旅鉄からの手紙

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黒部峡谷鉄道と黒部ダム

高熱であった隧道~地上の星達が眠る~

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一般客にとってはここで終点だが、線路はここからは「黒部峡谷鉄道」から「関西電力黒部専用鉄道」と名称を変えて、黒部ダムまで続いており工事などの発電所とダムに関係される方々のみならず、一般客でも見学に応募して、当選すればその線路を通り欅平駅と黒部ダムの間を最短距離で(一般客の見学は片道のみ)移動できるという。

一般客の見学は6月~11月頃だが、全区間トンネルの中にあり、発電所とダムで仕事などされる方々は、雪深い冬も含めて一年中利用出来る。地上も通る為に冬は雪の影響で運休される、宇奈月温泉から欅平までの黒部峡谷鉄道とは違う。

2002年大晦日のNHK紅白歌合戦にて、中嶋みゆきさんが黒部ダム付近のそのトンネル内で「地上の星」を歌ったのも有名な話である。本当に寒さが厳し過ぎる大晦日の夜でも歌った姿勢には本当に心を打たれた。本当に歌を通じて何かを訴えたいからこそできると思う。

その歌が主題歌であるNHKのドキュメント番組「プロジェクトX~挑戦者たち」でも、戦後の黒部ダムの建設は取り上げられた。

その黒部ダム建設の前の昭和初期に建設された、その黒部専用鉄道と黒部川第三発電所と、その発電所用の水を貯める仙人谷ダムは、我々が想像し難いくらい過酷な環境で工事が進められたという。この事実を基に書かれた「高熱隧道」(吉村昭先生著)という小説があるくらいである。トンネル工事で70℃以上(最大で約160℃)の地層を掘らねばならず、それらの熱によるやけどや熱中症にとどまらず、工事用ダイナマイトの高熱による自然発火による爆発さらに、トンネルの外で起きた雪崩などの事故が勃発した。これだけ過酷な環境でこれだけ多くの方々が犠牲になられたプロジェクトも史上ほとんど例がないという。富山県警からもその異常な事態により工事の中止命令が出されたが、それでも工事が続けられた。その背景には建設に関わった会社の社運がかかっていた事のみならず、発電所建設そのものが第二次世界大戦に伴い軍需産業が盛んになる事による、電力需要増加を見込んだ国策だった事があると言える。お国のために命を捧げるのが良いとされた時代では十分に起こりうる事態だ。

中島みゆきさんが黒部ダム付近でも歌った「地上の星」は、世間ではあまり注目されていなかったり、一攫千金を得るようなことがなかったりしても、汗水流して働くなど一生懸命生きている方々への歌と聞いた事ある。私もよくカラオケなどで歌ったりするくらい好きな歌の一つだ。

よくテレビなどに出る有名人をスターという。我々はテレビやネットなどの影響で、どうしてもタレントや俳優などの芸能人やスポーツ選手や、政治家さらに成功した実業家などの「スター」に目が行ってしまうが、有名な方はもちろんそうでなくても、私達の身の回りで一生懸命もしくは楽しく生きている方々は、みな「星」なのだ。中島みゆきさんもその「地上の星」という歌を通じて

「テレビの向こうなどなかなか手が届かない空の星ような、有名人の世界の良いところばかりを見ずに、地上のような自分達の身の回りの世界、言い換えれば足元をよく見なさいよ!」

と我々に呼びかけているのかも知れない。

私もテレビのスターの見かけのように目立つ事や他人にチヤホヤして貰う事を決して第一に考えずに、自分のやりたい事を楽しみながら輝き続けることで、無数に見える地上の星の一つであり続けたい。
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