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異変
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「コイタ王国最強と言われているトラヴィス・ジョンソン騎士団長との婚姻を解消する」
父である国王陛下に突然告げられた婚姻解消の命令に、頭が真っ白になってしまった。
朝から準備して舞踏会に出席し、トラヴィ様と並んで国王陛下と王妃に挨拶もした。閉会後に顔を出すように、と(サーシャには)顔馴染みの父の側近に伝言を貰い、2人で応接室で待っていた。
応接室は広く、3人掛けのソファーが2つ、向かい合った間にテーブルが設置されている。そのテーブルには、私とトラヴィ様にと、紅茶とクッキーが置かれている。
隣同士に座ってしばらく談笑していたらノックと共に開けられた応接室の扉から、国王陛下と王妃でもある母、そしてーー弟が、私達のいる応接室に入ってきた。父と母は私達の目の前のソファーに座り、弟は父と母の後ろに立った。
挨拶もそこそこに、冒頭の言葉を言われた。
「…どういうことですか」
最初に動き出したのは、怒りの感情を抑える事なく低く唸る声を出すトラヴィ様。ハッと我に返った私も何か言おうとして、口を開くと父が喋り出した。
「うむ、実はな…婚約者選定で…どうも行き違いが起きたのじゃ」
父はしょうがないな、と言い、洋食を食べに行くはずだったが、和食にしたと急に予定変更しても許されるとでも思ってるのか、ずいぶん自分勝手で非常識だ。
「行き違い…とは?」
呆れて言葉も出ない私の横にいる、トラヴィ様はちゃんと父の言葉の真意を探ろうとしている。
「そのままの言葉だ、騎士団長殿」
父の声もぐんと低くなり、眉を寄せて厳しい顔となる。
「…お父…国王陛下、どうか理由を教えていただけますでしょうか、以前は皇族でしたが、今はジョンソン家に嫁ぎ貴族の一員となっております」
やはり父に一言言えるのは、皇族だった私だけだ。トラヴィ様は、コイタ王国に忠誠を誓った騎士様だ。強い反論なんて、ましてや国王陛下に出来ないだろう。
ぎゅっと膝の上に重ねた乗せた指を握りしめる。
「何より、皇族が重大な理由も無しに、無闇に婚姻解消などしたら歴史に残りのちに大問題になりますわ」
最後の一言は余計だったが、とにかく結婚して1年過ぎたのに今更婚姻解消なんて、意味が分からない。
シンと静まり返った応接室。重い空気だけが流れる時間は、永遠にも感じた。
「お姉様、私の目を覚ましてくれたじゃないですか!」
突然喋り出した弟に、びっくりして父達の後ろにいた彼を見た。なんだか、頬が赤く興奮しているみたいだ。
「何…を…?」
ーー言ってるの?
と口にする前に、弟はなおも話す。
「あの、男爵家の令嬢、ルナと親しくするなと言っていたじゃないですか!あの時は陛下にお姉様への苦言をお願いしましたがっ…あの女は、他にも男達が居てっ、私を馬鹿にしていたのです!」
「……は…い?」
言っている言葉の一つも頭に残らない。だから何って感じで、それとこの婚姻解消はどう関係するのだろうか。
「もちろん人の心を弄んだ罪は償ってもらいましたが…私が陛下にお姉様の処分を求めたので…お姉様は…こんな野獣と…」
ギリッと眉を寄せて汚いものを見るような目で、トラヴィ様を睨む弟。
「…野獣…ですって…!」
好きな人を侮辱されて、喜ぶ人は居ない。私は怒りが沸々と込み上げてきて、抑える事が出来ない。
「そうじゃないですかっ!だから服毒っ」
「皇子、そこまでだ」
弟の声も大きくなると、父が止めに入った。
「サーシャ、今日からこの城に留まるように…ジョンソン騎士団長」
「…はっ」
「追って詳細は伝える、下がれ」
そう言う父だったが、トラヴィ様は返事も動こうともしない。
「…ジョンソン騎士団長」
再度父が彼の名を呼んでも、トラヴィ様は動かない。このままじゃ両者の意志は衝突ばかりで、いい方向に行かないと察した私は、トラヴィ様の足の上にある強く握られ血管が浮き出ている手の甲に、自分の手を重ねた。
「…っ!」
はっとしたトラヴィ様は私の方を向くと、私はコクンと頷いた。そしてクシャッと一瞬泣きそうな顔を見せたトラヴィ様は、無言で立ち上がると一礼して応接室から出て行ってしまった。
「さあ、これで家族水入らずだなっ」
と、にこにこする父と嬉しそうな弟。そんな2人にムッとしたが、顔には出さなかった。
「お姉様っ、お姉様の部屋はそのままになっているのですよっ!」
「そうだ、サーシャ何か必要なものはないか?」
私が怒っていないと勘違いしている父と弟は、私を構う。
「……でしたら…私の侍女のスミレを…ジョンソン家で私の世話をしていた者です」
「むっ、あの家のか…この城の侍女の方が…」
「いいえ、この城に留まるのは久しぶりなので、他の侍女に慣れるまでは…スミレがいいです」
断固として譲らないと、強めに言うと、
「…陛下、慣れるまではその侍女でいいのでは?」
と、母が私の意見に賛同してくれる。
「…そうか…うむ…よし、そのスミレとやらを連れてこい」
そう言って、応接室の扉のそばにいた側近に声を掛けた。
***************
「奥様…っ!」
夜遅くだったにも関わらず、スミレは心配そうな顔をして、結婚前に暮らしていた王城の皇女の部屋にやってきた。自室のソファーに座っていた私のそばに来て、私の足元に膝をつく。
「ああ…スミレ」
ホッとして全身の力が抜けて、ソファーの背もたれに身体を預けた。思いの外身体が緊張状態が続いていたみたいで、ドッと疲れがやってきた。
この部屋には、制服を着た2人の侍女が私の対応に当たっていたが、出されたお茶にも触れず、自分の身体を触る事も拒んだ皇女の態度に戸惑っていた。そして、スミレが来てやっと笑顔を見せたサーシャに、一体どうなっているのか疑問が頭の中を占めた。
「2人とも、下がっていいわ…今夜はスミレにやってもらうわ」
「「かしこまりました、おやすみなさいませ、皇女様」」
文句ひとつ言わず、息ピッタリで一礼した侍女は、ほどなく部屋から出て行った。
2人の気配がなくなると、スミレに手を差し出した。その手をスミレは両手で包む。
「…旦那様からお聞きしました」
泣きそうなのに真剣な瞳のスミレに、安心するように彼女の手を握り返した。
「…スミレ、多分、そう長くスミレとは居れないの…だからお願いがあるの…」
「奥様のためなら、どんな事でも」
彼女だけが頼りの今、自然と小声になって、彼女にお願いを託す事にした。
父である国王陛下に突然告げられた婚姻解消の命令に、頭が真っ白になってしまった。
朝から準備して舞踏会に出席し、トラヴィ様と並んで国王陛下と王妃に挨拶もした。閉会後に顔を出すように、と(サーシャには)顔馴染みの父の側近に伝言を貰い、2人で応接室で待っていた。
応接室は広く、3人掛けのソファーが2つ、向かい合った間にテーブルが設置されている。そのテーブルには、私とトラヴィ様にと、紅茶とクッキーが置かれている。
隣同士に座ってしばらく談笑していたらノックと共に開けられた応接室の扉から、国王陛下と王妃でもある母、そしてーー弟が、私達のいる応接室に入ってきた。父と母は私達の目の前のソファーに座り、弟は父と母の後ろに立った。
挨拶もそこそこに、冒頭の言葉を言われた。
「…どういうことですか」
最初に動き出したのは、怒りの感情を抑える事なく低く唸る声を出すトラヴィ様。ハッと我に返った私も何か言おうとして、口を開くと父が喋り出した。
「うむ、実はな…婚約者選定で…どうも行き違いが起きたのじゃ」
父はしょうがないな、と言い、洋食を食べに行くはずだったが、和食にしたと急に予定変更しても許されるとでも思ってるのか、ずいぶん自分勝手で非常識だ。
「行き違い…とは?」
呆れて言葉も出ない私の横にいる、トラヴィ様はちゃんと父の言葉の真意を探ろうとしている。
「そのままの言葉だ、騎士団長殿」
父の声もぐんと低くなり、眉を寄せて厳しい顔となる。
「…お父…国王陛下、どうか理由を教えていただけますでしょうか、以前は皇族でしたが、今はジョンソン家に嫁ぎ貴族の一員となっております」
やはり父に一言言えるのは、皇族だった私だけだ。トラヴィ様は、コイタ王国に忠誠を誓った騎士様だ。強い反論なんて、ましてや国王陛下に出来ないだろう。
ぎゅっと膝の上に重ねた乗せた指を握りしめる。
「何より、皇族が重大な理由も無しに、無闇に婚姻解消などしたら歴史に残りのちに大問題になりますわ」
最後の一言は余計だったが、とにかく結婚して1年過ぎたのに今更婚姻解消なんて、意味が分からない。
シンと静まり返った応接室。重い空気だけが流れる時間は、永遠にも感じた。
「お姉様、私の目を覚ましてくれたじゃないですか!」
突然喋り出した弟に、びっくりして父達の後ろにいた彼を見た。なんだか、頬が赤く興奮しているみたいだ。
「何…を…?」
ーー言ってるの?
と口にする前に、弟はなおも話す。
「あの、男爵家の令嬢、ルナと親しくするなと言っていたじゃないですか!あの時は陛下にお姉様への苦言をお願いしましたがっ…あの女は、他にも男達が居てっ、私を馬鹿にしていたのです!」
「……は…い?」
言っている言葉の一つも頭に残らない。だから何って感じで、それとこの婚姻解消はどう関係するのだろうか。
「もちろん人の心を弄んだ罪は償ってもらいましたが…私が陛下にお姉様の処分を求めたので…お姉様は…こんな野獣と…」
ギリッと眉を寄せて汚いものを見るような目で、トラヴィ様を睨む弟。
「…野獣…ですって…!」
好きな人を侮辱されて、喜ぶ人は居ない。私は怒りが沸々と込み上げてきて、抑える事が出来ない。
「そうじゃないですかっ!だから服毒っ」
「皇子、そこまでだ」
弟の声も大きくなると、父が止めに入った。
「サーシャ、今日からこの城に留まるように…ジョンソン騎士団長」
「…はっ」
「追って詳細は伝える、下がれ」
そう言う父だったが、トラヴィ様は返事も動こうともしない。
「…ジョンソン騎士団長」
再度父が彼の名を呼んでも、トラヴィ様は動かない。このままじゃ両者の意志は衝突ばかりで、いい方向に行かないと察した私は、トラヴィ様の足の上にある強く握られ血管が浮き出ている手の甲に、自分の手を重ねた。
「…っ!」
はっとしたトラヴィ様は私の方を向くと、私はコクンと頷いた。そしてクシャッと一瞬泣きそうな顔を見せたトラヴィ様は、無言で立ち上がると一礼して応接室から出て行ってしまった。
「さあ、これで家族水入らずだなっ」
と、にこにこする父と嬉しそうな弟。そんな2人にムッとしたが、顔には出さなかった。
「お姉様っ、お姉様の部屋はそのままになっているのですよっ!」
「そうだ、サーシャ何か必要なものはないか?」
私が怒っていないと勘違いしている父と弟は、私を構う。
「……でしたら…私の侍女のスミレを…ジョンソン家で私の世話をしていた者です」
「むっ、あの家のか…この城の侍女の方が…」
「いいえ、この城に留まるのは久しぶりなので、他の侍女に慣れるまでは…スミレがいいです」
断固として譲らないと、強めに言うと、
「…陛下、慣れるまではその侍女でいいのでは?」
と、母が私の意見に賛同してくれる。
「…そうか…うむ…よし、そのスミレとやらを連れてこい」
そう言って、応接室の扉のそばにいた側近に声を掛けた。
***************
「奥様…っ!」
夜遅くだったにも関わらず、スミレは心配そうな顔をして、結婚前に暮らしていた王城の皇女の部屋にやってきた。自室のソファーに座っていた私のそばに来て、私の足元に膝をつく。
「ああ…スミレ」
ホッとして全身の力が抜けて、ソファーの背もたれに身体を預けた。思いの外身体が緊張状態が続いていたみたいで、ドッと疲れがやってきた。
この部屋には、制服を着た2人の侍女が私の対応に当たっていたが、出されたお茶にも触れず、自分の身体を触る事も拒んだ皇女の態度に戸惑っていた。そして、スミレが来てやっと笑顔を見せたサーシャに、一体どうなっているのか疑問が頭の中を占めた。
「2人とも、下がっていいわ…今夜はスミレにやってもらうわ」
「「かしこまりました、おやすみなさいませ、皇女様」」
文句ひとつ言わず、息ピッタリで一礼した侍女は、ほどなく部屋から出て行った。
2人の気配がなくなると、スミレに手を差し出した。その手をスミレは両手で包む。
「…旦那様からお聞きしました」
泣きそうなのに真剣な瞳のスミレに、安心するように彼女の手を握り返した。
「…スミレ、多分、そう長くスミレとは居れないの…だからお願いがあるの…」
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