【完結】内緒事のある友人との離れ方

琉海

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本編

五月の憂い(3)

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「連絡」
「あぁ、遅かったな。神崎も最近忙しいの?」
「残業じゃない…!」
「へ?」

立ってる神崎を見上げる。確かに服装が仕事に行ってたというにはラフ過ぎる。荷物だってそんなに多くなくて良いはずだ。あれ。

「もしかして、隠し事の方?」
「そうだよ、昨日から居なかったのに」

昨日から居なかったのか、マジか。全然気づかなかった。最後に神崎を見たときの記憶を思い出す。行ってきますって部屋を出ていった後ろ姿を見送ったのが最後のはずだ。その記憶が今日のものじゃない事は分かっているが昨日かと聞かれれば怪しい。

「小鳥遊からの連絡ずっと待ってたのに」
「いや、待つな。お前からしてこい」

ハァとため息をついて席から立ち上がる。

「それで、俺からの連絡がないと調子のでない神崎くんはどこか怪我でもしたって?」
「……してないよ」

顔、それから手と足。くるくる回りながら最後に腕を掴んで袖を捲くりあげて。言葉通り怪我はしてないようでホッと無意識に胸を撫で下ろす。

「よしっ」

嬉しそうにする俺とは正反対に神崎は機嫌悪そうにふくれっ面だ。

「なに?」
「俺、いなかったのに」
「うん」
「小鳥遊、気づかなかった」
「あー、最近ずっと忙しかったからな」
「そんなの小鳥遊じゃない…」
「は、ァ?」

あぁ、ヤバい。

久しぶりに低い声が出た。

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