予備校生日記

桜井雅志

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予備校生日記8

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     予備校生日記8


10/30
あの子から、節ちゃんの大学の芸術祭に誘われた。
びっくりした。

11/2
今日は、節ちゃんに誘われ、国立音大の芸術祭に行ってきた。
立川駅まで57分もかかってしまい、二人を待たせてしまった。
節ちゃんは、写真と同じ白いブラウスとブローで僕を迎えてくれた。
彼女は大人だった。僕は目いっぱい緊張していた。
こういう大人の女性(ひと)は、どういう男性を好きになるのだろう。

独り言

中1の時、佐藤房子さんに出会ったときに似た気持ち。
あの時は、こんな素敵な女性っているもんだなって思ったけど、
あれから6年、一目惚れは二人目です。

11/13
これから、節ちゃんの家へ電話をする。
そして、デートに誘う。
断られるかもしれない。
でもいい。僕は、これからは自分の気持ちには素直になることに決めたんだ。
男が何かを決めて、自分で決心したことを行動に移す時には、
全てを失う覚悟がいる。

OK!
18日、18:00、立川駅。
やったー!
さてと、新しい苦悩の始まりだ。
でも、今夜は、バンザイ。

11/18
節ちゃんに「つきあってください」って言ったら、
「困る」って言われた。
「私は、今までいろんな人と付き合ってきたけど、誰とも長続きしなかった。
その度に傷つき傷ついてきた。
もう、傷つきたくないし、傷つけたくもない。私は、どんな人とも、うまくいく自信がない」
そう言われた。

男を好きになったことのない女の存在は、
男のせいだ。
男が、男の良さを、男に頼る安心感を知らせてあげるべきなのに。
彼女は、強い、頭もいいし、スタイルもいい、もちろん美人だ。
けど、どんな形容詞を上につけても、やっぱり女。女なんだ。
女は弱いんだ。
だから、守ってあげる男が、どこかで、必ず必要になる。
女として生きてほしい。
他の人の前では、オルガンの先生でも、コンバスの奏者であっても、
ただ、僕の前のあなたには、女でいてほしい。
僕がそばにいなければ倒れてしまう女でいてほしい。

11/20
今日、節ちゃんが言っていた。
「時々、ふと誰かにやさしくなるときがある。そうすると、やさしくされた相手は勘違いしてしまう」
そりゃあれだけの美人がやさしくしてくれば、たいがいの男は勘違いするだろ。
そういう節ちゃんは、
「そういうことは、男の人の方で、察してほしい」だって、ムリだ。

11/22
大学に入れそうな気がしてきた。
あと、2か月。
全力疾走しても、走り切れる距離だ。

11/24
浪人時代は、勉強だけ、勉強だけに打ち込む時期だという。
だけど、もしかしたら、
何かに打ち込むと、その周りのほんの小さなことが普通より大きく見えるのかもしれない。
去年大学に落ちてから、色んなことがあった。
素晴らしい女性とも出会った。
思い出に浸るには、まだ、早いけど。

11/27
紀ちゃんは予備校に来なくなった。当たり前か。
お姉さんとデートしちゃったんだから。
どうしてるだろう。
気になるのは、なぜだ。

紀子、節子。
二人はとても素敵な女性です。
一人は生まれて初めて、心から何でも話せると感じた女性。
もう一人は、8年ぶりに一目ぼれした女性だ。
二人も素敵な人がいるのに、一人も恋人にできない。

11/29
さっき、節ちゃんと電話で話した。
何となく、わかった気がした。
他にたくさん、やることがあるんだね。
デートするより面白くてわくわくすることがたくさんあって、
恋人を作ろうって気にならないんだね。
でも、寂しくない? 一人で。


予備校生日記8 終わり

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