愛執染着

鳫葉あん

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※潮吹きと小スカ(あっさり)描写があります



 雅の物心がつく前から。生まれた時から彼は雅の身近な存在だった。
 年の離れた兄の友人。普通なら希薄な繋がりの筈なのに彼は雅に構ってくれた。構われれば雅は懐いた。
 小学校低学年の時。物事への認識があやふやなくせに、半端な理解力はあった雅は友達から聞いた関係性を篤史に求めた。

「あつしくん! おおきくなったらぼくとけっこんして!」

 大人になったら大好きな人と結婚して、いつも一緒に暮らすものなのだと教えられた。父母の関係がそうだ。
 雅は大好きな篤史と一緒に暮らしたい。そう伝えたくてその日は家まで走って帰って篤史の訪れを待った。
 きっといつもの笑顔で「いいよ」と頷いてくれる。篤史はいつだって雅の願いを叶えてくれるのだから。
 見上げた顔は呆気に取られていた。ぽかーんと口を開けて、丸くなった目が雅を見下ろしている。
 何か間違えたのかと不安になる雅の体は突如浮かび上がった。小さな体が抱き上げられるまま、篤史の胸に収められてしまう。

「うん。結婚しよう」

 ぎゅっと抱き締められる。加減が出来ておらず息苦しい思いをしたが、それ以上に篤史の答えが嬉しかった。
 二人共満面の笑顔で誓い合った未来の約束。微笑ましい幼い契りは奇しくも守られた。





 初めての性行為に緊張し疲れた雅は一人残されたベッドの上でうとうとと微睡んでいた。抱かれたまま何も身に付けていないので、せめてバスローブを羽織り直そうと思うのに雅の体は動かない。
 ゆっくりとした瞬きを数回。意識が遠退く――という所で、寝室の扉が開く音がする。入ってくるのは一人しかいない。
 篤史が近付く気配がしても重い瞼は開かない。傍らに座り込まれ、体をさすられて仕方なく開いた視界には自分だけバスローブを纏った篤史がいた。

「雅」

 優しく呼ばれ大きな手が脇に入る。起き上がるよう促され、仕方なく従ってやると股座の上へ向かい合って座らされた。
 篤史の手が雅からミネラルウォーターのペットボトルへ移る。冷蔵庫から持ってきたのだろうそれを見た途端、雅は喉の渇きを思い出した。
 キャップを開けて水を飲み始めた篤史に分けてくれと目で訴える。
 そんなことしなくても篤史はそのつもりで口に含んだ。自分の分は既にキッチンで飲んでいる。

「ん、ふ……」

 顔を寄せられ重なった口の中へ冷たい水が入り込む。すぐに飲み干してしまい、もっと欲しいと口を吸う。雅が初めて篤史の中へ舌を入れると、喜んで迎え入れられた。
 ペットボトルが空になるまで。何度も何度も篤史の口から水を与えられた。
 水を飲むだけならペットボトルを貰えばいい。そうせず遊んでいたのはキスが好きになったからだ。
 篤史との触れ合いは何でも好きになった。性感に繋がる気持ちの良さは勿論、心の充足も感じられる。

「んんっ……ん、んん……」

 ペットボトルが空になって何度と繰り返された口移しが終わる。最後のそれは深く長く続き、雅から睡魔を追い払った。
 水を与えた代わりとばかりに雅の口が吸われる。舌を絡めて応え、篤史の首へ腕を回して自分を支える雅の下腹へ手が伸びた。
 深く口を吸い合いながら雅のペニスが握られる。竿を扱かれ、先端を包まれ。教え込まれ、錯覚していく。
 キスだけでも気持ちが良くなるのに、篤史の手でペニスを慰められ、小さく喘ぎながら快感を追う。
 射精する頃には何が気持ちいいのか曖昧になった雅は息を荒げ、篤史にすがるように吸い付いていた。重ねた唇から水音を立てて体液を啜り、篤史の舌へ絡み付く。

 従順で若く覚えのいい体は与えられる蜜に溺れ、快感を得ようとする。どうすれいいのか教えればその通りに返す。

 寝そべった篤史の上に、頭の向きを逆にした雅の体が股がっていた。雅の顔の前には勃ち上がった篤史のペニスがあり、篤史の顔の上には四つん這いになった雅のペニスがぶら下がっている。
 躊躇なく雅を口に含み、しゃぶってやると雅も喘ぎながら真似をする。
 生あたたかくぬめついたものに包まれるのを感じ、それが雅の口の中だと思うとそれだけで昂った。拙い舌の動きも雅というだけで加点される。
 篤史の口内に収めた雅の可愛いペニスに吸い付き、舐めしゃぶる。自分を慰める際に気持ちのいい箇所を探して刺激してやると雅は大きく喘いだ。

「あっああっ……あつしさ……」
「雅。可愛い声を聞かせてくれるのは嬉しいけど俺も気持ち良くしてくれ」

 慌てた様子で雅は篤史にしゃぶりつく。亀頭を包んで吸い、口内に収まらない竿は舌で舐め上げていく。
 互いに奉仕を重ね、ぐずぐずに蕩けた雅はいつの間にか篤史の下で喘いでいた。
 尻だけ上げてうつ伏せに這い、覆い被さる篤史に犯されている。

「んおっ……ひっ……おっ……」

 孔の中には再びローションを注ぎ込まれ、篤史の指で丹念にほぐされた。男に拓かれることを知り、覚え始めた体は抵抗せずに受け入れる。
 先程と違うことがあった。篤史はゴムをつけていない。
 生身の熱さを感じる気がしながら肉襞を抉られ胎の奥へ侵入される喜びに、緩く勃起した雅は涙を流し始めていた。
 ぱたぱたとシーツに零れるものを見て篤史は笑った。気持ちがいいかと囁かれれば雅は素直に頷いた。
 肉を打つ小気味良い音がする。雅で気持ち良くなる為に胎の中で抜き差しを繰り返す篤史の下腹と雅の尻が打ち合う程に密着を繰り返しているのだ。
 そんな音すら興奮の材料になる。普段とは違うもの一つ一つに敏感に反応し、教え覚え込まれていく。

「あっ……あ……あ、あ、あっ、あ、あ……ぁ……」

 ただ声を上げることしか出来ない。雅はろくな思考も出来ず、篤史にされるがまま溺れていった。



 初めて体を繋げた土曜日も。次の日曜日も。二日間、雅はずっと篤史と繋がり合っていた。
 雅が潰れている間に作ってくれた軽食を取る間も。雅は篤史を咥え込んだまま、与えられる物を口にする。

「美味しい?」

 いつも食事をするテーブルに着き、股の上に雅を乗せ、後ろから抱き込んで尋ねる篤史に頷く。ハムとゆで卵だけの簡単なサンドイッチも、黒胡椒がスパイスになって美味しい。けれど。

「あつしさ、おいし……ね、うごいてぇ……」
「サンドイッチは?」
「おいしい。おいしいから……ね……?」

 動こうとしない篤史に焦れたように尻を揺すり、胎の中に居座る雄で遊ぼうとする。男を知って間もないというのに淫らに誘う姿は艶やかで、素質があった。

「ベッドに戻りたい?」

 戻れば何をするのか。してもらえるのか。すぐに察した雅が頷く。
 篤史へ向けられる目には確かな情欲と期待があった。

「雅!!」
「あんっ」

 ジム通いで鍛えられた体は繋がったままの雅を難なく抱え、寝室へと連れていく。顔中至る所にキスされながら雅は篤史へ体を擦り寄せた。
 はやく続きがしたい。青い欲望に突き動かされるままに甘える雅の願いを篤史は汲み取る。いつだってそうだった。



 男を咥え込む喜びを覚えたアナルは立派な性器に育った。初めは異物を追い出そうとしていただけの収縮も、一日中犯されれば異物の存在に慣れていく。
 結腸を犯そうと入り込む雄に生殖器官を殴られ、与えられる快感を貪欲に求めようとしている。

「いいっ! きもちぃ、おくっ……もっとついて……!」

 雅のねだりを聞いて腰の動きが速まる。絶頂へ昇り詰める予感に雄を締め付けた雅だったが、突如芽生えた違和感から狼狽えた声を上げた。

「あっだめ、だめ……やめて」
「どうして。俺はやめたくないよ」

 はやく雅の中に吐き出してしまいたい。熱く囁く篤史に雅はいやだと首を振った。

「でちゃう……でちゃう、から……」
「……何が出る? 射精なら思いきりしたらいい。シーツを替えればいいだけだろ?」

 意地の悪さを滲ませた問いかけに雅は泣きそうな顔で「それじゃない」と首を振る。
 敏感な生殖器官の集中する肉路を突かれ、刺激された雅は尿意を感じていた。

「何が出るんだ? 言ってくれないとわからないよ」
「……」

 いつもなら雅が言葉にするより先に動いてくれるというのに、今日の篤史は察しが悪い。
 言葉にするのを拒否する唇を説得し、顔を赤くして「おしっこ……」と答えたというのに、雅はベッドに押し倒されたまま、変わらず男に犯されている。

「やぁっ……や、ど、してぇ……! トイレ、トイレ行かせて………?」
「雅……! そんなにトイレ行きたいんだ?」

 うんうんと頷く。ベッドに漏らしたくなんてない。
 お願い、と上目で見やる。雅を組み敷く男はそれだけで低く唸り、再び抱え上げられた。繋がったまま。

「んおっ……!」

 膀胱への違和感が大きいまま、雅は運ばれていく。逞しい体にすがりついて尿意に耐えつつアナルへの刺激に喘ぐ雅は無事にトイレへと連れ込まれ、後ろに陣取る篤史に尻を犯されたまま洋式便器の蓋を支えに立たされる。

「なんでっ……やだ、出てって……」
「悲しいこと言うなよ。これから休みの日は一日中ずっと雅と繋がっていたいんだ」

 甘ったるく囁かれたと思えば、ずんっと深く勢いをつけて奥を穿たれ、雅は悲鳴のように高い嬌声を上げた。
 それと同時にまるで押し出されたかのように、雅のペニスの孔から体液が飛び散る。透明な液体がぷしゃっ、と便器の中に吹き出され、呆ける間にじょぼぼぼ、と聞き慣れた音が耳に届いた。

「…………なに……なんで。やだ。いや……」

 正体のわからない現象に狼狽え、抑制出来なかった排泄はまるで漏らしているかのような錯覚に陥り、涙を溢す雅を見て。入り込んだままの雄は膨らみ、雅の胎を僅かに圧迫していた。



 取り乱した雅を宥めた篤史は再び寝室に戻ると優しく語って聞かせた。
 透明な液体は潮で、雅の体が気持ち良くなって出ただけなこと。男性が潮を吹いても何らおかしくないことも付け足して。
 潮吹きに引きずられて排尿するのもよくあることだと。これは適当な嘘だが雅は篤史の言葉を信じた。
 どうせ篤史の前でしか潮吹きなんてしないのだから真実なんてどうでもいい。


「あぁん……篤史さん……篤史さんのち…………ち、ちんぽ……気持ちいいの……」
「そうか。ならもっとやるからな」
「うん……うん………! もっとして……気持ち良くして……篤史さんも……気持ち良くなってね……」
「雅!!」

 これまでの人生で形成された恥じらいを壊して、篤史とのセックスで素直な姿を見せてくれたらいい。
 ベッドの上で篤史に胎を犯されるまま、気持ち良さそうに喘ぐ雅に奉仕する。煮詰めた蜜のように濃厚な甘い時間は瞬く間に過ぎ去っていった。
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