旅鉄からの手紙

山陰本線

玄武洞～旅をさらに楽しくする地質学～

豊岡を出発して、川の水量が増えた円山川の下流を見ながら北上する。玄武洞駅は文字通り洞窟が駅の対岸にある。１６０万年くらい前の火山活動で山頂から流れ出たマグマが冷えて固まる時に規則正しいきれいな割れ目を作り出した。約６０００年前に日本海の波に洗われて姿を現し、人々が漬物石や建設などの石材に使う石を採ったために穴が出来て洞窟となったもので、角状の岩が積み上げられて不思議な美しさを見せている。江戸時代に幕府の代官により「玄武洞」と名付けられ明治時代に東大の地質学にも詳しい教授により洞窟の名を取り地質学上の火山性の岩である「火成岩」の一種の名が「玄武岩」となった。玄武岩は火成岩のうちマグマが急に冷え固まった火山岩の一つである。溶岩が冷え固まった火成岩は「火山岩」「深成岩」と次のように分類される。

（１）火山岩（マグマが地表付近で急に冷え固まった岩。細かい未完成な結晶も混ざる「斑状組織」で粘性が低い程細かい結晶が多い。）
溶岩がやわらかい（粘性が低い）順に並べると
?玄武岩
?安山岩
?流紋岩
（２）深成岩（マグマが地下で時間をかけてゆっくり冷え固まった岩。この辺りが火山そのものであったと推測できる。「等粒状組織」と呼ばれ完成した大きめな結晶で構成させる。）
同様に（粘性が低い）順に並べると
?班れい岩
?閃緑（せんりょく）岩
?花こう岩

?の「玄武岩」「班れい岩」は三原山やハワイのキラウエア火山のように溶岩の粘性が低く比較的穏やかに噴火する火山が近くにあったことがわかる。色は黒っぽく重い。玄武洞の由来となった玄武岩がそれにあたり玄武岩から採れた玄武洞の石が漬け物石や建設の資材に使われていたのもわかる。
?の「安山岩」「閃緑岩」が見られる場所ではかつて富士山、浅間山、桜島のような綺麗な容姿をした成層火山であった事がわかる。?より溶岩が硬めで激しい爆発による噴火を起こす。色も重さも??の中間と言える特徴がある。
?の「流紋岩」「花こう岩」は噴火を起こしても溶岩が硬すぎるために流れにくく火口付近に岩の塊である溶岩ドームを作り崩落により岩の塊の中の冷えきっていない部分のマグマの熱による火砕流などで大きな災害をもたらすこともある雲仙岳、昭和新山のような火山であった事がわかる。色は白っぽく比較的軽めである。

以上のような火山性の岩石など地質学の知識が少しでも頭に入っているだけでも例えば

「この辺りには安山岩がよく見られるからかつて富士山のような山があった」

とか、火山性のみならず

「サンゴや貝殻の死骸などからなる石灰石がよく見られるこの辺りはサンゴ礁や熱帯魚がよく見られる海であった」
などその土地の特徴や太古の昔の様子などがわかり旅の楽しみもさらに増す。