旅鉄からの手紙

山陰本線

鳥取砂丘～まるで座禅～

鳥取県に入り、岸壁や洞窟など複雑な地形をした海岸美に加えて、白っぽいベージュ色の花こう岩が青い空や海と緑の松の風景をより鮮やかに引き立てることによる名勝で有名な「山陰の松島」付近も通り、鳥取駅に着く。

鳥取駅と言えばやはり鳥取砂丘である。テレビのニュースで砂嵐のシーンをやっていたのをきっかけに一度でも行ってみたかったのだ。鳥取駅から路線バスでわりと簡単にアクセス出来た。初めての泊まりの一人旅で、京都から大阪を経由して鳥取砂丘まで足を延ばした。急行「だいせん」を鳥取より先の倉吉まで乗り、倉吉から列車に乗って鳥取方面に引き返した。朝７時過ぎの砂丘行きの一番バスに乗るにはちょうど良い時間に鳥取駅に着いた。

路線バスから降りた後少し歩いて砂丘に着いた。砂漠を思わせるような砂地の広さに圧倒された。東西１６ｋｍ、南北２．４ｋｍと、地図で見るだけでも世界一広いサハラ砂漠とは比べものにならないくらいに小さい、鳥取砂丘でさえこんなに広く感じてしまうとは、人間一人はこんなに小さいのかと思えてしまう。砂丘の中の方へさらに歩いて行った。砂地で歩きづらいなかで、馬の背とも呼ばれている丘を越えると日本海の大海原を見渡せた。まるで追い打ちをかけられるようにさらに人間の小ささを感じてしまった。やはりまだ１７歳でしかも周りからは「箱入り息子」とも言われるくらい、今よりももっと大海（世間）を知らない「井の中の蛙」状態であった。自分自身のひ弱さや小ささを感じずに居られなかった。日本海から次々と押し寄せる波の音を聴く度に、座禅の棒に叩かれているような気持ちになった。まるで座禅を体験しているようであった。砂丘の高台から見た日本海の海原が本当に恐ろしくも見えた。水平線の遥か彼方は砂丘とは比べものにならないくらい広大なアジア大陸が横たわる。水平線の遥か彼方へ旅をするが如く、私はこれからはもっと不安と恐怖に打ち克ちながら強く生きなければならないと自分に言い聞かせ続けた。

鳥取県の名物と言えば二十世紀梨とラッキョウである。共に鳥取砂丘周辺らしい温暖な気候で、水はけの良い土地柄が栽培に適している。