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始まりの終わり(2)
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「ソイツじゃ話せないだろ」
気づいたら口を挟んでた。そして周りから人が消えた。
「ソイツの代わりに言ってやるよ、ブラコンのヴァルガさま?」
恐怖という感情はなかった。二人に近づきながらシャンパンを煽り飲む。酔ってうまく回らない頭はペラペラと思ったままを口にした。
ギロリとヴァルガの視線が男から移る。瞳孔が開ききった目は流石に少しだけ恐ろしくなった。無意識に足が一歩後ろに下がる。それでも強がるように真っ直ぐ睨み返す。
獣人は初めて見た。いや本当は存在自体、この国に来て初めて知った。鋭い牙も尖った爪も触れれば痛いことをまだ知らない、だからこそ出来た強がりだった。
知ってるのは王族の名前くらい。
「誰だ、テメェ?」
「劉・愁玲。さっき挨拶したんだけどな。自分たちが招待した客も覚えてねぇの?」
覚えてる筈がないよな。
愁玲が挨拶をしに行った時、ヴァルガはずっと窓の外を眺めていて一度も愁玲を見なかった。
お前には興味がないと態度で示されたのだ。
ピクッと眉が動く。図星を刺されたのだろう。更に瞳が細くなった。たとえ招待客を全員覚えていたとしてもヴァルガは愁玲の名前に辿り着くことはない。元々、このパーティーに招待されていたのは腹違い兄紫苑で、愁玲はその代理で出席してるだけだった。
気づいたら口を挟んでた。そして周りから人が消えた。
「ソイツの代わりに言ってやるよ、ブラコンのヴァルガさま?」
恐怖という感情はなかった。二人に近づきながらシャンパンを煽り飲む。酔ってうまく回らない頭はペラペラと思ったままを口にした。
ギロリとヴァルガの視線が男から移る。瞳孔が開ききった目は流石に少しだけ恐ろしくなった。無意識に足が一歩後ろに下がる。それでも強がるように真っ直ぐ睨み返す。
獣人は初めて見た。いや本当は存在自体、この国に来て初めて知った。鋭い牙も尖った爪も触れれば痛いことをまだ知らない、だからこそ出来た強がりだった。
知ってるのは王族の名前くらい。
「誰だ、テメェ?」
「劉・愁玲。さっき挨拶したんだけどな。自分たちが招待した客も覚えてねぇの?」
覚えてる筈がないよな。
愁玲が挨拶をしに行った時、ヴァルガはずっと窓の外を眺めていて一度も愁玲を見なかった。
お前には興味がないと態度で示されたのだ。
ピクッと眉が動く。図星を刺されたのだろう。更に瞳が細くなった。たとえ招待客を全員覚えていたとしてもヴァルガは愁玲の名前に辿り着くことはない。元々、このパーティーに招待されていたのは腹違い兄紫苑で、愁玲はその代理で出席してるだけだった。
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