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本編

四月に花が咲く(2)

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「小鳥遊先生」
「あ、はい!」

呼ばれた自分の名前に返事をしながら走る。そうだ、今は修学旅行の下見中だった。これが俺が教師としてやる初めての仕事だ。

例年、集合場所として使わせて貰ってる場所。トイレの位置、迷子になった生徒がでた場合や忘れ物があった時の問い合わせ場所の確認を直接目でおこなう。

それから予定してる所要時間に問題がないか、一学年の人数と小学生の頃の自分の感覚、歩くスピードを思い出しながら確かめていく。はっきり言って観光どころではない。

自分より二回りも歳上の先生をたくさん歩かせる訳にもいかず指示に従って右へ行って左へ行って。

卒業と同時に煙草はやめたけど、失われた体力までは戻ってなくてぜぇぜぇと息を切らせていれば少し休もうかと気を遣わせてしまった。

夜も実際に予定してるホテルに宿泊する。

一緒にご飯を食べて併設されてるバーに場所を移して酒を飲んで。長い夜になる事は覚悟してたが本当に長い。開放されたのは日付が変わった後だった。

部屋に向かう途中、今日一日通知を切っていたスマホを取り出す。どうせ、たいした連絡は来てない。その筈だったのに。



「はぁ!!?」

俺たちの関係はあの大学にすべて置いてきた。

その考えが外れてたことを知るのは意外にも早かった。いや相手が神崎だから早く感じただけで、普通に遅い。卒業してからもうすぐ一ヶ月だ。

でもまさか殆どなかった神崎からの連絡がこのタイミングであるなんて夢にも思わないじゃないか。それにしても間がかなり悪いんだが。

こんな廊下じゃ電話もできないと早足で部屋へと向かった。
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