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本編
三月の蕾(2)
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誰にだって他人には言えない秘密が一つや二つはある。それは俺にだって。それを"好き"だからって理由で知りたいと思うのはきっと傲慢だ。
ここから先、俺と神崎の進む道は違う。
一時、交わった縁もその先はまた離れてく。
ズルズルと引っ張るよりもこのタイミングで離れた方がいい。これ以上側にいると俺の気持ちを押しつけてしまう。
まあ、良い思い出になったよ。神崎みたいなタイプ、今まで周りにいなかったし。心配ばっかさせる放っておけない奴がまさか同じ歳にいるなんてな、いい経験になった。
四月を迎えれば俺らは教師として働き始める。
これから神崎みたいな年相応の子ども達に囲まれる日々が始まるんだ。どんな厄介事を持ってこられたって、お前に比べたらマシかと思えそうな気さえする、なんて。
自分への慰めの羅列に、ははって笑って誤魔化そうとしてみたけど、思ってたよりも乾いてた。
じゃあなと手を振って別れる。いつもなら心配事の一つや二つはつけ加えるけどもう要らぬ世話だろう。
だって、俺らは二度と会わない。
あーあ、早く四月にならねぇかな。
吐き出した息が白い。忙しくなればこんな鬱蒼とした気持ちも忘れられる筈だ。そう信じて胸ポケットにしまった煙草とライターを探した。
ここから先、俺と神崎の進む道は違う。
一時、交わった縁もその先はまた離れてく。
ズルズルと引っ張るよりもこのタイミングで離れた方がいい。これ以上側にいると俺の気持ちを押しつけてしまう。
まあ、良い思い出になったよ。神崎みたいなタイプ、今まで周りにいなかったし。心配ばっかさせる放っておけない奴がまさか同じ歳にいるなんてな、いい経験になった。
四月を迎えれば俺らは教師として働き始める。
これから神崎みたいな年相応の子ども達に囲まれる日々が始まるんだ。どんな厄介事を持ってこられたって、お前に比べたらマシかと思えそうな気さえする、なんて。
自分への慰めの羅列に、ははって笑って誤魔化そうとしてみたけど、思ってたよりも乾いてた。
じゃあなと手を振って別れる。いつもなら心配事の一つや二つはつけ加えるけどもう要らぬ世話だろう。
だって、俺らは二度と会わない。
あーあ、早く四月にならねぇかな。
吐き出した息が白い。忙しくなればこんな鬱蒼とした気持ちも忘れられる筈だ。そう信じて胸ポケットにしまった煙草とライターを探した。
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