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異なる世界(2)

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「図書館に行ってまいります」
「図書館?」
「私でも分かる古代語の本を探したいのです」
「……何故?」
「読んでいらっしゃる本を読めるようになれば、メルロ様の考えている事が少しでも理解出来るようになる気がして。……その、浅はか、でしょうか?」

メルロ様の考えている事が分からない、見えてる世界が違う。

そんな、ちっぽけな言葉でメルロ様を理解するのを諦めたくはなかった。分からないのなら分かるようになるまで勉強する。同じ場所に立てていないのなら、立てるように土台作りをすればいい。それは今日まで見てきたメルロ様の態度から教えられた事だ。しかし本人を前に口にするのはどうにも恥ずかしい。

話す事は苦手だ。

ディエゴ様はそんな俺を理解していたし、メルロ様は喋る事を求めていなかった。今のメルロ様は此方の考えを探っているのかこうして内側を見ようとしてくる。それにただ素直に答えればいい。分かってはいるが失望されないか呆れられないか、そんな事ばかり頭を過ぎて不安を駆り立ててくる。


バンッ

わざと音を立てて閉じられた本によって空気が胡散する。

「メルロ様…?」
「俺が選んでやる」
「え?」
「古代語の本は、どれも、難しいから…」

さっきまでの瞳はどこへ行ったのか今は俯いて陰りをさしていた。だが俺の心は歓喜で震えていた。

「ありがとう、ございます」

メルロ様が初めて俺に寄り添ってくれたのだ。
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