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噂
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ハル様のお屋敷にお邪魔してから数ヶ月が経った。
ひと月に2回ほど夜会へと誘われ、少し顔を出したらハル様のお屋敷に行って2人きりの時間を楽しむ。
一度だけハル様のお屋敷にいる時に、騎士団からの呼び出しで御者のみで帰った事もあったが、ほぼハル様が私を屋敷まで送ってくださる。
ーー本当はもう少し会いたい
本音を言えば、会う頻度も時間も全く足りない。いつも会えない時間を埋めるように、口数も少なくなって身体を寄せていた。
そんな事を思っていた罰なのか、私を取り巻く噂が社交界へと流れ始めていた。
アリカ・シュワルツ公爵令嬢は、騎士団長のお気に入りとなっている。
と
*******************
「アリカ様、今度の夜会…あっ、騎士団長様といらっしゃるのですか?」
「公爵令嬢なのですから、婚約されてない方と2人きりになるなんて…」
「はっきりと立場を表明しない殿方など、大事にされていませんわよ」
「少し…年上すぎませんか」
ユルア令嬢に呼ばれて行ったお茶会で、夜会でよく会うご令嬢達に情け容赦なく言われる言葉に、頭が真っ白になり何も言い返せない。
ユルア令嬢はただ静かにお茶を飲み、ご令嬢達の会話を聞いている。
ーー私…やっぱりダメじゃない
最初の頃はハル様と過ごす時間は彼の事しか考えられず、他の事などどうでもよかったのに…最近では、ふと1人で屋敷にいる時に感じる焦燥感、本当にこのままでいいのか…不安に押し潰されてしまいそうになる。
そんな私にトドメを刺すようなご令嬢達の言葉。
彼女達に弱気な所など見せたら、あっという間に社交界へと広がってしまう。そうなったら…成人したばかりの令嬢を誑かす騎士団長
ーーハル様にも迷惑が掛かってしまうわ
そんな事を思っていたら、黙っていてつまらないと私に興味を無くしたご令嬢達は他の話題に移っていった。
「アリカ様、人は噂話が好きなので…気をつけてください」
「…ユルア様」
お茶会も終わり馬車に乗って帰っていく令嬢を見送るユルア様は、隣に並んでいた私にコソッと告げた。
「大臣の娘ってだけで、一挙一動注目されてますから…軽率な行動は慎んだほうがよろしいですわ」
「…はい」
柔らかな口調で嗜められると、明け透けに言われるよりも心に重くのし掛かりキツい。しょんぼりと落ち込んでいると、シュワルツ家の馬車が私の目の前に止まり、御者が馬車の扉を開けたので歩き始めた。
「ユルア様、本日はお招きいただきありがとうございました…私…気をつけますわ」
スカートの裾を少し上げて軽くカーテシーをして、別れの挨拶をした。
ひと月に2回ほど夜会へと誘われ、少し顔を出したらハル様のお屋敷に行って2人きりの時間を楽しむ。
一度だけハル様のお屋敷にいる時に、騎士団からの呼び出しで御者のみで帰った事もあったが、ほぼハル様が私を屋敷まで送ってくださる。
ーー本当はもう少し会いたい
本音を言えば、会う頻度も時間も全く足りない。いつも会えない時間を埋めるように、口数も少なくなって身体を寄せていた。
そんな事を思っていた罰なのか、私を取り巻く噂が社交界へと流れ始めていた。
アリカ・シュワルツ公爵令嬢は、騎士団長のお気に入りとなっている。
と
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「アリカ様、今度の夜会…あっ、騎士団長様といらっしゃるのですか?」
「公爵令嬢なのですから、婚約されてない方と2人きりになるなんて…」
「はっきりと立場を表明しない殿方など、大事にされていませんわよ」
「少し…年上すぎませんか」
ユルア令嬢に呼ばれて行ったお茶会で、夜会でよく会うご令嬢達に情け容赦なく言われる言葉に、頭が真っ白になり何も言い返せない。
ユルア令嬢はただ静かにお茶を飲み、ご令嬢達の会話を聞いている。
ーー私…やっぱりダメじゃない
最初の頃はハル様と過ごす時間は彼の事しか考えられず、他の事などどうでもよかったのに…最近では、ふと1人で屋敷にいる時に感じる焦燥感、本当にこのままでいいのか…不安に押し潰されてしまいそうになる。
そんな私にトドメを刺すようなご令嬢達の言葉。
彼女達に弱気な所など見せたら、あっという間に社交界へと広がってしまう。そうなったら…成人したばかりの令嬢を誑かす騎士団長
ーーハル様にも迷惑が掛かってしまうわ
そんな事を思っていたら、黙っていてつまらないと私に興味を無くしたご令嬢達は他の話題に移っていった。
「アリカ様、人は噂話が好きなので…気をつけてください」
「…ユルア様」
お茶会も終わり馬車に乗って帰っていく令嬢を見送るユルア様は、隣に並んでいた私にコソッと告げた。
「大臣の娘ってだけで、一挙一動注目されてますから…軽率な行動は慎んだほうがよろしいですわ」
「…はい」
柔らかな口調で嗜められると、明け透けに言われるよりも心に重くのし掛かりキツい。しょんぼりと落ち込んでいると、シュワルツ家の馬車が私の目の前に止まり、御者が馬車の扉を開けたので歩き始めた。
「ユルア様、本日はお招きいただきありがとうございました…私…気をつけますわ」
スカートの裾を少し上げて軽くカーテシーをして、別れの挨拶をした。
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