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※野外露出からの性交があります(あっさりめ)
***
幼い時分から芽生え育み、雅の心の中心に聳える信頼と愛情の巨木。揺るぎなく倒れることのない筈のそれがあるからこそ、雅は彼に従順であり続ける。
けれどこの世に切れない木など存在しない。
どれだけ太く立派であろうとも、木である限り刃は通り。栄養がなければいずれ腐り枯れる。
なくならないものなんて在りはしないのだ。
高校に通い始め、雅の暮らしが大きく変わってから二ヶ月が経つと学校生活にはすっかり慣れてきた。
熱心な家庭教師のおかげで成績は問題なし。部活動には参加せず真っ直ぐ家に帰るか、たまに裕也が入ったサッカー部の活動がない日に誘われて寄り道をする。
篤史の甥である裕也とは義理とはいえ親族となり、クラスメイトでもあり、何より互いに相性が良いのかすぐに仲良くなれた。甥と雅の仲が良好だと知ると篤史はとても喜んだ。
「雅と裕也、どちらにも友達が増えたってことだからな。嬉しいよ」
仲良くしてやってくれと微笑む顔に偽りはない。雅としてもそのつもりだ。
「けど俺の相手もしてくれよ」
「してるじゃんか。毎日。誰よりも気に掛けてるよ」
「もっとしてくれ」
グラウンドの使用権の関係でサッカー部が休みだった裕也から帰りに学校近くのファストフード店へ誘われ、了承した雅の帰りは篤史より少しだけ遅かった。裕也と寄り道して帰ることはメッセージアプリで知らせていたが、夕飯の支度をしながら待っていた篤史の機嫌はあまり良くはなかった。
怒っている訳ではない。甥と仲良くすることは喜ばしいし、高校生なら学校帰りに友人と過ごすことは大切だ。篤史も同じ道を通ってきたのだからよくわかっている。
それでも身勝手な心は雅を縛りつけたがる。学校が終わったらすぐに帰宅し、篤史の帰りを待ち望んでいてほしい。
篤史が欲しくて仕方ないと自分で慰め、篤史の帰宅に歓喜して淫らに誘ってほしいのだ。
「どうしたらいいの?」
無防備に篤史を見上げ問い掛ける雅に微笑みを絶やさず、一言提案した。
「散歩にでも行こうか」
疑いもせず、深くも考えず。言葉通りに受け取った雅は大人しく頷いた。
雅と篤史が暮らすマンションは郊外の閑静な住宅地にある。少し歩けば大きな公園があるが夜になると人通りがほとんどなくなり、辺りにあるのは車の走行音や虫の鳴き声程度になる。
だから大丈夫だと。何度も何度も念を押されて。雅はまばらな外灯だけが光源となる公園の中、特別汚くも綺麗でもないベンチの上でゆっくりと自分の衣服に手を掛けていた。
ありありとした不安を浮かべながら、目の前に佇む篤史を見上げる。
「大丈夫。誰もいないよ」
だから脱げと続きを促す。雅の指は何度も前開きのシャツのボタンへ触れて、止めた。
「なんで。こんなことするの」
静まり返った夜の公園。人目はないが誰かがいつ来てもおかしくはない公共の場で、何故雅は服を脱がなければならないのか。
「散歩しようって言ったろ?」
篤史が右手を上げると握られていた大きめの紙袋がガサッと音を立てる。出かける際に何が入っているのか問うと「散歩で使うから」としか返されなかった。
雅の目線より下にある紙袋の中へ目を向ける。中には犬の耳があった。
「え」
勿論本物の犬の耳ではなく、そっくりに作られたアクセサリーだ。耳の付け根に取り付けられたヘアピンで固定するのだろう。
他にも突起物の先に耳と揃いの尻尾のついた物、大きめの首輪とリード、見慣れたローションボトルが見える。
「マンションの入口からは嫌だろう?」
その言葉の意味も、紙袋の中身も。瞬時に全てを理解出来る程に雅は大人ではなかったけれど、ゆっくりと察していけない程幼くもなかった。
「や……」
怖いと首を振る雅に、篤史は優しく微笑んだ。
「雅。大丈夫だ」
何がと問う。
「昼間に子供が遊びに来るだけの公園だ。夜は誰も通らない。あのマンションに越すって決めた時から調べてる」
ベンチに座っていた雅の隣に篤史も腰掛ける。太く逞しい腕が背に回り、雅の体が引き寄せられる。
耳元で囁かれ、雅は息を飲んだ。
「耳と尻尾着けて這って公園一周したら好きなだけち◯ぽ喰わせてやる」
雅が篤史と関係を深めたのは高校入学から一週間後のことだった。それ以来殆ど毎日のように篤史と触れ合って過ごしている。
いつかのように我慢ならずに雅が篤史を誘ったり、篤史が雅に誘いを掛けたり。金曜の夜から日曜にかけては離れては死ぬかのように、べったりと絡み合って離れない。
爛れた生活に染め上げられた雅はゆっくりとシャツのボタンを外し始める。
浮かんでいた筈の不安の色は情欲に塗り替えられていた。
「んっ……あっ……ぅう……」
スニーカー以外全て脱ぎ捨て、ベンチの上で寝転ぶ雅のさらけ出されたアナルは縦に割れていた。篤史に愛され続けた証だ。
いやらしい性器に生まれ変わったそこへ、ローションを纏わりつかせた篤史の指が淵を優しくなぞり、ゆっくりと入り込んでいく。喘ぐ雅に応えるように奥まで進んだ指は後退し、抜けきる前に再び奥を目指し――出入りを繰り返す動きは速さを増していった。
ぐぽぐぽと音を立てて肉筒を刺激され、悦ぶアナルに夢中になりかけた篤史は目的を思い出し、名残惜しみながら指を引き抜く。
はやく戻して、と指を求めていやらしく収縮するアナルに擦り付けられるのは指ではなかった。篤史のものでもないそれは、犬の尻尾のついたディルドだった。
「あっ……や、やだ……」
温度の感じられない異物が入り込もうとしている。視覚と触覚から伝わる事実に雅は拒否反応を抱いた。
「雅。大丈夫だ。痛くないよ」
雅のアナルへディルドを擦り付けながら篤史が諭す。
「ひっ……ぃ……ぁ……」
篤史にほぐされたアナルの中へ、肉を割ってディルドが入り込んでいく。固く冷たい棒が胎を突く。篤史ではない物を受け入れる違和感を覚えながらも、それですら快感を得ようと蠢く体は貪欲だった。
悶え始めた雅の頭に犬耳のついたヘアピンが留められる。リードの取り付けられた人間サイズの首輪をはめれば可愛い犬の出来上がりだった。
「雅。可愛いよ。よく似合ってる」
「あんっ……あ……篤史さん……」
「雅は犬だろ? 犬は喋らないよ」
えっ、と困った顔をした雅は数度迷いながらも「わ、わん……」と鳴き真似をした。それだけで篤史は頭を撫でて褒めてくれる。
ベンチから立ち上がった篤史が手にしたリードを引く。散歩に行くということだろう。雅は再び鳴き真似をしてから地面に降りた。
公園の敷地内、歩道は特に舗装されておらず、木々の植えられた茂みは草で覆われている。
固い地面に手と膝をついて歩くのは痛みを伴い、慣れない姿勢もあって雅の歩みは遅い。リードを引く篤史は雅の歩みに合わせ、見守るように傍らにいる。
雅が這って小石が擦れる音と篤史がたまに動かす足音がするだけで、他者の存在は感じられない。それでも雅の頭には「誰かに見られたら」という不安が常に居座り――興奮に塗り替えられ、ぺニスに熱を持たせていた。
男が犬の格好をさせた裸の少年を散歩させている。端から見たら異常なプレイでしかない非日常を見られたら。そう思い描いて感じるのは羞恥や恐怖だけではなかった。
懸命に手足を動かしていた雅を篤史が呼ぶ。何だろうと顔を上げると篤史は膝をついてしゃがみ、雅と目線を合わせて微笑んだ。
「半周したよ。もうここでいい」
一周と言っていたのにいいのだろうか。話せないので目で訴える雅に篤史は頷いた。
「雅がきちんと俺に従って散歩出来た。それだけで充分なんだ。痛かったよな、どこか怪我してないか?」
地面に手足をつく痛みはあったが怪我はない。頭を振って否定すると大きな手に撫でられる。気持ちが良かった。
「どこでやりたい? さっきのベンチまで戻るか?」
「……わん、わん」
短く鳴いてから篤史のワイシャツを口に咥えて引っ張り、姿勢を茂みへ向けた。歩道と緑地の境界にはレンガが敷かれ、背の低い生垣が植えられている。
主人を先導する犬のように、茂みに向かって這い始めた雅の後ろを篤史がついていく。
生垣の裏へ回った雅は傍らへ立った篤史にしがみつくと、スラックスのジッパーを唇で摘まんだ。犬の前足はジッパーを握ったり出来ない。
頭を下げてジッパーを下ろし、唇と舌だけで篤史の下着を探る。男性用下着のスリットを掻き分ければ硬く熱を持った大きなぺニスが待っていた。
うっとりとそれを見つめ、大きな口を開けて歯は触れないように、唇の柔い肉だけでそれを食む。下着から引きずり出されたぺニスへ、雅は奉仕を始めた。
舌先で亀頭を舐める。鈴口をえぐる。開いた口で竿飲み込み、頭を上下させて擦り上げ、喉を使って吸い付く。
今まで篤史にしてもらってきたことを雅なりに真似して返しているが、頭上からの反応はない。気持ち良くないだろうかと奉仕の最中に目線を上げ、篤史の様子を窺う。
無表情の篤史はじっと雅を見つめていた。
何か間違えただろうか。そう思い迷い、思わず奉仕の動きを止めた雅の口からぺニスが引き抜かれる。篤史が腰を退いたのだ。
篤史は無言のまま雅を押し倒し、口を吸った。
「きゃふ……あ、あんっ……」
口内を吸い尽くすようにキスされながら、剥き出しの乳首をいじられる。男に抱かれ慣れた体はすぐに熱を持って反応し、摘まんだり擦られたりした乳首はつんと立ち上がった。
「あ……あー……あっ、あんっ……んんっ」
篤史の唇が移動し、雅の乳首を舐めかじる。空いた手でもう片方をいじられながら、雅は悦びに喘ぐ。
篤史になら何処で何をされても気持ちが良かった。
「んっんっんっんっあっ……あっ……ひっ……ぁおおんっ……」
「ふっ……はっ、雅、気持ちいいのか? 夜の公園で素っ裸になって、犬みたいに犯されて」
「わんっ! わんわん……きゅーん……あっ、あおっ……ぉおんっ!」
四つん這いになった雅は尻尾を引き抜かれ、代わりに篤史のぺニスを咥え込んでいた。
背後から雄にのしかかられ、尻を犯されて悦びの声を上げる姿は正しく雌犬のそれだった。誰かがいつ来てもおかしくはない、夜の野外で行われる倒錯的な性交に快感を覚えている。
雅の目には夜の暗さだけではなく、何も見えていない。耳に届くのは肉を打つ音、胎の中でかき混ぜられた体液の水音、そして雅の嗜虐を煽る篤史の声だけだった。
誰かに見られ聞かれるかもしれない危険性など最早頭の片隅にもなく、ただ篤史の犬になりきって鳴き声を出す。
初めにはあったかもしれない羞恥や屈辱は、雅の中から消えていた。
「雅っ……!!」
「ぉっ……ぁ……あぁーーっ!」
一際激しく腰を打たれ、感じ入った声を上げた篤史が雅の中へ精を吐き出す。胎の中を満たす熱い飛沫を雅の体は悦び、精神的な快感は雅の射精を促す。
何度目の絶頂か忘れたまま、雅は芝生へ向けて精を吐き出した。
***
幼い時分から芽生え育み、雅の心の中心に聳える信頼と愛情の巨木。揺るぎなく倒れることのない筈のそれがあるからこそ、雅は彼に従順であり続ける。
けれどこの世に切れない木など存在しない。
どれだけ太く立派であろうとも、木である限り刃は通り。栄養がなければいずれ腐り枯れる。
なくならないものなんて在りはしないのだ。
高校に通い始め、雅の暮らしが大きく変わってから二ヶ月が経つと学校生活にはすっかり慣れてきた。
熱心な家庭教師のおかげで成績は問題なし。部活動には参加せず真っ直ぐ家に帰るか、たまに裕也が入ったサッカー部の活動がない日に誘われて寄り道をする。
篤史の甥である裕也とは義理とはいえ親族となり、クラスメイトでもあり、何より互いに相性が良いのかすぐに仲良くなれた。甥と雅の仲が良好だと知ると篤史はとても喜んだ。
「雅と裕也、どちらにも友達が増えたってことだからな。嬉しいよ」
仲良くしてやってくれと微笑む顔に偽りはない。雅としてもそのつもりだ。
「けど俺の相手もしてくれよ」
「してるじゃんか。毎日。誰よりも気に掛けてるよ」
「もっとしてくれ」
グラウンドの使用権の関係でサッカー部が休みだった裕也から帰りに学校近くのファストフード店へ誘われ、了承した雅の帰りは篤史より少しだけ遅かった。裕也と寄り道して帰ることはメッセージアプリで知らせていたが、夕飯の支度をしながら待っていた篤史の機嫌はあまり良くはなかった。
怒っている訳ではない。甥と仲良くすることは喜ばしいし、高校生なら学校帰りに友人と過ごすことは大切だ。篤史も同じ道を通ってきたのだからよくわかっている。
それでも身勝手な心は雅を縛りつけたがる。学校が終わったらすぐに帰宅し、篤史の帰りを待ち望んでいてほしい。
篤史が欲しくて仕方ないと自分で慰め、篤史の帰宅に歓喜して淫らに誘ってほしいのだ。
「どうしたらいいの?」
無防備に篤史を見上げ問い掛ける雅に微笑みを絶やさず、一言提案した。
「散歩にでも行こうか」
疑いもせず、深くも考えず。言葉通りに受け取った雅は大人しく頷いた。
雅と篤史が暮らすマンションは郊外の閑静な住宅地にある。少し歩けば大きな公園があるが夜になると人通りがほとんどなくなり、辺りにあるのは車の走行音や虫の鳴き声程度になる。
だから大丈夫だと。何度も何度も念を押されて。雅はまばらな外灯だけが光源となる公園の中、特別汚くも綺麗でもないベンチの上でゆっくりと自分の衣服に手を掛けていた。
ありありとした不安を浮かべながら、目の前に佇む篤史を見上げる。
「大丈夫。誰もいないよ」
だから脱げと続きを促す。雅の指は何度も前開きのシャツのボタンへ触れて、止めた。
「なんで。こんなことするの」
静まり返った夜の公園。人目はないが誰かがいつ来てもおかしくはない公共の場で、何故雅は服を脱がなければならないのか。
「散歩しようって言ったろ?」
篤史が右手を上げると握られていた大きめの紙袋がガサッと音を立てる。出かける際に何が入っているのか問うと「散歩で使うから」としか返されなかった。
雅の目線より下にある紙袋の中へ目を向ける。中には犬の耳があった。
「え」
勿論本物の犬の耳ではなく、そっくりに作られたアクセサリーだ。耳の付け根に取り付けられたヘアピンで固定するのだろう。
他にも突起物の先に耳と揃いの尻尾のついた物、大きめの首輪とリード、見慣れたローションボトルが見える。
「マンションの入口からは嫌だろう?」
その言葉の意味も、紙袋の中身も。瞬時に全てを理解出来る程に雅は大人ではなかったけれど、ゆっくりと察していけない程幼くもなかった。
「や……」
怖いと首を振る雅に、篤史は優しく微笑んだ。
「雅。大丈夫だ」
何がと問う。
「昼間に子供が遊びに来るだけの公園だ。夜は誰も通らない。あのマンションに越すって決めた時から調べてる」
ベンチに座っていた雅の隣に篤史も腰掛ける。太く逞しい腕が背に回り、雅の体が引き寄せられる。
耳元で囁かれ、雅は息を飲んだ。
「耳と尻尾着けて這って公園一周したら好きなだけち◯ぽ喰わせてやる」
雅が篤史と関係を深めたのは高校入学から一週間後のことだった。それ以来殆ど毎日のように篤史と触れ合って過ごしている。
いつかのように我慢ならずに雅が篤史を誘ったり、篤史が雅に誘いを掛けたり。金曜の夜から日曜にかけては離れては死ぬかのように、べったりと絡み合って離れない。
爛れた生活に染め上げられた雅はゆっくりとシャツのボタンを外し始める。
浮かんでいた筈の不安の色は情欲に塗り替えられていた。
「んっ……あっ……ぅう……」
スニーカー以外全て脱ぎ捨て、ベンチの上で寝転ぶ雅のさらけ出されたアナルは縦に割れていた。篤史に愛され続けた証だ。
いやらしい性器に生まれ変わったそこへ、ローションを纏わりつかせた篤史の指が淵を優しくなぞり、ゆっくりと入り込んでいく。喘ぐ雅に応えるように奥まで進んだ指は後退し、抜けきる前に再び奥を目指し――出入りを繰り返す動きは速さを増していった。
ぐぽぐぽと音を立てて肉筒を刺激され、悦ぶアナルに夢中になりかけた篤史は目的を思い出し、名残惜しみながら指を引き抜く。
はやく戻して、と指を求めていやらしく収縮するアナルに擦り付けられるのは指ではなかった。篤史のものでもないそれは、犬の尻尾のついたディルドだった。
「あっ……や、やだ……」
温度の感じられない異物が入り込もうとしている。視覚と触覚から伝わる事実に雅は拒否反応を抱いた。
「雅。大丈夫だ。痛くないよ」
雅のアナルへディルドを擦り付けながら篤史が諭す。
「ひっ……ぃ……ぁ……」
篤史にほぐされたアナルの中へ、肉を割ってディルドが入り込んでいく。固く冷たい棒が胎を突く。篤史ではない物を受け入れる違和感を覚えながらも、それですら快感を得ようと蠢く体は貪欲だった。
悶え始めた雅の頭に犬耳のついたヘアピンが留められる。リードの取り付けられた人間サイズの首輪をはめれば可愛い犬の出来上がりだった。
「雅。可愛いよ。よく似合ってる」
「あんっ……あ……篤史さん……」
「雅は犬だろ? 犬は喋らないよ」
えっ、と困った顔をした雅は数度迷いながらも「わ、わん……」と鳴き真似をした。それだけで篤史は頭を撫でて褒めてくれる。
ベンチから立ち上がった篤史が手にしたリードを引く。散歩に行くということだろう。雅は再び鳴き真似をしてから地面に降りた。
公園の敷地内、歩道は特に舗装されておらず、木々の植えられた茂みは草で覆われている。
固い地面に手と膝をついて歩くのは痛みを伴い、慣れない姿勢もあって雅の歩みは遅い。リードを引く篤史は雅の歩みに合わせ、見守るように傍らにいる。
雅が這って小石が擦れる音と篤史がたまに動かす足音がするだけで、他者の存在は感じられない。それでも雅の頭には「誰かに見られたら」という不安が常に居座り――興奮に塗り替えられ、ぺニスに熱を持たせていた。
男が犬の格好をさせた裸の少年を散歩させている。端から見たら異常なプレイでしかない非日常を見られたら。そう思い描いて感じるのは羞恥や恐怖だけではなかった。
懸命に手足を動かしていた雅を篤史が呼ぶ。何だろうと顔を上げると篤史は膝をついてしゃがみ、雅と目線を合わせて微笑んだ。
「半周したよ。もうここでいい」
一周と言っていたのにいいのだろうか。話せないので目で訴える雅に篤史は頷いた。
「雅がきちんと俺に従って散歩出来た。それだけで充分なんだ。痛かったよな、どこか怪我してないか?」
地面に手足をつく痛みはあったが怪我はない。頭を振って否定すると大きな手に撫でられる。気持ちが良かった。
「どこでやりたい? さっきのベンチまで戻るか?」
「……わん、わん」
短く鳴いてから篤史のワイシャツを口に咥えて引っ張り、姿勢を茂みへ向けた。歩道と緑地の境界にはレンガが敷かれ、背の低い生垣が植えられている。
主人を先導する犬のように、茂みに向かって這い始めた雅の後ろを篤史がついていく。
生垣の裏へ回った雅は傍らへ立った篤史にしがみつくと、スラックスのジッパーを唇で摘まんだ。犬の前足はジッパーを握ったり出来ない。
頭を下げてジッパーを下ろし、唇と舌だけで篤史の下着を探る。男性用下着のスリットを掻き分ければ硬く熱を持った大きなぺニスが待っていた。
うっとりとそれを見つめ、大きな口を開けて歯は触れないように、唇の柔い肉だけでそれを食む。下着から引きずり出されたぺニスへ、雅は奉仕を始めた。
舌先で亀頭を舐める。鈴口をえぐる。開いた口で竿飲み込み、頭を上下させて擦り上げ、喉を使って吸い付く。
今まで篤史にしてもらってきたことを雅なりに真似して返しているが、頭上からの反応はない。気持ち良くないだろうかと奉仕の最中に目線を上げ、篤史の様子を窺う。
無表情の篤史はじっと雅を見つめていた。
何か間違えただろうか。そう思い迷い、思わず奉仕の動きを止めた雅の口からぺニスが引き抜かれる。篤史が腰を退いたのだ。
篤史は無言のまま雅を押し倒し、口を吸った。
「きゃふ……あ、あんっ……」
口内を吸い尽くすようにキスされながら、剥き出しの乳首をいじられる。男に抱かれ慣れた体はすぐに熱を持って反応し、摘まんだり擦られたりした乳首はつんと立ち上がった。
「あ……あー……あっ、あんっ……んんっ」
篤史の唇が移動し、雅の乳首を舐めかじる。空いた手でもう片方をいじられながら、雅は悦びに喘ぐ。
篤史になら何処で何をされても気持ちが良かった。
「んっんっんっんっあっ……あっ……ひっ……ぁおおんっ……」
「ふっ……はっ、雅、気持ちいいのか? 夜の公園で素っ裸になって、犬みたいに犯されて」
「わんっ! わんわん……きゅーん……あっ、あおっ……ぉおんっ!」
四つん這いになった雅は尻尾を引き抜かれ、代わりに篤史のぺニスを咥え込んでいた。
背後から雄にのしかかられ、尻を犯されて悦びの声を上げる姿は正しく雌犬のそれだった。誰かがいつ来てもおかしくはない、夜の野外で行われる倒錯的な性交に快感を覚えている。
雅の目には夜の暗さだけではなく、何も見えていない。耳に届くのは肉を打つ音、胎の中でかき混ぜられた体液の水音、そして雅の嗜虐を煽る篤史の声だけだった。
誰かに見られ聞かれるかもしれない危険性など最早頭の片隅にもなく、ただ篤史の犬になりきって鳴き声を出す。
初めにはあったかもしれない羞恥や屈辱は、雅の中から消えていた。
「雅っ……!!」
「ぉっ……ぁ……あぁーーっ!」
一際激しく腰を打たれ、感じ入った声を上げた篤史が雅の中へ精を吐き出す。胎の中を満たす熱い飛沫を雅の体は悦び、精神的な快感は雅の射精を促す。
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