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リクエスト ハワイ強化合宿 学校一の美女
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青い空、白い雲。
日本よりも暑く、南国の木々が並ぶ空港へと降り立つと、海外に来たと強く実感した。
私、山崎白雪は、強い日差しに瞼をぎゅっと閉じた。
「どうした?」
私が立ち止まったことに気がつき、スーツケース専用のカートに複数のスーツケースと手荷物を載せた彼、山崎哲夫は、私の横で立ち止まった。
「…ううん、眩しくて」
そう言って何でもないと、にっこりと笑えば、周りの人達ははっと息を呑み、哲夫は目元を染めた。
「…そうか、海外だからそばを離れるなよ」
と、照れて肘を差し出した哲夫に、私は当たり前のように手を添えた。
「相変わらず、仲が良いなぁ」
そうぼやくのは、哲夫のコーチを務める沖田さんだ。今年50歳になる彼は、高校生の時から哲夫に指導しているベテランのコーチで、先日お世話になった方々に哲夫と結婚の挨拶をした時に、紹介してもらった。
白髪混じりで哲夫と同じくらいの強面の顔は、誰よりも厳しい指導員と聞く。しかし、私と話すときはキリッとした眉を下げ、柔らかな眼差しで時折冗談も言ってくれる。隣にいる哲夫は、こんなに優しいコーチは見た事がないと、いつも驚いているんだけど。
何故彼もここにいるかと言うと、そもそも今回このハワイへ来た理由は、哲夫の所属している団体――柔道日本代表選手達の強化合宿で、私は哲夫の妻とはいえ強化選手でもなんでもないので実費参加だけど、哲夫やその他の人達は補助金が出ていた。10日間を予定している合宿は、日本とハワイ間の往復を含め12日間強化選手達と過ごす。
――本当なら結婚式をハワイで挙げるはずが、まさかテツくんの強化合宿で先に来ちゃうなんて
2ヶ月まえの温泉旅行の時には思いもしなかった。
「沖田コーチ、荷物はこちらに」
沖田コーチの後ろから声を掛けたのは、哲夫の後輩の山田一成くんだ。彼は今年21歳の茶髪の哲夫と同じくらいの身長、ガタイのいい俊敏な動きをする期待の新人で、この強面の多い柔道選手の中で一番爽やかで笑顔が癒される、今一番人気の日本代表選手だ。
「山崎先輩も」
哲夫をチラッと見て、すぐに後ろを振り向いた彼は、スタスタと合宿参加者の元へと行ってしまう。
「白雪、行くぞ」
「あ…うん」
こうして、歩き始めた哲夫に合わせ私も歩き出すと、哲夫に気づかれないように、こっそりとため息を吐いた。
――やっぱり、テツくんの奥さんとはいえ、選手でも協会の人でもない私が来るのは間違いだったかな…
当初ハワイ強化合宿は哲夫だけの参加の予定だったが、私を家で1人にするのが不安だった哲夫に、式の下調べにいいし、折角行きたかった所だろ、と哲夫に押し切られる形で関係者として参加する事が出来た。
実費ということもあったけど、哲夫と席は隣にしてくれたし、ホテルも彼と同室にしてもらった。そんな私のわがままを、よく思ってない人もいるらしく――今の山田くんがそうだ。初対面の時から私と目を合わせようとせず、ぶっきらぼうに一言二言話して終わり。爽やかな笑顔ってみんなは言うが、私には笑顔も見せてくれない。
もしかして嫌われていると、思った瞬間に山田くんの事を苦手な存在として認識するようになってしまった。
「今日は時差とか移動の疲れを取る日だから、ホテル着いたら疲れてないなら散歩しよう」
そんな私の想いなど知らない哲夫は、いつもと変わらない優しい言葉を掛けてくれた。
どんよりとした気持ちは、ホテルの部屋に入った事で気分が上昇した。ラタンのベージュの椅子が二つと同色のラタンのテーブルがある広めのバルコニー、ウェルカムドリンクのマンゴージュースは、シンプルなダブルベッドの横にあるテーブルに置かれている。15帖以上ある長方形の部屋には、大画面のテレビも備わっている。
「わぁ!綺麗だね」
バルコニーから見える海は絶景だ。ガラス張りのバルコニーの手すりに腕を付けて、どこからか流れている南国の曲、潮の香りと青い空白い雲、透き通るような海を眺めて、ハワイの空気を楽しんでいると、
「そうだな」
と、私を背後から抱きしめる哲夫の腕の中に、すっぽりと入った。私の肩に顎を乗せて、ちっとも感動した声ではなく、相槌を打つ淡々とした声が聞こえ、哲夫は変わらないなと微笑ましい気持ちになる。
しばらく外を眺めていたが、彼が私の首筋にキスを始めた。可愛らしく哲夫の唇をくっつけていただけだったのに、ちゅっ、ちゅっと、軽くキスを落とし、舌を這わし出した辺りで、私のお腹に彼の両手が置かれた。
擽ったくて振り返ると、待ってましたと言わんばかりに口を塞がれ舌が絡まる。
「っ…ん」
息も苦しくなり振り返り彼の腰に手を回すと、哲夫も私の背中に回した。顔の角度を何度か変えて、口づけを堪能していたら、哲夫に横抱きにされ持ち上げられた。
「…わっ!」
口づけに夢中で遅れて出た声は、色気などなんにもない素っ頓狂な声だったけど、哲夫は気にする事なく部屋へと戻った。
ゆっくりとベッドに仰向けで寝かされ、すぐに彼が私の上に覆い被さる。哲夫に手を伸ばそうとする私の手を掴み、ベッドへと縫い付けると、指先が絡まって身動きが取れない。
私の上にいる彼を見上げると、哲夫の瞳は熱く欲情が見え隠れしていて、彼の喉が動いてゴクンと唾を飲み込む。
「…テツく…んっ、っ」
上擦った声が口から漏れると、彼の顔が近く、
「…キスだけだ…今は」
2人しかいない部屋なのに、小声で内緒話をするように囁く哲夫に、私はぽうっと見惚れていた。
「山崎先輩との出会いってどうだったんですか?」
と、哲夫とホテルの近くにあるショッピングモールで、ウィンドウショッピングをしていたら、強化合宿参加者の女子柔道選手の2人に声をかけられた。いつもは怖くて哲夫に声をかけらないけど、私の横でお店で買ったお土産や記念品やバックの入った紙袋を持っている哲夫を見て、哲夫は他の男の人と同じだと気がついたらしい。
「でも山崎先輩の奥様なら私も荷物持ちになりたいな」
「わかるっ!奥様に持たせたくないよねっ!」
きゃっきゃっと笑う女子選手は、20歳の女子達だ。
「…持つって言ってるんだけど…持たせてくれなくて」
言い訳のように口から出てしまい、頬が赤くなる。きっと哲夫からしたら、私は何にも持てない妻だと思っているのかもしれない。
「え…可愛…天使」
「奥様可愛い」
2人はキャーキャー何かを言っていて、急に喜びだした。
――持てなくはないけど…テツくんが持ってくれるから買い物が捗る
私の家族と哲夫の家族と2人の職場の人達への菓子折り、家で使うペアのお皿とテツくんの財布も新調した。全て私が選んだけど、私の身につけるキーケースだけは哲夫が選んだ。
「…お前ら…そんな元気があるなら…」
黙って2人の後輩の話を聞いていた哲夫は、突然地を這う声を上げると、2人は青ざめた。
「…わっ…私…そろそろ」
「あっ!私もお土産が…」
そう言って、そそくさと私達の前から居なくなってしまった。
「ちょっと、普段のテツくんの様子とか知りたかったのにぃ」
ぶーと、口を尖らせると、
「いつも一緒にいるだろ…ほら、行くぞ」
呆れたように言い、ホテルに戻るぞと帰ることを告げられた。
それはそうなんだけど、私といる時の哲夫はいつも私を甘やかすから、普段はどうなんだろうと知りたいのだ。
「…ん」
哲夫の肘を出され、彼の腕に手を添えると私達はホテルへと戻った。
***************
「山崎先輩の奥さんって、本当に空気読めないですね」
突然向けられた負の感情は、私の心に強く刺さる。
「…なん…で」
海辺で最近の日課である夕飯後の散歩を哲夫としていた時に、哲夫がスマホを道場に忘れたと2人で道場へと向かっていた。海の風が吹いてピンク色のハイビスカスのロングワンピースが揺れる。
ヤシの木が並ぶ歩道を2人で歩いていると、道場が見えて来た。
「あれ、山崎先輩?」
前から来た人物に声を掛けられ、お喋りをしていた私達は前を向いた。
「…ああ、山田か」
「どうしたんすか?」
自主練をしていたのか、白いTシャツと水色のハーフパンツを履いていて、手には細長い汗拭きタオルを持っていた。
「道場にスマホを忘れたんだ」
「あ、そうなんすか」
すぐそこに道場もある建物が見えたので、哲夫は繋いでいた手を解き、
「白雪、すぐ戻る」
そう言って足速に道場へと行ってしまった。
私と山田くんの2人きりになってしまい、シンと静まり返ってしまう。
――私もテツくんのところに行こうかな…
私の行手を阻んでいる目の前にいる山田くんの横を通り過ぎようと一歩踏み出すと、山田くんが口を開いた。
「……知ってました?…山崎先輩、自主練も選手たちの懇談会も出席してないんですよ…以前なら多少の飲み会なら出ていたのに」
「……え」
合宿の日程も半分を過ぎると、他の選手達とも打ち解けていった。
――ただ1人、山田くんを除いて
朝10時に集まり練習、お昼を食べて午後の練習、夕飯後は自主練でもいいし、休んでもいいとルーティーンができた。私は哲夫のお昼ぐらいを目処に合宿している道場へと行って、お昼を一緒に食べるだけで、あとは夕飯を参加者の皆と食べて一緒に部屋に戻っていた。一度哲夫に、他の人と飲みに行ったりしないの?と聞いたけど、哲夫は
「みんな合宿中は酒を飲んでない」
と、言われたので信じていた。自主練もしないと言っていた哲夫。本当はやりたかったのかな、と今更ながら思う。
「山崎先輩の奥さんって、本当に空気読めないですね」
さらに山田くんにそんな言葉を言われ、もう何にも考えられない。ふっと彼の口角が上がり、初めて彼の笑った顔を見た。
「…なん…で」
何故今笑うのか、何故そんな酷い事を言うのか、
「…奥さんのせいで…最近」
そう言って山田くんは、手を伸ばして私の頬に触れそうになる。
「…っ!山田ぁぁっ!!」
海の波の音が聞こえ時間が止まった気がしたけど、急に響いた怒号にビクッと山田くんの手が私の頬に触れる前に止まり反応した。
久しぶりに聞く静かに怒る低い声は、長くそばにいる私ですら少し怖い。声の主、哲夫を見ると眉間に皺を寄せて、口元が固く結ばれている。走り出した彼はドスドスと大きな足音を立てながら、私と山田くんの間に身体を入れると、
「…何もしてないっすよ」
山田くんの声が聞こえるが、哲夫の身体が邪魔をして見えない。
「しようとしてたろ」
怒りを抑えた哲夫の声が聞こえるけど、哲夫も私に背を向けているから見えない。そしてしばらく無言で対峙しているかと思ったら、私の手を掴み急に歩き出した。
ホテルに着き、エレベーターの中でも強く掴まれた手首を離そうとしない哲夫は、怒りを隠そうともしない。
――こんな顔…知らない
そもそも哲夫はいつも怒る事がなく、私が怒ったらすぐに謝る。いや、一度だけ…彼に嘘をつかれた時に、もう嫌だと告げたら怒ってた。もう別れるつもりだと誤解された時…確かそう、指輪を取りに行くのを私に内緒にしていた時だけだ。
――でも今の方がもっと怖い
ぐいぐいと引っ張っられ、到着したのは私達の部屋。カードのルームキーで開けた扉を乱暴に開き、部屋の中へと進む哲夫。オートロックのため鍵の心配はないけど、一応扉の方を見てしまったのは、防犯の意識があったのかもしれない。
「…どこを見てる」
私が隙を見て哲夫から逃げし出すと考えてしまったのか、私にも向けられた怒りを抑えた震える低い声。
「違う…扉がちゃんと閉まっているか…んっん」
全てを言い終わる前に手を引かれ、哲夫の腕の中へと抱きしめられ口を塞がれる。舌を絡められ強く吸われ口内を蹂躙する哲夫からの激しい口づけは、彼の気持ちを私にぶつけているみたいだ。
彼の胸に置いた手を彼の首の後ろへと回し、彼の身体に体重を掛ける。しばらくすると性急だっで激しい口づけは落ち着き、哲夫の舌を甘噛みしたり舌を絡めたりといつもの戯れ合いが出来るようになった。
ちゅぅ、と唇が離れると額を合わせて、すぐそばに彼の瞳が私を射抜く。荒くなった息を整えていると、私の唇のラインを彼の親指の腹がなぞり、2人の唾液で濡れた口を拭う。
踵を上げるとすぐに唇が重なり、口を開けて哲夫の唇のラインに舌を這わす。自分からキスをすると、私の腰に哲夫の両手が移動した。顔の角度を何度も何度も変えて、哲夫が満足するまで続いた口づけは、私の足に力が入らなくなるまで続いた。
「…っ…おち…ついた…?」
息も荒く頭がぼうっとする。私はベッドの端に座った哲夫の足の上に座り、彼の肩に頭を乗せていた。
「…ああ、結婚したら俺のモノだと思って油断しちゃダメだな」
どうやら機嫌が良くなったみたいだ、私の首に舌を這わしながら、しみじみと言う哲夫。何度も、ちゅぅっと強く吸い付きチクッとした痛みを感じる。後で鏡で見たら、きっと首のキスマークはたくさんあるのだろう。
最近は見える所にキスマークは付けないから、出かける時どうしようか後で考えよう。哲夫の頬に手をつけると、彼の顔が上がり瞳が私に向く。
「…テツくんだけだよ?」
「…山田はそうじゃなかった」
ムッと眉を寄せた表情が、また可愛いと思っちゃうから困る。
――おかしいな、好意って敏感だったはずなのに、山田くんからは全く感じなかった…もしかして鈍ったかな…?
「明日から俺以外と出かけるの禁止にしよう、道場にも来るな…お昼は…ルームサービスか俺が部屋に戻ってから」
当たり前のように言われ、うーん、と考えるふりをした。
「…まだ、何にもされてないけど」
「早めに距離を取る事も大事だ」
気にし過ぎじゃないと、ニュアンスで伝えるがキッパリと否定される。
「…私はテツくんだけだけど?!」
「アイツは爽やかだしな、もしかしたらの可能性も捨てきれない」
「………私の気持ち疑ってんの?」
「いや…そういう訳では」
だんだんと私の機嫌が悪くなった事に気がついた哲夫は、しどろもどろになっていく。
「じゃあっもう知らないっ!絶対に守らない!」
ぷいっと顔を背ければ、いきなり動いたからかグラっと目眩が起こる。額に手をつけて彼の肩に体重を預けると、哲夫が私の背中に手を添えた。
「…悪かった」
遅れてボソッと言ったきり、シンとした部屋に2人の息遣いしか聞こえない。
――本当に悪いと思っているの…もうっ
結婚してからは真っ直ぐ家に帰り、哲夫の帰りを待っているし、普段左薬指に結婚指輪してるし、休日は哲夫と出かけているから、こうしてあからさまなヤキモチを焼く哲夫は初めて見る。
「私はテツくんの奥さんだよ!…ねぇ…」
ちゅうっ、と彼の頬にキスをして、顎のラインや口の端、彼の頬を両手で挟み私の方を向かせると、顔中に触れるだけのキスの雨を降らせた。
「ん、っん」
彼の口の近くに私の唇が当たると、哲夫の顔が動き私の口を塞ぎ舌が絡まる。終わらない口づけに、すぐに夢中になってお互いの舌を貪る。
彼の首の後ろへ腕を回し、哲夫の足の上で座り直していると、哲夫の手が私のお尻に回った。私のお尻を持ち上げ、私を膝立ちにさせる。哲夫は私のスカートをたくし上げようとしているみたいだが、私の膝の下に挟まっているため上げられない。片膝を上げるとスカートが取れ、私の生足が露わになる。彼の大きな手がふくらはぎから太ももへ、ゆっくり上下に摩りながら移る。膝立ちにした私は彼の肩に自分の腕を付けると、上を向かせた彼の唇を啄む。
私の足を堪能した彼は、私の腰、くびれをひと撫して、私のワンピースを脱がそうとする。バンザイをして脱ぐと、身体中に赤い所有印を付けた真っ白なレースの下着の私が彼の前に晒される。
「…綺麗だな」
ほうっとする哲夫は、私の鎖骨に口づけを落とし、私の胸をブラ越しに大きな手が揉む。
「ん…んっ」
背中に手を回しブラのホックを外すと、締め付けがなくなった胸は、ぷるんと弾ける。自分で肩紐を外しカップを取り、床に落とすとパサッと落ちた音がした。
白い肌に付いた赤い所有印を口づけして彼の唇が辿りながら、私の乳房を下から掬い揉む。ツンと固くなった乳房の中央にある粒を摘み、人差し指で引っ掻けて弄る。
「あっ、ん、あっ…わっ」
快感が始まっていたのに、急に身体を抱きしめられ、身体を反転させられた。パフッとベッドへと仰向けにされると、哲夫はベッドに膝をつけ、Tシャツを脱ぎ始めた。ズボンとボクサーパンツも脱ぐと、筋肉で凹凸になった逞しい身体。彼の下半身の昂りは、すでに勃ち上がっていて固く太く天井を向いている。
「っ…そんなに見るなっ」
「ん…だって」
これから起き上がる甘美な時間を想い、自然と潤む瞳で彼を見つめていた。自身の昂りを握る哲夫は、昂りの先端から溢れたツユが伝い彼の指を濡らしている。
「…テツく…ん」
私が手を伸ばすと私を覆いかぶさる哲夫は、私の口を塞ぐ。足を上げて彼の太ももの裏に足を掛けて、下半身を寄せると下着の上に彼の昂りが当たる。
ギシッギシッとベッドが軋み始めると、彼の昂りを下着に擦りつけ押しつけられる。熱い塊が下着を濡らし、下着がヌルッとズレる。まだちゃんと解されていないのに、もう身体は期待で濡れている。
哲夫は私の下着に手をかけるとズラし、数度蜜口を指先でぐるりと撫でると、昂りを蜜口に当てがう。
「ん、んっ…ん、ん」
ゆっくりと蜜口に押しつけた昂りが腰をすすめると、ミチミチといっぱいに広がり苦しい。ぎゅうぎゅうに昂りを締め付けると、
「あ…くっ…狭い…はっ」
ギリギリと奥歯を噛み締め、キツく締め付ける蜜壺に苦しそうだ。私の口を塞ぎ乳房に手をつけて揉み始め、ズズッと腰をすすめた。
「ぐっ…っつ」
蜜壺の最奥まで到達すると、強い締め付けに我慢出来なくなった哲夫は、昂りを弾けさせ熱い証を蜜壺へと注いだ。
「あ…熱い…っ」
ドクンドクンと注がれた証に反応して背がのけ反り、彼の昂りをぎゅうぎゅうと締め付ける。哲夫の唇が私の唇に重なり、ねっとりと舌が絡む。
むくむくと蜜壺の中にいる彼の昂りが固さを戻したのを感じ、哲夫の腰に手をつけると同時に哲夫の腰が動き出した。
「あっ、あ、あっんっあっ、テツくんっ、テツく…っ」
ぱんぱんっと肌がぶつかり、激しくベッドが軋む。蜜壺の中で注がれた証と溢れる蜜が潤滑油のように、昂りの抽送を助けて快感が増していく。
好き、大っきいと、口にした単語が甘い吐息と共に出ると、昂りは大きく膨れ、さらに激しく攻められる。白雪っと、名前を呼ばれ、彼の吐く息が顔に肩に当たり、絶頂へと上り詰める。
「ぐっはっ…っづ」
「あっあぁぁぁぅぅっ」
ぱんっ、と最後のひと突きと共に、最奥にまた注がれた証で私は絶頂に達した。
はぁはぁ、とお互いの息が荒いまま、どちらかともなく始まった口づけに、また快感の火が灯る。最近は次の日の予定もあるので一度ないし、全くしない日もあったので、こんなに求め合うのは久しぶりで、完全にタガが外れてしまった。
「…まだ…だからな」
「…うん…嬉しい」
息の荒い彼の熱の篭った眼差しと、私を求める低いツヤのある声に、胸が熱くなる。
求め合う2人の夜は始まったばかりだ。
次の日、愛し過ぎて起き上がれない白雪を置いて、いつものように合宿に参加した哲夫は、稽古をしようと山田を誘った。
彼の妻も触ってもいないのに、真剣勝負で何度も投げ技をし勝つ哲夫は、山田がギブアップするまで続いた。
「…はぁ、はぁ…酷くないっ…すか…っ」
大の字で寝そべる山田に
「…ふん、触ってたらもっと遠慮はしない」
「…マジっ…すか…」
冷めた視線を向ける哲夫。きっとこの表情は妻の白雪にも見せたことのない、鋭い眼差しとぴくりとも動かない頬の冷徹な顔だ。
眉を下げて情けない顔をした表情の山田は、これで奥さんが好きと伝えたら…と考えただけでゾッとした。
「……山崎先輩」
「ふん」
愛妻家で有名だった哲夫を鼻で笑っていた山田。しかし挨拶に来た白雪に一目惚れをしてしまった山田は、尊敬する先輩の奥さんとどうこうするつもりはなかった。好意を抱いている感情を上手く隠していたのに、この合宿中で先輩や同じ選手たちと無邪気に笑う白雪を間近で見たいと欲が出てきてしまった。
あと少し先輩の到着が遅れていたら…と、考えるともう彼女への止められる気がしなかった。
「…すいません…もう近寄りません」
尊敬する無敗の先輩にはどう足掻いても到底勝てないと、瞬時に諦めた山田は、白雪と距離を取り続ける事を心に誓ったのだった。
日本よりも暑く、南国の木々が並ぶ空港へと降り立つと、海外に来たと強く実感した。
私、山崎白雪は、強い日差しに瞼をぎゅっと閉じた。
「どうした?」
私が立ち止まったことに気がつき、スーツケース専用のカートに複数のスーツケースと手荷物を載せた彼、山崎哲夫は、私の横で立ち止まった。
「…ううん、眩しくて」
そう言って何でもないと、にっこりと笑えば、周りの人達ははっと息を呑み、哲夫は目元を染めた。
「…そうか、海外だからそばを離れるなよ」
と、照れて肘を差し出した哲夫に、私は当たり前のように手を添えた。
「相変わらず、仲が良いなぁ」
そうぼやくのは、哲夫のコーチを務める沖田さんだ。今年50歳になる彼は、高校生の時から哲夫に指導しているベテランのコーチで、先日お世話になった方々に哲夫と結婚の挨拶をした時に、紹介してもらった。
白髪混じりで哲夫と同じくらいの強面の顔は、誰よりも厳しい指導員と聞く。しかし、私と話すときはキリッとした眉を下げ、柔らかな眼差しで時折冗談も言ってくれる。隣にいる哲夫は、こんなに優しいコーチは見た事がないと、いつも驚いているんだけど。
何故彼もここにいるかと言うと、そもそも今回このハワイへ来た理由は、哲夫の所属している団体――柔道日本代表選手達の強化合宿で、私は哲夫の妻とはいえ強化選手でもなんでもないので実費参加だけど、哲夫やその他の人達は補助金が出ていた。10日間を予定している合宿は、日本とハワイ間の往復を含め12日間強化選手達と過ごす。
――本当なら結婚式をハワイで挙げるはずが、まさかテツくんの強化合宿で先に来ちゃうなんて
2ヶ月まえの温泉旅行の時には思いもしなかった。
「沖田コーチ、荷物はこちらに」
沖田コーチの後ろから声を掛けたのは、哲夫の後輩の山田一成くんだ。彼は今年21歳の茶髪の哲夫と同じくらいの身長、ガタイのいい俊敏な動きをする期待の新人で、この強面の多い柔道選手の中で一番爽やかで笑顔が癒される、今一番人気の日本代表選手だ。
「山崎先輩も」
哲夫をチラッと見て、すぐに後ろを振り向いた彼は、スタスタと合宿参加者の元へと行ってしまう。
「白雪、行くぞ」
「あ…うん」
こうして、歩き始めた哲夫に合わせ私も歩き出すと、哲夫に気づかれないように、こっそりとため息を吐いた。
――やっぱり、テツくんの奥さんとはいえ、選手でも協会の人でもない私が来るのは間違いだったかな…
当初ハワイ強化合宿は哲夫だけの参加の予定だったが、私を家で1人にするのが不安だった哲夫に、式の下調べにいいし、折角行きたかった所だろ、と哲夫に押し切られる形で関係者として参加する事が出来た。
実費ということもあったけど、哲夫と席は隣にしてくれたし、ホテルも彼と同室にしてもらった。そんな私のわがままを、よく思ってない人もいるらしく――今の山田くんがそうだ。初対面の時から私と目を合わせようとせず、ぶっきらぼうに一言二言話して終わり。爽やかな笑顔ってみんなは言うが、私には笑顔も見せてくれない。
もしかして嫌われていると、思った瞬間に山田くんの事を苦手な存在として認識するようになってしまった。
「今日は時差とか移動の疲れを取る日だから、ホテル着いたら疲れてないなら散歩しよう」
そんな私の想いなど知らない哲夫は、いつもと変わらない優しい言葉を掛けてくれた。
どんよりとした気持ちは、ホテルの部屋に入った事で気分が上昇した。ラタンのベージュの椅子が二つと同色のラタンのテーブルがある広めのバルコニー、ウェルカムドリンクのマンゴージュースは、シンプルなダブルベッドの横にあるテーブルに置かれている。15帖以上ある長方形の部屋には、大画面のテレビも備わっている。
「わぁ!綺麗だね」
バルコニーから見える海は絶景だ。ガラス張りのバルコニーの手すりに腕を付けて、どこからか流れている南国の曲、潮の香りと青い空白い雲、透き通るような海を眺めて、ハワイの空気を楽しんでいると、
「そうだな」
と、私を背後から抱きしめる哲夫の腕の中に、すっぽりと入った。私の肩に顎を乗せて、ちっとも感動した声ではなく、相槌を打つ淡々とした声が聞こえ、哲夫は変わらないなと微笑ましい気持ちになる。
しばらく外を眺めていたが、彼が私の首筋にキスを始めた。可愛らしく哲夫の唇をくっつけていただけだったのに、ちゅっ、ちゅっと、軽くキスを落とし、舌を這わし出した辺りで、私のお腹に彼の両手が置かれた。
擽ったくて振り返ると、待ってましたと言わんばかりに口を塞がれ舌が絡まる。
「っ…ん」
息も苦しくなり振り返り彼の腰に手を回すと、哲夫も私の背中に回した。顔の角度を何度か変えて、口づけを堪能していたら、哲夫に横抱きにされ持ち上げられた。
「…わっ!」
口づけに夢中で遅れて出た声は、色気などなんにもない素っ頓狂な声だったけど、哲夫は気にする事なく部屋へと戻った。
ゆっくりとベッドに仰向けで寝かされ、すぐに彼が私の上に覆い被さる。哲夫に手を伸ばそうとする私の手を掴み、ベッドへと縫い付けると、指先が絡まって身動きが取れない。
私の上にいる彼を見上げると、哲夫の瞳は熱く欲情が見え隠れしていて、彼の喉が動いてゴクンと唾を飲み込む。
「…テツく…んっ、っ」
上擦った声が口から漏れると、彼の顔が近く、
「…キスだけだ…今は」
2人しかいない部屋なのに、小声で内緒話をするように囁く哲夫に、私はぽうっと見惚れていた。
「山崎先輩との出会いってどうだったんですか?」
と、哲夫とホテルの近くにあるショッピングモールで、ウィンドウショッピングをしていたら、強化合宿参加者の女子柔道選手の2人に声をかけられた。いつもは怖くて哲夫に声をかけらないけど、私の横でお店で買ったお土産や記念品やバックの入った紙袋を持っている哲夫を見て、哲夫は他の男の人と同じだと気がついたらしい。
「でも山崎先輩の奥様なら私も荷物持ちになりたいな」
「わかるっ!奥様に持たせたくないよねっ!」
きゃっきゃっと笑う女子選手は、20歳の女子達だ。
「…持つって言ってるんだけど…持たせてくれなくて」
言い訳のように口から出てしまい、頬が赤くなる。きっと哲夫からしたら、私は何にも持てない妻だと思っているのかもしれない。
「え…可愛…天使」
「奥様可愛い」
2人はキャーキャー何かを言っていて、急に喜びだした。
――持てなくはないけど…テツくんが持ってくれるから買い物が捗る
私の家族と哲夫の家族と2人の職場の人達への菓子折り、家で使うペアのお皿とテツくんの財布も新調した。全て私が選んだけど、私の身につけるキーケースだけは哲夫が選んだ。
「…お前ら…そんな元気があるなら…」
黙って2人の後輩の話を聞いていた哲夫は、突然地を這う声を上げると、2人は青ざめた。
「…わっ…私…そろそろ」
「あっ!私もお土産が…」
そう言って、そそくさと私達の前から居なくなってしまった。
「ちょっと、普段のテツくんの様子とか知りたかったのにぃ」
ぶーと、口を尖らせると、
「いつも一緒にいるだろ…ほら、行くぞ」
呆れたように言い、ホテルに戻るぞと帰ることを告げられた。
それはそうなんだけど、私といる時の哲夫はいつも私を甘やかすから、普段はどうなんだろうと知りたいのだ。
「…ん」
哲夫の肘を出され、彼の腕に手を添えると私達はホテルへと戻った。
***************
「山崎先輩の奥さんって、本当に空気読めないですね」
突然向けられた負の感情は、私の心に強く刺さる。
「…なん…で」
海辺で最近の日課である夕飯後の散歩を哲夫としていた時に、哲夫がスマホを道場に忘れたと2人で道場へと向かっていた。海の風が吹いてピンク色のハイビスカスのロングワンピースが揺れる。
ヤシの木が並ぶ歩道を2人で歩いていると、道場が見えて来た。
「あれ、山崎先輩?」
前から来た人物に声を掛けられ、お喋りをしていた私達は前を向いた。
「…ああ、山田か」
「どうしたんすか?」
自主練をしていたのか、白いTシャツと水色のハーフパンツを履いていて、手には細長い汗拭きタオルを持っていた。
「道場にスマホを忘れたんだ」
「あ、そうなんすか」
すぐそこに道場もある建物が見えたので、哲夫は繋いでいた手を解き、
「白雪、すぐ戻る」
そう言って足速に道場へと行ってしまった。
私と山田くんの2人きりになってしまい、シンと静まり返ってしまう。
――私もテツくんのところに行こうかな…
私の行手を阻んでいる目の前にいる山田くんの横を通り過ぎようと一歩踏み出すと、山田くんが口を開いた。
「……知ってました?…山崎先輩、自主練も選手たちの懇談会も出席してないんですよ…以前なら多少の飲み会なら出ていたのに」
「……え」
合宿の日程も半分を過ぎると、他の選手達とも打ち解けていった。
――ただ1人、山田くんを除いて
朝10時に集まり練習、お昼を食べて午後の練習、夕飯後は自主練でもいいし、休んでもいいとルーティーンができた。私は哲夫のお昼ぐらいを目処に合宿している道場へと行って、お昼を一緒に食べるだけで、あとは夕飯を参加者の皆と食べて一緒に部屋に戻っていた。一度哲夫に、他の人と飲みに行ったりしないの?と聞いたけど、哲夫は
「みんな合宿中は酒を飲んでない」
と、言われたので信じていた。自主練もしないと言っていた哲夫。本当はやりたかったのかな、と今更ながら思う。
「山崎先輩の奥さんって、本当に空気読めないですね」
さらに山田くんにそんな言葉を言われ、もう何にも考えられない。ふっと彼の口角が上がり、初めて彼の笑った顔を見た。
「…なん…で」
何故今笑うのか、何故そんな酷い事を言うのか、
「…奥さんのせいで…最近」
そう言って山田くんは、手を伸ばして私の頬に触れそうになる。
「…っ!山田ぁぁっ!!」
海の波の音が聞こえ時間が止まった気がしたけど、急に響いた怒号にビクッと山田くんの手が私の頬に触れる前に止まり反応した。
久しぶりに聞く静かに怒る低い声は、長くそばにいる私ですら少し怖い。声の主、哲夫を見ると眉間に皺を寄せて、口元が固く結ばれている。走り出した彼はドスドスと大きな足音を立てながら、私と山田くんの間に身体を入れると、
「…何もしてないっすよ」
山田くんの声が聞こえるが、哲夫の身体が邪魔をして見えない。
「しようとしてたろ」
怒りを抑えた哲夫の声が聞こえるけど、哲夫も私に背を向けているから見えない。そしてしばらく無言で対峙しているかと思ったら、私の手を掴み急に歩き出した。
ホテルに着き、エレベーターの中でも強く掴まれた手首を離そうとしない哲夫は、怒りを隠そうともしない。
――こんな顔…知らない
そもそも哲夫はいつも怒る事がなく、私が怒ったらすぐに謝る。いや、一度だけ…彼に嘘をつかれた時に、もう嫌だと告げたら怒ってた。もう別れるつもりだと誤解された時…確かそう、指輪を取りに行くのを私に内緒にしていた時だけだ。
――でも今の方がもっと怖い
ぐいぐいと引っ張っられ、到着したのは私達の部屋。カードのルームキーで開けた扉を乱暴に開き、部屋の中へと進む哲夫。オートロックのため鍵の心配はないけど、一応扉の方を見てしまったのは、防犯の意識があったのかもしれない。
「…どこを見てる」
私が隙を見て哲夫から逃げし出すと考えてしまったのか、私にも向けられた怒りを抑えた震える低い声。
「違う…扉がちゃんと閉まっているか…んっん」
全てを言い終わる前に手を引かれ、哲夫の腕の中へと抱きしめられ口を塞がれる。舌を絡められ強く吸われ口内を蹂躙する哲夫からの激しい口づけは、彼の気持ちを私にぶつけているみたいだ。
彼の胸に置いた手を彼の首の後ろへと回し、彼の身体に体重を掛ける。しばらくすると性急だっで激しい口づけは落ち着き、哲夫の舌を甘噛みしたり舌を絡めたりといつもの戯れ合いが出来るようになった。
ちゅぅ、と唇が離れると額を合わせて、すぐそばに彼の瞳が私を射抜く。荒くなった息を整えていると、私の唇のラインを彼の親指の腹がなぞり、2人の唾液で濡れた口を拭う。
踵を上げるとすぐに唇が重なり、口を開けて哲夫の唇のラインに舌を這わす。自分からキスをすると、私の腰に哲夫の両手が移動した。顔の角度を何度も何度も変えて、哲夫が満足するまで続いた口づけは、私の足に力が入らなくなるまで続いた。
「…っ…おち…ついた…?」
息も荒く頭がぼうっとする。私はベッドの端に座った哲夫の足の上に座り、彼の肩に頭を乗せていた。
「…ああ、結婚したら俺のモノだと思って油断しちゃダメだな」
どうやら機嫌が良くなったみたいだ、私の首に舌を這わしながら、しみじみと言う哲夫。何度も、ちゅぅっと強く吸い付きチクッとした痛みを感じる。後で鏡で見たら、きっと首のキスマークはたくさんあるのだろう。
最近は見える所にキスマークは付けないから、出かける時どうしようか後で考えよう。哲夫の頬に手をつけると、彼の顔が上がり瞳が私に向く。
「…テツくんだけだよ?」
「…山田はそうじゃなかった」
ムッと眉を寄せた表情が、また可愛いと思っちゃうから困る。
――おかしいな、好意って敏感だったはずなのに、山田くんからは全く感じなかった…もしかして鈍ったかな…?
「明日から俺以外と出かけるの禁止にしよう、道場にも来るな…お昼は…ルームサービスか俺が部屋に戻ってから」
当たり前のように言われ、うーん、と考えるふりをした。
「…まだ、何にもされてないけど」
「早めに距離を取る事も大事だ」
気にし過ぎじゃないと、ニュアンスで伝えるがキッパリと否定される。
「…私はテツくんだけだけど?!」
「アイツは爽やかだしな、もしかしたらの可能性も捨てきれない」
「………私の気持ち疑ってんの?」
「いや…そういう訳では」
だんだんと私の機嫌が悪くなった事に気がついた哲夫は、しどろもどろになっていく。
「じゃあっもう知らないっ!絶対に守らない!」
ぷいっと顔を背ければ、いきなり動いたからかグラっと目眩が起こる。額に手をつけて彼の肩に体重を預けると、哲夫が私の背中に手を添えた。
「…悪かった」
遅れてボソッと言ったきり、シンとした部屋に2人の息遣いしか聞こえない。
――本当に悪いと思っているの…もうっ
結婚してからは真っ直ぐ家に帰り、哲夫の帰りを待っているし、普段左薬指に結婚指輪してるし、休日は哲夫と出かけているから、こうしてあからさまなヤキモチを焼く哲夫は初めて見る。
「私はテツくんの奥さんだよ!…ねぇ…」
ちゅうっ、と彼の頬にキスをして、顎のラインや口の端、彼の頬を両手で挟み私の方を向かせると、顔中に触れるだけのキスの雨を降らせた。
「ん、っん」
彼の口の近くに私の唇が当たると、哲夫の顔が動き私の口を塞ぎ舌が絡まる。終わらない口づけに、すぐに夢中になってお互いの舌を貪る。
彼の首の後ろへ腕を回し、哲夫の足の上で座り直していると、哲夫の手が私のお尻に回った。私のお尻を持ち上げ、私を膝立ちにさせる。哲夫は私のスカートをたくし上げようとしているみたいだが、私の膝の下に挟まっているため上げられない。片膝を上げるとスカートが取れ、私の生足が露わになる。彼の大きな手がふくらはぎから太ももへ、ゆっくり上下に摩りながら移る。膝立ちにした私は彼の肩に自分の腕を付けると、上を向かせた彼の唇を啄む。
私の足を堪能した彼は、私の腰、くびれをひと撫して、私のワンピースを脱がそうとする。バンザイをして脱ぐと、身体中に赤い所有印を付けた真っ白なレースの下着の私が彼の前に晒される。
「…綺麗だな」
ほうっとする哲夫は、私の鎖骨に口づけを落とし、私の胸をブラ越しに大きな手が揉む。
「ん…んっ」
背中に手を回しブラのホックを外すと、締め付けがなくなった胸は、ぷるんと弾ける。自分で肩紐を外しカップを取り、床に落とすとパサッと落ちた音がした。
白い肌に付いた赤い所有印を口づけして彼の唇が辿りながら、私の乳房を下から掬い揉む。ツンと固くなった乳房の中央にある粒を摘み、人差し指で引っ掻けて弄る。
「あっ、ん、あっ…わっ」
快感が始まっていたのに、急に身体を抱きしめられ、身体を反転させられた。パフッとベッドへと仰向けにされると、哲夫はベッドに膝をつけ、Tシャツを脱ぎ始めた。ズボンとボクサーパンツも脱ぐと、筋肉で凹凸になった逞しい身体。彼の下半身の昂りは、すでに勃ち上がっていて固く太く天井を向いている。
「っ…そんなに見るなっ」
「ん…だって」
これから起き上がる甘美な時間を想い、自然と潤む瞳で彼を見つめていた。自身の昂りを握る哲夫は、昂りの先端から溢れたツユが伝い彼の指を濡らしている。
「…テツく…ん」
私が手を伸ばすと私を覆いかぶさる哲夫は、私の口を塞ぐ。足を上げて彼の太ももの裏に足を掛けて、下半身を寄せると下着の上に彼の昂りが当たる。
ギシッギシッとベッドが軋み始めると、彼の昂りを下着に擦りつけ押しつけられる。熱い塊が下着を濡らし、下着がヌルッとズレる。まだちゃんと解されていないのに、もう身体は期待で濡れている。
哲夫は私の下着に手をかけるとズラし、数度蜜口を指先でぐるりと撫でると、昂りを蜜口に当てがう。
「ん、んっ…ん、ん」
ゆっくりと蜜口に押しつけた昂りが腰をすすめると、ミチミチといっぱいに広がり苦しい。ぎゅうぎゅうに昂りを締め付けると、
「あ…くっ…狭い…はっ」
ギリギリと奥歯を噛み締め、キツく締め付ける蜜壺に苦しそうだ。私の口を塞ぎ乳房に手をつけて揉み始め、ズズッと腰をすすめた。
「ぐっ…っつ」
蜜壺の最奥まで到達すると、強い締め付けに我慢出来なくなった哲夫は、昂りを弾けさせ熱い証を蜜壺へと注いだ。
「あ…熱い…っ」
ドクンドクンと注がれた証に反応して背がのけ反り、彼の昂りをぎゅうぎゅうと締め付ける。哲夫の唇が私の唇に重なり、ねっとりと舌が絡む。
むくむくと蜜壺の中にいる彼の昂りが固さを戻したのを感じ、哲夫の腰に手をつけると同時に哲夫の腰が動き出した。
「あっ、あ、あっんっあっ、テツくんっ、テツく…っ」
ぱんぱんっと肌がぶつかり、激しくベッドが軋む。蜜壺の中で注がれた証と溢れる蜜が潤滑油のように、昂りの抽送を助けて快感が増していく。
好き、大っきいと、口にした単語が甘い吐息と共に出ると、昂りは大きく膨れ、さらに激しく攻められる。白雪っと、名前を呼ばれ、彼の吐く息が顔に肩に当たり、絶頂へと上り詰める。
「ぐっはっ…っづ」
「あっあぁぁぁぅぅっ」
ぱんっ、と最後のひと突きと共に、最奥にまた注がれた証で私は絶頂に達した。
はぁはぁ、とお互いの息が荒いまま、どちらかともなく始まった口づけに、また快感の火が灯る。最近は次の日の予定もあるので一度ないし、全くしない日もあったので、こんなに求め合うのは久しぶりで、完全にタガが外れてしまった。
「…まだ…だからな」
「…うん…嬉しい」
息の荒い彼の熱の篭った眼差しと、私を求める低いツヤのある声に、胸が熱くなる。
求め合う2人の夜は始まったばかりだ。
次の日、愛し過ぎて起き上がれない白雪を置いて、いつものように合宿に参加した哲夫は、稽古をしようと山田を誘った。
彼の妻も触ってもいないのに、真剣勝負で何度も投げ技をし勝つ哲夫は、山田がギブアップするまで続いた。
「…はぁ、はぁ…酷くないっ…すか…っ」
大の字で寝そべる山田に
「…ふん、触ってたらもっと遠慮はしない」
「…マジっ…すか…」
冷めた視線を向ける哲夫。きっとこの表情は妻の白雪にも見せたことのない、鋭い眼差しとぴくりとも動かない頬の冷徹な顔だ。
眉を下げて情けない顔をした表情の山田は、これで奥さんが好きと伝えたら…と考えただけでゾッとした。
「……山崎先輩」
「ふん」
愛妻家で有名だった哲夫を鼻で笑っていた山田。しかし挨拶に来た白雪に一目惚れをしてしまった山田は、尊敬する先輩の奥さんとどうこうするつもりはなかった。好意を抱いている感情を上手く隠していたのに、この合宿中で先輩や同じ選手たちと無邪気に笑う白雪を間近で見たいと欲が出てきてしまった。
あと少し先輩の到着が遅れていたら…と、考えるともう彼女への止められる気がしなかった。
「…すいません…もう近寄りません」
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