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発展蛇足
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「キモい重いウザイ。無理、もう無理。別れる」
理人の恋はたいていこう言った捨て台詞を吐かれて終わる。悲しみはあるが相手の気持ちもわかるので受け止めるしかない。
離れた心を繋ぎ戻す気も起きない。それはつまり理人の心を変えなくてはならないのだから。
恋人という存在を作るまでわからなかったが、理人は嫉妬深く疑り深く心配症で独占欲の強い人間だった。交友関係を把握し、日々の暮らしを知りたがり、連絡が少しでも取れないと何かあったのかとうるさく問い詰める理人に、夢中だった恋人達もすぐに冷めて離れていく。
異常なまでの過干渉が原因だとはわかっているがやめられない。何十回と失敗を繰り返し、恋人を作ることを諦めた理人は行きつけのバーで静かに酒を飲むことくらいしか楽しみがなかった。その楽しみはつい最近深みを増した。風変わりな青年が話し掛けてきてくれたのだ。
佑馬と名乗った小綺麗な顔をした青年は初っぱなから違った。理人の顔が気に入ったと言い、物怖じせず理人と接する。彼が理人に気付いた時、理人の性格を知っているバーのママが理人はやめておくよう然り気無く忠告していたにも関わらず。
互いに何か話題を探し、時折小さな笑いが上がる。心優しい時間は久しぶりのことだったし、やはり誰かに傍に居てほしいと思い知らされた。
その後も何度かバーで佑馬と会い、いつからか飲みに誘うようになった。応じてくれていた彼が初めて断った日、理人は言い様のない予感を覚えた。
普段佑馬が店に来る時間を見計らい、店の近くで彼の姿を探した。見つけたくなかったが、彼は居た。界隈でも有名な発展場となっているサウナの看板を見つめる姿なんて見たくなかった。
憤りがあった。
理人の顔に一目惚れしたと言ったくせに。理人をこんなに夢中にさせておいて発展場なんかへ行こうというのか。
何か言っている佑馬を引きずり目についたラブホテルへ入った。
ベッドに投げ出され混乱した様子の彼に「やりたかったんだろ」と吐き捨て、正気に戻る。
別に佑馬と理人は恋人ではない。理人が彼の行動に腹を立てるのはお門違いだ。酷い言葉を投げ付ける理由はない。
謝ろうとした理人に佑馬は「うん。やりたかった」と頷いた。理人も頷いた。まだ付き合いは短いが佑馬が欲求に正直なタイプだというのは会話の節々から感じ取れた。
遅い話し合いの末に理人の新しい恋人となった佑馬という人間は裏表がないというか本能的に生きている。好き勝手にしている訳ではなく、可能な範囲で自分に都合良く生きている。
理人に抱かれているというのに「ディッくんよりいい」とマナーのなっていない話をする。そして後から問いただせばディッくんは人間ですらない。お一人様へ向けたアダルトグッズの愛称だと言う。実物も見た。
「だいぶお世話になったけど理人さんが居るから封印するかなぁ」
さよならディッくん、またね、と声を掛けながら箱の中へ入れ、クローゼットの奥へしまおうとする背中に「いや、捨ててね」と声を掛けたのは仕方ないことだろう。
あーだのうーだの唸りつつ、結局最後は頷いてくれた。聞き分けは悪くない。
自分の欲望に忠実なだけで、自己中心的な訳ではない。少し考えれば扱いやすい人間だ。
バーでは出来ないような話を根掘り葉掘り聞いてみれば思わず呆れてしまうようなことばかりしている佑馬に笑ってしまう。代わりに自分のことを話すと佑馬も笑っていた。
付き合いが長くなればきっと理人は以前の恋人達と同じように佑馬を束縛するだろう。既にその片鱗はある。けれど佑馬なら受け入れてくれるのではないだろうかという期待を抱いてしまう。
「理人さん俺さぁその……メスイキ? をね、あのね、してみたいなーって。ネットの感想見てたらすげー気持ち良さそうでさぁ……」
今日も今日とて自分に正直な佑馬に、理人は笑った。
理人の恋はたいていこう言った捨て台詞を吐かれて終わる。悲しみはあるが相手の気持ちもわかるので受け止めるしかない。
離れた心を繋ぎ戻す気も起きない。それはつまり理人の心を変えなくてはならないのだから。
恋人という存在を作るまでわからなかったが、理人は嫉妬深く疑り深く心配症で独占欲の強い人間だった。交友関係を把握し、日々の暮らしを知りたがり、連絡が少しでも取れないと何かあったのかとうるさく問い詰める理人に、夢中だった恋人達もすぐに冷めて離れていく。
異常なまでの過干渉が原因だとはわかっているがやめられない。何十回と失敗を繰り返し、恋人を作ることを諦めた理人は行きつけのバーで静かに酒を飲むことくらいしか楽しみがなかった。その楽しみはつい最近深みを増した。風変わりな青年が話し掛けてきてくれたのだ。
佑馬と名乗った小綺麗な顔をした青年は初っぱなから違った。理人の顔が気に入ったと言い、物怖じせず理人と接する。彼が理人に気付いた時、理人の性格を知っているバーのママが理人はやめておくよう然り気無く忠告していたにも関わらず。
互いに何か話題を探し、時折小さな笑いが上がる。心優しい時間は久しぶりのことだったし、やはり誰かに傍に居てほしいと思い知らされた。
その後も何度かバーで佑馬と会い、いつからか飲みに誘うようになった。応じてくれていた彼が初めて断った日、理人は言い様のない予感を覚えた。
普段佑馬が店に来る時間を見計らい、店の近くで彼の姿を探した。見つけたくなかったが、彼は居た。界隈でも有名な発展場となっているサウナの看板を見つめる姿なんて見たくなかった。
憤りがあった。
理人の顔に一目惚れしたと言ったくせに。理人をこんなに夢中にさせておいて発展場なんかへ行こうというのか。
何か言っている佑馬を引きずり目についたラブホテルへ入った。
ベッドに投げ出され混乱した様子の彼に「やりたかったんだろ」と吐き捨て、正気に戻る。
別に佑馬と理人は恋人ではない。理人が彼の行動に腹を立てるのはお門違いだ。酷い言葉を投げ付ける理由はない。
謝ろうとした理人に佑馬は「うん。やりたかった」と頷いた。理人も頷いた。まだ付き合いは短いが佑馬が欲求に正直なタイプだというのは会話の節々から感じ取れた。
遅い話し合いの末に理人の新しい恋人となった佑馬という人間は裏表がないというか本能的に生きている。好き勝手にしている訳ではなく、可能な範囲で自分に都合良く生きている。
理人に抱かれているというのに「ディッくんよりいい」とマナーのなっていない話をする。そして後から問いただせばディッくんは人間ですらない。お一人様へ向けたアダルトグッズの愛称だと言う。実物も見た。
「だいぶお世話になったけど理人さんが居るから封印するかなぁ」
さよならディッくん、またね、と声を掛けながら箱の中へ入れ、クローゼットの奥へしまおうとする背中に「いや、捨ててね」と声を掛けたのは仕方ないことだろう。
あーだのうーだの唸りつつ、結局最後は頷いてくれた。聞き分けは悪くない。
自分の欲望に忠実なだけで、自己中心的な訳ではない。少し考えれば扱いやすい人間だ。
バーでは出来ないような話を根掘り葉掘り聞いてみれば思わず呆れてしまうようなことばかりしている佑馬に笑ってしまう。代わりに自分のことを話すと佑馬も笑っていた。
付き合いが長くなればきっと理人は以前の恋人達と同じように佑馬を束縛するだろう。既にその片鱗はある。けれど佑馬なら受け入れてくれるのではないだろうかという期待を抱いてしまう。
「理人さん俺さぁその……メスイキ? をね、あのね、してみたいなーって。ネットの感想見てたらすげー気持ち良さそうでさぁ……」
今日も今日とて自分に正直な佑馬に、理人は笑った。
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