【完結】逆行騎士は己の意志を貫きたい

叶えたい願い(3)

「メルロ様！！」

伸ばした手で小さく蹲った体を抱きしめる。驚くように開かれた瞳も一瞬で見えなくなった。

「う…っ」

剣が肩を掠める。刺すような痛みが走った。服は裂け血が滲む。腰に帯刀していた剣で応戦するなんて発想はなかった。

無我夢中だった。思ったのはもっと抱え込まないとこの体に傷一つ負わせたくない。頭をかき抱く手に力を込める。

メルロ様が何か叫んでるが何を言ってるかは聞き取れなかった。痛い。知らない男の声が聞こえて背中に痛みが走る。

まるで数時間にも感じた出来事は後で思い返せばたった数分の出来事だった。


聞こえてくるのは泣き声と人がざわつく声。

泣き声が腕の中から聞こえるのだと気づいた瞬間、慌てて手の力を抜いた。不審な男は駆けつけた衛兵に取り押さえられていた。

「メルロ様、お怪我は御座いませんか！？」

大粒の涙で顔を濡らすメルロ様が其処にいた。

頭から抱きしめていたため髪はぐちゃぐちゃだがどこにも怪我はなさそうだ。ホッと胸を撫で下ろし、良かったと呟いて辺りを見渡す。メルロ様の安全を確保しないとそう思って立ち上がろうとした時、意識が遠退いてしまった。