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プロローグ
しおりを挟む「近野白雪さんっ、つっ…ついてきてもらっていい?」
体育祭での借り物競走で、学校一身体の大きい柔道部の副部長に手を差し伸べられた
借り物競走で走者がわいわいと騒がしい外野に入っては、メガネやら特定の人物に声を掛けているのを横目でみていた私はびっくりして、目を見開く
口を固く結び、逆光のせいで顔はよく見えないが
差し出している手は震えてる気がする
借り物競走で拾ったメモに何が書かれているかは、知らないがとりあえず協力しようと、彼の手を取る事なく立ち上がる
「どこに行くの?」
「っ、こっち」
そう言って走り出す彼について行くと、わっと盛り上がる他の生徒たち
一緒にゴールをすると、審判をする生徒が紙を要求した
「見せてください」
彼がメモを渡し、読む生徒の目が見開いた
ーー何?
首を傾げる私に、審判はメモを向けた
「2位です、おめでとうございます」
そう言ってポールに2と書かれた旗の横で待つ様に指示した
"好きな人"
メモに書いてあった文字を思い出し、面倒な事になったとこっそりため息を吐いた
夏休みが終わり3年生が部活や生徒会を引退し、新学期からは2年生に引き継ぎ新体制での慌しい生活が始まった
近野白雪は県立高校に通う17歳高校2年生
物心ついた時からすでに可愛い、可愛いと褒められて成長した白雪は、あまりにも言われすぎて鼻にかける事なく淡々と自分の容姿の良さを受け入れていた
黒い艶のあるセミロングと、大きな黒い瞳で見つめると魅了されその場で告白される事も少なくなかった
モデルの様にスラリと長い脚は細く、スタイルが良かった
週に一回は告白され断るのも面倒で付き合った事もあったが結局は長続きせず、別れ話が拗れるだけで断った方が楽と気がついてからは、どんなに面倒でも断るようにした
そして、体育祭の借り物競走で私を指名したのは
山崎哲夫 同じ学年の、柔道部の副部長だ
身体が大きく190センチを超え、分厚い身体は逞しくいつも
窮屈そうに机に座り授業に出ていた…と思う、去年同じクラスだったから知っているけど、今はどのクラスかも知らない
試合に出ると負け知らずで強化選手にも選ばれていると聞いたことがある…多分
それくらい曖昧な情報しかない私だが、何故か同級生からは告白された事がなかった
先輩や年下は多いが、この学校に入ってからは同級生からはない
多分白雪の無頓着な態度が男子生徒に知れ渡っているのだろうと勝手に思っていた
ーー離れて見る分にはいいけど、近くで見ると幻滅する事あるしね
私もまだまだね、と勝手に思っていたのだが、実は白雪の知らない所でファンクラブが出来ており抜け駆け禁止が第1条目にあるとは知らない白雪だったのだ
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