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本編

五月の憂い(5)

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「小鳥遊…!」
「ぐぇッ」

ドアが開いたかと思えば、次の瞬間には体に衝撃をくらいそのまま威力を殺しきれず横へと倒れた。

「俺が悪かったから、無視しないでくれ…!」
「ちょ、ギブ…ッ、神崎、絞まってる…!絞まってるから…っ!」

俺よりも少しだけ図体のデカい男に飛びつかれ、背中に回された腕に力を込められれば骨が軋み悲鳴をあげる。

「ちょ、くるし…っ!ギブギブッ、俺が悪かった!無視しない、怒ってもない!だから…ッッ!!!」

そこまで言い募って、ようやく神崎の腕から力が抜ける。離れた神崎に俺も体を起こして前を向けば神崎はまるで叱られ待ちの犬のように正座をして俯いていた。

「加減が分からなかった、すまない」
「マジな。頼むから自分が力強いことだけは覚えててくれ」
「いや、そっちじゃなくて」
「え?」
「その、頼るというか、甘えるというか…。小鳥遊がいつも自分を大切にしろと言うからしてみようと思ったんだけど、方向性が違ったらしい」
「お前…」

マジか。あの何度言っても変わろうとしなかった神崎が変わろうとしてたらしい。

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