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篤史は理想を絵に描いたような人だった。
端正な容姿や商才による成功だけでなく、千里眼を持っているかのように雅の気持ちや考えを見抜いてしまう。雅が欲しいと思っている物を、話してもいないのに用意して与えてくれる。
「どうして僕の欲しい物がわかるの?」
不思議そうに尋ねる雅へ。篤史は楽しげに笑って答えた。
「俺が雅を愛しているからだよ。雅のことなら何だってわかる」
昼寝から目覚めた雅はスマホに届いたポップアップにより、マッチングアプリに動きがあることを知った。誰かが雅に会いたいと言っている。
アプリを起動して確認すると、雅同様写真はないユーザーからメッセージとマッチング申請が届いていた。
『プロフィールを拝見して是非一度お会いしたいと思いました。よろしくお願い致します』
相手のプロフィールは雅と同じく実に簡素で、トクというハンドルネームと身長・体重・年齢が書かれているだけだ。
「……篤史さんと同い年だ」
ぼうっと呟く。篤史の正確な身長はわからないが画面上に表示された相手は篤史とよく似た背格好だと察せられた。顔の良し悪しは写真がないのでわからないが、雅にとって篤史以上の人間なんていないのだから造形なんて気にしない。そもそも雅も相手に顔を見せていない。
ただ似通ったデータの男に声を掛けられ、それでいいかと指を動かし、送られてきたマッチング申請に承諾を返す。そうすると非公開のチャットメッセージを送り合えるのだ。
『こちらこそ、よければお会いしたいです』
送信ボタンを押す。画面を消し、起き上がろうとした雅の手から小気味良い電子音が鳴った。消したばかりの画面が光り、ポップアップはメッセージの受信を報せている。
『好きな人に振られたって書いてあったけど、その人はもういいの?』
相手もスマホを触っていたのだろうか。早い返信に驚きつつ、雅も返事を打つ。
『好きだけどもう一緒にはいられないので、忘れてしまいたいんです』
『そうなんだ。いつなら会える?』
出来たらすぐにでも会いたいことを伝えると、明日の夜に会うことになった。雅の住むアパートから最寄り駅前で会うことになる。
『明日が楽しみだな』
チャットの終わりにそう言われ、雅も頷いた。篤史以外の男に抱かれることに不安はあるけれど、少し話しただけでトクの人柄の良さがわかる。取り繕ってるだけかもしれないがそれすら出来ない人よりはいい。
誰でもいいからはやく篤史を忘れさせてほしかった。
翌日の日曜日。雅は朝から落ち着かなかった。夜には篤史ではない誰かに抱かれる。そうしたら雅はどうなるのだろう。
こんなものかと納得し、未練を投げ捨てられるのか。篤史を忘れられずに引きずり続けるのか。そもそも本当に篤史以外の男に抱かれられるのか。
考えても仕方がないと頭を振って、夕方までは普段通りに過ごす。最近の雅の休日は平日に溜め込んだ洗濯と簡単な部屋の掃除、それが終われば暇潰しに動画を見たりして終わっていく。
頃合いを見て身支度を始めた雅は黒いジャケットと白シャツにベージュのチノパンとシンプルな服装で向かうことにした。財布には下ろし立ての万札を数枚入れる代わりに、カード類は全て家に置いていく。
最寄り駅まで歩く十分間が、何だか異様に長く感じられる気がした。
待ち合わせの時間より三十分は早く着いた雅は駅前の広場に設置されたベンチへ腰掛けた。相手の顔は互いに知らず、着いたらチャットで連絡を取ればいいと思っていた雅にトクは冗談めかして「目印に花でも持ってくよ」と言っていた。
俯いて足元へ目を向け、ぼうっと時間が過ぎていくのを待つ雅の視界が赤く染まったのは待ち始めてから五分と経たないうちだった。
「みーやび♡」
顔を覆う芳香、柔らかな肌触りから生花の束だと感じられ、もしやと花から顔を上げるのと目の前の人物が雅を呼ぶのは同時だった。
「え……」
大きな薔薇の花束を手に見下ろすのは雅のよく知る男だった。唖然とする雅の腰に手を回して立つよう促され、いつものように「さ、行こう雅」と言われれば足が勝手に動く。
「なんで」
「ん?」
「なんで、えっ、篤史さんも、新しい人探してたの。いや、それなら僕かえ」
「雅」
マッチングアプリに登録する理由。それは誰かに出会う為だ。その誰かは新しい関係を築く人のことで、別れた相手ではない。とんでもない偶然が重なって篤史とマッチングしてしまったのだと思い、離れようとした雅を静かな目が見つめる。
「目立つから人のいない所に行こう」
真っ赤な薔薇の花束を抱えた美丈夫に腰を抱かれる青年の図は人々の目を集めていた。こそこそと盗み見られ、密やかに何か話されているのを感じた雅は篤史の服を引っ張る。小さく笑った篤史に連れられ、近くのパーキングへ行くと篤史の車が停まっていた。
「雅、乗って」
「……あ。いや。僕帰るよ。あの、ハズレでごめんなさい。他の人を」
「雅。乗れって言ってるんだ」
篤史の表情は優しく微笑んだままだ。声も聞き分けのない子供へ言い聞かせるような柔らかさがある。だというのに逆らうことを許さない威圧感があった。
雅が大人しく助手席に座ったのを見てから篤史は駐車料を精算し、すぐに走り出してしまう。懐かしい車内は篤史の香水の香りに満ちていた。
「雅。わかってくれたかな」
何処へ向かっているのかわからないが、車は迷いなく走り続ける。目線は前方へ向けたままの篤史の問いに、雅は情けない声しか出ない程混乱していた。
「なにが……?」
「俺と別れられると思った?」
素直に頷くことは出来ない。離婚を切り出した時から――否、疑念を自覚して離婚を考え始めた時から、雅の中には未練しかなかった。
小さな頃から憧れて、大好きで、恋した年上の幼馴染み。同性で秀でたものもない雅を選んでくれる筈がないと諦めていた所に救いの手を差し伸ばされて、綺麗さっぱり捨て去ることなんて出来るわけがない。
「……だって。それでも、別れないと。僕、嫌だ……」
「何が?」
「…………篤史さんが僕と結婚したの、僕が若かったからでしょう。高校生、大学生の僕で、好き勝手遊びたかっただけでしょう……外でやったり、会社でやったり……普通、そんなことしない」
「雅」
しばらく走っていると景色が見覚えのあるものに変わっていく。つい先日まで暮らしていた篤史のマンション付近だと気付けた。
マンションの駐車場に入るまで。入ってからも篤史の部屋へ連れ込まれるまで、篤史は口を閉ざしてしまった。沈黙を破る気力のない雅も話し掛けることはせず、大人しく篤史に従う。懐かしい部屋は雅の私物がないこと以外は特に変わりがなかった。
「ただの使い捨てが欲しいだけなら結婚なんてするわけないだろ。捨てる時に籍汚れるんだぜ? 外でペラペラあることないこと喋られる可能性もあるし、リスク高過ぎるわ」
「ひっ、あっ、あーーっ、ひあ、あ、ああ、ああ、あんっ……や、やだぁ、いーっ、あっ……」
ベッドサイドのチェストの中にしまいこまれた玩具も変わりない。ローションボトルを取り出した篤史はベッドの上に寝転がる裸に剥いた雅の尻孔へローションを垂らし、孔の中へ塗り込んでいく。雅の指より太く長い指が一本、二本と孔に挿入され、ぐちゃぐちゃ音を立てながら媚肉を擦り濡らしていく。
「あーっ、あっ、あんっ、んんっ……あ、はっ……あ、きもちぃ、もっとぉ……」
「雅を捨てるなんてあり得ないし。雅もあれだけされて、俺と別れられる筈ないだろ?」
「うぁ……でも、でもぉ……」
「他の男なんて夜の散歩もスカもしてくれないよ。気持ちいいだろ? 人に見られるかもしれない外で這いつくばってセックスするの」
「……………………」
「雅」
かまととぶるなと叱るように、隘路の奥深くまで突かれる。鳴き声を上げた雅は勢い良く頷いた。
思い出されるのは夜の散歩だ。行きつけの公園内を犬の格好で散歩して、篤史の許しを得られたら茂みに隠れて犯される。人通りの殆どない公園を選んでくれているが絶対ではなく、交尾以外の物音が聞こえる度に緊張し、興奮した。
「きもちぃ……外で、犬みたいに抱かれるの……篤史さんの犬になるの、すき……」
「小便垂らしながら尻犯されるのも好きだろ?」
「すき……してぇ……おしっこ……」
「今は出すなよ。後でトイレ行こうな」
「うん……」
雅が素直になったからか、篤史は嬉しそうな笑顔を浮かべてキスしてくれた。久しぶりのキスは深く、強引で苦しいけれど、篤史の舌に口内を吸い付くされるのは求められているようで嬉しい。
「んーっ! ん、ぶ、うう、うん……んっ」
「っは、ああ、雅、雅ぃ……」
尻を指に弄ばれたまま、思考まで吸い出すようにキスされる。求め続けた快楽、その片鱗を与えられ、我慢のきかなくなった体は懸命に男を誘い始めた。
「あつしさ……だいて、だいてぇ…………ずっとほしかった……わかれたくないよぉ……」
「別れないって言ってるだろ」
伸ばした手で篤史の腕を掴み、剥き出しの乳首へ導く。触ってほしいと行動で訴えられれば無下にする理由がなく、篤史の指は赤く色付く乳首を摘まみ上げた。もう片方の手は指マンを続け、応えるように雅は尻を振る。
愚直なまでに快感を追う青年の淫らな姿は、篤史の目には何よりも美しく見えた。
「……雅、雅っ!!」
「あん、んんっ、んぅ……あっ……もういれて、いれてぇ……」
雅がねだると尻孔から指が出ていき、乳首を嬲っていた指も離れる。間を置かずスラックスの前を寛げた篤史の性器が孔に擦り付けられた。太く大きく逞しく、いつも雅を満足させてくれたように育ち昂っている。
「あ。あ。ああ。あっ」
孔をゆっくりと押し広げ、肉を割られる。大きな肉塊が雅の中へ挿入ってくる。雅を奥の奥まで満たし、甚振り、快楽を与えてくれるものが。
「おっ、ほぉっ…………あっ、すきっ……あつししゃぁのっ、でかち◯ぽだいしゅきぃ……」
「あーーーーっ、くそ、俺も好き。雅のとろふわま◯こ大好きだぞぉ」
二度と離してやらないからな。
耳元で囁かれた言葉は雅にとって祝福だった。
久しぶりに繋がり合った二人はそれまでの別離を埋め合わせるかのように絡み合った。篤史の下へ囲い込むように組み敷かれ、激情をぶつけられるままに肉を打たれる。胎の奥まで殴り付けられ官能に包まれ、雅は恥じらいもなく鳴いた。
「あーーっ、あっ、んおっ、ほ、あっ、はっ……あー……あっあっあっおっ、あっ……」
「雅、雅……出す……胎の中、いっぱいに出すからなっ……!」
「うんっ、うん……っ! あーーーーっ! でてるぅ……あついのぉ……あ、は……」
熱い飛沫を胎の中に吐き出され、雅の胸に悦びが沸き上がる。これがずっと欲しかったのだ。もっと欲しいとねだるように男を締め付けながら尻を振ると、篤史の腰が再び動き出す。
もっと話して確認しないとならないことは山程あるけれど、理性の溶けた雅も、雅しか見えていない篤史も。まともな言葉を発することなく、互いの体を喰い合っていた。
***
次回・答え合わせ編で終わります。
FBに篤史視点SS投下するので良かったらご覧下さい。
端正な容姿や商才による成功だけでなく、千里眼を持っているかのように雅の気持ちや考えを見抜いてしまう。雅が欲しいと思っている物を、話してもいないのに用意して与えてくれる。
「どうして僕の欲しい物がわかるの?」
不思議そうに尋ねる雅へ。篤史は楽しげに笑って答えた。
「俺が雅を愛しているからだよ。雅のことなら何だってわかる」
昼寝から目覚めた雅はスマホに届いたポップアップにより、マッチングアプリに動きがあることを知った。誰かが雅に会いたいと言っている。
アプリを起動して確認すると、雅同様写真はないユーザーからメッセージとマッチング申請が届いていた。
『プロフィールを拝見して是非一度お会いしたいと思いました。よろしくお願い致します』
相手のプロフィールは雅と同じく実に簡素で、トクというハンドルネームと身長・体重・年齢が書かれているだけだ。
「……篤史さんと同い年だ」
ぼうっと呟く。篤史の正確な身長はわからないが画面上に表示された相手は篤史とよく似た背格好だと察せられた。顔の良し悪しは写真がないのでわからないが、雅にとって篤史以上の人間なんていないのだから造形なんて気にしない。そもそも雅も相手に顔を見せていない。
ただ似通ったデータの男に声を掛けられ、それでいいかと指を動かし、送られてきたマッチング申請に承諾を返す。そうすると非公開のチャットメッセージを送り合えるのだ。
『こちらこそ、よければお会いしたいです』
送信ボタンを押す。画面を消し、起き上がろうとした雅の手から小気味良い電子音が鳴った。消したばかりの画面が光り、ポップアップはメッセージの受信を報せている。
『好きな人に振られたって書いてあったけど、その人はもういいの?』
相手もスマホを触っていたのだろうか。早い返信に驚きつつ、雅も返事を打つ。
『好きだけどもう一緒にはいられないので、忘れてしまいたいんです』
『そうなんだ。いつなら会える?』
出来たらすぐにでも会いたいことを伝えると、明日の夜に会うことになった。雅の住むアパートから最寄り駅前で会うことになる。
『明日が楽しみだな』
チャットの終わりにそう言われ、雅も頷いた。篤史以外の男に抱かれることに不安はあるけれど、少し話しただけでトクの人柄の良さがわかる。取り繕ってるだけかもしれないがそれすら出来ない人よりはいい。
誰でもいいからはやく篤史を忘れさせてほしかった。
翌日の日曜日。雅は朝から落ち着かなかった。夜には篤史ではない誰かに抱かれる。そうしたら雅はどうなるのだろう。
こんなものかと納得し、未練を投げ捨てられるのか。篤史を忘れられずに引きずり続けるのか。そもそも本当に篤史以外の男に抱かれられるのか。
考えても仕方がないと頭を振って、夕方までは普段通りに過ごす。最近の雅の休日は平日に溜め込んだ洗濯と簡単な部屋の掃除、それが終われば暇潰しに動画を見たりして終わっていく。
頃合いを見て身支度を始めた雅は黒いジャケットと白シャツにベージュのチノパンとシンプルな服装で向かうことにした。財布には下ろし立ての万札を数枚入れる代わりに、カード類は全て家に置いていく。
最寄り駅まで歩く十分間が、何だか異様に長く感じられる気がした。
待ち合わせの時間より三十分は早く着いた雅は駅前の広場に設置されたベンチへ腰掛けた。相手の顔は互いに知らず、着いたらチャットで連絡を取ればいいと思っていた雅にトクは冗談めかして「目印に花でも持ってくよ」と言っていた。
俯いて足元へ目を向け、ぼうっと時間が過ぎていくのを待つ雅の視界が赤く染まったのは待ち始めてから五分と経たないうちだった。
「みーやび♡」
顔を覆う芳香、柔らかな肌触りから生花の束だと感じられ、もしやと花から顔を上げるのと目の前の人物が雅を呼ぶのは同時だった。
「え……」
大きな薔薇の花束を手に見下ろすのは雅のよく知る男だった。唖然とする雅の腰に手を回して立つよう促され、いつものように「さ、行こう雅」と言われれば足が勝手に動く。
「なんで」
「ん?」
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「目立つから人のいない所に行こう」
真っ赤な薔薇の花束を抱えた美丈夫に腰を抱かれる青年の図は人々の目を集めていた。こそこそと盗み見られ、密やかに何か話されているのを感じた雅は篤史の服を引っ張る。小さく笑った篤史に連れられ、近くのパーキングへ行くと篤史の車が停まっていた。
「雅、乗って」
「……あ。いや。僕帰るよ。あの、ハズレでごめんなさい。他の人を」
「雅。乗れって言ってるんだ」
篤史の表情は優しく微笑んだままだ。声も聞き分けのない子供へ言い聞かせるような柔らかさがある。だというのに逆らうことを許さない威圧感があった。
雅が大人しく助手席に座ったのを見てから篤史は駐車料を精算し、すぐに走り出してしまう。懐かしい車内は篤史の香水の香りに満ちていた。
「雅。わかってくれたかな」
何処へ向かっているのかわからないが、車は迷いなく走り続ける。目線は前方へ向けたままの篤史の問いに、雅は情けない声しか出ない程混乱していた。
「なにが……?」
「俺と別れられると思った?」
素直に頷くことは出来ない。離婚を切り出した時から――否、疑念を自覚して離婚を考え始めた時から、雅の中には未練しかなかった。
小さな頃から憧れて、大好きで、恋した年上の幼馴染み。同性で秀でたものもない雅を選んでくれる筈がないと諦めていた所に救いの手を差し伸ばされて、綺麗さっぱり捨て去ることなんて出来るわけがない。
「……だって。それでも、別れないと。僕、嫌だ……」
「何が?」
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「雅」
しばらく走っていると景色が見覚えのあるものに変わっていく。つい先日まで暮らしていた篤史のマンション付近だと気付けた。
マンションの駐車場に入るまで。入ってからも篤史の部屋へ連れ込まれるまで、篤史は口を閉ざしてしまった。沈黙を破る気力のない雅も話し掛けることはせず、大人しく篤史に従う。懐かしい部屋は雅の私物がないこと以外は特に変わりがなかった。
「ただの使い捨てが欲しいだけなら結婚なんてするわけないだろ。捨てる時に籍汚れるんだぜ? 外でペラペラあることないこと喋られる可能性もあるし、リスク高過ぎるわ」
「ひっ、あっ、あーーっ、ひあ、あ、ああ、ああ、あんっ……や、やだぁ、いーっ、あっ……」
ベッドサイドのチェストの中にしまいこまれた玩具も変わりない。ローションボトルを取り出した篤史はベッドの上に寝転がる裸に剥いた雅の尻孔へローションを垂らし、孔の中へ塗り込んでいく。雅の指より太く長い指が一本、二本と孔に挿入され、ぐちゃぐちゃ音を立てながら媚肉を擦り濡らしていく。
「あーっ、あっ、あんっ、んんっ……あ、はっ……あ、きもちぃ、もっとぉ……」
「雅を捨てるなんてあり得ないし。雅もあれだけされて、俺と別れられる筈ないだろ?」
「うぁ……でも、でもぉ……」
「他の男なんて夜の散歩もスカもしてくれないよ。気持ちいいだろ? 人に見られるかもしれない外で這いつくばってセックスするの」
「……………………」
「雅」
かまととぶるなと叱るように、隘路の奥深くまで突かれる。鳴き声を上げた雅は勢い良く頷いた。
思い出されるのは夜の散歩だ。行きつけの公園内を犬の格好で散歩して、篤史の許しを得られたら茂みに隠れて犯される。人通りの殆どない公園を選んでくれているが絶対ではなく、交尾以外の物音が聞こえる度に緊張し、興奮した。
「きもちぃ……外で、犬みたいに抱かれるの……篤史さんの犬になるの、すき……」
「小便垂らしながら尻犯されるのも好きだろ?」
「すき……してぇ……おしっこ……」
「今は出すなよ。後でトイレ行こうな」
「うん……」
雅が素直になったからか、篤史は嬉しそうな笑顔を浮かべてキスしてくれた。久しぶりのキスは深く、強引で苦しいけれど、篤史の舌に口内を吸い付くされるのは求められているようで嬉しい。
「んーっ! ん、ぶ、うう、うん……んっ」
「っは、ああ、雅、雅ぃ……」
尻を指に弄ばれたまま、思考まで吸い出すようにキスされる。求め続けた快楽、その片鱗を与えられ、我慢のきかなくなった体は懸命に男を誘い始めた。
「あつしさ……だいて、だいてぇ…………ずっとほしかった……わかれたくないよぉ……」
「別れないって言ってるだろ」
伸ばした手で篤史の腕を掴み、剥き出しの乳首へ導く。触ってほしいと行動で訴えられれば無下にする理由がなく、篤史の指は赤く色付く乳首を摘まみ上げた。もう片方の手は指マンを続け、応えるように雅は尻を振る。
愚直なまでに快感を追う青年の淫らな姿は、篤史の目には何よりも美しく見えた。
「……雅、雅っ!!」
「あん、んんっ、んぅ……あっ……もういれて、いれてぇ……」
雅がねだると尻孔から指が出ていき、乳首を嬲っていた指も離れる。間を置かずスラックスの前を寛げた篤史の性器が孔に擦り付けられた。太く大きく逞しく、いつも雅を満足させてくれたように育ち昂っている。
「あ。あ。ああ。あっ」
孔をゆっくりと押し広げ、肉を割られる。大きな肉塊が雅の中へ挿入ってくる。雅を奥の奥まで満たし、甚振り、快楽を与えてくれるものが。
「おっ、ほぉっ…………あっ、すきっ……あつししゃぁのっ、でかち◯ぽだいしゅきぃ……」
「あーーーーっ、くそ、俺も好き。雅のとろふわま◯こ大好きだぞぉ」
二度と離してやらないからな。
耳元で囁かれた言葉は雅にとって祝福だった。
久しぶりに繋がり合った二人はそれまでの別離を埋め合わせるかのように絡み合った。篤史の下へ囲い込むように組み敷かれ、激情をぶつけられるままに肉を打たれる。胎の奥まで殴り付けられ官能に包まれ、雅は恥じらいもなく鳴いた。
「あーーっ、あっ、んおっ、ほ、あっ、はっ……あー……あっあっあっおっ、あっ……」
「雅、雅……出す……胎の中、いっぱいに出すからなっ……!」
「うんっ、うん……っ! あーーーーっ! でてるぅ……あついのぉ……あ、は……」
熱い飛沫を胎の中に吐き出され、雅の胸に悦びが沸き上がる。これがずっと欲しかったのだ。もっと欲しいとねだるように男を締め付けながら尻を振ると、篤史の腰が再び動き出す。
もっと話して確認しないとならないことは山程あるけれど、理性の溶けた雅も、雅しか見えていない篤史も。まともな言葉を発することなく、互いの体を喰い合っていた。
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