学校一の美女が学校一の漢に告白される話

狭山雪菜

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近寄り

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「……冷たい」

身体にかかった水が制服に染み、帰るだけだったので近くに置いた鞄まで濡らした

「本当にすいません!」

青ざめた顔の白い柔道着の男子生徒の手には取っ手付きのバケツがあり、カラカラと揺れていた

「藤原ぁっ!何をしているっ」
「っはい!」

背後から叫ぶ野太い声が、男子生徒の背筋を伸ばし声の方へ向いた
男子生徒が振り向いた拍子に、声を出した人物が見えた



「………近野?」

目を見開く山崎くんは、白雪が濡れているのを見て青ざめた








「……本当すまん」

「…山崎くんは悪くないでしょ」

誰も居ない柔道場で隣に座って頭を下げる山崎くんに、
私は山崎くんに借りたジャージを着ていた
びしょびしょになった制服を脱がないと風邪を引くと言われ、鞄の中身もびしょびしょになった事を告げたら

「これ、俺のだけど…使ってないから!」

と無理矢理渡された
私の身体をすっぽりと包み込むジャージはの胸元には山崎とローマ字で刺繍されており、長すぎて太ももを半分隠し、腕もまくりチャックも首を隠す為上まであげた
ジャージの下はキャミだからだ

「…俺のジャージを着ているなんて」
とブツブツ呟く声は聞こえなく

「…さっきの後輩くんは?」
と聞くと
「ああ…帰った、すごい謝っていたよ」
山崎くんはガシガシと頭を掻いた

先程までいた藤原という柔道着の男子生徒は、1年生で
柔道場の掃除のために水を汲んでいたらバランスを崩して、たまたまいた私にかかってしまったと言っていた

ーー綺麗な水で良かった

「別にジャージは後輩くんでも良かったんだけど」
藤原くんも身体が大きかったけど、山崎くんに比べると小さいからこんなにジャージ余ることも無かったんだけど、という意味も込めて伝えた

「…それは、ダメだ」

間髪入れずに拒否された

ーーふむ、難しい

「え…と、待っていてくれてありがとう、あとジャージも…洗って返すね」

「いや…うん、いつでも」
そう言って黙る山崎くんと私

夕日が差し込む柔道場は神聖な雰囲気となり、ぼうっと見惚れていたら

「……送るよ」


そう告げた山崎くんの声に身体を動かした

歩き始めた山崎くんの斜め後ろに続く
濡れた鞄も取っ手を持ち身体に触れない様に気をつける

最初にジャージを着た時に、ワンピースみたいと思ったけど、本当にワンピースみたい
スカートも隠れてるジャージに変な感じがする
歩く度にジャージが動き微かに香る、お日様の匂い


ーー山崎くんって不思議

私よりも大きな身体に、優しくしてくれる彼が気になり
チラチラと盗み見る

沈黙が続く下校に、2人分の足音が響いた

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