旅鉄からの手紙

上越線

私にとってのスキー

私にとってスキーはブームに乗るだけではなく、納得の行くまで楽しめているスポーツだ。

私がスキーを始めたのは６歳の頃で、スキーよりサンタクロースも乗っているソリをしたいと思うなかで、親にスキー板を履かされたのが始まりだった。何回も転びながら滑っていたような記憶がある。

その頃から毎年冬休みや春休みになると自分の親にスキーに連れて行って貰った。スキー旅行はリフト券代なども高く確かに贅沢ではあるが、うちらの場合は泊まったのは中学校の林間学校の宿舎にも使われている宿代の安い市営の施設で、昼は毎回カップラーメンとパンであったりと贅沢とは少し離れたスキー旅行であった。こうしてスキー旅行に継続的に行けるように工夫してくれた親や大人達に対して本当に有難いと思う。

小学生の頃からは転びさえしなければ上手いと何処か勘違いしていた感じで、低学年の頃はよく一人で滑っていたが、高学年になるにつれて、一緒にスキーに連れて兄弟や一緒に行った父の会社の同僚の子供達と一緒に適当に遊びながら滑っていた。遊んでいるうちに転びそうになった時や転んだ後の対処方法などをいつの間にか身体で覚えていた感じである。

スキーがスポーツだと意識するようになったのは、高校生になってからで自分の未熟さに初めて気づかされたのは大学１年生の冬だった。未熟さを意識するようになったきっかけは、今まで一緒に滑って来た自分の兄弟が次々と大学生から基礎スキーやモーグルを始めた事だった。うちの大学だけが本格的にスキーをやるようなサークルがなく、兄弟の中で自分だけがいまだに自己流で、欠点を指摘される度に「下手くそ」って言われている気がして悔しくてたまらなかった。

それ以来滑る度に自分の未熟さが気になるようになった。それがスキーに本格的にハマるようになった理由なのかも知れない。その悔しさをバネにもっと上手くなろうと思った。

スキーを特技にしようとＳＡＪ（全日本スキー連盟）による基礎スキーの級別の検定バッジテストに挑戦した。検定に落ちる度にスキーにハマって行った。先ずは越後中里駅前に広がる中里スキー場のスキースクールで教えて貰った、ターンをする度に板を開くように外足にしっかりと体重をかける技術を覚えたのをきっかけに２級を突破した。

２級を突破して４年くらいするとそれだけでは満足出来なくなり、今度は一級にトライし始めた。１級の検定で何回か落ちて難しさを痛感すると、今度は夏でもスキーの練習をしているスクールを探して受講した。私がお世話になったスクールでジムみたいな室内で短いスキー板と長さ１～２ｍくらいのじゅうたんの敷かれたスロープを下りる事で体重移動の基本をマスターした。それだけではなく丸沼高原で特殊なプラスチックが敷かれた真夏のゲレンデをスキー板で滑るプラスノーによるレッスンも受けた。それからそこで覚えた体重移動が、雪の急斜面のゲレンデ特に急斜面でも出来るようになるまで何回も滑った。

社会人になってから一級の検定が受かり息子が生まれるまでは、年末年始の信州への帰省も含めて一冬に１０回以上、多い時は毎週のようにスキー場に通った。その多くが日帰りであった。越後湯沢の近くで上越新幹線の駅と直結しているガーラ湯沢スキー場など、往復新幹線でリフト券代込みで一万円くらいで行ける日帰りツアーパックも何回も使ったが、安い青春１８切符が使える期間には、早起きして高崎線と上越線にも何回も乗った。上越線沿線は先述した越後中里や上越国際スキー場前など駅前がスキー場になっているところや、越後湯沢や先述した水上など無料シャトルバスや路線バスなどで直接アクセス出来る乗り鉄や旅鉄にも便利なスキー場も数々点在する。 それらのスキー場にも何回も通った。

小学校６年生の冬休みに上越線に初めて乗った時は、飯山線から乗り換えた越後川口を出発して越後湯沢や水上の方へ向かった。その途中夕暮れ時で雪が降りしきる中、遠くにスキー場のナイターを思わせるような明かりがあちこちに鮮やかに見えたのをよく覚えている。ナイターで営業しているスキー場もいくつかある。私も何回かナイターでスキーしたことあるが、昼間より寒いけどその分雪が締まることで雪質が良くなり、しかもゲレンデも空いているので心ゆくまで滑りを楽しめる。

上越線は現在殆ど普通列車運行されているが、ついこの間と思えるくらいまで運行されていた特急水上号や臨時快速シーハイル上越号に乗れた時は、トンネルの区間が長い上越新幹線とは違い車窓を楽しみながらリクライニングシートに座れて、高崎駅などでの乗り換えもなく快適な旅も出来た。特に越後湯沢駅で買った豚汁などをビールや日本酒のつまみにしながら在来線ならではの電車のモーター音のする列車に乗って、トンネルや雪深い山々を抜けるなど、ほのぼのとした上越線の旅をしながら、スキー場から帰ったのも私の良い思い出に残っている。

何回も上越線沿線などのスキー場に通っているなかで、越後湯沢から無料シャトルバスが出ている神立高原スキー場のスキースクールで、エッジでの雪面の捉え方を教えて貰えたのをヒントについにスキー検定の１級を突破した。

雪面の捉える基本は両方の板を同じ向きに横にして板のほぼ中央に体重をかけながらそのままエッジで滑る横滑りで、まるで子供の頃よくやった、学校の教室などの木製の床を靴を脱いで靴下の履いた両足二本で同時に滑って遊んだような感覚だ。あの時も床の上で転ばないように腰の辺りいわゆる重心が両足から遅れないような動きをしていた。それと同じ運動を雪の上でスキー板を履いてやれば良い。その横滑りを「右左右左…」と方向を変えて繰り返すと不思議とスイスイと滑走できる。近頃一級の検定種目に新たに「横滑り」が加わったのも頷ける。

スキーの初心者は板で「ハ」を描くように開いたプルークボーゲンから入ることが多い。ボーゲンはスキーのターンの基本運動で上級者でも練習で行うこともある程で、スピードがもの凄く抑えられるからスピードにあまり慣れていない初心者がスキーに慣れるきっかけには良いかも知れない。

しかしボーゲンから始めるとかつての私のように上半身に余計な力が入ってしまいがちになる。余計な力が入ると、スキー板が進む速さに対しての重心の遅れにつながる場合もある。私も長い間ボーゲンから入ったことによりついてしまった余計な力が入る悪い癖には悩まされた。

肩の力を抜いてリラックスするように上半身の余計な力を抜いて、スキーの板を肩幅くらいに自然な感じでほぼ平行に開いて先述した横滑りの動作を滑りながら滑らかに繰り返す。ターンの大きくしたい場合はその横滑りの動作をゆっくりと時間をかけてやれば良い。無理にスピードを出そうとしなくてもそれを何回も繰り返すといつの間にかスピードにも慣れてスキー板をほぼ平行にしたパラレルターンができている。

スキー上達の第一の秘訣を一言で簡単にまとめて言えば

「恐がるように腰が引けた状態にならずにかつ、余計な力を入れずにリラックスをして楽しんで滑れること」

で、それは初心者から上級者まで全て当てはまると思う。今でもコブ斜面では怖がるように腰が引けてしまうと必ずと言っていいほど転倒するか、モーグルの選手が描いて滑っているようなジグザグ状に近いコブのコースから、自分が意図していない地点で外れてしまう。特にコブを滑る時は怖がって腰が引けないように注意している。

１級はボーゲンではなくパラレルターンで、コブや急斜面を含めた殆どのゲレンデにて安定したポジショ二ングで、スピードをコントロール出来る、言い換えれば常にエッジで雪面を捉えるのに一番力が入るベストポジションを保ちながら滑れる、上級者の入り口と言える。その上はスキー学校も開けるインストラクターやデモストレーターにもなれる本物の上級者レベルである。スキーのインストラクターなど私よりも上手いスキーヤーはまだまだたくさんいらっしゃるし、スキーのレベルも上を見たら本当にキリがない。その中でも引き続きエッジで雪面を捉える事を楽しみながら少しでも本物の上級者に近づいて行きたい。本物の上級者によるレッスンや滑りを、近頃はＹｏｕＴｕｂｅの動画でも簡単に見られるし、それを目標にして真似してみるだけでも更に楽しさが増す。

私の息子も５歳の冬から一人で滑れるようになった。息子にもスキーの楽しさを味わって欲しいので、少なくても私について来てくれるうちは出来るだけ一緒にスキーにも連れて行こうと思う。最近では息子達と一緒に滑りながら、空気椅子に座っているような感覚で、今では板を斜めにする角づけにより、エッジで雪面を捉えるというより、エッジそのものの上に乗っかって滑走する快感を味わえている。