詰めていた緊張感が無くなり、ちゃんと息を吸えている気がした。友達ならまだしも、一緒に生活する家族の記憶がなくなると、何だか他人といるようで落ち着かない。親は多分普段通りしてくれているんだけど、こればかりはしょうがないと思う。それなのに壱哉といると、ほっとするし、安心して身を委ねたくなる。今日初めて抱きしめられて、驚くくらいに壱哉の体温が恋しくなっている。
「ちょっとだけ…寒い」
私が歩くのを止めると壱哉も止まり、私は彼の胸の中へと飛び込んだ。壱哉の腰に腕を回すと、壱哉は私を抱きしめ返す。
「…しばらくこうしてようか」
壱哉は私の頭に頬を乗せると、私は息を深く吸い吐いた。直壱哉の胸板に耳をつけて腕の中から見える滝を見ると、重荷が外れたように身体が軽くなるのを感じる。
──なんでだろう、どうして…私は…壱哉と付き合っていたから、気持ちが楽になるの…?
でも壱哉からは付き合っていなかったと、はっきりと言われた。
──じゃあ、どうして…
忘れてしまった記憶を思い出す事は今は出来ない。壱哉と最初に会った時も、家で一緒に過ごしていた時も、何にも感じなかったのに、肌が触れ合っただけで、頭のモヤが晴れたみたいにがスッキリしているし、身体も軽く感じる。
「…ねぇ、壱哉」
友達にも言っていない関係が2人の中にあるのだろうか、彼に聞くために私が壱哉の胸板から顔を上げると、彼が私を愛おしそうに目を細めて見つめている眼差しと視線が絡み合った。
──あ…なんか、知ってる気がする
前にもこんな場面があったような気がした…が、喉まで出かかっているのに、それが何だか分からない。私の頬に壱哉の手が添えられると、私の頬を親指の腹でなぞり、そして彼の顔が近づくと、お互いの唇が重なり合った。
額ではなく、唇に──それはしばらく重なり合い、そっと離れると、壱哉は眉を寄せて困ったように告げた。
「そろそろ、次に行こうか」
私は、壱哉と唇を重ねた唇が気になってしまって、壱哉の言葉にコクンと首を動かして頷く事しか出来なかった。
「まい」
駐車場に戻ると、無言だった壱哉に呼ばれた。助手席に乗ろうとしていた私は振り返ると、彼は私を後部座のドアの前に移動させて私の背中を押し付けると、急に私の口を塞いだ。彼の手が私の腰に置かれて動けなくなる。さっきした重ねるだけの触れただけのキスじゃなくて、舌の絡まる濃厚なキスだ。彼の分厚い舌が私の口内に入り、私の舌にちょっかいを出されて私の舌が動くと壱哉が強く吸い付いた。
「はっ…んぅっ、っ」
壱哉は私の口内を隅々まで味わうつもりらしく、顔の角度を変えた。私は壱哉の胸板に手を置いくと、壱哉から与えられる口づけにされるがままとなった。鼻で息をする暇もなく、徐々に酸欠で苦しくなる。それは壱哉も同じなのか、舌を強く吸われて甘噛みされると、やっと壱哉はキスを止めた。
「…っ、悪い…ッ」
「は…っ、っ」
と壱哉は言いながら、ちっとも悪いとは思っていないみたいに私の口を啄んだ。彼の荒い息が私の唇に当たるし、私も肩で息をしている。だけど、もうキスが終わりだと思うと、なんだかもっと欲しくなってしまって、私が壱哉の腕に自分の腕を置くと、私は踵を上げて自分から壱哉の唇に自分の唇を押し付けた。壱哉は私の気持ちに応えるように、またキスが再開すると、今度はねっとりと味わうキスへと変わった。口内全体に舌を這わされ、壱哉の口から温かい液体が私の口に入ると、壱哉の唾液と理解する前に、ゴクンと飲んだ。そうすると、壱哉はもう一度私の口内に唾液を流すと、私は同じようにもう一度飲んだ。
「…ッ…続きはっ」
「ああ、車に入ろう」
壱哉は私の腰を揉み始めると、私は今が駐車場にいるのを思い出して壱哉の胸を押した。すると、壱哉は名残惜し気に私の上唇を喰むと、助手席のドアを開けた。
壱哉は運転席に座ると、エンジンを掛けてから私の方を向き、もう一度唇を重ねた。きっと誰か私達がキスをしている場面を見たのかもしれない…後でその事を思い出して恥ずかしくなるだろうと思ったけど、そんな事よりも壱哉とのキスが癖になるくらい私を夢中にさせた。
──なんで、どうして
好きなのか、そうじゃないのにキスをしていると、一瞬思ったけど、そんな事は些細な事のように感じた。だって、壱哉のキスは、私が愛おしいと私が感じるほどのキスだったからだ。
「…止まらないな…そろそろ行こう、車の中だとちゃんと出来ないから嫌だ」
2人を隔てる運転席と助手席の隙間が、邪魔だと感じる。もっとくっついてキスを感じたい。私の願望を代弁した壱哉は、私がキスの余韻に浸っている間に、私にシートベルトをつけて車を発車させた。
***************
「…壱っ、哉…もうっ」
「わかってる、もう少しだけ」
観光地の滝を見た後は、近くのアウトレットでお昼とウィンドウショッピングをした。終始見つめあっては──人目を気にして一応隅で──キスをして、レストランでご飯を食べた時には、向かい合わせじゃなく、私の斜め右に座った壱哉と注文した料理が来るまでテーブルの上で恋人繋ぎをしていた。手の甲にキスをされたり、内緒話をするかのように私の耳に口を寄せた壱哉が私の頬にキスをして、私の耳に自分の鼻先を擦り付けたりと、やりたい放題だった。それでも恥ずかしいとは思ったけど、やっぱり誰も知らない人しか周りにいないから帰る頃には何とも思わなくなっていた。
もうすでで家に着く道のりになると、近くのコンビニに立ち寄った壱哉は車を停めて、今日最後であろうキスをした。それが30分続いたから、私が壱哉にそれを告げると、彼はわかってると言って私とのキスを止めようとはしなかった。
──もしかして、観光しているよりもキスしてる時間の方が多かったのかな…?
と、私が思うくらい、買い物中も高速道路のトイレ休憩でも、あんなに車内のキスはなんだか嫌だと言っていたのに、気がつけばキスばかりしていた。
「…また、明日もまいの実家に行くよ」
「…うん」
終わりの言葉を告げられたら、早く帰りたかったはずなのに、急に名残惜しくなる。私の頬を彼は撫でると、私の顎を上げて、最後に特段に長いキスをした。
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※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
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――
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