オーバーキラー

鳫葉あん

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発展

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 時間指定の通りに届けられた小さな小包。品名に雑貨と書かれた何ら変哲のないそれを、佑馬(ゆうま)は後悔しながら待っていた。
 始まりは一つの動画だった。SNSで微妙に出回っていたそれはケツイキRTA(リアルタイムアタック)と称され、投稿者の男性が肛門による性的刺激から射精に至るまでの秒数を競ったものであった。先駆者はいないが追走者はいた。どちらも速攻で消された。
 投稿者の喘ぎ声、笑うコメント、副音声として流される丁寧なケツイキ構造講座。佑馬も笑った。笑って、冷静になって、本当に後ろでイケるものなのかという疑問と好奇心のままに通販サイトでエネマグラを買った。それである。
 購入通知のメールが届いてから実物が届くまでに再度冷静になり、何をしているのだろうと正気を疑った。自分は至ってノーマルな指向をしている、アナニー(アナルを使ったオナニー)になんて手を出す筈ないと信じた未来の佑馬の理性は実物を手にした言い知れぬ興奮と好奇心に勝てず即落ちしアナニー解説サイトで十分な知識を得て実践した。

「んほぉぉぉぉおお♡ これしゅごいいいぃ♡ 精嚢逃がしゃずごちゅごちゅするのぉぉぉぉお♡♡♡」

 初めからこうだった訳ではない。腹筋と背筋で精嚢を押してエネマグラでごりごりするとか上手くいくわけなかった。首を傾げること数回、積み重ねた努力の上に手にした結果だった。

「おっおっおっ♡♡♡ ディルドしゃいっこ♡ しゅごっ♡♡ きもちぃぃぃぃぃ♡」

 ただ入れるだけのエネマグラから電池で振動するディルド(女性向けカラフルディルド彼氏のディッくんベビーブルーバージョン)へ移行したのも好奇心の成果だ。振動パターンが固定されているとはいえ予期せぬ快感を拾うこともあるディルドは佑馬のお気に入りになった。
 最早普通のオナニー生活になんて戻れない。前立腺や精嚢による刺激を覚えた体は新たな刺激を欲しがった。冷たい機械による決められた刺激ではなく、本物を欲しがった。
 残った理性が「いやそれはダメだろ」と待ったをかける。佑馬としてもわかるのだが、溶けた頭は「でもやりたいじゃん?」と誘惑してくる。やってみたいに決まってる。
 そんなわけで欲望に忠実なタイプの佑馬は金曜の夜にゲイバーへ向かった。ネットで事前に界隈のマナーを叩き込んだので粗相はない筈。多分。
 男同士というものは体だけの関係が多いらしい。勿論きちんとしたパートナーを求め、交際する人もいる。
 佑馬としては後腐れのない前者を求めた。佑馬は本物のちんぽを挿入てみたいだけで付き合いたいわけではない。
 ネットで評判の良かったバーに入るとカウンターの向こうから「いらっしゃい」と声が掛かる。綺麗な着物姿だが声と骨格は間違いなく男性のママが、ニッコリと微笑んだ。とりあえずカウンターへ向かう。

「新しい顔ね。お一人?」
「はい。えっと……」
「お酒は飲む?」

 頷くとメニューを見せられる。酒の他にも軽食があり、今日は酒だけ頼む。待つ間にママとあれこれ話をし、佑馬はとりあえず交際相手を探しに初めてゲイバーに来たという設定を装った。

「ウチは色んな考えの人が来るけれど無理強いするような人はいないから。よく見て探してみるといいわ」

 貴方もお行儀良くしなさいね、と付け足された所にドレス姿の店員がグラスを運んできた。礼を言って受け取り、先ずは一口飲もうとした所で来店を知らせるベルが鳴った。何となく振り向くと、男性に恋愛感情はない筈の佑馬すら目を奪われる眉目秀麗な男が入ってきた所だった。
 八席あるカウンターの隅に座り、ママへいつものと頼む彼はママへ向けた目線のついでに佑馬を見て、薄く微笑んだ。わかりやすい愛想笑いだ。

「あの子はやめときなさい。長続きしてるとこ見たことないわ」

 好物件だった。どうせち○ぽを挿入られるなら醜男よりはイケメンがいい。加えてママの口振りから遊び人と見た。偏見である。
 親切な忠告も馬耳東風。立ち上がり男の隣に腰掛けた佑馬は明け透けに言い放った。

「はじめまして。一目惚れしました。仲良くなりたいです」

 面食らった顔をした男は当然ながら困った顔をした。イケメンならば苦笑すらチャーミングに映るのかと感心する。

「そうなの? 俺の顔がそんなに好み?」
「はい。なので顔以外に中身も知りたいです」

 中身を俺に挿入てくれと言わなかったのを褒めてほしい。まだ酔っていない頭がそんなことを考える。
 グイグイ迫る佑馬と押されつつも受け答えはしてくれるイケメン。名前は理人(りひと)というらしい。名前すらイケメンなのか。偽名の確率が高いが。
 理人との会話は楽しかった。営業でもしているのか話術が上手い。飲みながら理人の話を夢中になって聞いて、そして――。


「なにごともなくかえってきたよ……ただいまディッくん……」

 自宅のベッドへ寝転がった佑馬は愛棒であるディルドのディッくんへただいまを言った。カチッと電源を入れると元気にウィンウィン動き出す。

「なんでだ……俺が好みじゃないとか……?」

 佑馬の顔は特徴はないが目立った欠点もなく、普通だとよく言われる。体は精嚢アナニーの為に腹筋と背筋を鍛えた結果全体的にそれなりに引き締まった。
 男女問わず人の好みというのは多々ある。鶏ガラのような体しかスレンダーと認めないと言う者もいればスリーサイズオール三桁こそ至高だと言う者もいる。
 酔って持ち帰り即オッケーの佑馬に手を出さなかったということは理人の好みとは外れたのだろう。残念だが挿入る側にも選ぶ権利はある――と考えて、そもそも彼がどちらなのかわからないことに気が付く。
 イケメン高身長で出来る男オーラバリバリに出していたので勝手に挿入る側だと思ったが、もしかしたら挿入られたい側だったのかもしれない。それなら尚更ヒョロい見せかけ筋肉の佑馬なんてお呼びでないのでは。

「はーまた明日行ってみよーかなー」

 手の中でウィンウィン動き続ける愛棒を休ませてやり、酔いの回ってきた佑馬は微睡みに身を任せた。スマホが大きな音を立てて何かの着信を知らせたがどうせアプリの広告ポップアップだろう。


 翌朝の目覚めは微妙だった。平日は疲れてなかなかアナニー出来ず、金曜日の夜はほぼ毎週ディルドと遊んでいた。週課を忘れた体はもやもやしている。が、土曜の朝からアナニーする気にもならない。
 暇潰しに何か見ようとスマホを手に取ると、メッセージアプリが新着を告げている。誰かと見ると理人と表示される。

「…ああそういやID交換したっけ」

 よく飲んでいた佑馬を心配し気遣うメッセージだった。一晩無視したことになるが寝てしまったのだから仕方ない。心遣いへの感謝を返信する。
 理人の好みではなかったようだが、友達にはなれるんじゃないかと思ってしまう。恋愛指向が同性に向くからといって、何も違うことはない。

「…………受付の鈴木さんが異性愛者だからって、俺のこと好きになるってわけじゃないもんなぁ」

 人気の高い女性社員を例にして考える。異性だ同性だなんて結局、属性の一つでしかないのだろうか。
 朝から哲学的な考えをしても、目下の目標はただ一つ。本物ちんぽ挿入てみたい。それだけだ。
 昨日はカマトトぶったのが悪かったのかもしれない。そう思った佑馬は手中のスマホでネットの海を泳ぐ。
 肉体関係だけを求める男達の向かう先。それは発展場と呼ばれる出会いのスポットである。
 男達が体を求めて密集し性病も感染されやすいだとか何だか怖いイメージが強くて避けてしまったがヒャッハーそこは世紀末なんてありはしない。人権を無視したプレイは場所の提供者にもペナルティがあるのだからルールの管理はしっかりされている。筈。
 口コミを吟味し初めての発展場訪問を決めた。仕事には全く生かされない変な決断力と行動力があった。


 夕飯を済ませた佑馬は早速目的の地へ向かいスマホを手に外へ出た。地理的には昨夜のゲイバーの近くだが路地が入り組んでいるのでマップアプリ必須だ。
 昨日の記憶を頼りに歩くとバーが見えてくる。そろそろマップを見ようという所で背後から声が掛かった。

「佑馬くん」

 一度聞いたら忘れようもなさそうな声は理人のものだ。振り向くとスーツではなくラフカジュアルな姿の理人がいた。相変わらずお手本のような愛想笑いを向けてくれる。

「あ、理人さん。こんばんは」

 昨日の会話で嘘でないなら佑馬は二十八、理人は三十と教え合った。二年後の自分はこんなにも落ち着きがあるだろうかと考えなくても「無理に決まってるだろ」と理性が否定する。本能のフォローもなかった。

「今からバーに行くのかい?」

 尋ねてはいるが確信めいた問い掛けだった。空気を読んで頷くと同行を言い渡される。
 人生初の発展場計画は頓挫し、佑馬はこの日もバーで酒を飲みながら理人との会話を楽しんだ。酔っ払って絡まなかっただけ褒めてほしい。
 ただ何だかんだ言って、理人と飲みながら話をする静かな時間を佑馬は気に入っていた。


 性欲とは人間を大きく行動させるものである。アナニーやら床オナ(床を使ったオナニー)やらが生まれたのが証拠だ。
 発展場に行けそうな土日はバーに行かないかと理人からメッセージで誘われるのが殆どだった。別に断ればいいのに誘われるとついつい了承してしまう。友人から飲みに誘われる経験がなかったので嬉しくて無下に出来ないのだ。
 理人と飲んで帰ってディルドアナニーで我慢する日々だったが、やはり本物を挿入てみたいと一念発起した佑馬はようやく理人の誘いを断った。今日こそは発展場となっている男性専用サウナへ行くのだ。
 意気揚々と家を出て、すっかり通り慣れた道を進む。今日は偶然理人に会っても用事があると知られているからバーに誘われることはない。
 バーを通り過ぎ狭くてゴミの散乱する道を進む。心なしか道行く人――見知らぬ男達に見られている気がする。まるで値踏みするように、じろじろと。
 発展場となっている店やスポットが多いので仕方ないかもしれない。そう考えているとサウナの看板が見えてきた。興奮と怖じ気が芽生えてきた佑馬が立ち止まり、看板を凝視する。傍から見るとそのサウナに入ろうとしています、というのがよくわかった。
 だから彼も声を掛けたのだ。

「佑馬くん」

 背後から声が聞こえた。すっかり聞き慣れた筈なのにいつもと違う声に思えた。
 振り返れば理人がいた。いつもの愛想笑いはなく、初めて見る無表情で佑馬を見下ろしてくる。

「理人さんこんばんは」
「何するつもりなの?」

 挨拶は返されず行動を問われる。察しているだろうと、隠すことなくサウナに入るのだと答える。

「そこは普通のサウナじゃないからやめた方がいい」
「知ってます。だから入るんです」

 理人の求める答えではないだろう。実際彼は盛大に眉を顰めた。眉間に皺が寄っている。
 店先で揉めていると変な注目を集める。そこかしこから向けられる視線が嫌になり、佑馬は会釈して会話を終えるとサウナへ足を踏み出し、思い切り引っ張られた。

「えっなに……いっでっ! 痛い痛い痛いって! ねぇ!!」

 手首を思い切り掴まれ何処かへ連れていかれる。立ち止まって振りほどこうにも理人の力は強くてびくともせずただ引き摺られていく。

「理人さん、ねぇ、俺が……悪かった……? なら謝るから、離して」

 悪いことなんてした覚えは理人の誘いを断って発展場へ行こうとしたくらいしか思い付かないが、そこは佑馬の自由だろう。
 佑馬の声に答えることはなく、理人が向かったのはご休憩ご宿泊のプランがネオンに照らされるラブホテルだった。


 室内に入ると佑馬はだだっ広いベッドの上へ投げられた。よくわからない展開に混乱する佑馬に向けられる視線は相変わらず冷たい。
 説教でもされるのかと思いきや理人の長い指は佑馬の服を剥いでいく。へ、と間抜けな声を上げる佑馬に「やりたかったんだろ」と彼らしくない声が掛かった。
 やりたかった、確かにそうだ。発展場へ行く男達の目的はそれだろう。
 バーで理人に声を掛けたのだって彼とやりたかったからだ。なのでこの流れは不本意ながらも望み通りではあるが、理人から伝わってくる不穏な空気を佑馬の理性が拒んでいる。絶対ろくなことにならない。一方で本能は棚ぼただの据え膳だの何だと言っている。
 まぁやるよね。佑馬の結論だった。


 抵抗もせずされるがままの佑馬へ理人が綺麗な顔を近付けてくる。もしやと思えばキスをされる。舌まで入れるというか絡ませてくる男の背中を叩く。そこまで求めてない。離してくれと訴えても男の顔は離れないし舌も好き勝手に暴れている。

「んぷ……ふぅ……んんん~~~……」

 ちゅぷじゅぷと唾液を啜る音がする。雰囲気に呑まれ淫靡さを感じ始めた佑馬の頭は流されやすい。
 佑馬の口内を蹂躙する間も理人の手は動きを止めず佑馬の着ていたシャツのボタンを外し、タンクトップをずり上げる。薄桃色の乳首を指の腹で刺激し始めるが、妙にくすぐったい程度だった。この時は。
 胸をなぶられ舌で弄られ、今までにない気持ち良さを感じ始めた佑馬の太股に硬いものが触れた。擦るように押し付けられたそれは佑馬の願望を叶える理人のものだった。

「んあっ……ふっ、りひとさ……」
「なに?」

 重要な目的を思い出した佑馬はどうにか口を解放させ、相変わらず冷たい目で睨んでくる理人に声を掛ける。何がそんなに気に入らないのかわからないが機嫌の直らない男にめげそうになりながら頼み込む。

「それ……理人さんのち○ぽ挿入て……」

 欲しいと懇願する佑馬に理人が唸った。佑馬の上から起き上がり服を脱ぎ始めた彼を見て、佑馬はベッドサイドへ目を向ける。目当ての物を見つけると起き上がって手に取る。
 四角い銀色のパッケージとローションボトルを手にした佑馬は先ずローションを手に垂らした。使い慣れたアナニーの友というべきそれで孔を解す為に。足を開いて再び寝転がり、蟻の戸渡にもローションを垂らしていく。滑りを纏った指で孔をつつき、ゆっくりと挿入していく。

「うっ……ふ、ぐっ……」

 慣れたとはいえ声は上がる。アナニーの末に縦に割れた孔は無理なく広がりぬぷぬぷと指を飲み込んでいく。
 佑馬の動作以外に物音がなく、理人はどうしたのかと下げていた視線を上げると、服を脱いだ彼はただ佑馬を見ていた。呆けたように、静かな目で。
 引かれたのかと思ったが、衣服から解放された理人のペニスは勃ち上がっている。そう理解した佑馬の行動は速い。

「理人さんそれ挿入て♡」

 両手の人差し指で左右に割ると、孔はぐぽっと音を立てた。それを合図にするように理人が動く。開いて立てた佑馬の膝を片手で押し、もう片手はいきり立ったペニスを握り亀頭を穴へ擦り付ける。

「あ、待って、ゴム……」

 先程手に取った物を着けさせようとするが、理人は止まらなかった。滑りのままに亀頭を押し進め、佑馬の望み通り挿入っていく。

「んぉ……っ♡」

 熱の感じられる太いものが佑馬の隘路を押し入ってくる。反射的に腹筋と背筋に力を込める。きっとすごく気持ちいい筈だと期待する心は裏切られなかった。

「んああああああっ!!! なにごれっ♡ これっ♡ しゅごっ♡」
「くっ……なんだこれっ!」

 玩具とは違う質量が肉筒を押し潰す。自己開発により性感帯となった箇所を刺激され声が抑えられない。快感を与える肉棒を褒めるように締め付ける肉襞に理人も驚いている。

「りひどしゃっ♡ うごいてぇ♡♡♡ おれのけつま……こ、めいっぱいついて♡」
「……くそっ」

 理人の腰に両足を絡ませ尻を振る佑馬に、理人は腰を振って奉仕する。突くと嬌声を上げて喜び理人のペニスを締め付けて射精を促す様は淫乱としか言えない。

「あっ……んん……あぅ♡ むねいやっ♡」

 普通の男は乳首を摘ままれたり擦られてもこんな声を上げたりしない。そもそも長時間乳首を弄られるなんて普通の男にはありえない。

「はっ……はっ……く……佑馬、出すぞ……!」
「……っ! うん♡ 出してぇっ!」

 律動が速まり、呻き声と共に胎内へ熱いものが吐き出される。本来なら排出するだけの器官へぶちまけられる実りのない種。

「あへっ♡ あへぇぇぇぇぇっ♡♡♡」

 かつてない経験に興奮しそれらを快感へと変換した佑馬は悦びの声を上げた。
 吐精もせずに得た絶頂は頭を溶かして馬鹿にする。

「しゅごい♡ やっぱ生ち○ぽしゅごいい♡♡ ディッくんとじぇんぜんちがうう♡♡♡」

 愛棒では味わえない快感に舌を出してよがり、理人の腰に絡ませた足を締め付け互いの体を押し付け合おうとする佑馬に、理人は。

「……この淫乱が!!!」

 キレながら佑馬の腰を掴み、尻を浮かせるように持ち上げて腰を叩き付ける。ローションだけでなく理人が吐き出したザーメンで滑りは増し、律動によって押し退けられたものが水音と共に孔から溢れ落ちてくる。
 されるがままで自分をコントロール出来ない佑馬の体は何処にも力が入らない。精嚢は逃げたままだ。けれど快楽は逃げなかった。
 理人のペニスが打ち付けられる度に体に快感が走り、頭の中が麻痺していく。何かあってもわからない。
 大きな手に体を動かされたら大人しく従い、自分からも動いた。柔らかいベッドマットへ膝を付け、尻だけ掲げて獣のように犯される。先程よりも深い所まで抉られている気がして気持ちが良かった。


 開閉は封じられているが存在は隠されていない窓を覆うカーテンの隙間から朝を教えるように明るい光が忍び込んでくる。暗い室内に刻まれる光の線に、二人は気付いていなかった。

「あっ……あっあっあっあっ……」

 か細い声を上げる佑馬の腰を掴み、理人はひたすら腰を振っている。一晩が過ぎていたが、彼が止まる気配はない。
 何度か意識を飛ばした佑馬は終わらない快感に意識を引き戻され、渇いた喉で喘ぎ続けている。

「……あ、やぁ……だめ……でるっ、出るから……」

 溜まっていたもの全てを吐き出して萎えきった自分のペニスを押さえながら佑馬がうわ言を溢すと、理人は「出せ」と笑った。
 佑馬の力ない手をどかせ、鈴口を指で潰され。佑馬は声もなく叫んで吐き出した。精液とも尿とも違う、透明なさらさらとした液体は潮だった。
 その日だけで佑馬は生ち○ぽも潮吹きも、メスイキすら体験した。もう戻れる訳がない。

「ど……してくれるの……もうディッくんじゃむりじゃん……」
「ディッくんとやらはここまでご奉仕してくれないのか。使えない奴だな」

 そんなことない、とは言えなかった。けれどそもそも比較出来るものではない。

「ディッくんなんて捨てて俺と一緒になればいいだろう? もうお前、俺がいないと無理だよ」

 うんうんと泣いて頷く佑馬を見てようやく理人は笑みを見せた。宥めるように頬に口付けられ、放置されていた乳首を摘ままれる。
 悪かった、やり過ぎたと謝られ、佑馬は無言で許した。ペニスを咥えたまま布団に横たわり、抱えられながらゆったりとした微睡みに包まれる。
 少し休んだら俺の家へ帰ろう。帰って、佑馬くんの要らないものは全部捨てて、俺と生きよう。
 うっとりとした男の声を聞きながら、佑馬はとりあえず眠りについた。新しいことだらけの疲れた一日だった。
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