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目覚めと遅れて来た蜜月

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全身怠くまだ寝ていたかったのだけど、ベッドの固さがいつも眠っている柔らかさと匂いもどことなく違う気がして、手を伸ばすが、手のひらに冷たくなったシーツのみを感じた。
「…ん…?」
モゾモゾと決して上等じゃないと分かるシーツの中を動くと、やはりさっきまで一緒に抱き合っていたはずの存在がいない事に気がついて、完全に目が覚めた。
ベッドの上に座り、キョロキョロと見回しても見当たらない彼。不快感もない身体は、きっと彼が綺麗にしてくれたのだろう。重い腰を上げて立ちあがろうと、ベッド端へ移り足を下ろそうとしたら、
「サーシャ、起きたか」
と、背後から声を掛けられびっくりする。
「っ!あっ、トラヴィ様…」
振り返ると、家を出た時と同じ格好の彼の手には、紅茶が載ったトレーを持っていた。
彼の顔を見て先程までの行為を思い出してしまい、顔が真っ赤になってしまう。そんな私に気がつかないのか、彼は隣のベッドに持ってきたトレーを置くと、私の左横に座り私の腰を自分の方へ引き寄せた。
「辛くないか」
と、甘い低い声が私の耳元で囁くものだから、ふにゃりと力が抜けて彼にもたれて彼の腰に腕を回して私も抱きついた。
「…辛く…はないです」
彼の胸元に頬をつけていたけど、彼の胸に顔を押し付けて目一杯吸い込むと、彼の匂いに安心して羞恥とかどうでも良くなってしまう。
私の頭を撫でる彼は、そうか、と言ったきり、何にも喋らない。顔を上げて彼を見上げると、私の髪先を一房摘み、ちゅっと、口づけを落とす。
「…髪…だけですの…?」
拗ねたように唇を尖らせれば、自分の髪にも嫉妬している危ない女だ。
「いや、これからだ」
フッと笑う彼は、私が望んでいる唇にキスをしてくれた。



**************


「最近働き詰めで、休暇を取るように言われた」
と、足の力が入らなくて歩く事すらままならない私を、横抱きに抱き上げながら彼はそう言った。
「…そうなんですか…じゃあ、しばらくは一緒でしょうか」
なんとかトラヴィ様に着替えるのを手伝ってもらい、馬車までお姫様抱っこで連れて行かれて馬車の中で、喜びの声になってしまったのは、仕方がない。
ーーせっかく結ばれたのに、また日中会えないのは…寂しいもの…わがままかな…
そんな想いもチラッと思ったが、嬉しい気持ちが勝ってしまい、彼の胸元に頬をつけて、ふふっと笑い声が漏れる。
「あっ…スミレは…」
そうだ、一緒に来ていたと、思い出したら、
「スミレなら先に帰るように言った」
その彼の言葉に、ほっとした私は、何故スミレが着替えを手伝わなかったのか理解した。
ーーそうか、帰ったならしょうがないわね

しかし、気怠げの残る儚い雰囲気のサーシャを誰にも見せたくないと、トラヴィ様の独断で帰らせたとは、この時サーシャは知る由もなかった。


**************



ゆっくり彼の昂りが、私の蜜壺の中へと入っていく。私を傷つけないように、いつも慎重すぎるくらいに行為の始めにゆっくり蜜壺に入る固く太くて熱い昂りを、蜜壺はピッタリとくっつき歓迎するみたいに包み込む。
「ん、っぁっ」
自室のベッドの上に仰向けになって横になる私を、上から見下ろすトラヴィ様が眉を寄せ苦しそうな表情が見せる姿にどきどきと胸が熱くなる。


あの、宿で初めてを奪われてから5日目。今までキスだけで我慢出来てどうしていたのか、思い出せないくらい濃厚な時間を過ごしている私達。仕事を休むと言われた日に、私は屋敷でいつものように自室で過ごす間に、彼は少し仕事をすると言ったので私は眠る事にしたのだ。夕飯の時間に起こされ、久しぶりに部屋で運ばれた料理を、仕事が終わったトラヴィ様と一緒に食べて、抱きしめ合って眠った。
ーー問題は次の日からだった
前日からたっぷりと眠っていた私は、朝早くに目が覚め隣に眠る彼の寝顔を見て幸せを噛み締めていたのだが…いつのまにか起きていた彼に、朝から求められ朝食の時間を過ぎても離してはくれなかった。
ロヨもスミレも他の使用人達も全く寄りつかない部屋で、お互いしかいない錯覚に陥り、ただただ彼を求めて求められた。眠って起きると部屋の中にあるテーブルに食事が運ばれていて、料理をスプーンで掬った彼が私の口へと運び食べる。最初は恥ずかしい思いもあったけど、今は彼の手からじゃないと食べる気も起きないから不思議だ。
お返しに私もお肉多めに彼の口へと運び、もぐもぐと食べる姿に見惚れる。食べ物もそこそこに、お互い食べる姿に欲情してしまい彼の胸板に抱きつくと瞬時に濃密な空気が2人を包む。
お風呂に入る時は、ぐったりとした私を彼は丁寧に洗ってくれるのだけど…どこを触れば良い反応をするのか既に熟知している彼はここぞとばかりに甘く攻めて私は、もう気持ちいいしか考えられなくなり、どんな風に洗われどんな風に彼の目に映るのかが、分からなくなっていた。
「愛してる」
「サーシャ」
「私のものだ」
「誰にも渡さない」
愛されて甘やかされ独占欲を表されると、どうしようもなく嬉しくなり、もっともっとと、欲しくなる。

「あっ、気持ちいぃむ、んっ」
素直な気持ちが零れてしまうと、より一層彼の昂りが膨らみ蜜壺の中をいっぱいにする。
「っぐっ…サーシャ」
彼の上擦った声が私の鼓膜から頭へ響き、全身が歓喜し蜜壺がぎゅうぎゅうと彼の昂りを締め付ける。ゆっくり蜜壺の中を動いていたのに私が締め付けてしまった事により、彼の動きが早くなる。ひと突きひと突き重い衝撃が、蜜壺の最奥へと幾度となく貫くと甘い声と啜り泣く声で部屋が満たされる。何度達したか分からない、何度蜜壺の最奥へと注がれたのか分からない、何度彼を求めて求められたのか分からない。普段鍛えている彼とは違い、体力もない私がずっと彼の相手をする事は出来なかったが、結婚して初めて新婚らしく過ごした私達だった。


「来月…ですか…?」
ベッドの上で彼の腕の中で向かい合わせで座り抱きついて、しばしの休息をしている時に、彼から告げられた。
「そうだ、来月の末、国王陛下主催のパーティーに参加する事になった…一緒に行こう」
「しかし…私…マナーとか不安ですわ…」
幼き頃から皇族としてマナーを叩き込まれているはずだけど、その頃のサーシャはいない。前世の記憶はあるけど、パーティーなんて参加した事も主催した事もないのだ。
「大丈夫、私のそばにいればいい」
そう言って私の額に、触れるだけのキスを落とすトラヴィ様。キスをしてくれて、嬉しくて目を細めていると、
「にこにこもしなくていい、他の人とも喋らなくていい」
「…パーティーなのに、それはダメですわ」
そうしたら楽だけど、多分というか、絶対ダメだろう。トラヴィ様の妻として初の公の場で、彼を支えなくては彼の名誉が堕ちてしまうだろう。
「…私、頑張りますね」
そう言って彼の首のうしろへ腕を回し膝立ちをして、彼の唇に自分の唇を重ねると、彼の手が妖しく動き私のお尻へと伸びたのを合図にまた濃厚な時間の始まりが訪れたのだった。
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