強面騎士団長と転生皇女の物語

狭山雪菜

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プロローグ

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コイタ王国ーーそれは世界で唯一の水の都。城の周りをお堀が囲み、区画ごとに分けられた川と噴水、景観を損わない美しい橋が所々に見られる。


「コイタ王国、第一皇女ーーサーシャ、貴方に縁談が持ち上がっているわ」
広い謁見の間の王座に座る、この国の国王陛下と私の母ーー王妃が並んでいた。そして王座へと続く階段の下には沢山の臣下と国王夫妻の子供達。
「このコイタ王国の繁栄が出来るよう精進いたします」
赤い絨毯の上で頭を垂れているのは、私ーーコイタ王国第一皇女サーシャ・コイタ。
銀色の髪は謁見の間にある窓の日差しが降り注ぎキラキラと輝き光りを放つ。卵のようにつるんとした小さな顔、こぼれ落ちそうなほどの大きな澄んだ碧眼の瞳、スッと伸びた鼻筋、ぷっくりとした唇は瑞々しく、日に焼けたことのない白い肌は陶器のように滑らかで美しい。彼女のドレスは青いワンピースというシンプルな装いなのに、不思議と高貴な雰囲気を醸し出すのは、彼女の魅力が加わっているからだろう。
コイタ王国の随一の美女と名高いサーシャは、間もなく20歳を迎える。幼き頃から婚約したいと指名が止まらない彼女は、とある理由・・・・・から、なかなか国王陛下と王妃の許可がおりず、正式に婚約者を迎える事なく王城で生活をしていた。成人を迎えた18歳から外出を許可され、彼女が視察や公務などで出かける際には、彼女を守る厳つい護衛で固められ市民に気軽に触れ合う事も出来ていない。
そして、この国の王族と直系の子孫は国と同じ名字を名乗り、王城で暮らしている。

そんな彼女に、今回縁談が持ち上がっていた。しかも、国王陛下と王妃の覚えも良い人物。
いつもならサーシャに伝えられる前に断られていたはずの縁談が、こうしてサーシャに告げるということは、ついにサーシャの結婚が決まった事だろう。


ーー私の意思など意味がない、この国の皇女として生まれた瞬間から

「第一皇女、サーシャの婚約者はーー」

声高々に宣言をした国王陛下の言葉に、この謁見の間にいる全大臣と兄弟達は静かに聞いていた。




**************




ーー1年後。


コイタ王国の第一皇女は結婚式を挙げ、コイタ王国騎士団長のトラヴィス・ジョンソンの妻となったのだが、結婚式後に服毒自殺を図り意識不明の重体となった。






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