旅鉄からの手紙

吾妻線

名湯草津へ一度はおいで♩

吾妻線は渋川で利根川と合流する吾妻川に沿って、中之条、長野県草津口、万座・鹿沢口などを通り、浅間山の軽井沢とは反対である北側の麓のレタスやキャベツなど高原野菜で有名な嬬恋村にある終点の大前駅に向かって行く。

私も５月のゴールデンウィークの頃にその吾妻線に一回乗った。日本一短い鉄道トンネル樽沢トンネル（全長７．２ｍ）はあまりにも短過ぎていつくぐったのかわからなかったが、山あいの新緑がとても綺麗で特に吾妻渓谷がそのハイライトと思えるくらいであった。八ッ場ダム建設に伴い、２０１４年に岩島ー長野原草津口間は今まで使われていた線路は水没エリアに入るために廃止され、代わりに建設された新しい線路に切り替わった。

その新しい線路のトンネルは長く、吾妻線旅のハイライトとも言える吾妻渓谷や、日本一短い鉄道のトンネルの樽沢トンネルとその周辺の車窓も失われた。その名残りを惜しむかのように八ッ場ダム付近にできた国道の新しい道の駅では、樽沢トンネルをくぐる一両のかわいらしいお馴染みの湘南色（緑とオレンジ）の列車のストラップが売られていた。よく人生の辛い時期をトンネルに例えられるが

「辛い時期は短く明るい未来を！」

と前向きな意味が込められている。私も

「利根川上流はダムがいくつも建設されているのに、本当に八ッ場ダムは必要なのか？」

思いながら一つ買った。

吾妻線沿線には小野上、四万、川中、川原湯、草津、万座、鹿沢などあちこちで温泉が湧いているがその中で代表的なのが名泉の一つ草津温泉である。長野原草津口で路線バスに乗り換えて行ける。

「草津よいとこ一度はおいで♩」

で始まるおなじみの湯もみで、熱いお湯をかき混ぜながらよく歌われる草津節でも有名な草津温泉は、源泉でもある湯けむりが多く立ち上る湯畑を中心に温泉街が広がり、自然湧出量も日本一で１日３２，０００リットル以上で約ドラム缶２３万本分もの温泉が湧いている。

「温泉街の旅情が味わえて湯加減も程よい温泉」

と私も誰にでも自信を持って感想が言えたり勧めたりすることができる温泉地の一つである。江戸時代の温泉番付で最高位の大関であった事も頷ける。出来たてほやほやの温泉饅頭を温泉街を散策しながらつまむのも美味い。数々の立派な旅館やホテルなどが建ち並ぶほか、日帰りで入浴できる共同浴場も点在し、私が行ったそのうちの一つである大滝の湯でも、内風呂や露天風呂はもちろん様々な温度の湯の入った浴槽もあり、温泉十二分に満喫出来た思い出もある。温泉を満喫した後はできたてほやほやの温泉饅頭をつまみながら、湯畑まで散策したが、お寺（光泉寺）の石段から見た夜のライトアップされた湯畑からの湯けむりと温泉街の数々の明かりが幻想的だったのを今でもはっきり覚えている。

吾妻線沿線の名泉としてもう一つ旅の思い出に残っているのは、榛名山の山頂近くに湧く伊香保温泉に行ったことである。私も家族３人で正月に信州へ帰省した帰りに日帰りで立ち寄った。朝１０時くらいの開館に合わせて黄金の湯館に入った。文字通りゴールドとも取れる少々黄土色に濁った湯加減も丁度良く気持ちの良い朝風呂だった。湯上がり後の伊香保温泉のシンボルとも言える365段の石段の温泉街の散策もお勧めである。